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東京ハルモニア室内オーケストラ 第62回定期演奏会 江口玲 [コンサート]

 東京の緊急事態宣言は延長したが、音楽活動の規制は緩和され、演奏会が開かれた。元々チケットは半数しか販売しておらず、お客さんは通路後方に集中していたような印象だ。
 今回のコンチェルトは江口玲さんのピアノ。これがとても素晴らしくて、この日のメインだったと思う。使用したピアノ、ローズウッド・スタインウェイ(1887年製)というのが魔法のような楽器だった。高音部の音は輝き、中音域は人の声のように温かく、弦楽器のようなまろやかな響きだ。ピアノの蓋を完全に外していたせいもあるかもしれないが、弦楽合奏のようなミックスした残響が美しい。楽譜はiPadを使用していた。
 初めの第一音に、まず驚いた。近くで聴いているのに、音響のよい大ホールで空間を突き抜けるときのような、クリアで太い音、日本のホールで聴くのとは違う響きのように感じた。弾き終えて振り返った江口さんの表情を拝見して、この温かみのある音は、お人柄をも表しているのかもしれない。
 アンコールは、シューマンの「献呈」、リストがピアノ独奏用に編曲した華麗な曲。独奏だったので、音の特徴がはっきり分かり、とても重い音なのに華麗なタッチで何とも言い難い優美さだった。ピアノに詳しくないので、印象でしかないが、バイロイトで聴いたシュタイングレーバーのピアノをファシル・ツァイが演奏したとき感じた、充実した密度の高い音にプラス、細かな残響が合わさった一つの残像を見るような、言葉で記憶しておくなら、そんな印象だった。
 ドニゼッティのカルテットも初めてだ。最初の和音の響きがとても美しく、イタオペのように心地よい音楽だった。
 江口玲さんは伴奏ピアニストとして有名な方なのかと思っていたが、コンサート後検索し、ホロビッツが弾いていた、ニューヨークの古いスタインウェイで録音されていることなど知り、またライヴを聴いてみたいと思う。
《曲目》
ドニゼッティ 弦楽四重奏曲第3番ハ短調(弦楽合奏による) 
 G.Donizetti Quartetto No.3 c minor
リスト メレディクション(呪い) ピアノと弦楽のための
 F.Liszt Malediction
  ※ピアノ…江口 玲 Akira Eguchi
  使用ピアノ ローズウッド・スタインウェイ(1887年製)
ヴォルフ イタリアン・セレナーデ ト長調
 H.Wolf Italian serenade
レスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
 O.Respighi Antiche arie e danze per liuto
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岡本侑也 ―無伴奏チェロリサイタル トッパンホール [コンサート]

 弾きたくて、この日が待ち遠しかったように音楽に没入する、この心と体と音楽の一体感は岡本さん独自の世界だ。一週間前は高崎でホールの響きを堪能したが、今回は間近な距離でダイレクトにチェロの音を聴いた。超絶技巧の持ち主が、良い楽器を得て、何の迷いもなく、思い通りの音を奏で、楽しみ、聴衆を喜ばせてくれる。
 岡本さんのカサドは、以前から聴いていたが、瞬発力に弾力というか躍動感が加味され、音楽のスケールが一回りも二回りも大きくなったように思う。スリムな体から湧き上がるエネルギーが凄い。
 藤倉作品はフラジオレットが美しく、海の中の泡のような、あるいは宇宙空間を漂うような、不思議なイメージだ。現代曲の譜面を音楽として膨らませ、音を再現するのは、表現者の創造性と確かな技術だ。アルペジオとロングトーンを同時に弾く移弦テクニックも、楽々弾いているように見えて、これは超難曲だと思う。レパートリーに加えてほしい美しい日本の作品だと思う。
 高崎と同じ前半のプログラムは、やはり集中力が凄い。小さなつまずきも気づかせない、クリエイティブな無伴奏。高崎でも感じたことだが、ある意味、誰にも邪魔されず、深い思いを語れる無伴奏は、表現者としての岡本さんの理想像に思える。無伴奏演奏会が、中学生の初コンサート以来とは意外だった。
 トッパンホールプレス2021.3月号の特別座談会(三浦一馬、山根一仁、岡本侑也)によると、岡本さん、osmは、終始音楽に集中していないと音楽が止まる不安があり、譜めくりの人を頼んだり、iPadのページをめくるペダルを踏むこともやめて、暗譜したというような話だった。それほど音楽の流れを大切にしているということだろう。岡本さんは、今回も全曲暗譜だった。
 今はミュンヘンで室内楽を勉強中だが、まるで生きているような音の動きは、将来どんな初演作品でも無限の表現をもって成功に導くことだろう。現代曲は激しいピッチカートも多く、さぞ指が痛いと思う。チェリストは心身共に、強靭でなければならない。
 岡本さん26歳の、忘れられない無伴奏リサイタルになった。(G)
 
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011
ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ Op.25-3
デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ
藤倉 大:osm~無伴奏チェロのための(トッパンホール15周年委嘱作品)
カサド:無伴奏チェロ組曲
クラム:無伴奏チェロ・ソナタ
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高崎芸術劇場 岡本侑也 無伴奏チェロ・リサイタル(大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.3) [コンサート]

 高崎芸術劇場 芸術監督大友直人氏がプロデュースする若手演奏家プロジェクトの第三弾。ラジオ高崎で生中継され、収録されたCDとDVDが後日販売されるとのこと。岡本氏のCD発売はエリザベートコンクール音源以来となる。2020年10月、コロナ禍で苦しい若手演奏家の支援と、高崎芸術劇場音楽ホールの響き知ってもらう目的で、CD作成の企画を立ち上げたようだ。第一回のCDは各サイトでネット販売されている。
 高崎芸術劇場は気になっていたが、やっと訪れる機会を得た。大ホールはまだ未体験だが、音楽ホールの残響は素晴らしい。後で調べたら、満席で1.5~1.9秒とのこと。
 収録は本番一度ではなく、本番前二日、後一日要するらしい。演奏当日大友さんはご不在で、声だけ開演のご挨拶があった。後半初めには演奏者のインタヴューがあるのだが、今回は司会者もおらず、岡本さんが一人でお話された。
 無伴奏の演奏会は中学生のときの初リサイタル以来とのこと。このコンサートは私も聴いている。
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2009-02-08
 改めて、岡本さんの無伴奏は、音楽に吸い込まれるような力がある。
 バッハはピリオド楽器のように、アップテンポでかっちり弾くのに、表情が豊かだ。指揮者で言えば、ペトレンコのような躍動感がある。ヒンデミットは大御所のナターシャ・グートマンのさすが美しく逞しいYouTube映像を見たことがあるが、それよりハイテクで軽やかだ。所謂音の引き出しが無限に広がり、ホールの響きが良く、楽器もよく鳴って、デュディーユも今までと印象が変わった。ジョージ・クラムは美しい。BUNRAKUまでも、印象が変わるほど、あらゆるベストの条件が揃った、ただ事でない本番だったと感じる。コロナ禍の中、久しぶりのこの本番が、CD化されるのは、後年大切な記憶となるだろう。
 過去には、岡本さんが清澄な音を奏で、周りの空気の粒が振動して、きらきら輝くように感じたことがあったが、ここではホール全体が大聖堂のような神聖な空間になり、客席の照明が暗転すると、満席の客席には水を打ったような静けさが広がった。おそらく録音するコンサートであることを、皆よく知っていて協力しているのではないかと思う。曲の合間に咳する人も、途中で物を落とす人もほとんどいなかった。
 岡本さんのお話も楽しくて、初めて来た高崎芸術劇場は、建物や木の香りのするホールだけでなく舞台裏も素晴らしく、シャワーが好くて、ここに住みたいほどだと褒め、地元のお客さんを喜ばせた。
 協(共)演者のいない、この日の無伴奏は、例えるなら、周囲の何物にも囚われず、光差し込む林の中で解放感にひたり、音楽と一体になって、のびのび寛いでいるような感じだろうか。ホールの空気も観客も、すべてを一つに包み込む調べは、残響の恩恵もあるかもしれないが、私にとっては最高の体験だった。一週間後、リサイタルをする凸版ホールの残響は1.1~1.4秒と載っていたが、どんな風に聞こえるのか楽しみだ。
 ミュンヘンに留学してから、聴く度に音楽のスケールが大きくなる。そしていよいよ独自の道を歩き始めたのだなあと、計り知れない未来をもう少し追ってみたいと思う。

