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津留崎直紀 新境地のバッハ無伴奏全曲 オペラシティリサイタルホール [コンサート]

 バッハ無伴奏チェロ組曲の全曲演奏をこれまで聴いたのは、新しい順に、上森祥平、ヨーヨーマ、クニャーゼフ、藤原真理に次いで5人目だが、5番で調弦を原曲通りAからGに変え、6番は新作の5弦のチェロで、全曲暗譜で弾くという挑戦に立ち会うのは初めてのこと。ボーイングは、アンナ・マグダレーナの販を基本にし、まさに新境地、人生の集大成と言える決然とした演奏会だった。
 ガット弦を張りバロック弓も2種類使い、調弦は415Hzで、できる限り本当の音と奏法を追求したのではないだろうか。
 実際初めは音が小さい印象だったが、耳が慣れてくると、音が綺麗で和音を感じさせる響きが素晴らしい。バッハの無伴奏を聴いていて、和音の美しさを感じる瞬間は最高だ。
 津留崎先生はリヨン国立歌劇場の主席を32年務め、自主退職されたとのことだが、余力を残して、10年以上経ってバッハ全曲弾くという情熱が凄い。自然体で、優しい音色は、お人柄だろう。ブログでご自身の考えを表明しつつ、演奏会で実践するという、誇り高い本気のチェリストだと敬服する。
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ジャン=ギアン・ケラス無伴奏リサイタル 浜離宮ホール [コンサート]

 大人気ケラスのライブはこれまであまり聞いていなかったが、この日は、ただ、座っているだけで、悲しい心を温めてくれるような、優しさを分けてもらった演奏会だった。特にバッハに心惹かれた。最近YouTubeでバッハの講義を見て、いいなと思っていた。作品の原点回帰を超え、独自の自由な世界観と優しい表現は、きっと飾らない温かいお人柄なのではないかと思う。
 一番の冒頭から、音の演出が素晴らしく、どこか石造りの大きな教会の中で聞いているような透明な響きが美しく、プレリュードの弾き始めで引き込まれた。開放弦をふんだんに使い、ボーイングはスラーが多く、響きを追求した効果的奏法というか、組曲全体が軽やかで、装飾音を入れて楽しませてくれる、コンサートへいざなう理想的な一曲目だった。
 最後の5番は、昨今はオリジナル通りA線をGに調弦して演奏される。C-Mollの暗さ、乗り越えて行かねばならない、辛さ切なさが良く伝わってきた。
 アンコールの6番プレリュードは、生き生きと、楽に弾いてくれて、昇天するイメージ通り、幸福な気持ちで家路に向かわせてくれた。
 若く見えるが、現在57歳、音楽が人を救う事を承知しているなあと感じる。
 たまたま、プログラム2曲目が、岡本さんも同じで、ブリテンの1番だった。ケラスも若い頃からのレパートリーのようだが、今回は、意図的なのかもしれないが、音が今一つはっきりせず、3日前の岡本さんの正確さと音の粒立ち、音色がいかに素晴らしいかったか、先日聞いた友人も同感とのことだった。
 後半は、冒頭から力強く、文楽もケラスのレパートリーで、とても良い演奏だった。リゲティは、テクニック満載で、熱演してくれて、チェロって、こういう音だったと、時々入る移弦の擦れる音を含め、チェロらしい音を満喫した。それでも、弓の毛は一本も切らず、あえて、バッハの奏法の違いを示してくれたと思う。
 アンコールのデュポールの7番では、バロックのテクニックを見せてくれて、一晩で、お客さんのために色々な世界を見せてくれた。優しさに溢れ、使命感をもって演奏、指導している印象を受け、聞いていて気持ちが和んだ。
Program
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
・ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 Op.72
---------------』
・黛 敏郎:無伴奏チェロのための「BUNRAKU」
・リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011
 
◆ アンコール
・デュポール:エチュード第7番
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 BWV1012 より「プレリュード」
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岡本侑也無伴奏Ⅱ チェロリサイタル トッパンホール [コンサート]

