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日本ワーグナー協会例会「《マイスタージンガー》におけるヴァルターの詩・歌唱」 [講演会]

 《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の主人公、騎士ヴァルター・フォン・シュトルツィングは、第1幕ではマイスターになるための試験で〈資格試験の歌〉を、第3幕第2場と第4番ではザックスの導きに従って〈夢解きの歌〉を、最終場ではこれを大胆に昇華させた〈栄冠の歌〉を歌います。(講師記の案内文より)
 今回はバール形式に則ったシュトルツィングの「マイスターゲザング」の説明と、ベックメッサーの記録係としての判断は正しかったのか、また。三幕で盗作した結果についての考察もあった。
 岡田先生の解説は、資格試験の歌は、バールの形式は整っていたのだが、途中歌が盛り上がったところで第一シュトレンが終わったと判断され、その後は形式から逸脱していると判断され、チョークでバツがつけられて行ったのではないかと。
 栄冠の歌は、三幕夢解きの歌の三つのバールからの引用を発展させ、一つのバールに仕上げられている。オーケストラの楽器を重ねていき、複雑な音、重唱となり、もはやシュトルツィングの声が聞き取れないほど音楽は盛り上がる仕掛けがある。次第に歌より音楽が主体となり、歌い納めで最高潮に達する素晴らしいオーケストレーションに皆感動すると。
 ベックメッサーが三幕で嘲笑を浴びる本選歌は、無理やりセレナーデのメロディーを当てはめ、うろ覚えの歌詞で歌ったのが失敗の要因ではないかと分析された。よくあの様な歌詞をつけられたものだ。韻律も弱始まりで強弱強と続き、シュトルツィング強弱強と逆である。
 とてもニッチなテーマで、マイスタージンガーが喜劇である点をピックアップしたような講演だった。
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慶応大学北川千香子准教授のお話 第2回「赤塚の森フォーラム」 [講演会]

 日帰りで名古屋まで行った目的は、北川先生のワーグナー講演の聴講。テーマは二つ、バイロイト音楽祭現地スタッフ10年間の体験と、ワーグナー作品におけるジェンダーの変容。一般人向けのワーグナー企画はとても珍しく、第一部バイロイト祝祭劇場ドア係の仕事についてスライドを見ながら聞いているうちに、バイロイトに一回余分に行ったような臨場感を味わい、楽しかった。
 ドア係はまさに劇場の各扉の鍵を預かる仕事で、ドイツの鍵文化、鍵を預かる誇らしい心情がよく伝わってきた。また、お客さんの声を直に聞く立場でもあり、座席の交換などの要望を、他のお客さんに取りついだりもするそうだ。ドア係の人達は、中立の立場なので、公演後舞台への拍手はできないのだが、ネズミが出るノイエンフェルス演出ローエングリンの最終公演後、お客さんを全員外に出し、施錠してから、どこからともなく湧いたドア係の拍手をきっかけに、プロダクションの最終公演後のドア係の拍手によるカーテンコールが恒例となったそうだ。この話は初めて聞いた。
 第二部、ワーグナーに於けるジェンダーの変容とは、北川先生のご専門分野で、まさか、難解なテーマをこんなに分かり易く、説明して貰えるとは思っていなかった。
 印象に残ったお話は、ヒロインが題名役となっているイタリアオペラは、19世紀の良妻賢母的女性観から逸脱した女性の悲劇の話で、だいたい最後は男に裏切られて死んでしまう。このような同時代のメロドラマと社会そのものににワーグナーは反発し、革命に参加し指名手配を受け、その後は芸術を通しての社会革命活動に方向転換した。そしてもっと深遠なドラマを目指し、壮大な指環の話を書き上げる。女性には救済(献身的自己犠牲)を求めるが、それは、自立した女性でなければならず、女性は男性救済の触媒であり、それにより、男性は英雄、救済者に到達できると。ワーグナー作品の中のヒロインの死は、それ以前の悲劇では無く、よく分からない複雑な救済の姿なのだと。やはり、難しい話だ。
 これを踏まえて、バイロイトではワーグナー批判が繰り広げられているそうだ。
 講演後の懇親会では素朴な疑問なども投げかけられ、そういえば、自分もワーグナーに出会ったばかりのころは、なぜ、そうなるのか疑問に思った点が多々あった。しかし私の場合、何度も見るうちに、音楽の虜となり、話の筋は、そういうものだからと落ち着いてしまった。
会場 美しい深田電機(株)の社屋、案内文書の写真を拝借
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ワーグナー協会例会ー「タンホイザーにまつわるエトセトラ」 [講演会]

 新国立劇場オペラ音楽チーフ・城谷正博氏が、楽日を迎えたばかりのタンホイザーについて、作品和声解説、制作現場の様子、アーティストの話、そしてヴァーグナー愛を語って下さった。
 初めはタンホイザー序曲ではなく、半音低い調で始まる3幕の巡礼の合唱をピアノで弾いてくれて、和声の魅力の話に入った。七度の跳躍、音符のターンが好き、冒頭バッカナールにトリスタンの和音が入っているなど、楽しい話だった。 
 新国立劇場の演出家をどうやって決めているのか、これまで語られたことはないが、このハンス=ペーター・レーマン氏はその経歴を見ても、日本がドイツの劇場と肩を並べるような舞台を期待したことは間違いないだろう。今になって、個人的に想像するのは、初めに日本側が版の指定をしなかったのか、氏がドイツから遠い場所なら1860年版と1888年版をミックスする演出を実験できるかもしれないと冒険したのかのかもしれないという妄想だ。
 現場サイドでは、歌手それぞれの作品への思いは様々あっても、初演の舞台に忠実に再現しているとのことだ。グールドどは1860年版と1888年版どちらの版もマスターしており、歌い間違ったら教えてくれというほど、誠実な歌い手とのこと。指揮者はレパートリーは多いが、タンホイザーが初めてだったらしく、3日日とも全曲通したとのこと。普通は全曲はやらないらしい。でもグールドはマスクをしたまま、3日間全力で本番通り手を抜かずに歌い、周囲も刺激されたようだとのこと。
 細かい話では、指揮者のスコアが珍しく、幕ごとに別冊になっており、左ページはフランス語、右ページはドイツ語で載っており、右ページだけを見てめくっているたとのこと。
 また、この作品はハープが本当に重要で、ハープと歌の場面が多く指揮者でなく、ハープと歌手が直接コンタクトをとるそうだ。そしてコーラスの練習として2019年には男声四部を4人チームで練習させて、他の団員に聴かせたとのこと。これでアカペラの音程が安定して演奏効果が上がったという話。
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日本ワーグナー協会第421回 例会「お話と演奏」 [講演会]