岡本侑也(チェロ)
ヨハン・セバスティアン・バッハ: 無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
パウル・ヒンデミット: 無伴奏チェロ・ソナタop.25-3
アンリ・デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ
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カザルス:鳥の歌
黛 敏郎:無伴奏チェロのための「BUNRAKU」
ジョージ・クラム: 無伴奏チェロ・ソナタ
高崎芸術劇場 音楽ホール(座席数412)
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都民芸術フェスティバル 佐藤晴真ドヴォルザーク [コンサート]

 緊急事態宣言前に購入した最後のチケットは、佐藤晴真さんのドヴォルザークのチェロコンチェルト。一列目は空け、2列目(最前列)で聴いた。佐藤さんは2019年ミュンヘンの国際コンクールで日本人初の一位を獲得されたが、その後は聴くチャンスが無かった。
 久しぶりで聴いてみて、多少荒々しい感じがするが、音楽がダイナミックで、今、日本の若者の主流と感じる、端正で音程を外さない上手なチェリストとちょっと感じが違う。 
 2010年に聴いたミュンヘンコンクールの時の印象だが、逞しく、活力のあるタイプのシュテッケル氏が一位、その時の二位は横坂源さんだった。あのとき横坂さんは寡黙に凄いエネルギーを発していた。そして三位が繊細な美しい音色のチェリストだった。(下のリンク参照)
 今日の佐藤さんは、10年前のシュテッケル氏の印象と重なる。派手に音をはずすことはないが、思いきりが良い。弾く姿もアピールがある。私の印象では10年前の横坂さんは、かなりガリガリ弓と弦の摩擦音が聞こえたが、佐藤さんは荒っぽい感じがするのに、音が綺麗で情感がこもっている。難所も全部の音が聞こえ、勢い余って小さなミスはあっても、彼のパッションが人を惹きつけ、躍動感に魅了される。自分自身をさらけ出すタイプは今の日本では珍しい気がする。コンクールの音源は聴いておらず、この日の印象でしかないので、これから、もっとたくさん聴いてみたい。
 プログラム後半、ポピュラー過ぎる「新世界」ですら生演奏は久しぶりで、これはやはり名曲なのだと気づく。意外にも、爽やかさな風を感じた。3曲ともチェロ首席・服部誠さんの音がよく聞こえ、大切なお手本を、頂いた気分だ。
東京フィルハーモニー交響楽団
指揮/渡邊一正 チェロ/佐藤晴真
プログラム ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」作品92
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2010-09-01
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2010-09-03-1
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2010-09-03-2

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モルゴーア・クァルテット第50回的演奏会 [コンサート]

 2020年6月に開催予定だったプログラムがそのまま演奏された。半年間でさらに音楽は熟成されたのだろう。迷いなく信念を貫くような演奏だったと思う。
 普段縁遠い、新ウィーン楽派の室内楽をわざわざ聴きに行くのは、モルゴーアの意欲的な演奏会だから。座席も今回指定席を販売し、万が一観客なしでも開催する覚悟だったそうで、2/5~11まで、初めてネット配信する。
 世紀末ウィーンの音楽を聴いていると、未熟者としては、時々出現する耳慣れた調性の方に光を感じてしまう。予習段階では3人の作曲家の音の印象は異なり、優しさを感じるヴェーベルン、ヴォツエックを思い出す激しいベルク、重厚で複雑な音のシェーンベルク…だったが、生演奏ではやはり奏者たちの個性が現れるものだ。クリアな音が重なってカオスを作るような音楽は、退廃的というわれた時代もあった。
 演奏後の荒井先生のお話はいつも楽しく、弾き終わって、聴衆に向かってお疲れさまと一言、客席の寝息が思ったより少なかったと。シェーンベルク1番は調整音楽だが、無調とDdurの戦いのようで最後Ddurが勝つところが、世界がコロナに勝つというところにつながるかなと思う、というような話だったと思う。また、ネット配信期間は7日間なので、1日一回7日間聞けば、音楽を良く理解できますよと、宣伝もお上手だ。本当にシェーンベルクの1番は綺麗だと思う。
 アンコールに、ヴェーベルンの初期のチェロとピアノの小品で、ピアテゴルスキーのために書いたという作品の2曲目(四重奏に編曲したらしい、短い曲)が演奏され、美しく、救いの光が差し込むような響きを、聴衆の耳に残してくれた。

第1ヴァイオリン:荒井英治 第2ヴァイオリン:戸澤哲夫 ヴィオラ:小野富士 チェロ:藤森亮一
曲目
ヴェーベルン/弦楽四重奏曲(1905)
ベルク/弦楽四重奏曲 Op.3
シェーンベルク/弦楽四重奏曲 第1番 Op.7
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都民芸術フェスティバルー東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 ~音楽の喜び~ [コンサート]

 緊急事態宣言発令中、二日続きでオケを聴いた。購入してあった公演がキャンセルされず、嬉しい。
 二日目は高関先生とシティフィル。曲はポピュラーで、池袋は行きやすい場所でもある。
 ショパンの1番のピアノコンチュエルトを聴くのはとても久しぶりで、郷愁にひたり、美しく優しい音楽に安らぎを感じた。デヴュー30周年の横山さんのショパンコンチェルトは、さすが、潔く正しく爽やかな演奏だった。横山さんはベートーヴェンソナタの全曲演奏など、時間をかけるリサイタルがメインのピアニストかと思っていた。舞台上のしぐさは甘く軽快で、いつの間にか風格を醸し出す年代になっていた。
 ショスタコーヴィチはコロナ直前に10番、その少し前に5番をアマオケで弾いた。5番は何度か弾いているので、今回は、きっちりお手本を確認するつもりで聴き始めた。しかし、始まると、何とも懐かしく、5番は平和だったころの遠い思い出と化していた。
 高関先生は楽譜をよく研究され、正しく忠実に演奏されることで定評がある。勿論暗譜だ。我々アマチュアが不得意なテンポの変化が素晴らしくコントロールされていて、弦は指定人数より大分少なかったが、すっきりとした、起伏のある演奏だった。気のせいか、コロナ禍で、もはや大音量の興奮を求める聴衆は少ないのではないだろうか。チェックしたわけではないが、多分大曲であってもオケの人数を絞って演奏しているのではないだろうか。
 今回は普段よりハープがとてもよく響いて、音楽が大きく膨らむ場面より、静かで美しい旋律や和音、楽譜通りなかなかppになりにくいところが、本当に綺麗で、皆耳を傾けたのではないだろうか。最後のテンポはゆったり目で、好みの終わり方だった。冷静な熱演ぶりは現代のお手本のようだ。高関先生は週末、京都でもショスタ5を振られる予定。
指揮/高関 健 ピアノ/横山幸雄
会場 東京芸術劇場 コンサートホール
プログラム
ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47「革命」
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読響・ヴァイグレー第605回定期演奏会 [コンサート]

 せっかくのGo toイヴェントキャンペーンの割引対象だったのに、再度の緊急事態宣言発令のせいで、売れ行きが伸びなかったのか、サントリーホールの定期は収容率50%確保を目指し、間際までチケット販売していた。
 空間が広いサントリーホールの響きは格別だった。コロナ以前は、人が、久しぶりに聴く生はいいねなどと言うと、そんなものかなあと思ったものだが、今自分もはっとする。生の響きは掛け替えの無いものだと。
 ハルトマンのソリスト成田さんの熱演は、ただならぬ雰囲気で、舞台で飛び上がり突き抜けるような熱演をする若い演奏家が今いるのかと、くぎづけになった。不思議なヴィブラートによる妖気漂う音色はストラディヴァリと奏者の一体感あればこその音。
 弾き終えて、成田さんはかなり長く、1分位に感じられたが、弓を垂直に上げたままだった。私の席からは、弾き終えてから指揮棒も垂直にさらに高く僅かに上がったように見えた。注意喚起だったのだろうか。コンマスは一度下ろした弓を上げ、他の弦楽器奏者は弓を下げず指揮者に合わせていた。会場も沈黙のままソリストを注視していた。僅かに指揮棒が動くと、待ち切れず、拍手を始めた人がいたが、多くの聴衆は弓と指揮棒が下がるまで、余韻を共有していた。後で幾つかYouTubeで聴いたみたが、この演奏は成田さんの個性と、指揮者ヴァイグレの軽やかさがが生み出した傑作だと感じる。成田さんは代役だったわけだが、ツィートマイヤー氏だったらどのような演奏になったのだろう。
 R・シュトラウスのマクベスは、最初の交響詩。後の作品ほど音の起伏がないような印象だが、もしかすると、刺激より安らぎを与えてくれるマエストロの音楽なのかもしれない。
 画家マチスは若い頃、一度だけ弾いたことがあったが、ヒンテミットの作品という以上の興味をもたないままこの年齢になってしまった。耳に残っていたメロディーとともに、弾いた実感は蘇ったが結局それ以降ヒンデミット作品は弾いたことがなく、今は祭壇画が見てみたい。
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
R.シュトラウス:交響詩「マクベス」作品23
ハルトマン:葬送協奏曲 Von 成田達輝
ヒンデミット:交響曲「画家マティス」
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静岡交響楽団 東京特別公演 [コンサート]

