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「ペーター・ザイフェルト氏を迎えて」 [講演会]

 花冷えで小雨の降る中、ペーター・ザイフェルト氏の楽しいインタビューがあった。会場へ来る途中滑って転倒したそうで、同行者が支えきれない立派な体格だった。
 とにかくお話がとても面白く、ご本人も将来何か執筆されたいような雰囲気だった。あまりに有名すぎて、意外にも経歴などはネット検索で出てこないが、お父さんは戦争で体を壊す前は、オペラ歌手であり、お母さんは、根っからの音楽愛好家で、耳で聞いた様々なジャンルの音楽をピアノで弾かれていたそうだ。ザイフェルト氏は1954年生まれだが、とても60歳を越しているようには見えないほど、お肌の艶がよく若々しいし、声も衰えていない。デュッセルドルフ出身で、子供のころはラインドイツオペラの少年合唱団に所属し、将来は歌手か役者か、人前へ出る仕事をしたいと思っていたそうだ。
 子供のころからのヴァーグナーファンで、トリスタンの愛の死をヘッドホンで大音量で聞き続け、これで耳がつぶれてても良いと思うほど中毒になったそうだ。
 歌うのが一番難しいのはトリスタン。自分はビールを飲んで明るく死にたい人間なので、死にたいと苦しむ役は難しいと。(笑う所) グールドはタンホイザーが一番難しいと言っているそうだ。
 Q.コンディションを保つ秘訣は? A.歌う喜びやエキサイティングな気持ちがエネルギーとなり、責任と緊張感のを持ちながら、常に全力で歌っているとのこと。気のゆるみのある人は消えていく。いくら評判が良いからと同じ役ばかり歌い続けず、間を置かしてもらう。ローエングリンは職業ではない。(笑)
 Q.歳をとって益々好調な理由は?A.歌い方や力配分の要領がわかってきて、不安がなくなって来るから。また、怖い指揮者に怯えることもなくなり、既に他界した巨匠指揮者との経験などを若い指揮者に語っている。自分は声の出し惜しみをしたことはなく、若いころのように、こんなに歌えますと自己主張する必要もなくなったので、声の続くかぎり歌い、歌うのが苦痛になったらすっぱり辞めるとのこと。
 たくさんのエピソードを語られ、バイロイト時代の内輪話、共演してみて好きな指揮者の名前と逸話は10人近くに及んだ。お話好きのようで、是非本を書いていだきたい。

場 所:東池袋 あうるすぽっと会議室B ライズアリーナビル 3F
テーマ: 「ペーター・ザイフェルト氏を迎えて」
お 話:ペーター・ザイフェルト(テノール)
聞き手:鈴木 伸行(当協会理事長)  通 訳:蔵原 順子
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 とにかく冗談交じりのお話がおもしろい。いわゆる‘盛ってる‘感じで、得意気に話される。
 私が涙が出るほど笑ってしまったのは、タンホイザーやローエングリンで、ヒロインに跪く場面を卒業したいという話。体格が良いし、歳もとってくるので、歌いながら、ゴン!と跪くのは辛いと、小声で歌って、ゴン!という声を交え、この場面を5回ぐらい繰り返し笑わせてくれた。最後に、立ち上がり、アレ、ピアノはないの?歌うのかと思った、と本気かと思わせる、リップサービスだった。
 普通、共演した指揮者の好き嫌いについて質問しても、お茶を濁すものだが、きっと、ご本人が、人の懐に飛び込むタイプの方で、指揮者との交わりや、人間観察も深いのだろう。数人の指揮者エピソードは、目に浮かぶようで、本当に人間が好きなんだと感じた。
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