 例会の司会者が変わり、イベント会場のような和やかな雰囲気の中、ゲストお二方の裏話と演奏を楽しませて頂いた。会場が森下文化センターで、ここは良くアマオケの練習で通っている場所で、自分としては馴染みがあるが、一般の方は駅からgooglemap片手に来られたようだ。建物中にある田河水泡ののらくろ館がニリューアルされていた。この道沿いの商店街はのらくロードと名がついており、コロナ前は、週末に歩行者天国にしてよくお祭りをやっていた。レトロな小売店がまだあり、これ以上は寂れないで欲しい雰囲気ある場所だ。
 大沼さんも城谷さんも普段からSNSなどで情報発信されているが、オフレコの話題もあった。
 コロナ禍による異例の舞台、マスクして歌う弊害の他、大沼さんの留学中のエピソード、城谷さんのコレペティの苦労話は限りなく、世界中からアーティストが集まる初台のオペラの現場が如何に大変か、一端を知ることができた。
 他に初めて認知したのは、お二方とも飯守先生の信奉者だったことだ。飯守先生の引き立てがあったのだと思うが、先生の口真似をしながら、そのお人柄を語って下さった。直接ご指導を受けた人にしか分からない強烈な魅力があるのだと思う。客席で音楽を聴くだけでは分からない。
 城谷さんは、飯守先生から学んだことを、後世に伝えたいと仰った。
 会場の「多目的ホール」には舞台とピアノはあるが、反響板のようなものは無く、単なる集会室で残響が無いため、残念ながら歌もピアノも十分な音楽表現が出来なかった。
お話/演奏: 大沼徹(バリトン)、城谷正博(ピアノ)
演奏曲目:『タンホイザー』より 第2幕第4場 ヴォルフラム『Blick’ich umher in diesem edlen Kreise』(かくも貴き集いを見渡せば)、『夕星の歌』ほか
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フォン・ゲッツェ ドイツ大使をお招きして(日独協会設立111周年記念講演会) [講演会]

 フォン・ゲッツェ大使が赴任されて1年半、本当は昨年日独協会設立100周年記念して企画されていた講演会がコロナで1年延期され、ようやく東京ドイツ文化センターで開催された。
 講演のテーマは、日本の印象や、日独関係の歴史、現在の環境保全、エネルギー政策など、日々ニュース報道で聞く内容であり、特に目新しい事はなかった。
 しかし、本当のメッセージは、世界秩序を守るための両国の信頼関係、パートナーシップ重要性であり、学術分野であれ、経済、デジタル化などあらゆる分野で、国際的つながり、人間関係を大切にして行きましょうということだと受け取った。
 質疑応答では、ストレートな回答は少なめだったが、最後に個人的なこととして、就任後20の道府県を回った中で、奈良が一番気に入られたと話された。お寺や建物と町が緑に包まれ、コンパクトに調和していて、自然公園が素晴らしいと。そして大安寺ご住職が奈良日独協会の会長をされていると。
 若者の人材交流として、学生のホームステイを推進している横浜の日独協会からは、ドイツでも高齢化が進み、受け入れてくれる家族が減っていおり、公的な対策はないだろうかという質問に対し、姉妹都市の制度を利用するのも一つの方法と解答された。
 蛇足ながら、この夏の私の個人的な実感だが、目下ドイツでは、余裕のある若い世代は、ウクライナ人や他の難民援助など、社会的使命感が優先され、同時に物価高騰で、かつては優雅だったお年寄りでも、コロナ禍でのボランティアは難しいのではないかと思った。全て、世の中が平和である前提での文化交流は、変化せざるを得ないという気がする。
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入り口ホールでは、ダンス分野での日独交流の歴史を語るパネル展示があった。
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日本ワーグナー協会例会 2021年バイロイト音楽祭新演出を中心に [講演会]

 対面式の例会が再開し、慶應義塾大学准教授北川千香子先生の、2021年バイロイト音楽祭の新演出さまよえるオランダ人の演出についてのお話があった。先生は現地には行っておらず、現地情報としてはバイロイト初の女性指揮者オクサナ・リニフさんとゼンタ役の評判がとてもよかったが、演出にはブーイングが出たとのこと。公開映像は初日のものなので、二日目以降、首つりの場面が削られたという話もあり、来年以降、演出に手が加えられることも大いに考えられる。
 この演出は幽霊船は出て来ず、ある田舎町で繰り広げられる復讐劇になっている。オランダ人が幼少の頃、売春で身を立てていたと思われる母が、ダーラントとも不倫し、村八分にあい首つり自殺する。それを幼いオランダ人が目撃しており、トラウマになって、成人してから、町の人たちに復讐するために戻ってくるというのが主な筋。前奏曲の間に前史が提示される。ただ、細かい部分で、つじつまが合わないと感じるところがある。
 またオランダ人とゼンタは婚約はするが、オランダ人の熱烈な愛の表現に対し、笑い飛ばすようなゼンタの演技になっている。ゼンタはこの閉鎖社会から抜け出したくて、オランダ人を利用するとも想像できる。
 マリーの役どころが原作と違っており、ダーラントの妻のようだ。3幕最後、オランダ人は集まっている町の人たちに対し発砲し、何人か倒れる。その後オランダ人はマリーに射殺される。ゼンタはマリーに駆け寄って気遣うが、救済らしいものは感じられない。
 救済については長いト書きがあり、原典通り昇天するような演出は現代にはないが、工夫をこらしている舞台もあると、いくつか紹介された。
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救済の表現が工夫されていると紹介された作品
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『ニュルンベルクのマイスタージンガー』特別鼎談:大野和士、ハイコ・ヘンチェル、舩木篤也 [講演会]

 このニュープロダクションのトークイヴェントを何も聞いていなかったので、ゲーテ・インスティトゥートの特別鼎談へ行ってみた。内容はライヴ配信され、YouTubeで見ることができる。
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/ver.cfm?event_id=22470825
 演出がなぜゼンパーオパーでの劇中劇になっているのかという点については、ヴァーグナーはハンス・ザックスに自分を投影しており、また自分の劇場を作るほど劇場にこだわりが深く、ドレスデンとも関係が深いというような、ハイコ・ヘンチェル演出補さんの簡単なお話があった。
 大野さんのお話で印象に残ったのは、この長い作品の70%の時間は二重唱に使われており、会話場面が多いということ。
 大野さんはピアノを弾き、整然と熱く話して下さったので、どこかですでに解説したのではないかと思い検索してみた。すると7月に江戸川区で「大野和士のオペラ玉手箱」を開催していた。
 あまりに時間がたちすぎて、思いも霞んでしまったが、このマイシタージンガーはコロナ禍で延期、中止を経て、二年越しでようやく実現したのだった。
 「大野和士のオペラ玉手箱」のYouTubeを見て、キャストも大分変更になっていたことに改めて気づいた。その時点では、伊藤達人さんの役はマイスターの一人だったようだが、ダーヴィットを歌い、大野さんがいい声ですねと褒めている。またハンスザックス役は、夜警からポーグナーに変更になっていたイエンティスが歌っていた。過去に大野さんと協演したことがあるそうだ。この講演は面白かった。
 また、新国立劇場以外に「オペラ夏の祭典2019-20」というサイトがあり、たまたま、演出家のメッセージ動画を前に見ており、他にもドレスデンゼンパーオパーの公演レポートなどがあった。
 新国立劇場のサイト、プログラムと「オペラ夏の祭典2019-20」を一通り見ると、作品と演出にていてある程度理解できると思う。
 他にも、新国立劇場音楽チーフ城谷さんは、FB上で楽譜を載せて、詳しく解説して下さっていた。
 二年越しの公演になったことで、作品の理解が深まった人が、たくさんいるのではないだろうか。
 この『ニュルンベルクのマイスタージンガー』はザルツブルク・イースター音楽祭とザクセン州立歌劇場、東京文化会館、新国立劇場の共同制作で、2019年4月ザルツブルクでの初演後、2020年1月ドレスデンで上演され、2021年11月新国立劇場で上演中。
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日本ワーグナー協会 第1回Zoom例会 [講演会]