 コンサート会場入り口で配られるチラシの束、今日では正しくフライヤー言われているが、あれは古風な情報収集術法でありながら、意外とチケット購入意欲には直結するものだ。プロオケのコンサートが軌道に乗り、複数の在京オケの定期会員だった人が再びコンサート通いを始めている。
 静岡交響楽団はそういう友人が教えてくれた。友人はシティフィルの会員で、最近高関健に注目しており、当家が高関先生と思っている私たちと話が合う。
 静岡交響楽団第100回記念演奏会の3回目の公演をオペラシティで開くと知り、初めて静響を聴いた。設立から32年、団員数は多くないが、東京からも近く、エキストラに支えられ、皆真面目に指揮者に食いついてくるところに、大人の情熱を感じた。
 今回長時間プロなので、開演前恒例の高関先生のお話は無かった。
 神尾さんのベートヴェンは、ゆったりしたテンポで十分歌い、ねちっこい弓も速い弓も、全身で全弓を使うようなイメージで、しなやかな体というより筋肉質の強靭な体を連想する逞しい演奏だった。またアンコールにVnソロ版の魔王の演奏してくれて、すごいテクニックをさらりと見せ、汗もかかず全身で熱演し、しかも音は潤わしい。音色の変化が巧みで、旋律はしっかり人の声に聞こえて来る。弦の雑音がなく、さすが、これは凄いと思った。
 幻想の一楽章で、チェロの一人がアマチュアがやるような飛びだしミスをやらかしドキッとしたが、2楽章ハープ2台を舞台最前列指揮者の両脇にセッティングし、たっぷりと美しい音を響かせ、2楽章と3楽章の間チューニングしている間に、男性5人でさっとハープを片付ける手際の良さには驚いた。
 指揮者は暗譜で、きっと研究してこられた通り、適格に指示を出しつづけ、テンポの変化にも、オケが迷いなく飛び込んいける感じがした。かなり速いテンポもになっても、破綻のない、きっちりとしかも白熱した演奏を聴かせてもらった。
 先生に引率され、かなりの人数の多分中学生が来ており、コンチェルトには飽きていたようだが、幻想の打楽器や舞台裏のオーボエの音に身を乗り出して喜んでいた。
 拍手が鳴りやまず、指揮者が閉じたままのスコアを持ち上げ、ベルリオーズ先生が素晴らしいのですよというパフォーマンスをされた。指揮者が、スコアを指して作曲家を称えるしぐさは、最近結構見る。速いテンポできっちりコントロールされ、勢いに流されない幻想を聴かせてもらい、すっきりした気分になった。
●出演
 指揮:高関 健
 ヴァイオリン:神尾真由子
 管弦楽:静岡交響楽団
●プログラム
 ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
 ベルリオーズ/幻想交響曲 op.14
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読響《第九》 [コンサート]

 そういえば、国内で自ら第九のチケットを購入したのは、今世紀に入って無かったと思う。直近が2013年ラトル・ベルリンフィルのWaldbühneだ。普通年末にN響をテレビで見たり、聴かなくても平気だった。ところが今年の年末の第九は演奏されないだろうなあと夏には思っていたため、指揮者Weigle が入国後2週間隔離を覚悟で来日すると聞き、11/21発売日に即購入した。
 https://gruen.blog.ss-blog.jp/2013-06-23
 東京芸術劇場のC席も初めて購入した。1階でどう聞こえたかは分からないが、1Vn10、Vc5、新国立劇場合唱50人という規模の演奏は、各セクションの音が分離してスコアのようによく聞こえ、マルカート的奏法が効果的で、しかも音楽がなめらかにつながり、音が流麗。日本のオケで聴いたことのない音色で、ヨーロッパのように、春を寿ぐような明るい弦の音色にとても満足した。ベーレンライターの新版はちょうど昨年自分も演奏したので、同じテンポ感であまりの上手さに驚愕し、昨年のうっ憤を晴らした気分だ。
 ソリストも一年間歌い過ぎて喉を枯らすこともなく、とても麗しい声だ。新国立劇場の合唱はソーシャルディスタンスに慣れており、余裕を感じさせる上手さで、他に活動しているプロ合唱団があるのかどうか知らないが、他プロオケとも共演している。新国立劇場合唱団がいなければ第九の演奏は難しいのでは無いだろうか。
 Weigle は、バイロイトと東京でのマイスタージンガーと読響就任時のブル9は生で聴いているが、ハンスロットを弾く時、市販されている全てのCDからお手本として選んだ演奏が、Weigleだった。氏が元ホルン奏者であったことにも親しみを感じ、音楽のフレーズをとても大事にしていることが感じ取れて心地良い。穏やかな方なのだろうと思う。
 ベートーヴェン生誕250年の年に、母国ドイツで第九演奏ができたのかどうか、調べたわけではないが、私の中の勝手な物語として、日本でたっぷり時間をとって本番をできるなら、2週間隔離など何のそのという、ドイツ人指揮者の意地とベートヴェンにたいする畏敬の念のようなものがあったのではないかと想像している。
 日本では壮大な第九がお祭りとして広がってきたが、今年各プロオケが様々な工夫をこらし、一旦縮小した規模での第九に取り組み、私たちが耳を傾け、生でじっくり味わえることが出来て、コロナ禍の日本で誇らしい気持ちがする。

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
ソプラノ=森谷真理
メゾ・ソプラノ=ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
テノール=AJ・グルッカート
バリトン=大沼徹
合唱=新国立劇場合唱団
(合唱指揮=冨平恭平)
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」
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「わ」の会コンサート vol.6 [コンサート]

 ついに12月に入り、もしかすると、今年初めて生でWagnerを聴いたかもしれない。日本ワーグナー協会設立40周年の記念事業でもあり、コロナ禍の様々な制約の中、これまでで一番豪華な舞台となり、オケピットにグランドピアノ2台、演出家も付き、本格的なWagnerを聴かせてもらった。
 前半はラインの黄金第一場カットなし、音楽は止まらず、その後のストーリーをライトモチーフのアレンジで語り、ヴァルキューレ3幕3場に突入、ヴォータンとブリュンヒルデの別れの場面から幕が下りるまで一息に進んだ。ラインの乙女3人はオーディションで選ばれた方々だった。
 後半はタンホイザーの3幕後半。巡礼の合唱は無く、エリがーザベートが巡礼者の中にタンホイザーを見出せず落胆衰弱していく様子を、ヴォルフラムが愛おしく思い歌う、夕星の歌の少し前から始まった。大沼さんのヴォルフラムの立ち姿から一気に惹きこまれた。ラインの黄金の冒頭に比べ、タンホイザーの3幕を真剣に観る頻度は少ないと思う。エリーザベートの小林さん、タンホイザーの片寄さん、ヴェーヌスの池田さん、皆さん役にはまった素晴らしい歌唱で、周囲でも感動したという声を聞いた。最後の巡礼の合唱まで歌っていただけて、Wagner を聴いたという満足感がさらにこみ上げてきて、わの会の皆様の熱意に感謝し、敬意を表します。
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東京ハルモニア室内オーケストラ第61回定期演奏会 [コンサート]

 このところ、コロナ後の再開でやる気いっぱいのプロ演奏会を聴いてきたが、今回は年齢層が高いせいか、気づけば女性が殆どで、何となくコロナ禍で落ち込んでしまったような印象だった。
 このオケは指揮者無しだが、いつもコンチェルトを入れるらしく、珍しい曲を聴けて、好いことだ。
 今回も、12人のアンサンブルだが、どういうわけか、1Vnの人間関係を心配したくなるような音程だった。4人しかいないのに、アイネクから音程を譲らない方がいるようだ。また、ニールセンは、何のために演奏されたのかわからない。初めて聴いたのだが、ニールセンのパッションも音の波もなく、Vnの弓の都合に合わせたような鈍いフレーズの繰り返しに、あれ~こんな曲なのかと思った。帰宅後、ネットでいくつかの演奏を聴いてみたが、私の印象が間違っていたわけではないと思った。コンチェルトのソリストは上手で、前奏で指揮してくれたのが良かった。
 ホルベルクでまたコンマスが交代し、ようやく、オケの本領が発揮され、皆のびのび、十八番とばかり、楽しそうに演奏して下さった。コンマスのリードする音楽も素晴らしい。つくづくコンマスの役割は大きいと感じた演奏会だった。プログラムに誰がコンマスかの記載は無く、ひょっとすると、ここはコンマスを持ち回りするオケなのだろうか。
プログラム
W.A.モーツァルト セレナード第13番 ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
 W.A.Mozart Serenade No. 13 in G Major, K 525「Eine kleine Nachtmusik」
A.ジョリヴェ フルートと弦楽のための協奏曲 ※
 A.Jolivet Concesto pour Flute et Orchestre a Cordes
  ※フルート:高木綾子 Ayako Takagi
C.ニールセン 小組曲 作品1
 C.Nielsen作曲 Little Suite for Strings Op.1
E.グリーグ ホルベルグ組曲 作品40
 E.Grieg Aus Holbergs Zeit Op.40
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フレッシュ名曲コンサート 東京都交響楽団コンサート ~岡本侑也 [コンサート]

