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Be Phil オーケストラ ジャパン [コンサート]

 ベルリンフィルの教育プロジェクトの一つとして、ワールドツアー先でアマチュアオーケストラメンバーをオーディションで募集する企画が、今年の日本ツアーから始まった。1200人が応募し、98人が選ばれたという。
 オケに多分知人がいるだとうと、楽しみに行ったのだが、プログラムに知った名前は無かった。そしてオケが舞台に登場すると、即座に若い熱気が伝わってきた。そうかアマチュアの腕自慢も世代交代したのだと、改めて、自分らの年齢に気づかれた。
 オーケストラの応募条件は、日本在住のアマチュアで、ジュニアは不可、選考はビデオ審査だった。コンマス、弦の首席他何人か、ベルリンフィルメンバーがオケの中に入り、一緒に弾いて導いてくれることは、彼らにとって、最高に幸せな体験だろう。舞台後方の客席ではベルリンフィルのメンバーもかなり聞いていた。
 一曲目ブラームスは、ソロを聞かせるために、相当オケの音量を落としていたし、複雑な音の絡みに細心の注意を払っていた。クヴァンツは、たまたまかもしれないが、以前のような力強さは無く、自分が聴く、クヴァンツ引退前、最後のソロ演奏になるかもしれない。樫本大進は、これが日常なのだろうが、本当に素晴らしかった。
 プロコフィエフは、音量が全開になる箇所が多く、音を割らずに、雑音を出さずに、全身で音を作る、ベルリンフィルの真骨頂の響きが伝授されたことが想像できた。ペトレンコの前に、誰がどんな指導をしたのか興味津々だ。最初にパート練習もあり、自分が発する音についての心構えをとことん学んだであろう彼らが、今後全国各地でこの体験を伝授したなら、日本のアマオケも変わって行くだろうなあと誇らしく思う。この機会に全てを吸収しようという姿勢を感じ、特に1Vnの魂のこもった音の美しさはプロオケを凌ぐものだった気がする。どのパートもテクニックは勿論、よく歌っていて素晴らしかった。自分は今回ベルリンフィルの演奏会を聴いていないので、久しぶりにペトレンコを間近で感じられて、気分が高揚した。本気で、大きな音を美しく鳴らすのはオケの醍醐味であり、会場の皆が喜んだと思う。
 現地でベルリンフィルを聴くと、血流が良くなり、血が綺麗になる気がするのだが、この演奏はそれに近い効能が自分にはあった。オケに参加された弦楽器の方の話を伺ってみたいものだ。
 この日隣の小ホールは、日本ウィーン・フィルハーモニー友の会主催のウィーンフィルSteudeTrioのコンサートだった。日本で友の会があるのは知らなかった。 
ラファエル・ヘーガー(ブラームス) Raphael Haeger, conductor/Brahms
キリル・ペトレンコ(プロコフィエフ) Kirill Petrenko, conductor/Prokofiev

【ソリスト】
樫本大進(ヴァイオリン/ブラームス) Daishin Kashimoto, Violin/Brahms
ルートヴィヒ・クヴァント(チェロ/ブラームス) Ludwig Quandt, Violincello/Brahms
[プログラム]
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102
(指揮:ラファエル・ヘーガー/ヴァイオリン:樫本大進/チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント)

プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』組曲第1番 Op.64bis、第2番 Op.64terより
1. モンタギュー家とキャピュレット家(第2番)
2. 少女ジュリエット(第2番)
3. 僧ローレンス(第2番)
4. 踊り(第2番)
5. 仮面(第1番)
6. ロメオとジュリエット(第1番)
7. タイボルトの死(第1番)
(指揮:キリル・ペトレンコ)
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フロレスタン・トリオ ゴルトベルク編曲弦楽三重奏版(津留崎直紀編曲) [コンサート]