 ワーグナー協会例会のYouTubeへのアップは始まっているが、双方向のZoom例会は初めての試みなので、最優先で参加することにした。普通、土曜午後はオーケストラの練習に行くことが多いが、東京の緊急事態宣言発令のため、またもオケ活動が中止になってしまい、例会の時間に在宅することができた。マイクもカメラもoffにし、聴講のみのZoomに参加するのは初めてだったが、会場より聞き取り易いくらいだった。参加者数は合計42名。
 テーマは祝祭劇としてのマイスタージンガー。6月の聖ヨハネ祭、夏至の祭りの場面が舞台になるマイスタージンガーは喜劇とされいる。台詞の中の韻の説明、人々の会話の中のコミカルなやりとり、劇中で聖書に関係ある場面についてなど、作品に接する上で、とても役にたつお話を伺うことができた。
 マイスタージンガーは台詞が長く、ただ、台詞を読んで、音楽を聴いているだけでなく、もっと内容を理解して、聞き取れるようにならねばまずいと感じはていたが、ワーグナー協会で実際リブレットそのものについての講義は少ないので、貴重な機会だった。
 講義後、質問は出なかったが、対面だったら、何となく皆で感想を言い合ったりするが、リモートだでは、果たして、自分が正しく内容を理解したのかどうか、ちょっと不安と言えば、不安だ。
 初めて聞いた話は、ザックスの歌とヴァルターの歌が呼応していること。一幕のFanget an!で始まる資格試験の歌の時点から、ザックスはヴァルターの才能を見抜いており、物凄いエネルギーを持った人物として認めている。2幕のザックスの仕事歌に、3幕初めの朝の夢解きの歌が呼応しているなど。
 2幕最後に民衆の乱闘事件が起こるが、この作品の最高潮場面は、3幕5場のWach auf 「目覚めよ」の 市民全員の合唱のところだ。新国立劇場で初演の時にはこの一節だけ、一時間練習したという。
 今年の東京のニュープロダクションはこの言葉の真髄に迫ることができるだろうか、楽しみだ。
演題:ニュルンベルグのマイスタージンガーと祝祭の諸相
講師:山崎太郎
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ミュンヘンの「今」を知るための近代史、現代史 [講演会]

 日独協会主催、柳原先生のミュンヘンからのオンライン講演の第二回目があった。
 ミュンヘンはドイツ第三の都市だが、田舎っぽくて健全、上流意識があって「やバイエルン」という言葉があるらしい。京都ご出身の先生がお仰ると、京都みたいな感じなのかな、と想像した聴講者は結構いたようだ。
 私個人の近代史との接点は、2009年、連れ合いの念願だったオクトーバーフェストに行った時、市内ではなくフライジングに宿泊し、山の上のWheienstephanで、ビール全種類飲み、カロリー記載のビールリストをもらって来てからだ。ミュンヘン空港からバスでフライジングに入るルートを何度も使っていたのに、この時初めて、市内を歩き、カテドラルの中で、フライジングがミュンヘンより古いと知った。当時、歴史を話してもいいが、長くなるのでと言われたが、今、やっとその意味を認識した。
 講義の中で身近だったのは、いつも行く、シュターツオパー前の広場にある立派な銅像、マクシミリアン1世以降の話。二代目ルードヴィッヒ1世は、ミュンヘンの北側を整備し、ピナコテークを開設し、ミュンヘンに大学を移転した。結婚記念の祭りがオクトーバーフェストの始まりだったが、ビールの値上げ等、市民の反感を買い、退位後、市民のビール祭りとなった。三代目マクシミリアン2世は科学・学術院を創設し近代化を進めた。次のルードヴィッヒ2世はほとんどミュンヘンの整備をしておらず、ノイシュヴァンシュタイン城を訪ねたことないドイツ人は多いそうだ。この城の不思議なところは、当時の最新のテクノロジーで「復古」を試みたこと。
 第一次世界大戦下、バイエルンからプロイセンへ穀物を送り援助した。そのため、バイエルでビールの材料がなくなり、ビールの質が落ち、飢餓も発生。プロイセンとは、その恨み以来、不仲とか。
 ヒットラーがウィーンからミュンヘンへ来て感動したのは、まさに近代化と復古主義の融合だったと。
 自分の強制収容所の認識も間違っていた。種類が色々あり、唯一行ったことのある、ダッハウは労働収容所であり、近郊の現場からの要請に応じて、その人数を派遣していたとのこと。先生が間もなくダッハウの本をご出版予定なので勉強しようと思う。
講師:柳原伸洋 先生 (東京女子大学歴史文化専攻教員、アウクスブルク大学客員研究員)
2020年8月6日Hiroshima Tag München Marienplatz
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呼び方は色々 発酵途中のワイン 美味しいそうです Roter Sauser
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「ドイツの今」をon lineで実況中継ー 日独協会ー [講演会]

 ドイツ近現代史がご専門の、柳原伸洋先生がミュンヘンからZoomでドイツの様子を話して下さった。
 先生は7月末ポーランド航空でドイツ入りされた。ポーランドは今日本人はvisa無しで入国でき、コロナ禍の入国拒否国に日本は入っていない。飛行機の座席は30%くらい埋まっていて、食事は期待以上に良かったと。乗務員が1リットルのペットボトルを座席に投げて行くと聞き、逞しい女性の姿を想像してしまった。
 ミュンヘン空港では希望者に無料でコロナのPCR検査をしてくれて、結果は後でメールで来るそうだ。ドイツ人に夏の休暇を我慢しろというのは無理なので、せめて、入国時に検査を受けやすくしているとのこと。
 オクトーバーフェストが中止になったのは4月だが、広い会場はコロナ検査場と3000の病床を作るということで、人々に危機感を与える効果があった。現在オリンピック公園では普通に移動遊園地が営業されており、日本のような緊張感は無い。バイエルンの学校は9/7再開予定だが、小学校より先にビアガーデンが5/18に再開したのは、さすがビール好き。今スーパーにはオクトーバーフェスト用に作られたビールが並んでいるそうだ。
 勿論真面目なバイエルンの歴史の話は興味深かったが、今の生活の様子を聞ける体験はZoomならではだ。ドイツの中ではバイエルン州が一番真面目にマスクをしている。バスでは乗客にマスク義務があり、運転手さんはしていない。現在地下鉄U3が工事中で、代替バスが運行しているが、密は避けられない状況とのこと。中心地のレストランはアクリル板の仕切りなど使っているが、郊外に行くと、何も対策していないのが普通とのこと。
 現時点では、日本よりかなり気楽らしいことが分かる。
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2019年バイロイト音楽祭報告ータンホイザー [講演会]