 岡本さんのロココを聴くのは2年ぶり、5回目。前回は山形で2日連続のコンサートの2日目を聴いた。岡本さんの演奏はいつものびのびと楽しそうだが、この日の演奏は、今までになく、艶っぽく感じた。現在の楽器になって、コンチェルトを聴くのは初めてなので、楽器の特徴かもしれないし、満足のいく楽器に出会い、不都合なく自由に表現できるのかなとも感じたが、とにかく、テーマ冒頭の1小節を聴いて、その甘い語り口に魅了されてしまった。
 勿論いつもテクニックは完璧で、優雅なのだが、26歳の若者は、プラス堂々とアピールする演奏家に変貌していた。清楚で神がかったテクニックと無邪気さで楽しませてくれた人が、がっしりとした強靭さを具えた演奏家になったのだなあと思う。大器の今後の変貌ぶりに目が離せない。
 演奏家としての経験を重ねるほど、楽器も体調も、いつもベストコンディションという訳には行かないこともあるだろう。でも聴衆は、その日の演奏を楽しみに足を運び、その日の音楽を味わい、判断もする。演奏家は大変な職業だとつくづく思う。
 オーボエの副田さんを聴くのは初めてで、舞台の出入りに緊張する姿が、初々しく感じられた。上手だが、私の好みとしては、もっと空間を音が浮遊するような、音に立体感があったらあいいなと感じた。どんどん活躍してほしいと思う。
 以前、ある有名チェリストに聞いた話だが、本番で意図する通りの演奏できる人は少ないと。プロはそれで批判を浴びながらも本番を重ねていかねばならない。演奏家の陰の苦労に敬意を表することを忘れないようにしたい。
 巨匠と呼ばれるようになるまでの年月、節目の演奏録音を残してほしいものだ。

 次の本番は、10/2(金) 広島交響楽団(指揮:下野竜也) 細川俊夫:昇華 チェロとオーケストラのための(日本初演)
「昇華」(Sublimation)は、2017年エリザベート国際コンクール(岡本さんが2位になった)Finalの課題曲です。一週間前、隔離状態で、未発表の楽譜を渡されて、各々本選に臨みました。

【出演】
梅田俊明(指揮)
副田真之介(オーボエ)
岡本侑也(チェロ)
東京都交響楽団(管弦楽)
【曲目】
モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』序曲 K.492
モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104から曲目変更
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(チェロ独奏と弦楽合奏版)
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 op.33 (コロナ禍編成上の理由)
 正味の演奏時間は、前後半とも30分ずつ程度だが、休憩時間も30分と長く、返って密を助長しているように感じた。いつまでこの状態が続くのだろうか?
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モルゴーア・クァルテット ー音への飽くなき探求ー 北とぴあ [コンサート]

 一月の東京文化会館以来のモルゴーア。ホールの感染対策はどこも厳しいが、区主催という点からも、座席400の会場での注意は厳しかった。自分としては、そろそろ、マスクしていれば対面で話しても気にならなくなっていたが、まず、ホール入場の検温を待つ列に並びながら、友人と話していたら、制止された。席は勿論一席おき、休憩時間にトイレ以外なるべく立ち上がるなというのはちょっと厳しすぎる。快適な座席ではないのに、所謂エコノミー症候群が気になる世代のお客さんが多かった。退出時も2列ずつだった。
 モルゴーアのエネルギーは、人並み外れ、絶賛されている。今回のプログラムは一曲目からseriosoで、改めて、ベートーヴェンの偉大さを感じる。初め耳がついていけない感じはしたが、十八番のショスタコーヴィチ8番は水を得た魚のよう。私も、この冬シンフォニー10番を弾いたことで、ショスタコの魅力に体が反応するようになっていた。
 ロックは自分には未開拓の分野だったが、いつの間にか荒井さんに惹きつけられ、巻き込まれた感じがする。いつも荒井さんのお話は楽しい。メタルマスターは途中で叫ぶため、4人それぞれのマスクをつけて演奏された。ロックはとても体力を使い、楽器にも良くないので、曲の長さの割にエネルギーを要するメタルマスターは、年齢的にそろそろ終わりにしようかと思っているとコメントされた。荒井さんと小野さんは65歳くらいだろう。エネルギーを出しきった演奏に元気をいただき、コロナ期の自分の衰えを反省した。
 身近な先生方の熱演に、改めて尊敬の念が湧いてくる。
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番ヘ短調作品95「セリオーソ」
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調作品110
キング・クリムゾン:レッド
ピンク・フロイド:原子心母 
メタリカ:メタルマスター
モルゴーア・クァルテット
◆荒井 英治(第1ヴァイオリン 元東京フィルハーモニー交響楽団
       ソロ・コンサートマスター)
◆戸澤 哲夫(第2ヴァイオリン 東京シティ・フィルハーモニック
       管弦楽団コンサートマスター)
◆小野 富士(ヴィオラ 元NHK交響楽団 次席ヴィオラ奏者)
◆藤森 亮一(チェロ NHK交響楽団 首席チェロ奏者)
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新日本フィルハーモニー交響楽団#623 ジェイド [コンサート]

 今年初めて、ついにサントリーホールまでやって来た。
 座席は舞台横だったが、浄夜が始まり、ホールの響きにハッとした。客席も半分以下の入りで、まるで、ゲネプロで音が良く響く時の心地良さだった。改めて、サントリーホールの響きの良さを体感した。
 新日本フィルも、指揮者の秋山氏も、聴くのは久しぶりだったが、秋山氏の音楽は温かみがあり、穏やかな心安らぐものだった。浄夜は美しいが、音が空間を飛び回るような生き生きした動きは感じられなかった。真面目で正確な静かな美しさだった。ヴァンハルCbコンチェルトは、一応YouTubeで予習して行ったが、楽器の正面で聴けなかったため、楽器が良く響いているのは分かったが、細かい音が分離して聞き取れず、楽器を響かせるソフトランディング奏法が、古典の粒立つ音とうまくマッチしていたかどうかは分からなかった。珍しい機会であり、音楽自体はハイドンのように美しいが、同じオケのトップ奏者をソロにするなら、個人的には無難にハイドンのチェロコンチェルトの方が集客できたと思う。
 後半のロンドンは素晴らしかった。連れ合いと意見が一致するのは珍しい。二人それぞれ、アマチュアながらロンドンは何度も演奏しているが、指揮者の温かいお人柄が、更なる古典の演奏効果を引き出していると深く感じ入った。大体プロオケで、ロンドンをメインに丁寧に演奏してくれることなど、コロナ前にあったかどうか…。
 今の生活の中で、演奏時間を短縮せずに、21時まで演奏してくれて、有り難かった。
 弦楽器奏者は全員マスクをしていた。
 元々高関先生のブル8と聴き比べのつもりで買ったチケットだが、その後プログラムは二度変更され、上岡氏のブル8から、モーツァルト39、40、41番に変更、座席替え後送られて来たチケットに、今日のプログラムに変更するとの知らせが入っており、演奏会前日までキャンセル可となっていた。
 上岡氏が今秋音楽監督任期切れのため、来日にこだわった結果の迷走だが、この時期に余分な経費が掛かってオケには却って気の毒だった。2週間の自宅待機を受け入れれば、帰国は可能だったのではないか?
指揮:秋山和慶、コントラバス:菅沼希望(NJP首席コントラバス奏者)
【プログラム】
シェーンベルク:浄められた夜 op. 4
ヴァンハル:コントラバス協奏曲 ニ長調
ハイドン:交響曲第 104 番 ニ長調 Hob. Ⅰ:104
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芸劇ブランチコンサート「美しきラヴェルを聴く」藤江 扶紀(Vn)岡本 侑也(Vc) 清水 和音(P) [コンサート]