 恥ずかしながら、これまでゴールドベルク変奏曲のを殆ど自分から聴いたことが無く、アリアの美しさだけで満足していた気がする。それでも、今回全曲演奏を聴き、曖昧な知識から想像しても、この編曲はかなり挑戦的なものに感じられる。
 フランス、ドイツで現役として活躍されているプレーヤーのさすがの実力に、まず驚嘆した。私のイメージとしては、現地で聞くヨーロッパの音色だった。Vn、Vlaの先生方は余裕綽綽、まるで一日中でも楽器を弾き続けていられそうな、安定した美しい音色だ。終盤どんどん演奏自体が難しくなるが、Vlaは益々鳴り響き、全体を盛り上げる。そして演奏不可能にも思えるチェロの活躍が驚くばかりで、自ら演奏するからこそ、このような編曲をされたのだろうとアレコレ想像した。
 チェンバロ演奏の技術を弦楽器に移し、例えば2段鍵盤の音を三本の弦楽器で分かち合う大変さはいかばかりだろう。連続したフレーズに聞こえるように奏でる技術も溶け合った音色も素晴らしい。残響を味合うチェンバロに比べ、弦楽器は音を伸ばすことができ、音が広がり、編曲の意図通り、音の立体感を確かに感じる。特にVnとVlaの音は完全に溶け合っていた。カノンは各楽器ごとにテーマが聞こえるので、チェンバロより聞き取り易いと思うが、一度から九度までのカノンが作れるバッハの職人技に、現代人として尊敬の念を新たにした。
 自分にとっては新鮮な出会いで、今更ながら、チェンバロ演奏をYouTubeで聞き、マニアックな技に心動かされた。

J.S.バッハ(津留崎直紀編曲)
ゴルトベルク変奏曲BWV988(弦楽三重奏版)
ゴルトベルク編曲にあたって 
〜より有機的で立体的な弦楽三重奏版を求めて〜 津留崎直記

「フロレスタン・トリオ」
津留崎晴代(ヴァイオリン)
上野なち子(ヴィオラ)
津留崎直紀(チェロ)
市ヶ谷ルーテル
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フィルハーモニックトリオ ウィーン [コンサート]

 Wiener Phillharmoniker Steude Quartetのトリオでのコンサートがあることを知り慌ててチケットを購入した。会場は日経ホール、残席は最後列だった。ここはコンサート用の会場ではなく、客席が前例とずれていないので、多分私の前の男性も舞台が見えなったのだろうか、5秒に一回くらい、左右に頭を振るので、小柄の身には残念ながら殆ど舞台が見えなかった。
 Vcは先週ロココを聴いた、Wolfgang Härtel氏、VnはコンマスVolkhard Steude氏、Vlaは主席のTobias Lea氏が代理で演奏された。ピアノの三輪 郁さんは、長くSteude氏の伴奏をされているそうで、弦楽器と溶け合う、優しい音だった。
 コンマスのSteude氏はさすがだ。音の軽業師とでも言えるだろうか、あらゆるテクニックを融合させ、曲芸のような軽やかなソロで楽しませてくれた。チェロのHärtel氏の演奏は、ロココの時の印象と同じく、歌心が魅力的だ。ロココの時も音の優しさ、温かさ、優雅さは夢心地の響きだった。ロココヴァリエーションは、腕自慢の若者たちが、よく超絶技巧を披露してくれるが、ヘルテル氏の演奏は、技巧は深いところに音楽の前提としてあり、聞かせたいのは歌う音色である気がする。
 シューマン/アダージョとアレグロはオリジナルはホルンの曲で、とても美しい。でも日本人がチェロで弾くと、アダージョがどうも日本人には合わないようで、名手が弾いても、どういう訳か、音が平面的になってしまう印象がある。ところが、西欧人が弾くと、ごく自然に音が膨らみ、甘いメロディが聞こえてきてうっとりする。Vlaの音色の方が合っているかもしれないと感じる日本人の演奏は聞いたことがある。
 演奏曲順が変更になり、最初に弦楽トリオで会場を温め、ソロを弾いて、後半ピアノ四重奏となった。やはり全て軽やかだ。
 今年の秋、ほぼ同時に来日した、ウィーフィル、ベルリンフィル、ゲヴァントハウス、どれもも聴きは行かないが、ウィーフィルについては、これまでソロでは多分、ヴァルガ氏の美しいバッハ無伴奏しか聞いたことが無かったと思う。でも、その時の空間を漂う音のイメージは、メンバー皆さんに共通する優雅さと美しい音色であることを認識できた。このファジーな心地良さは、ウィーンフィルが世界で愛される理由の一つかもしれない。
 会場でCD販売があり、シュトイデカルテットのCDと、シュトイデ氏と三輪さんのデュオ、三輪さんのソロもあったかもしれない、数種類並んでおり、買った人対象のサイン会があった。

シューベルト/弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D471
ヴィオラ・ソロ ブルッフ/ロマンツェ 作品85
チェロ・ソロ シューマン/アダージョとアレグロ
ヴァイオリン・ソロ R.シュトラウス/「ばらの騎士」より ほか
モーツァルト/ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K478
(アンコール:メンデルスゾーンピアノ四重奏三番、3楽章)
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