 オペラ演出とタンホイザーの演出家トビアス・クラツッアーのについて、森岡先生ご専門のジェンダーの問題を中心にお話があった。
 今年のタンホイザーの舞台を実際生で見ていないので、初めて聞くジェンダーの話が新鮮だった。この演出は、これまでバイロイトに来ていない人たちを取り上げ、もっと芸術は自由であるべきという位のことしか気づかなかったが、劇中のサーカス団一行という、バイロイトでは気にもとめられない人たちの間にも、格差が存在することを訴えていたのは気づかなかった。
 一幕後の休憩時間に、ル・ガトー・ショコラが劇場下の公園で歌い、オスカルはボートを漕ぎ、ヴェーヌスは踊る。ユーチューブ動画で部分的に見ただけだったが、タンホイザーの中の曲も歌っていたのにはとても驚いた。私自身が、彼らをヴァーグナの世界から外して見ていたのだ。また、音楽祭のお客でない、通りすがりの観光客の方がこの場面に熱狂しているように見えた。
 グラーツでオペラ演出のコンクールをやっているという話は興味深い。課題作品を決め、審査員は劇場のインテンダント、作曲家、演出家、ジャーナリストなど、応募した演出が認められれば仕事と直結する、面白そうなコンクールだ。
講 師:森岡実穂(中央大学准教授)
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劇中のスローガンと裏にパフォーマンスの案内、プログラムに入っていたとのこと
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Alles leiwand in Österreich オーストリアの素晴らしさ [講演会]

 2019年は日本オーストリア友好150年の年、日独協会でもオーストリアの話題が取り上げられた。
 今回は意外と知らないオーストリアの有名人と、オーストリアだけで使われる単語が紹介された。写真の8人のうち、右上の角3人しか認知していなかった。
 講師はバイエルン出身だが、子供の頃、祖母のいるオーストリアへ行き、違う方言に接した印象があったとのこと。
 Karl Farkasのコメディー映像、日本でも人気があったというFalcoというロック歌手など、接してみれば、そう遠い感じはしなかった。
 単語に関しては、体験済みのもの、想像がつくものも幾つかあった。Baba という単語、意味はAufwiedersen なのだが、6月にWien で結構言われた言葉で、やはりbye-byeのなまりだったのか。なるほど微妙な音だった。表題のleiwand の意味は super!

講師: Markus von Freyberg 先生(日本大学 ドイツ語講師)
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「ペーター・ザイフェルト氏を迎えて」 [講演会]

 花冷えで小雨の降る中、ペーター・ザイフェルト氏の楽しいインタビューがあった。会場へ来る途中滑って転倒したそうで、同行者が支えきれない立派な体格だった。
 とにかくお話がとても面白く、ご本人も将来何か執筆されたいような雰囲気だった。あまりに有名すぎて、意外にも経歴などはネット検索で出てこないが、お父さんは戦争で体を壊す前は、オペラ歌手であり、お母さんは、根っからの音楽愛好家で、耳で聞いた様々なジャンルの音楽をピアノで弾かれていたそうだ。ザイフェルト氏は1954年生まれだが、とても60歳を越しているようには見えないほど、お肌の艶がよく若々しいし、声も衰えていない。デュッセルドルフ出身で、子供のころはラインドイツオペラの少年合唱団に所属し、将来は歌手か役者か、人前へ出る仕事をしたいと思っていたそうだ。
 子供のころからのヴァーグナーファンで、トリスタンの愛の死をヘッドホンで大音量で聞き続け、これで耳がつぶれてても良いと思うほど中毒になったそうだ。
 歌うのが一番難しいのはトリスタン。自分はビールを飲んで明るく死にたい人間なので、死にたいと苦しむ役は難しいと。(笑う所) グールドはタンホイザーが一番難しいと言っているそうだ。
 Q.コンディションを保つ秘訣は? A.歌う喜びやエキサイティングな気持ちがエネルギーとなり、責任と緊張感のを持ちながら、常に全力で歌っているとのこと。気のゆるみのある人は消えていく。いくら評判が良いからと同じ役ばかり歌い続けず、間を置かしてもらう。ローエングリンは職業ではない。(笑)
 Q.歳をとって益々好調な理由は?A.歌い方や力配分の要領がわかってきて、不安がなくなって来るから。また、怖い指揮者に怯えることもなくなり、既に他界した巨匠指揮者との経験などを若い指揮者に語っている。自分は声の出し惜しみをしたことはなく、若いころのように、こんなに歌えますと自己主張する必要もなくなったので、声の続くかぎり歌い、歌うのが苦痛になったらすっぱり辞めるとのこと。
 たくさんのエピソードを語られ、バイロイト時代の内輪話、共演してみて好きな指揮者の名前と逸話は10人近くに及んだ。お話好きのようで、是非本を書いていだきたい。

場 所:東池袋 あうるすぽっと会議室B ライズアリーナビル 3F
テーマ: 「ペーター・ザイフェルト氏を迎えて」
お 話:ペーター・ザイフェルト(テノール)
聞き手:鈴木 伸行(当協会理事長)  通 訳:蔵原 順子
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バイリンガルを育てるには!? [講演会]

 当事者にとっては深刻な問題であり、ベビーカーを押して参加された方が複数いらした。
 タベア先生は日本語を話されるが、お子さんとの会話はドイツ語と決めておられる。
 先生のお話では、両親が異なる言語を母国語とする場合、一人一言語を貫くことが重要だと。子供を混乱させないことが一番であり、場合によっては、話す状況により、言語を選ぶやり方もある。例えば、一言語しか話せない親と一緒のときは、それに合わせる、幼稚園では日本語、お風呂では日本語など、場面を決め、原則を崩さないことだ。勿論周囲の理解も必要であり、バイリンガルにしたい意図を理解されないと、その場の日本人をないがしろにして、子どもとわざわざドイツ語で話すことで、不快感を与えることにもなりかねない。しかし、そんな気配の時も原則を貫き、周囲には、子どもとの会話をその場で日本語訳するとのこと。他にも、色々な環境作りの工夫があり、大変なエネルギーが必要だ。
 バイリンガルのコミュニティがSNSにもあるそうで、今日情報収集手段は色々ある。 
講師: 日独協会 鎌田タベア
参考図書
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日独協会ドイツ語圏文化セミナー「ベルリンにある歴史の足跡」 [講演会]

 ドイツの皇帝が残した歴史的建造物の紹介とその後の変遷が話された。リースナー先生は、随分前になるがNHKテレビドイツ語講座で、東ドイツ出身の初めての先生として登場された方ように記憶している。
 私は刻々と移り変わって行く、今のベルリンの雰囲気が好きだが、多分真のドイツ好きとは言えず、ベルリンの歴史がしっかり頭に入っているわけでもないので、初めて聞く話も多々った。眼前にあるものが建造された理由や経緯を知り、移築されたもの、再建する際のこだわりなどを伺い、先生が時折挟むコメントに、なるほどドイツらしいと、微笑んでしまった。堅苦しさ無く、日常の雰囲気で語って下さる先生が、きっと魅力的なのだ。お話を聞き、次回見るベルリンの景色が幾分変わって見えるだろうと思う。
講師: フランク・リースナー先生(千葉大学、日独協会 ドイツ語講師)
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《さまよえるオランダ人》~制作現場から [講演会]