 スケールの大きいチェリストになったなぁと、メジャーリーグの大谷翔平を見る時の眼差しと共通する、誇らしい気持ちだった。
 もう3年前になるが、トッパンホールでの無伴奏リサイタルが、とても素晴らしいものだった。さらにあれから研鑽をつみ、クリスチャンツィメルマンとの海外ツアーに二度誘われ、ヨーロッパでも知名度が上がり、今年1月には、Quatuor Ébène の正式チェリストとなった。
 2月末に曲目を変更し、ペンデレツキ「チェロのための組曲」から、イザイのソナタと文楽になった。当日になると曲順が、下の様になり、むしろ冒頭に美しいイザイが入って、演奏会の流れとしては、良かったと思う。
 この日の印象は、いつもの、正確、繊細の上にスケールが大きく、激しく弾いても、弓の毛は一本も切らなかった。移弦や弾き始めの雑音が一切ないので、目をつぶって聴くと、4弦チェロの音なのか、人の声なのか分からなく滑らかな響きだった。
 後半一曲目のペンデレツキが、最も激しい奏法で、クライマックスで、C線が切れ、一度舞台袖に戻って、初めから弾き直した。この日はカメラが入っていたので、そうなったのかもしれない。
 全ての曲の隅々まで、全ての音が生まれ消えていく時間が愛おしくなる。実は、文楽は何度も演奏されており、プログラムに入れたことに、ちょっとした懸念があったのだが、とんでもなく素晴らしく、きっと作曲家の思いを遥かに超えた名演奏で、暫しお別れの日本への、置き土産ような最高の演奏会を締め括った。
 今回は珍しく楽譜を置いていたが、暗譜の時と何ら変わらず、楽譜は音楽へ昇華され、世界トップレベルの芸術表現を間近で聞かせてもらったと皆驚いたと思う。
 楽器は、今回も本来の自分の物ではなかったが、とてもよく鳴っていて、全く雑音を出さず、どんな奏法も完璧な弓使いだった。弓の毛が切れないと言うのは、無理なく楽器と一体になっているからだろう。
 最後本人の挨拶で、翌朝カルテットの為コペンハーゲンに飛ぶので、今日はアンコールはありませんと、突然変わってしまった自分の環境を、素直に受け入れている風だった。
 ソリストとして大きな飛躍を遂げ、29歳になった岡本さんの就職先とも言えるQuatuor Ébène。この素晴らしい岡本さんを、エベーヌも良く見つけたと思う。人柄は控えめなのに、これほど表現力と技術があり、スケールが大きいチェリストを、拍手一杯で、世界に送り出したい。
 今後は、欧米に留まらずグローバルな旅で活躍するわけだが、カルテットはメンバー交代がつきもの。もし、ポジティブでもネガティブでも、理由ができたら、無理せず、次の道に進んでほしい。まだ人生は長いのだから。

イザイ:無伴奏チェロ・ソナタ Op.28
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 Op.72
~~----
ペンデレツキ:ジークフリート・パルムのためのカプリッチョ
細川俊夫:小さな歌
ユン・イサン:グリッセ
尾高惇忠:独奏チェロのための《瞑想》
黛 敏郎:BUNRAKU
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モルゴーア・クァルテット演奏活動開始30周年記念アンケートプログラム [コンサート]

 2023年に行った、再演希望曲のアンケート(ショスタコーヴィッチとロックを除いた曲から)結果に基づき、プログラムが決定された。
 大フーガはまるで現代曲のような音で、初めて聞いた時は、本当に驚いた。自分から聞く作品ではないが、出会う度に、ベートーヴェンの挑戦的な意気込みを感じ、その人柄を想像する。20世紀のシュニトケ
と一緒に聞いても、違和感がない。
 15番は、さすが、上手だと思った。荒井さんのお話では、いつもより、回数多く練習したとのこと。年齢を感じさせないパワーに感服する。
再演総選挙によるプログラム
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品133「大フーガ」
シュニトケ/弦楽四重奏曲 第3番
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132
出演
第1ヴァイオリン:荒井英治
第2ヴァイオリン:戸澤哲夫
ヴィオラ:小野富士
チェロ:藤森亮一
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岡本侑也 プラハ交響楽団 [コンサート]