 清水和音さんが企画し共演する、芸劇ブランチコンサートシリーズ、今回は、8年前日本音楽コンクールで一位になった、Vn藤江扶紀さん、Vc岡本侑也さんお二人が出演し、ラヴェルが演奏された。
 コロナ禍の緊張を強いられるコンサートで、清水和音さんのおおらかなお人柄を感じるMCには、ほっとする。そういえば2012年、清水さんとN響メンバーとの受賞者コンサートを大阪まで聴きに行った。当時のことを回想し、清水さんは天才高校生の岡本さんをその時は何と表現したらいいか分からなかったが、今なら分かる、チェロ界の藤井聡太さんだと。藤江さんは、岡本さんは年下ですが、当時から巨匠のような雰囲気があったと、清水和音の名曲ラウンジ初出演の岡本さんを、褒め称えた。
 亡き王女のためのパヴァーヌ (ピアノ)は、自分の耳がおかしいのかとも思ったが、想像していたラヴェルの音色は聴こえて来なかった。声部によって異なる多様な音が聞こえるはずと耳を澄ませていたのだが、落ち着いた音色だった。
 席が二階だったので、出演者の表情は分からなかったが、音はとても良く聞こえた。皆さん、もう本番を再開されているのか、とても自然に楽しんで演奏されているように感じられた。
 弦楽器二人は、凄まずピュアな音色なので、堂々と鳴り響くピアノとは、少しキャラクターが違っていたのだと思う。室内楽は楽器のバランスが難しく、過去にVnやピアノの迫力で、Vcの音が聞こえ辛かった演奏があったが、今回のメンバーとホールのサイズなど、空気がマッチしだろう。チェロが良く鳴っていたし、細部まで聞こえていた。スケールの大きい音楽が、遠くまで飛んできて、座席を一席おきにした広々としたホールは、野外のような開放感で心地良かった。
 夜の音楽ラヴェルを昼に…と清水さんは最初に仰ったが、爽やかな渾身のラヴェルは好いプログラムだった。
(プログラム) ラヴェル:
亡き王女のためのパヴァーヌ (ピアノ)
ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
ピアノ三重奏曲
出演者:藤江 扶紀(Vn)岡本 侑也(Vc) 清水 和音(P)
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上森祥平×J.S.バッハ×B.ブリテン:無伴奏チェロ組曲全曲演奏会2020 [コンサート]

 上森さんが以前から、バッハ無伴奏全曲演奏会をやっているのは知っていたのだが、聴くのは初めてだった。今年の夏は予定もなく、半日かけてゆっくり聴くのも良いかという感覚で出かけていった。客席は1/3くらいに制限したのか、もうすっかり、ばらけて座るホールの風景にも慣れた。演奏前のご挨拶で、思い思いの時間を過ごして下さいと控えめな言葉のとおり、とてもゆったりした気分で、全曲聴くことができた。
 コロナ対策としては、ロビーに感染者が出た場合連絡が来る、登録用QRコードが掲示されており、演奏面では一曲ごとに3分、ホールのドアを開けて換気し、1部終わるごとに約45分の休憩となる。ブラボーや出演者への声かけ、会場内での私語までも禁止されていたような気がする。全てを記憶してはいないが、現時点では、致し方無い注意だった。
 ヨーヨーマのように、全曲一気に聴くのが心地よい人にとっては、このゆったり感を味わうのは難しいが、いくら急いでも先の見えない、この時期に合う空気感だ。
 上森さんのバッハは、曲ごとに、何か思いがあって変化をつけているように感じた。また組曲内で、次のテンポをイメージしている姿は独特で、第三者にはその姿から、次のテンポは想像できない。組曲を一気に弾くのが望ましいのかと思っていたのだが、人それぞれだった。また上森さんの、楽器の音色が素晴らしい。あらゆる声が聞こえ、胸を打つ。一方、演奏中、力を込めている様子もなく、触れれば響く、素晴らしい楽器だ。そして、あたかも手首に弓がつながっているような、見とれるほどの美しいボーイングだった。
 ブリテンでは、険しい音色となり、左手の素早いテクニックも言うまでもなく見事で、自然体で楽器をあやつる姿は、聴衆に緊張感を強いることなく、むしろリラックスして音に集中できる。
 演奏は全曲暗譜。ほとんど躓きもなく、最後まで力強く、バッハとブリテンを弾き通す冷静な姿に、己の信じる道を進む、大人の演奏家の安定した精神のようなものを感じた。毎年恒例とはいえ、この全曲演奏会の位置づけが、ほんの日常の一部のような、ゆとりを感じさせるものだったことに驚かされた。来年も8/15開催予定とのこと。

会場:東京文化会館 小ホール
プログラム:
13:30〜
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
B.ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 作品72
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010

15:30〜
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV1008
B. ブリテン:無伴奏チェロ組曲第2番 作品80
J.S. バッハ:無伴奏チェロ 組曲第3番 ハ長調 BWV1009

17:30〜
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV 1011
B. ブリテン:無伴奏チェロ組曲第3番 作品87
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012
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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団【3/14振替公演】第332回定期演奏会- ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ハース版) [コンサート]

 コロナが始まって以降、初めてのオペラシティの演奏会、4月以来の新宿、記念すべき日だ。 
 高関先生のプレトークでは客席ががらんとしている感じだったが、開演しても、座席は半分も埋まっていなかった。トスカが延期になった時点では、まだ夏のドイツ旅行は諦めていなかったので、チケットはブルックナー8番に曲目変更されてから、手配した。その時点では座席を詰めて、チケットを販売していたが、当日行ってみると空席の調整がなされていた。席は空いているのに当日券販売は無く、友達の一人は、聴けずに残念がっていた。
 プロオケが再開されても、曲の編成が小さいプログラムに変更されてしまうことが多い中、本当にブル8を聴くことができたのは、感無量だ。7月、初めてのコンサートの時は、張り詰めた緊張の中、小編成オケでの演奏だったが、一ヶ月で世の中の緊張度合はずいぶんほぐれてきたと思う。舞台上では奏者間の距離が保たれ、弦楽器は舞台ギリギリまで前へ出ており、管楽器のひな壇も無く、何だか練習場でオケを聴いているような硬めの音だった。一階席だったこともあり、ホールの響きを堪能するというより眼前で繰り広げられる、ブル8に唯々、聞き耳を立てた。
 コロナ禍で高関先生のブルックナーの楽譜のご研究が進み、現時点で先生の解釈に基づく演奏を披露して下さった。眼鏡も外され、暗譜でなめらかに指揮され、途切れたり、ぎくしゃくしたり、でこぼこも一切ない、一続きの美しい山並みを望むような、優しい音が重なり合うブルックー8番は素晴らしいと思う。
 音楽が進み頂上に近づき、4楽章はやはり重厚感が凄い。忘れかけていたが、どきどきする音楽は人生に欠かせないものだ。
 
指揮:高関 健(常任指揮者)
曲目:ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ハース版)
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読売日本交響楽団 特別演奏会/日曜マチネシリーズ~この自然界に生きる~ [コンサート]