 城谷さんのお話は、興味をそそられることばかりで、オランダ人だけでなく、ヴァーグナー全作品にわたり、自由自在にピアノを弾きながら歌い、変格終止について説明して下さった。
 制作現場のお話も興味深かったが、私が一番感動したのが、短二度と長二度の音形を用いたテーマについて。オランダ人で二度の旋律が多いことは気づいていたが、初期作品だから簡素で単純なのかと、勝手に思っており、これが後期の作品にまで発展していること、また同一作品中に、同じメロディで長調と短調の二つのライトモティーフが書かれていることなど、教えていただいた。
 サプライズゲストとして、4月東京の春音楽祭の子供のためのワーグナー「さまよえるオランダ人」の題名役、バリトン歌手の友清崇さんがいらっしゃり、1幕のモノローグを歌ってくださった。続くオランダ人船員の短い合唱は、参加者皆で歌った。
 このプロダクションは、バイロイト音楽祭で、子供向けに公演しているもので、カテリーナ・ワーグナーが監修している。子供といっしょに行くと大人のチケットが安くなる。子供のうちにワーグナーの魅力を刷り込む戦略が日本にまで波及してきた。
場所:池袋 東京芸術劇場シンフォニースペース
テーマ:《さまよえるオランダ人》~制作現場から
講師:城谷正博(指揮者・新国立劇場音楽チーフ)
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劇場におけるコレペティトゥールの仕事について [講演会]

 略語のようにコレペティという言葉を使っていたが、正式にはドイツ語: Korrepetitor / フランス語: corépétiteur という。オペラ指揮者になるための訓練の場なのかと思っていたが、実はものすごく幅広く大変な仕事と知った。一番印象に残ったお話は、歌手の個人稽古をするときのこと。個人稽古に入る前に、ピアノヴォーカルスコアの譜読みをし、台詞を読み、各パートを歌えるように準備しておき、練習する場面の、他の声部を歌いながらピアノを弾く。
 ピアノヴォーカルスコアに加筆もする。歌手の要望に応じて、メロディーや大事な音程を書き加えたり、歌のきっかけを掴みやすくするオケパートの楽器の音を加えたり、複雑すぎる音型を削ったり、実際のオーケストラの響きに近づくよう、独自の楽譜を作っているそうだ。以前楽譜屋さんで、フルスコアの代わりになるかとヴォーカルスコアを見て、音が少ないなぁと思ったことがあった。ヴォーカルスコアは誰が作るのか、用途により、またピアニスト次第で、演奏が変わるものと知った。
 劇場でのピアノと指揮者の通し稽古では、黄昏序幕・1幕やマイスタージンガー3幕では、2時間オケピットで一人弾き続けるそうだ。例えば、歌のない黄昏の最後の部分もオーケストラの音に近づくよう、ヴォーカルスコアを書き換えていたが、通し稽古があるので、隅々まで音をチェックするのかもしれない。
 ヨーロッパでは、コレペティから指揮者になった人を、”たたき上げ”と言うことがあるが、この経緯はごく普通で、ティーレマンもその一人だ。そう思うと、木下先生のような、コレペティ専門家も指揮をできるということで、オーケストラの指導を受けてみたいと、連れ合いは言っている。
夏のバイロイト音楽祭の季節に、ピアノでワーグナーのオペラや、ベートーヴェンの交響曲を弾く演奏会を結構聴く機会があり、編曲の程度も色々で、やはり大事な音が欠けていないオーケストラの響きに近い演奏は楽しい。オケの響きに慣れていると、音の欠損に敏感になる。こういう演奏はコレペティの領分に似ているようでもあるが、基本コレペティは、指揮者や、オケ、歌手に合わせ、彼らを助けることが主な仕事なのだろうと理解した。
 後半は、まずテノール歌手伊藤さんの紹介として、ローエングリンの”名乗り”の場面を聞かせてくれた。続いて個人稽古の実演。ローエングリンの三幕、結婚行進曲が終わりエルザと二人になってからのやり取りの場面を、感情移入した歌い方やブレスまで、譜読み段階の、指導の実演が披露された。ピアノを弾き、エルザのパートを歌いながら、テノールの声を聴き、発音の指摘をし、音が三度違うなど、指揮者の耳、注意力を兼ね備えた素晴らしい指導に、唯々驚嘆するばかり。上演の指揮者やオケを想定して、その特徴に合わせての指導もされている。とても楽しい企画に感謝で一杯だ。
 蛇足だが、こういう歌手の苦労の積み重ねを目の当たりにすると、いつも安定しているフォークトがいかに凄いかあらためて痛感する。
ワーグナー協会 第404回例会  
お 話:木下 志寿子(ピアニスト・新国立劇場コレペティトゥール)
聞き手:吉田 真
出 演:伊藤 達人(テノール)
演奏曲目:「ローエングリン」3幕
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譜めくりしやすいよう、厚いヴォーカルスコアを波打たせる(薔薇の騎士)

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ドイツ人とは誰のこと? - ドイツ社会の多様性について Teil 2 - [講演会]

 先月に続き、ドイツ社会の多様性について持田節子先生が経験された、数字に裏付けられるここ35年のドイツの変化と、現在のドイツについてお話を伺った。
 先生が初めてドイツの土を踏まれた1972年以降、年代を追って、ドイツの変化、ドイツ人像の変化など、具体的なお話をたくさんして下さった。それを前提に自分にも思い当たることがある。
 個人的にはミレニアム以来ドイツに興味以来をもち、ユーロ導入以降、自分が接してきたほんの一部のドイツの、その時々の経過点の意味を少しでも知りたかった。
 2002~3年ごろトルコ人に対する不満を現地人から聞いたが、次第に寛容になり、ドイツ語教師は、苦労の分かるトルコ人が良いという話に変わっていった。
 2006年のワールドカップ以降、田舎でも英語がよく話されるようになり、外国のお客さんに親切になったと実感している。
 2012年には、ドイツ人と結婚したスロヴェニア人女性が放課後授業を担当している小学校の見学に誘われ、移民の子供たちと話した。親たちが一般社会から外れた人たちであること、転入してきても、親はドイツ語を話せないので、何か話したい言葉の始めか最後の一文字でよいから、コミュニケーションのよすがにしたいと、子供を通して連絡するとのこと。同じ年、トルコ人のドイツ語教師から、教材として国籍取得テストを見せられた。
 2015年夏、まさに移民問題が始まったとき、ミュンヘン郊外のサッカーチームのある小さな町の友人家族から、お年寄りが増えて空き家になった家を難民に提供したり、ヴォランティアでお年寄りがドイツ語を教えていると聞かされた。難民ウェルカムの時期だ。これらの経験は持田先生のお話の中の小さな事例だろうと思われる。最近では、パリ発のDBで旧国境駅、ストラスブールで長時間停車し、車内全員の人物確認が済むまで、列車の扉が開かなかった。難民の入国チェックだ。
 この日示されたドイツの統計によると、総人口8,260万のうち、移民は人口の24%、純粋ドイツ人62.5%、今はBio Deutscheというそうだ。外国籍の数は1,060万11,52%、そのうち70%はヨーロッパ人、また、日本人は38,000人くらい居るらしい。亡命者の数や国籍の変化は世界情勢を反映しているとのこと。現在移民の国ドイツでは、メディアに登場し、広く親しまれている有名なトルコ人もおり、移民、ジェンダー、健常者/障害者、などあらゆる多様性が容認されている。一方で、AfDなど右派政党が議席数を増やしているのも、周知の事実だ。

講師: 持田 節子 先生
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細川俊夫氏 講演会 振動する夢の通路: 能から新しいオペラへ - オペラ「地震・夢」を中心に – [講演会]