 まずは演奏の感想。
 二階奥の席だったので自分では明確に確認できなかったが、双眼鏡を持っていた連れ合いは、岡本さんが出て来るなり、いつもと違う新作楽器であることに気づいた。私は、舞台から離れた席で聞いたことが殆ど無いので、音の響きより最初の音程が気になった。今まで、そんなことは、一度も無かったので。
 一般的にドボコンは舞台奥の管楽器の位置まで、ソロの音が聞こえないこともあるらしい。まして、エリザベートコンクールで、西洋人と違う繊細なドボコンの世界を表現した、吠えないドボコンとでも言おうか、囁くように美しく歌うのだから、違う楽器を弾くには理由があるはずだ。どんな理由にせよ、プロの仕事は情け容赦ない。あれも、良い楽器だったと思うが、楽器に馴染む為の苦労は当然あったと思う。大きな拍手と何度もカーテンコールがあったのに、アンコールは勘弁して欲しいと言わんばかりに、最後は手ぶらで登壇した。
 次は3/10トッパンホールでの無伴奏リサイタルだ!
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104 B.191 (チェロ:岡本侑也)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 B.178「新世界より」
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 第15番 Op. 72-7(アンコール)
指揮 トマーシュ・ブラウネル
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 夏のチケット発売日、サントリーホールの2階最後列B席を購入した。チケット代が高いし、サントリーなら2階後方で、岡本さんのドボコンがどう聞こえるか、試してみても良いと思ったからだ。でもその後、秋に来日した、ベルリンフィル、ウィーンフィルのチケット代を知り、唖然。勿論どちらも行っていない。
 12月になって、チケット間近割引なるものが出て、ジャパンアーツは大丈夫かなと心配になった。さらに1月に入り、他の演奏会も新春キャンペーン中と称し、お値引きが始まった。
 ジャパンアーツのアーティストとしての岡本さんは、私の印象では、構われていなかった気がする。今回のプラハ交響楽団でようやく、インタビュー記事を何ヶ所か掲載し、東京新聞夕刊に広告を載せた。また、エベーヌカルテットの代弾きの記事が音友に載り、メディアの話題と値引き効果があってか、最終日のサントリーホールは、沢山のお客さんが来て下さった。ただ我々アマオケ仲間では、後半が新世界ではちょっと…という人がいたのも事実。今回はチェコのオーケストラだし素晴らしい演奏だったが、国内オケでは安易にドボコンと新世界を組み合わせることが多く、残念だ。
 アンコールのスラブ舞曲は、さすが本領発揮の演奏に聴き惚れた。
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奇跡のチェロアンサンブル2023 [コンサート]

 この一年で、皆さん音楽家としての活動が落ち着かれたのか、皆余裕を持って、それぞれの個性を見せてくれたと思う。
 去年までは、辻本さんと、伊東さんのオケ奏者だけが忙しいと訴えていたような印象だったが、気のせいか皆プロ意識が高まり、潔く、多忙であるという愚痴は一切出なかった。
 伊藤さんが「ラフマニノフ考」を執筆され、ラフマニノフTシャツをつくり、アレンジャーの小林さんは、高額なチェロアンサンブルの楽譜(ラフマニノフ2番、序奏とロンド・カプリチオーソ)を出版された。上野さんは5月にサントリー大ホールで、邦人作曲家の無伴奏リサイタルを、岡本さんは、3月にペンデレツキ他トッパンホールで現代曲の無伴奏の演奏会を開催、そして皆さんのCDが並び、色々花開いた一年だったようだ。
 昼間のプログラムは、前半がソロを四重奏で伴奏する形で、若い順に全員のソロを聴いた。その個性を踏まえた上で後半のアンサンブルを聴くと、一つのメロディーのリレーでも個性が表れ、しかも皆がその各々にピッタリ付けているところが素晴らしい。お互いソリストの立場で、尊重し合えるところが魅力的だ。今後も企画を充実させていくとのことで、若者の華やいだアンサンブルから、次のステップへ、例え年末の息抜きであっても、全員の圧倒的な実力を見せつけるチェロアンサンブルとして、来年も楽しませていただきたい。
 夜の部は、昼間に比べ、精緻さのレベルが下がり、ちょっと学生さんのアンサンブルのような危うい場面もあった。昼夜集中力を保つのは、やはり難しいことだ。

岡本さんの無伴奏リサイタルは、3/10 トッパンホール
https://www.toppanhall.com/archives/voice/bn_094.html