 プロの演奏活動が徐々に再開されてきた。親しくさせて頂いているバイオリンの先生のコンサートが中央線沿線・立川であり、誘われたのだが、さすがに遠くて諦め、家から最も行きやすい、池袋の読響再開初日の当日券に並ぶことにした。座席表を見ると東京芸術劇場の座席の1階最前列は使用せず、他は一人おきに、3階席まで同じ値段で販売していた。このチケット代はご祝儀のようなもので、再開おめでとうございますと、入口で職員の方につい言ってしまった。
 ホールの空気は久しぶりだ。席は二階のサイドの方で、結構好きな席だった。開演前コントラバスとハープの方が舞台上で音を出していたが、一階席に降りると、ハープがものすごく美しく響いており、一階とこんなに響きに差があったかと意外だった。
 奏者が黒いマスクをつけて出てきたときは、そのまま演奏するのかと気の毒に思い、自分もマスクをして聴かねばならない現状とダブルで悲しくなった。しかし着席するとマスクは外して譜面台に掛けて演奏し、退場時には素早くマスクを付けていた。
 指揮者が登場するまでのホールの沈黙は長かった。皆が緊張していたのか、誰も咳一つせず、微動だにしない。 
 Vnは対抗配置、弦楽器の譜面台は一人一本、小編成で鈴木優人さんのファンが結構集まったのではないだろうか。他の在京オケが、喜び溢れるエネルギー全開の再開演奏会が主流の中、落ち着いたプログラムで鈴木ファミリーらしい、良くコントロールされ、高貴な感じの演奏だった。
 マラ5の4楽章はが始まると、すぐさま自分の耳が退化しのではないかと思った。よく聞き取れないのだ。普通のマーラーサイズのオケで聴く4楽章に慣れているせいだろうが、大ホールで小編成の絞った音を聞くには今後席を選ばねばならないと痛感した。Vlaの音が良く聞こえ、音楽とともに気持ちが高まり、美しい余韻が残った。
 ジュピターは、弦楽器は更に人数を絞り、ピリオド奏法を取り入れているのか、今まで自分が色々聴いた演奏とはかなり違っていた、テンポが速く、軽く、アクセントや抑揚、音の減衰の仕方が新鮮で、違う曲のように感じる箇所もあった。実は自分のアマオケで、3月にジュピターを演奏する予定だったのだが、コロナ禍で本番が中止になっており、改めて難しい曲だと思う。
 本来なら来週は華々しく読響のヴァーグナー公演を2回聴く予定だったのに、あまりに静かなコンサートの滑り出しだった。読響は3回の特別演奏会を通じ、無から音が再生され広がるプロセスを聴かせ、エネルギーも喜びも、だんだんと大きく膨らませていく演出なのかもしれないとふと思った。
指揮:鈴木優人(指揮者/クリエイティヴ・パートナー)
マーラー/交響曲第5番から第4楽章“アダージェット”
メンデルスゾーン/管楽器のための序曲
モーツァルト/交響曲第41番「ジュピター」
アンコール ラモー:歌劇「優雅なインドの国々」組曲(鈴木優人編)から「未開人の和睦のパイプの踊り」(会場では掲示されていなかった、Webページで確認)
休憩なし、約1時間10分 東京芸術劇場
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モルゴーア・クァルテット第49回定期演奏会 [コンサート]

 ショスタコーヴィッチではない、ロシアプログラム。全席自由のため、今回は開場一時間前に到着。かぶりつきで聴くことができた。
 モルゴーアとしては珍しく、調性のある楽曲ばかりで、めったに聴くことのない、美しい音色だった。Vnの二人の先生は本当に素晴らしい。溶け合った音色、際立つテクニック、しかも心から楽しんで、没入している姿は、客席を巻き込み、心の若さを持つことを教えてもらった気がする。
 初めて聴く曲ばかりで、若いころの作品であるラフマニノフの二楽章は、何とも不思議な感じがする。タネーエフの名は初めて聞くが、チャイコフスキーのピアノコンチェルト一番を初演した人で、多くの著名ピアニストの師である。ボロディンは化学者であり、30歳ごろから作曲を習ったとのこと。優雅でソフトな音楽は育ちの良さにも関係あるのかと想像してしまう。
 荒井先生が作品も楽譜も探して来られるらしいが、なるほど、プログラムの記載のとおり、これぞモルゴーアという、楽しい演奏会だった。
 最後の荒井先生のお話の中で、モルゴーアが小野先生指揮で、2/2福島でベートーヴェンのトリプルコンチェルトを演奏されるという宣伝があった。

出演
モルゴーア・クァルテット
第1ヴァイオリン:荒井英治、第2ヴァイオリン:戸澤哲夫、
ヴィオラ:小野富士、チェロ:藤森亮一
曲目
ラフマニノフ:弦楽四重奏曲第2番 ニ短調
タネーエフ:弦楽四重奏曲第3番 ニ短調 op.7
ボロディン:弦楽四重奏曲第1番 イ長調
東京文化会館小ホール
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―芸劇ブランチコンサートー名曲リサイタル・サロン 第5回「岡本侑也」 [コンサート]

 東京芸術劇場で平日の11時から約1時間、岡本さんのソロコンサートを聴いた。座席は1、2階席中央を使っているようだ。残響が素晴らしく、バッハは特に教会のに居るように美しく響いていた。バッハの後、インタヴューがあり、演奏者に日常の様子を尋ね、お客さんが親近感を抱くように導かれる。
 コダーイの演奏が、また凄かった。昔は難曲をガリガリ弾くイメージの曲だったが、岡本さんは何を弾いても美しい。まるで、作曲家の意図するところを一つ一つ私たちに示してくれているようだ。
 ここ約1年間、岡本さんのソロや、ピアノとのデュオは聴く機会がなかったが、この間に、変わったなと思うのは、精神的解放感と大胆さが感じられることだ。繊細さ、完璧さに加え、シュテッケル先生の良い影響を受けている感じがする。
 作品中の音の数だけ、きっと音色を創ることができ、音の勢いの中にも色彩感が備わっていて、このように、溢れでるものを音にし、それを音楽として自由自在に語れる演奏家は、そんなには居ないのではないかと、先週のリリアでの演奏を聴いて以来、驚嘆している。ミュンヘンでは中国人と韓国人とトリオを組んでおり、どんな響きなのか聴いてみたい。
 昼間の1時間のコンサートに行くことは、殆ど無かったが、テーマを絞って作品への理解を深める良い機会だと思う。勿論演奏者によるとは思うが、弾きたい曲を思いっきり演奏できる機会であるなら、ランチコンサートは良い流れかもしれないと気が付いた。

曲目J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番ト長調 BWV.1007
カザルス/鳥の歌
コダーイ/無伴奏チェロ・ソナタ op.8 出演チェロ:岡本侑也
ナビゲーター:八塩圭子
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リリアの室内楽ー辻彩奈Vn 岡本侑也Vc 大須賀恵里Pf [コンサート]

 川口リリアは来年で開館30年とのこと。メインホールにも音楽ホールにも一度は来たことがあると思うが、記憶が定かではない。音楽ホールの舞台正面にパイプオルガン、船のようにも見え、天井と壁面が木の茶色に統一された少し暗めのデザインが、落ち着いた空気を醸し出している。
 大須賀さんがプロデュースする室内楽シリーズの演奏会とのこと。以前岡本さんとのブラームスピアノ四重奏を聴いたことがあるが、この日は若い二人のゲストの伴奏役、パーソナリティとして話し方も穏やかで、弾きたい曲を演奏してもらおうという、若さへの優しさと、理解の深さを感じる。
 一曲目、「魔王」の一人弾きとでもいおうか、原曲に劣らぬ迫力で、悪魔の甘いささやきも、子供の絶叫も、ここまで声色のような表現ができるのかと驚いた。
 岡本さんのプーランクは、技術が突出しているからこそ表現できる、多彩なチェロの音色が美しい。チェロという楽器のもつ音の不思議を眼前に示してくれる。チェロの未来を拓くとは、こういう音を言うのだろうか。
 アンコールはベートーヴェンの生誕250年に聴く最初の曲、ピアノトリオ4番「街の歌」2楽章。岡本さんのタブレット楽譜についてのインタヴューもあり、いろんな色で書き込みも出来て、使いやすいようだ。
 たくさん紙の楽譜を持ち歩くのは重たいので、タブレットの楽譜は益々改良されていくだろう。個人的には、拡大しながら奏者の視線を追って改ページしてくれるような機能が付いたらいいなと思う。
 次の岡本さんの演奏会は、1月15日(水)午前11時 東京芸術劇場コンサートホール

ー辻彩奈Vn、 岡本侑也Vc、 大須賀恵里Pfー
曲目:エルンスト/シューベルトの「魔王」の主題による大奇想曲(Vn)
   ヘンデル=ハルヴォルセン/パッサカリア(Vn、Vc)
   プーランク/チェロ・ソナタ (Vn, Pf)
   フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調 (Vn, Pf)
   ポッパー/ハンガリー狂詩曲 他(Vc, Pf)
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6人の若獅子が集う 奇跡のチェロ・アンサンブル Vol.3 [コンサート]