 2018年度国際交流基金賞を受賞された、細川俊夫先生の記念講演会が東京ドイツ文化センターであった。会場には、細川先生が作曲されたオペラ6作品のスコアが展示されており、自由に見ることができた。どんなだろうと、少しめくってみただけだが、一応普通の五線譜だった。
 第一部は、オペラ6作品の解説と舞台映像の紹介、第二部は縄田氏との対談と質疑応答だった。
 去年4月シュトゥットガルト歌劇場が予告して行った新作オペラ、クライスの「チリ地震」原作、バイアー台本の「地震・夢」(Erdbeben.Träume) は7月にプレミエを迎え、日本では初めて映像の一部が公開された。バウアーのドイツ語が難解なこと、プロダクションチームが福島を訪れた話などは前回説明があったとおりで、その時点ではまだ音楽はできていなかったそうだ。稽古場には舞台と同じセットを作り、福島で撮影した写真がたくさん貼られていたとのこと。
https://gruen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-17
 先生のお話によると、原語の台本を読んで作曲するとき、言葉の意味ではなく、響きを感じ、言葉が生まれる時の、最初のカオスの状態のに光がパッと当たる感じを音にするとのこと。芸術が生まれる瞬間を想像し、何だか体が震える。
 細川氏のオペラでは、あの世とこの世をつなぐ、能の「橋掛かり」が、魂の浄化を表現する媒体となる。今回の「振動する夢の通路:能から新しいオペラへ」という副題の意味するところの、振動は、地震であり、音楽、恐れでもある。夢の通路とは橋掛かりであり、音のトンネルでもあり、この作品の主人公フィリップはこの通路の中に入る。
 作品のテーマは、フィリップが出自を知るイニシエーションの旅。禁断の愛により生まれたフィリップの両親がまさに周囲の制裁を受けようとしたとき、大地震が起こり、フィリップと取り違えらえた赤ちゃんが殺害される。両親も殺害され、フィリップは子供を取り違えられた養父母に育てられる。でもオペラを通じて最後には自分が実の両親に抱かれる場面を夢に見て、魂が浄化される。
 映像の中で、大地震直後の海の描写があり、主にコーラスで歌われる無機質な音と言葉は、我々が震災で見てきた荒れ狂う水の映像そのものだ。舞台の再演がかなわぬのなら、間もなく市場に出るという作品全体の映像を見たいものだ。
 講演後レセプションがあり、一般聴衆もお招きにあずかり恐縮した。
モデレーター 縄田雄二(中央大学文学部教授)
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ドイツ人とは誰のこと?- ドイツ社会の多様性について - [講演会]

 ドイツで30年以上日本語教授として生活された持田節子先生の講演を初めて聞かせて頂いた。まだ、講義前半だけだが、「ドイツ人とは誰のこと」?という問いの意味が分かっただけでも、驚きだった。
 私は、ドイツ語を学問として学んだことはなく、日常のコミュニケーション手段、音楽を理解する手段として、言葉が必要だった。ドイツをまるごと知るという教育方針の学校では、ドイツの歴史や政治についても教え、自然と時事問題にも関心が向くようになる。一人旅でのドイツ滞在中、現地の友人とともに、意外とリアルなドイツの体験していることもあり、今回先生のご講説を理解できたなら、自分自身ドイツと関わった15年の一つの集成になるように思う。
 ドイツ人の定義は、歴史の中で変化してきたが、現在、ドイツ人になるためには、8年以上ドイツに住む、社会扶助、給付を受けたことがない、犯罪歴がない、ドイツ語能力 CER/B1、国籍取得テスト合格、などの条件がある。
 外から移り住んだ人は移民であり、ドイツ国籍を持つ移民もいる。20世紀中頃以降の、労働力としての各国から移民は多様な文化をもたらしたが、多文化主義を認めるか、ドイツ文化を押し通すか、移民にドイツへ溶けこんで欲しいと願っても、ドイツ文化への同化を強制することはできない。ドイツは移民の国と、2015年メルケル首相の初めての発言があったとのこと。
講師: 持田 節子 先生
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シュタイングレーバーピアノの技術と歴史講座 [講演会]

 バイロイトにSteingraeber&Söhneとういう手作りピアノの小さなメーカーがある。創業は1820年という伝統を持ち、素材から製作過程、音と響きへのこだわり、全てにおいて、最高を目指すピアノを作っている。バイロイトといえば、リストとヴァーグナーが住んだ町。社には、リストが晩年演奏したピアノがあり、ヴァーグナーから依頼された、パルジファルの舞台で使う、鐘の音(4つの音)の鍵盤を持つピアノに似た楽器がある。
 そのシュタイングレーバー社のピアノが、いよいよ、この度代理店契約を結んだ新宿御苑のピアノ販売店に展示され、試奏もできるようになった。この日はバイロイトから、シュタイングレーバーさん一家と技術責任者シェフラー氏が来日し、技術講習会、社長の講演、そして、小さな演奏会と懇親会を催した。残念ながら、一般人への告知は無く、シュタイングレーバー社のことを思うと、こだわりある物づくりのマーケティングの難しさが、もどかしい。
 所用で最初の30分しかお話を聞くことができなかったが、集まった調律師の方々に対し、社長の情熱がこもった説明が繰り広げられた。でも通訳が入ると、感情を抑えた一本調子になり、話の内容も省略もされているので、何だか少し勿体ない気がした。その後は盛況に会が運んだことを願うばかりだ。
https://www.steingraeber.de/ja/
6代目ウド社長
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シェフラー氏
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フォン・ヴェアテルン大使講演会と懇親会~欧州のポピュリズム~ [講演会]

 フォン・ヴェアテルン大使の講演を聞く機会を得て、初めてドイツ大使館の中に入った。ポピュリズムについての講演は40分、質疑応答を重視して20分取ってあったが、時間切れで、続きはレセプション会場でということになった。
 当然かもしれないが、大使は非常に真面目な方で、対話重視のメルケル首相の代弁者のような印象だった。ポピュリズムの弊害を前提に、それでもどちらが優れているということではなく、ポピュリストと真正面から対話し、説得して行く以外無いという、大真面目なお言葉に、建前で日本で用いられる対話という言葉との、重みの違いを痛感した。実際、時間を掛けて結論を導くドイツの議会は、結論ありきの日本の国会とは、異業種の印象を持っているのは、自分だけではないだろう。
 最後は、連立政権で閣僚が変わって、日本大使の職が解かれないことを願っているというユーモアで講演を締められた。
 続いてのレセプションは、もちろんブルストも出たが、意外と質素だった。ドイツビールを期待していたわけではないけれど、ビールはサントリーモルツだった。大使はそういうことはあまり気にされないということだった。
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シュトゥットガルト歌劇場の新作「地震」オペラについて [講演会]

 「地震」という言葉に敏感になった今日、地震のオペラという題名に反応し、ドイツ文化会館に討論会を聞きに行った。
  これまで、ヨーロッパの歌劇場のインテンダントが、宣伝に来た講演を結構聞きに行ったが、この日のシュトゥットガルト歌劇場は、聴きに来て欲しいとは決して言わなかった。あくまで、ドイツ文化センターの催しであり、日独双方向の同時通訳付き、劇場の経済的苦労にはふれない、創造的な演劇の話しであって、現在制作中という、興味をそそる企画だと思った。
 会場の客席が扇状で、日本のボックス式の椅子の並べ方とは違い、オペラハウスを連想する。二人の演出家として紹介されたのは、インテンダントのWieler 氏(ヨッシ.ヴィーラー)、ドラマトゥルグMarabito氏(セルジオ・モラビト)、舞台美術のViebrock氏(アンナ・フィーブロック)、脚本家のBeyer氏(マルセル・バイアー)、作曲家の細川俊夫氏、読響指揮者でもあるのCambreling氏(シルヴァン・カンブルラン)、司会は森岡実穂さん、それぞれの立場での話が聞けた。この劇場の舞台が先進的であることは、個人的には10年以上前ツァグロセク音楽監督時代からのイメージだったが、今では、現在人の心に響くことをを第一に、劇場に関わる歌手、コーラス、スタッフ、一人一人が芸術激責任を持って、仕事していることが、この劇場の特徴であるとのこと。(Wieler氏の言だったように思う)
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ライプツィヒ歌劇場芸術監督 ウルフ・シルマー氏の講演 [講演会]