(チェロ):辻本玲、伊藤悠貴、小林幸太郎、伊東裕、岡本侑也、上野通明 (歳の順)
【昼の部 曲目】
パーセル:アリア

ポッパー:アルバムの一葉
フレスコバルディ:トッカータ
ブロッホ:「ユダヤ人の生活」より祈り
ショパン:ノクターン 第2番
メンデルスゾーン:無言歌op.109
ドヴォルザーク:我が母の教え給いし歌
——————–
ポッパー:演奏会用ポロネーズop.14
フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」より前奏曲
ラフマニノフ:交響曲第2番 第3楽章アダージョ
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
【夜の部 演曲目】
パーセル:アリア
ポッパー:ハンガリー狂詩曲
グリーグ:組曲「ホルベアの時代から」
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
——————–
ピアソラ:ブエノスアイレスの四季

アンコール(昼、夜) 上着を脱ぎ ラフマニノフTシャツ姿で演奏
ピアソラ: 現実との3分間
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N響 マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調「一千人の交響曲」第2000回定期演奏会 [コンサート]

 N響定期演奏会第2000回記念として、ファン投票で決まった演目。めったに演奏されないので、チケットの売れ行きが良く、ネット上では早々と完売したように見えた。しかし取り敢えずN響に電話してみると、完売ではなく、期限までに入金されず戻ってくるチケットが出る場合があるとのこと。チケットは必ずしも朝一番に出て来るとも限らないと言われ、11月末から、度々電話していた。12/11の昼前の電話で、その日の朝に出たので、朝早く電話する方が良いと、ベストタイミングを初めて教えてくれた。お蔭さまで翌日手に入った。
 席は2階右手の通路の直ぐ後ろの席で、目の前の通路がTp,Trbのバンダの演奏位置だった。開演直前に、譜面台と楽器置、唾液シートが設置され、従って本番では奏者で視野は遮られ、指揮者は見えないのだが、バンダの人達の息づかいが感じ取れる近さだった。どうも上手く吹けず肩を落としたり、手が震えていたり、初日のバンダの方達は緊張しているように見えた。聖母はオルガンの横で歌った。
 演奏についてコメントできるほどのものは持ってないが、心象としては、過去のイメージと比べ、しつこくなく、音が綺麗で、流れていた。合唱は全て暗譜、ソリストの言葉もよく聞こえたと思う。唯、全体の迫力を期待していた人には、この規模では物足りないだろう。歌手の中にはオペラぽく歌う人もいたが、おそらくルイージが選んだ歌手陣なのだろう。
 自分としては、この2年間で、マーラーの交響曲 4,5,6番をアマオケで弾く機会があり、マーラー独特の音にも馴染み、胸に染みいるマーラーの情景となった。
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「わ」の会コンサート vol.9 Leiden [コンサート]

 8月に亡くなられた飯守泰次郎氏の教えを受け継いで、新しいワーグナー歌手を育てるという場が「わ」の会の使命となったと、愛弟子の城谷さんの言。故飯守先生に捧げられた、最後のタンホイザーの巡礼の合唱は素晴らしく、一節だけだったが、池田先生のハレルヤが、力強く響き感動した。
 今年のテーマはLeiden(苦悩)であり、先ずトリスタンとイゾルデを連想するが、前半では、初期作品のリエンツィと恋愛禁制からも苦悩の場面が歌われた。個人的には、恋愛禁制の当該場面は、苦悩に感じられるが、リエンツィの方は、劇全体が困惑しているイメージで、感情表現としては、まだ未開拓な時代だと思う。
 歌手は、皆さんそれぞれ素晴らしく、男声は年々貫禄がついて堂々として来る。やはり経験が歌手を育むものだと感じる。イゾルデ代役の中村真紀さんは、既に全幕制覇されているのだろうか。ブランゲーネ役の高橋華子さんは、演技も慣れていらっしゃるご様子で、安心して聞くことが出来た。其々頑張って活躍していただきたい。
 コーラスが入ると、歌う場面の選択肢が増えて、プログラムも豊かになり、楽しいと思う。
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Be Phil オーケストラ ジャパン [コンサート]