 2016、18年に続き、3回目の開催。細かく覚えているわけではないが、演奏会の印象の変化ははっきり感じる。最年少の方が24歳ということは、皆さん人間的にも立派な大人の音楽家になられた。
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2016-12-28
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2018-12-27
 見た目にも辻本さんと他の方々の年齢差を感じなくなってきた。前回は個性を若干抑えてアンサンブルを優先する感じだったが、今年は全員の個性を相互に全て受け入れた上で、アンサンブルを楽しまれている印象だ。一人ひとりの音楽空間が以前よりひろがり、例えるなら、各奏者を包む球体空間がずっと大きくなった感じだ。皆さん最高峰のソリストたちで、音色と歌で、たっぷり楽しませて下さる。今年は前日に名古屋公演があり、二回目の本番であるせか、寸分の乱れも躊躇もない、最高の演奏会だった。
 アレンジャー小林さんが一人ひとりの個性に合うアレンジをされているということで、さらに演奏効果が高まるのだろう。前半のソロ+アンサンブルではソリストより、一番チェロがソリストに合わせることの方が難しいことを知ったと、辻元さんが仰ったが、なるほど、皆さんの間の信頼関係が益々深まったいるのだろうと想像する。
 今年は、前半のソロ+アンサンブルで、一人ひとりはっきりとした印象が残った。辻元さんのストラディバリの美しい音色、最年少上野さんの花のあるチェロ、端正なチェロ、スピード感の素晴らしいチェロなど、得意分野で美しい音色を聴かせてくれた。
 ポッパーのハンガリー狂詩曲は皆が得意なので、毎年パートを変え演奏し面白い。最後アンコールのピアソラは一番が超難しいそうで、今年は上野さん。特に苦しむ様子は伺えなかったが、毎年一番を持ち回りするとのこと。皆平等で、軽々と超絶技巧をこなし、仲も良さそうで、確かに奇跡のチェロアンサンブルだ。ベルリンフィルの12人のチェロのように、壮年の獅子となっても続けていただきたい。
 小林さんには是非編曲だけでなく、チェロアンサンブルのオリジナル曲をたくさん書いて頂きたい。今回少し横の座席だったせいか、また、自分の年齢のせいもしれないが、最初の曲「ファンファーレ」は中音域に音が集中し、少し混沌とした印象で、若干聞きづらかった。チェロの幅広い音域を活用した美しいハーモニーを個人的には、もっと聴きたい。2020年は12月28日渋谷で開催とのこと。

チェロ:辻本玲、伊藤悠貴、小林幸太郎、伊藤裕、岡本侑也、上野通明
曲目
ブロッホ:「ユダヤ人の生活」より 祈り
ガーシュイン:3つのプレリュードより
ポッパー:アルバムの一葉
ドヴォルザーク:わが母の教え給いし歌 op.55-4
ラフマニノフ:夜のしじま op.4-3
メンデルスゾーン:無言歌 op.109
ピアソラの世界~リベルタンゴ ブエノスアイレスの四季~
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第25回 リクルートスカラシップコンサート [コンサート]

 年一回リクルート奨学生のコンサートを聴くようになって6~7年、若者の活躍ぶりを、いっぺんに堪能できる好機だ。今年は会場がトリトンの第一生命ホールで、紀尾井ホールとはまた雰囲気が違う。見慣れた方々は、皆さん大人になったと感じた。一方、新人はやはり初々しい。戸澤采紀さんのVnを初めて聴いたが、音色が本当に美しく、空間を漂うようで、驚嘆した。お父さんとはまた違う素晴らしいヴァイオリニストで、将来がとても気になる存在となった。
 チェロの岡本さんの音楽は以前から老成した感じだったが、ヨーロッパで研鑽を積み、名だたる先生方と共演する機会に恵まれ、益々深遠に、味わい深く、玄人受けうる路線を着実に歩んでいる印象だ。シューマンを演奏した4人は特に一人ひとりの個性が際立っていた気がする。皆さんそれぞれ得意分野で活躍し、聴衆を楽しませていただきたい。
・プロコフィエフ 2つのヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 作品56
戸澤采紀(第一ヴァイオリン)、前田妃奈(第二ヴァイオリン)
・メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 作品66
周防亮介(ヴァイオリン)、水野優也(チェロ)、小林海都(ピアノ)
・デザンクロ プレリュード、カデンツァとフィナーレ
上野耕平(サクソフォン)、阪田知樹(ピアノ)
・シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
辻彩奈(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、岡本侑也(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)
・モーツァルト ヴァイオリンソナタ第21番 ホ短調 K.304
北川千紗(ヴァイオリン)、反田恭平(ピアノ)
・ショスタコーヴィチ ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57
吉田南(第一ヴァイオリン)、外村理紗(第二ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、
上野通明(チェロ)、桑原志織(ピアノ)

岡本侑也(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)、上野通明(チェロ)、
桑原志織(ピアノ)、北川千紗(ヴァイオリン)、周防亮介(ヴァイオリン)、
吉田南(ヴァイオリン)、辻彩奈(ヴァイオリン)、外村理紗(ヴァイオリン)、
小林海都(ピアノ)、戸澤采紀(ヴァイオリン)、前田妃奈(ヴァイオリン)、
水野優也(チェロ)、反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サクソフォン)
特別出演:田原綾子(ヴィオラ)            計16名(敬称略)
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アントニオ・メネセスとチェロの名手たち(ヴィラ=ロボス プログラム) [コンサート]

 アントニオ・メネセスの演奏を聴くのは何十年ぶりだろうか。海外の国際コンクールで、演奏は聞けないが、審査員として列席されている姿をお見かけしただけだ。
 座席が舞台上のサイドだったので、8人中何とか5人までのチェロ奏者しか視界には入らなかったが、アンサンブルが素晴らしかった。皆さん師弟関係のこともあり、同パート二人ずつピッタリ合っていて、素晴らしいテクニックが快感だ。さらに、奏者を裏側の角度からも観察できて、充実したコンサートだった。強いて言えば、一番二番のメネセスと中木さんの音程の癖が異なり、少し残念な感じは残る。ソプラノの秦さんも美しい声だ。
 ヴィラ=ロボス没後60年とのこと。ブラジル風バッハは、昔ベルリンフィル12人のチェロ奏者がよく演奏してくれたが、もう歴史的な話となっているようで、ブラジル生まれのメネセス率いるヴィラ=ロボスを、今聴く生ことができ幸いに思う。
 メネセスは、やはり弾く姿が自然で美しい。チェロソナタ2番は前奏のピアノの響きがとても印象的だった。さすが田村響さんは好いなと思う。 
出演者
アントニオ・メネセス、山崎伸子、中木健二、向山佳絵子、遠藤真理、辻本 玲、伊東 裕、佐藤晴真(チェロ)
田村 響(ピアノ)
秦 茂子(ソプラノ)
曲目
J.S.バッハ:チェロ・ソナタ第3番ト短調 BWV1029
ヴィラ=ロボス:チェロ・ソナタ第2番
ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第1番
J.S.バッハ/ヴィラ=ロボス編:プレリュード BWV867(平均律クラヴィーア曲集第1巻第22番変ロ短調より)
J.S.バッハ/ヴィラ=ロボス編:フーガ BWV850(平均律クラヴィーア曲集第2巻第5番ニ長調より)
ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番
紀尾井ホール
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藝大フィルハーモニア管弦楽団ーマーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調 [コンサート]

 昨年のマーラー7番が素晴らしかったので、今年も5番を聴きたいと思った。昨年も同じことに感激したのだが、音の分離が良くて、各楽器の音が鮮明に聞き取れる。高関先生の音楽とオケとこのホールの組み合わせは格別だ。
 マラ5を聴くのは久しぶりだったが、実は20代中ごろ初めて弾いたマーラーのシンフォニーで、超難曲の初マーラー体験に感動し、それから10年以上、一番好きな曲だった。パート譜もよく記憶しており、この日もつい熱くなってしまった。後年オケで再挑戦のチャンスがあったが、思い残すことは多い。
 3楽章のホルンの1番がソリストとして、舞台前方へ出て、指揮者の方を向き、コンマスとの間に立って吹いた。上手だった。これはマーラーの指定とのこと。さすが高関先生、初めて見る光景だった。金管Hr・Tp・Tb、皆さん充実した音が良く通って見事だ。作曲途中に、グスタフとアルマが結婚したそうで、5楽章は幸せの絶頂のハイテンション、短調の箇所が全くないというのには気づかなかった。表情記号も、ドイツ語からイタリア語に変わり、すっかり明るい雰囲気になるとのこと。作品の成り立ちを知り、これからは、懐かしい曲になって行くと思う。
 藤倉大さんの腸内細菌の音楽は、聴いていて苦しいところがなく、軽い音が動きまわる様が美しい。腸内フローラという言葉が頭を過ぎった。
会場:東京藝術大学奏楽堂(大学構内)
指揮:高関 健

曲目
藤倉 大/Glorious Clouds
マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調
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東京ハルモニア室内オーケストラ 第59回定期演奏会 [コンサート]