 シルマー氏が、指揮者ではなく、ライプツィヒ歌劇場の芸術監督として、ワーグナー公演の宣伝のため、来日されたということで、ワーグナー協会で講演があった。この日は、ティーレマン・ドレスデンシュターツカペレのラインゴルト、ハーディング・パリ管の公演などが重なっていたが、聴衆は50人程度集まった。
 マエストロは新国立劇場でも2003年ホモキのフィガロ以来何作品も振っている。私は、東京以外では、2006年の聖金曜日に、パルジファルを聴いて以降、ライプツィヒとバイロイト生誕200年初期作品で6回マエストロのヴァーグナー作品を聴いた記憶があるが、ライプツィヒでは、いつもパッとしないというのが、正直な感想だ。でも今日、その理由が分かった。ライプツィヒという町の歴史と深い関係があり、あの大きな劇場は市民が作ったのではなく、旧東ドイツ社会主義の国策だったのだ。
 ライプツィヒは、ザクセン王国首都であったドレスデンと違い、商業都市として発展した。ヴァーグナーがライプツィヒで生まれ、優れた学校教育を受けたのは事実だが、二十歳で仕上げたスコア600ページに及ぶ「妖精」を劇場に持ち込んだところ、2週間の検討の末、歌手が歌えないと断られ、音楽監督にも見せたが採用されず、このことが、市への遺恨となったそうだ。
 現在のリングツィクルス が、東独社会主義時代のヨアヒム・ヘルツ以来、何と40年ぶりの新演出であり、ライプツィヒも二人ジークフリート体制で4日連続公演をしている。私も今年2月、ヴァルキューレとジークフリートを見ている。
http://gruen.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
http://gruen.blog.so-net.ne.jp/2016-02-22
 ヨアヒム・ヘルツの舞台(神話の世界でなく、初めてワーグナーの同時代として設定した)をパトリック・シェローが観ており、明らかに彼のバイロイトの演出に影響を与えたこと、またヘルツが当局から睨まれていたため当時の資料も映像も、写真すら残っていないことなど、現在目に見えない東独の影響がライプツィヒには存在することを知った。他にも興味深いライプツィヒの話を伺い、なぜいつもワーグナー公演がガラガラなのか、納得がいった。
 2022年には、初期作品も含め、ヴァーグナー全作品が、ライプツィヒ歌劇場のレパートリーになる計画とのこと。
 終了後、近くの蕎麦屋でごいっしょした。マエストロは来日回数も多く、おそばも上手に頂くが、アルコールは飲まず、専らMineralwasserだ。きちっとスーツを着こなし、さすがProfessorという感じ。
 生まれはブレーメン近くで現在も自宅があり、修業時代のウィーンや現在のライプツィヒもあくまで仕事場だそうだ。
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トロンボーン奏者・吉田なを美氏に訊く [講演会]

 来週はバレンボイム御大の講演会があり、その予習として、吉田さんのお話しを聞きに来ていた人も多かったようだったが、盛りだくさんの裏話を伺い、とても興味深く、楽しい時間だった。
 ブルックナーチクルスで公演中のシュターツカペレ・ベルリンと来日しているロンボーン奏者、吉田なを美さんは、まだ20代なのにドイツでかなりの経験を積まれている。既に8年目で、今はシュターツカペレ・ベルリンのアカデミー生だが、2011~13年はバンベルグ交響楽団のアカデミーにおられたそうだ。アカデミーでは、奨学金を貰って、勉強するのだが、オケの規模やレヴェルにより、内容に差があるそうだ。吉田さんは、バンベルク交響楽団が、ルツェルンで演奏会形式のリングを演奏した際、ジークフリートでシュティーアホルンを吹いていらしたとのこと。
 率直なお人柄と、たゆまぬ努力、困難から逃げない意思の強さに共感し、すっかりファンになってしまった。団員になり、いつかバイロイトで活躍して欲しい。(G)
 

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「ことばを活かすものはなに?」- 日本語とドイツ語の最近の変遷について [講演会]

 ドイツ語と日本語のここ10年の言葉の変遷について、東京ドイツ文化センターで、シンポジウムがあった。
 言葉を変化させるのは、若者のアイデンティティーの主張が一要因であること、また英語を取り込んだ造語が目立つことは、両国共通。ドイツでは、1970年以降の移民で国籍を得た系統が、20%近いらしい。その影響で、母国語とドイツ語が混ざった新語も生まれていると。またドイツに溶け込みたいという思いと、祖国のアイデンティティーの混ざった状態とも考えられる。これは、文法の乱れも引き起こしている。前置詞、冠詞の抜け落ち、時制の混乱、母国語アクセントの特徴が目立つ。
 日本は、若者へのスマホ浸透から、言葉が絵文字になり、そこからさらに連想できる別の言葉が発生したり、地域的に離れており、混じり合うはずの無い方言が、ネット上で混ざったり、方言をアクセサリーのように楽しむこともある。また、終助詞の後に着く「ぴょ~ん」などは、話し手キャラクターを重視するもので、これは昔から、日本語にあるものに似ている。例えば、知らんわい、知らんわ、知らんばい、などの語尾は、全て自分を表す。日本語は自分を指す言葉が色々あるのは、キャラクターを大切にしてきたからとも言える。
 こんな感じの話が、印象に残ったが、言語と方言の区別は難しいようだ。 講演-アイヒンガー教授、定延利之教授 パネルディスカッション 司会者
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「シルヴァン・カンブルラン氏が語る《トリスタンとイゾルデ》」 [講演会]

 マエストロの音楽をまだ聴いたことがないが、フランス人でリヨン国立管弦楽団のトロンボーン奏者出身、ドイツ語でのインタビューで、ヴァーグナーを熱く語ってくれた。
 9月読響で、演奏会形式、ノーカットで、トリスタンとイゾルデを指揮する。現在シュトゥットガルト歌劇場のインテンダントで、現地で初めて題名役を歌った二人を連れてくるとのこと。
 モルティエ氏と一緒に仕事してきたということは、結構革新派かもしれない。お話を聞くと、新しいプロダクションを、一緒に作り上げようとする連帯感に、好感度が高まる。
 音楽は流れることが重要と、その点は、いかにも、フランスの音楽家らしい。個人的には、パリで聞く、流れるような、ヴァーグナーも、転調があまりに美しいブルックナーも大好きだ。今回ブルックナー7番を聴けず残念だが、きっと流暢なブルックナーを、読響が奏でてくれたのではないだろうか。いつか放送があれば、聴きたい。
 終了後、ビアホールでの2次会で、大ジョッキを豪快に飲んでおられた。(G)
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雪の週末、日本ワーグナー協会例会ーラインの黄金 [講演会]