 ベルリンフィルの教育プロジェクトの一つとして、ワールドツアー先でアマチュアオーケストラメンバーをオーディションで募集する企画が、今年の日本ツアーから始まった。1200人が応募し、98人が選ばれたという。
 オケに多分知人がいるだとうと、楽しみに行ったのだが、プログラムに知った名前は無かった。そしてオケが舞台に登場すると、即座に若い熱気が伝わってきた。そうかアマチュアの腕自慢も世代交代したのだと、改めて、自分らの年齢に気づかれた。
 オーケストラの応募条件は、日本在住のアマチュアで、ジュニアは不可、選考はビデオ審査だった。コンマス、弦の首席他何人か、ベルリンフィルメンバーがオケの中に入り、一緒に弾いて導いてくれることは、彼らにとって、最高に幸せな体験だろう。舞台後方の客席ではベルリンフィルのメンバーもかなり聞いていた。
 一曲目ブラームスは、ソロを聞かせるために、相当オケの音量を落としていたし、複雑な音の絡みに細心の注意を払っていた。クヴァンツは、たまたまかもしれないが、以前のような力強さは無く、自分が聴く、クヴァンツ引退前、最後のソロ演奏になるかもしれない。樫本大進は、これが日常なのだろうが、本当に素晴らしかった。
 プロコフィエフは、音量が全開になる箇所が多く、音を割らずに、雑音を出さずに、全身で音を作る、ベルリンフィルの真骨頂の響きが伝授されたことが想像できた。ペトレンコの前に、誰がどんな指導をしたのか興味津々だ。最初にパート練習もあり、自分が発する音についての心構えをとことん学んだであろう彼らが、今後全国各地でこの体験を伝授したなら、日本のアマオケも変わって行くだろうなあと誇らしく思う。この機会に全てを吸収しようという姿勢を感じ、特に1Vnの魂のこもった音の美しさはプロオケを凌ぐものだった気がする。どのパートもテクニックは勿論、よく歌っていて素晴らしかった。自分は今回ベルリンフィルの演奏会を聴いていないので、久しぶりにペトレンコを間近で感じられて、気分が高揚した。本気で、大きな音を美しく鳴らすのはオケの醍醐味であり、会場の皆が喜んだと思う。
 現地でベルリンフィルを聴くと、血流が良くなり、血が綺麗になる気がするのだが、この演奏はそれに近い効能が自分にはあった。オケに参加された弦楽器の方の話を伺ってみたいものだ。
 この日隣の小ホールは、日本ウィーン・フィルハーモニー友の会主催のウィーンフィルSteudeTrioのコンサートだった。日本で友の会があるのは知らなかった。 
ラファエル・ヘーガー(ブラームス) Raphael Haeger, conductor/Brahms
キリル・ペトレンコ(プロコフィエフ) Kirill Petrenko, conductor/Prokofiev

【ソリスト】
樫本大進(ヴァイオリン/ブラームス) Daishin Kashimoto, Violin/Brahms
ルートヴィヒ・クヴァント(チェロ/ブラームス) Ludwig Quandt, Violincello/Brahms
[プログラム]
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102
(指揮:ラファエル・ヘーガー/ヴァイオリン:樫本大進/チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント)

プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』組曲第1番 Op.64bis、第2番 Op.64terより
1. モンタギュー家とキャピュレット家(第2番)
2. 少女ジュリエット(第2番)
3. 僧ローレンス(第2番)
4. 踊り(第2番)
5. 仮面(第1番)
6. ロメオとジュリエット(第1番)
7. タイボルトの死(第1番)
(指揮:キリル・ペトレンコ)
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フロレスタン・トリオ ゴルトベルク編曲弦楽三重奏版(津留崎直紀編曲) [コンサート]

 恥ずかしながら、これまでゴールドベルク変奏曲のを殆ど自分から聴いたことが無く、アリアの美しさだけで満足していた気がする。それでも、今回全曲演奏を聴き、曖昧な知識から想像しても、この編曲はかなり挑戦的なものに感じられる。
 フランス、ドイツで現役として活躍されているプレーヤーのさすがの実力に、まず驚嘆した。私のイメージとしては、現地で聞くヨーロッパの音色だった。Vn、Vlaの先生方は余裕綽綽、まるで一日中でも楽器を弾き続けていられそうな、安定した美しい音色だ。終盤どんどん演奏自体が難しくなるが、Vlaは益々鳴り響き、全体を盛り上げる。そして演奏不可能にも思えるチェロの活躍が驚くばかりで、自ら演奏するからこそ、このような編曲をされたのだろうとアレコレ想像した。
 チェンバロ演奏の技術を弦楽器に移し、例えば2段鍵盤の音を三本の弦楽器で分かち合う大変さはいかばかりだろう。連続したフレーズに聞こえるように奏でる技術も溶け合った音色も素晴らしい。残響を味合うチェンバロに比べ、弦楽器は音を伸ばすことができ、音が広がり、編曲の意図通り、音の立体感を確かに感じる。特にVnとVlaの音は完全に溶け合っていた。カノンは各楽器ごとにテーマが聞こえるので、チェンバロより聞き取り易いと思うが、一度から九度までのカノンが作れるバッハの職人技に、現代人として尊敬の念を新たにした。
 自分にとっては新鮮な出会いで、今更ながら、チェンバロ演奏をYouTubeで聞き、マニアックな技に心動かされた。