 12人の弦楽合奏団、この日は、Vn7,Vla2,Vc2, Cb1の構成で、指揮者無しのプロの演奏で、私の師匠が出演するので聴きに行った。
 プログラムは地味だが、ファゴットの演奏が素晴らしかった。オケと共演するFg.コンチェルトは限られているが、室内楽だとこんな美しい曲があるのだ。ライヒャは古典的美しさ、フランセは、ラヴェルのような心地よい音楽に甘いファゴットの音色が溶け合い、どちらも美しかった。
 エルガーは、大昔に弾いたことがあったが、当時は良さが分からず、Vnのメロディは記憶にとどまっていなかった。綺麗な曲だと思う。改めて聴けてよかった。
 ショスタコーヴィッチは、6月にベルリンフィルで聴いていたので、楽しみにしていた。勿論整然と演奏されているが、やはり指揮者なしだと、冒険できず、歯切れが今ひとつという感じだろうか。
 アンコールは弦楽合奏用の編曲で、冒頭の物悲しいメロディは、クルトヴァイルを思い出すユダヤっぽい節回し。曲名も作曲者も知らなくても、年配者にとっては、昔どこかで聞いたような記憶がある。中間部のワルツは、対照的に華やかで夢のように明るくて、好いアンコール曲だった。

エルガー セレナード ホ短調 作品20
ライヒャ ファゴットと弦楽のための変奏曲※
フランセ ファゴットと弦楽のためのディヴェルティスマン※
ショスタコービッチ 室内交響曲 ハ短調 作品110a(弦楽合奏版)
※ファゴット独奏 岡本正之
東京文化会館小ホール
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クリスチャン・ツィメルマン ブラームスを弾く サントリーホール [コンサート]

 久ぶりに聴く岡本さんの演奏。奏者4人がペーザロで合流し、練習を始めて約一か月、少なくともイタリアで3回、日本で3回演奏会が開催され、サントリーがツアー最終日。やはり、一夜限りの室内楽とは全く違い、危うさは微塵もなく、緻密で安定感と安心感がある。ツアーをやるとは、こういうことなのだと実感した。
 サントリーホールで岡本さんの音を聴くのは初めてだったが、S券チケットが16,000円というハイランクの演奏会で、私は舞台後ろの8,000円の席で我慢した。席により音が違うのは大前提であり、誰もが理想的な音を体験できるものではない。サントリー舞台後ろ側の席で室内楽を聞くのは初めてだと思うが、ピアニストが良く見えて、ツィメルマンが足を踏み鳴らしたり、後ろで指揮したり、没頭している姿を間近に見えたのは面白かった。チェロも少しは見えたし、全体の音が溶け合っているのはよく分かった。最近のものではベルリンのピエール・ブーレーズ・ザールのように、わざわざ周囲360度に客席を設けている室内楽ホールもあり、そう思えば、室内楽なら距離さえ近ければ、どこで聴いても際立つところは伝わって来るのではないだろうか。
 音色も、各楽器の音量バランスも理想的で、ピアノのみ目立つこともなく、4人で一つの楽器のように調和していた。
 これがポーランドらしさなのかもしれないが、皆、緻密な仕事ぶりで、複雑な音の隅々まで整然と、知的に誠実に演奏されていた。一人が突出していないところがまた凄い。ブラームスらしい、少し暗めで格調高い音が、ホール全体に広がり、その澄んだ空気の振動を共有できたような、浄化されたような時間だった。でも、もし正面からかぶりつきで聴いていたら、もっと違う感想を持ったのではないかと思う。

ブラームス:
ピアノ四重奏曲第2番イ長調Op. 26
ピアノ四重奏曲第3番ハ短調Op. 60
ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン
ヴァイオリン:マリシャ・ノヴァク
ヴィオラ:カタジナ・ブゥドニク
チェロ:岡本侑也

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ミューザ川崎シンフォニーホール開館15周年記念公演「グレの歌」 [コンサート]

 この歳になっても、ナマ演奏初体験の作品には、わくわくするものだ。グレの歌は今年の春に聞き逃しており、気になっていたところこの公演を教えてもらった。
 予習として、ラトル・ベルリンフィルを聴いたが素晴らしい。原語がデンマーク語なので、歌われるドイツ語訳は、難しい言い回しも無くてわかりやすい。第一印象としては3幕が強烈で引き込まれる。最後唐突に朝日が差し込んで終わると、光が有難い北欧の風景が残像に残り、どんな悪夢も朝の光とともに覚めるというポジティヴさとしては、聴きやすいと思う。
 歌手陣は世界最高レヴェルのヴァーグナー歌手で、ドーメンもほんの短い役のために来日してくれた。ヴァーグナーを歌う姿を重ね合わせてつつ、一幕は影の無い女が思い浮かんだり、二度 Die Zeit ist um.とくると、やはりパルジファルが頭をよぎる。
 ジョナサン・ノットはやはり凄いと改めて思う。団員全乗りに加え、外部からも助っ人を入れているのだろう、大オーケストラをまとめあげ、緊張感を絶やさない素晴らしい演奏だった。シェーンベルクの初期作品ということで、初めてでも充分美しい響きを堪能できる。
 座席は、舞台横2LAなので、一歩前に出て歌うケールの声は聞こえにくかったが、正面席の方は、良く聞こえていたとのこと。座席相応の満足感ということだ。

出演
指揮=ジョナサン・ノット
ヴァルデマール=トルステン・ケール
トーヴェ=ドロテア・レシュマン
山鳩=オッカ・フォン・デア・ダムラウ
農夫=アルベルト・ドーメン
道化師クラウス=ノルベルト・エルンスト
語り手=サー・トーマス・アレン
合唱=東響コーラス
管弦楽=東京交響楽団
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読響ーハンス・ロット、プフィッツナーチェロ交響曲 [コンサート]

 二年近く前、未知の曲、ハンス・ロットの交響曲の演奏に参加するにあたり、連れ合いが、市販されているCDを次々買い揃え、聞き比べた結果、自分はヴァイグレのCDを練習の手本に選んだ。音楽が自然で誇張も煽り感もなく、上品だったからだ。
 今年の二月、神奈川フィルとN響のロットを聴き、今回は読響。CDのイメージ通り、穏やかなテンポで、精神的に安定感がある。Hr.は6本、二本増やしただけで、この日の舞台横の席からでは、Hr.の音量が強調されたり、弦楽器全員がむしゃらに弾いている感じはなかった。ヤルヴィの演奏と比べると、エキサイト感は低い。これは好みの問題だが、マーラーに負けず、弦楽器も4楽章は力勝負であるところを、もう少し見せて、聞かせて欲しかった。
 プフィッツナーという作曲家も、このチェロ協奏曲 も初めて聞いた。とてもロマンティックで2楽章しかないが、美しいところばかりだった。ヴァーグナー的と解説に書いてあったが、私が感じたのは2楽章で繰り返されるワンフレーズがヴァルキューレを思い起こさるところ。短い曲なので、ソリストも余力があり、何とアンコールに、バッハ6番のプレリュードを演奏してくれた。コンチェルトの時のように、ロマンティックに。
 チェリストのことも知らなかったので、後で調べたら、今年バッハ無伴奏全曲CDを発売しており、数年前、ドイツで広告かネット記事で見た、DBの駅でバッハを演奏していた、あのチェリストだった。
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ=アルバン・ゲルハルト
プフィッツナー:チェロ協奏曲 イ短調(遺作)
ハンス・ロット:交響曲 ホ長調
サントリーホール
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新日本フィルーブルックナー:交響曲第7番 [コンサート]

 9年前、マエストロ上岡/ヴッパータールのオケの演奏を、東京で初めて聞いて以来の生演奏。その間映像では指揮者の姿を見たと思う。
 マエストロが見せてくれるブルックナーの世界は、私のイメージにある、冷静さの中で構築され、じわじわ広がる音楽ではなく、躊躇なく次から次へと人の感情を揺さぶり、まるで腕を捕まれ、音の中に引き込まれるような、抵抗し難い感触だった。コンマスはヴァイオリンを、高く持ち上げ、立てて弾いたり、ひねったり、指揮者に応えるコンマスのエネルギー溢れるパフォーマンスが絶品だった。マエストロの印象は以前と変わらず、ブルックナーなのに、エンターテインメントのようで、一瞬一瞬にエキサイトした。
 出だしのVn刻みは、無から湧き上がるようで、Vcのメロディーは優雅だ。A-Dur ならではの開放感が紡ぎだす響きは、舞台上の音というより、自分の今置かれた空間そものの音、舞台との一体感という言葉そよく聞くが、こういうことなのじゃなあと感じた。
 シューベルトは、オケにお任せで、小節の頭のきっかけを指揮棒で与えた後の歌い方は、コンマス一任という感じ。優しさと温かみを感じる演奏だった。音を投げ出すような指揮ぶりは、嫌いではない。楽しいコンサートだった。
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D417 「悲劇的」 Schubert : Symphony No. 4 in C minor, D417 “Tragische”
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 WAB 107 Bruckner : Symphony No. 7 in E major, WAB 107
指揮:上岡 敏之 コンサートマスター:崔 文洙(チェ・ムンス)
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