 二週続いた週末の雪のおかげで、オケの練習は中止、予定が二転三転し、身一つで参加できる、池上純一先生のラインの黄金テキスト精読の講義を聞きに行くことができた。昔は、ワーグナー協会はテキストの勉強ばかりしている団体なのだろうと想像していたが、実際はテキストを解説する例会は希だ。きっと協会の歴史30年の間に、もう全作品の精読をやってしまったのだろう。来るのが遅すぎた自分にとっては、どんな講義よりテキストの解説が一番エキサイトする。
 ニーベルングの指環を理解するのに、作品のバックグラウンドをどれくらい知っているかで、読みの深さが変わってくるのは当然だが、その道のりは遥か遠い。講義内容全てを記述しきれないが、この日、一番驚いたのは、題名の解釈だった。なぜ、この題名がついたかなんて、考えたことはない。そういう題名の作品というのが一般人のスタートだろう。その点、学者の先生はどんな分野も疑問がスタートラインなんだと、改めて気づかされた。
 ニーベルングの指輪とはアルベリヒの指環だろうと思っていたが、そうではないらしい。ラインの黄金のテキストでListという策略、術策と訳される言葉がキーワードになっていると。アルベリヒは愛を放棄して指環を得たと思われがちだが、実は愛を捨てて得たものはZauber、ある種の秘法であり、その秘法によって指環が作られ、世界を我がものととできると。
 策を弄するのは、アルベリヒだけでない、ローゲも、ヴォータンも、指輪(権力)を手に入れようと、知力で策を練るもの全てが破滅することになると。知力ー光ー啓蒙という文明社会の発展が何故か破壊に進むという考え方、神話はすでに啓蒙である。啓蒙は神話へと退化するという「啓蒙の弁証法」マックス・ホルクハイマーの理論が紹介された。
 韻を踏むテキストや、ドイツ語の音そのものが美しく、音樂と呼応しているのが本当に素晴らしい。公演前にテキストを読むのではなく、常にリングのどこかを読んでいるな~んていう刺激的な生活をしてみたいものだ。(G)
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Wagner生誕200年記念コンサートとシュタイングレーバー氏講演 [講演会]

 ワーグナー生誕200年記念の内輪のコンサートが愛知県岡崎市であり、バイロイトのピアノ製作会社 Steingraeber の社長ウドさんが来日した。コンサートで使用したピアノは、日本の代理店にあるSteingraeberのグランドピアノで、バイロイトにある、リストのピアノを受け継ぐ型。サロンサイズで、低音は抑え目だったが、一つ一つの音が太く、ppも遠鳴りがする、立体感のある音だと思った。
 普通日本の コンサート会場で演奏されるグランドピアノは、Steinwayが主流で、その音色が身体に染み込んでいるが、世の中には、他にも個性的ピアノが存在することを体感できる良いチャンスだった。
 バイロイトでこのリストのピアノは、誰でも聞くことができる。また、Steingraeberの大きなコンサートホール用の、グランドピアノも素晴らしい。私がこの夏バイロイトで聴いたのは、強靭なFazil Say だったが、深くて、弾力があり、キンキンしない、満足できる音色だった。(G)

菅司(ヴァイオリン)岡崎高校出身 柴田典子(ピアノ)
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より<愛の死>(編曲版)
リスト:「詩的で宗教的な調べ」より第7曲<葬送曲>
リスト:「慰め、6つの詩的思考」より第3曲(ミルシュタイン編曲版)  
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
ワーグナー:アルバム・リーフより「ロマンス」(ウィルヘルミ編曲版)

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ティーレマンインタヴュー"Mein Leben mit Wagner" [講演会]

 ティーレマンが執筆した"Mein Leben mit Wagner"の紹介とサイン会があり、Elke Heidenreich が小一時間インタヴューした。友の会の講演の後駆けつけたが、前の方の席が取れず、またも響きの中でちょっと残念。
 真っ赤なポロシャツ姿で現れたティーレマンは、冷房の無いコアザールで、あっという間に汗だくになってしまったが、終始にこやかに、表情豊かに、普通のドイツ人のように、ジョークを交え話してくれた。
 本の内容には、あまり答えず、バイロイトの話が主だった。一番興味深かったのは、ピットと、舞台と、客席での音の話だ。あちこちで聞き、読む話題だが、ティーレマンの口から、直に聞くと、やはり苦労して造りあげる音なのかと、あらためて感動する。
 ピット内は、本当にうるさいらしい。その音が舞台に上がり、3回回って歌と一緒に客席に届くのだと。またタンホイザーで、Vnのメロディに合唱が加わるとき、遅れないタイミングを見つけるのは、大変らしい。指揮台横の電話は、客席で実際どう聞こえているかのアドヴァイスを聞くためのもので、とても重要だ。かつてヴォルフガングがいたころ、リハーサルの間客席を歩き回っていたそうで、注文をつける訳ではないが、最終的に、ワーグナーがこう言ってると電話で言われると、指揮者もしぶしぶ従ったそうだ。この劇場は、席によって音が違うので、いろんな席に座ると良いと言い、インタヴュアーに、アチコチで聞いたことがあるのかと聞かれると、自分は時々指揮するので、ちょっと、、、と笑わせてくれた。座席の話は本当にその通りだ。それから、練習中や、休憩時間には、歌手や楽団員一人一人に、要望や意見など聞くが、いざ本番の指揮台に立つと、皆とのアイコンタクトで、その日の集中度が分かり、自分がリードする音楽にいかについてくるかで、その日の出来映えも変わると。これも、その通りだ。
 初めてバイロイトに来る指揮者は、最初は感激するが、自分が振っている普通の劇場との違いに次第に不満を漏らすようになるそうだ。まずは暑さを克服せねばならない。オランダ人なら2時間10分だが、ワルキューレ、黄昏となると、集中力が続かなくなると。そして、ピット内の楽器の並びと、音が届く時間差。最後には、バイロイトは酷いところだったと帰ってから言うと、面白おかしく語ってくれた。
 マエストロの身振りや顔の表情を生で見て、生身のティーレマンを垣間見たというか、むしろバイロイトのお客さんのために、サービスしてくれて感謝の念だ。
 本の結びの部分をティーレマンが朗読し、お開きになり、サイン会となった。本当に暑くて、誰か後ろから、扇いでもらえると、ありがたいと言っていた。ちょっと不機嫌ないつもの顔になり、黙々とサインし始めると、急にまた遠い人になった。

追記:
 他の話を思い出した。なぜワーグナーが良いのかという問に対し、ヴェルディのオペラは、トラヴィアータもトスカも最後死んでしまって終わりだが、ワーグナーは、 マイスタージンガー以外は破滅的(zerstoert)であっても、最後に救いがあり、ゼンタは死ぬが新しい世界に行くと。リングの最後は、新たな始まりでなければならないと。
 ブーイングについての質問には、自分が指揮棒を下ろして静まったあと、いきなりブーがきこえると、一体どうしたのかと戸惑うと。新聞の批評なども、ごちゃまぜに書かず、歌、音楽、演出と分けて書いてほしいと。
 どれも話自体は雑談の域を出ないが、活字やビデオと違い、生で、身振り、手振り、表情を目の当たりにした印象が鮮明に残っている。
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