J.S.バッハ(津留崎直紀編曲)
ゴルトベルク変奏曲BWV988(弦楽三重奏版)
ゴルトベルク編曲にあたって 
〜より有機的で立体的な弦楽三重奏版を求めて〜 津留崎直記

「フロレスタン・トリオ」
津留崎晴代(ヴァイオリン)
上野なち子(ヴィオラ)
津留崎直紀(チェロ)
市ヶ谷ルーテル
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フィルハーモニックトリオ ウィーン [コンサート]

 Wiener Phillharmoniker Steude Quartetのトリオでのコンサートがあることを知り慌ててチケットを購入した。会場は日経ホール、残席は最後列だった。ここはコンサート用の会場ではなく、客席が前例とずれていないので、多分私の前の男性も舞台が見えなったのだろうか、5秒に一回くらい、左右に頭を振るので、小柄の身には残念ながら殆ど舞台が見えなかった。
 Vcは先週ロココを聴いた、Wolfgang Härtel氏、VnはコンマスVolkhard Steude氏、Vlaは主席のTobias Lea氏が代理で演奏された。ピアノの三輪 郁さんは、長くSteude氏の伴奏をされているそうで、弦楽器と溶け合う、優しい音だった。
 コンマスのSteude氏はさすがだ。音の軽業師とでも言えるだろうか、あらゆるテクニックを融合させ、曲芸のような軽やかなソロで楽しませてくれた。チェロのHärtel氏の演奏は、ロココの時の印象と同じく、歌心が魅力的だ。ロココの時も音の優しさ、温かさ、優雅さは夢心地の響きだった。ロココヴァリエーションは、腕自慢の若者たちが、よく超絶技巧を披露してくれるが、ヘルテル氏の演奏は、技巧は深いところに音楽の前提としてあり、聞かせたいのは歌う音色である気がする。
 シューマン/アダージョとアレグロはオリジナルはホルンの曲で、とても美しい。でも日本人がチェロで弾くと、アダージョがどうも日本人には合わないようで、名手が弾いても、どういう訳か、音が平面的になってしまう印象がある。ところが、西欧人が弾くと、ごく自然に音が膨らみ、甘いメロディが聞こえてきてうっとりする。Vlaの音色の方が合っているかもしれないと感じる日本人の演奏は聞いたことがある。
 演奏曲順が変更になり、最初に弦楽トリオで会場を温め、ソロを弾いて、後半ピアノ四重奏となった。やはり全て軽やかだ。
 今年の秋、ほぼ同時に来日した、ウィーフィル、ベルリンフィル、ゲヴァントハウス、どれもも聴きは行かないが、ウィーフィルについては、これまでソロでは多分、ヴァルガ氏の美しいバッハ無伴奏しか聞いたことが無かったと思う。でも、その時の空間を漂う音のイメージは、メンバー皆さんに共通する優雅さと美しい音色であることを認識できた。このファジーな心地良さは、ウィーンフィルが世界で愛される理由の一つかもしれない。
 会場でCD販売があり、シュトイデカルテットのCDと、シュトイデ氏と三輪さんのデュオ、三輪さんのソロもあったかもしれない、数種類並んでおり、買った人対象のサイン会があった。

シューベルト/弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D471
ヴィオラ・ソロ ブルッフ/ロマンツェ 作品85
チェロ・ソロ シューマン/アダージョとアレグロ
ヴァイオリン・ソロ R.シュトラウス/「ばらの騎士」より ほか
モーツァルト/ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K478
(アンコール:メンデルスゾーンピアノ四重奏三番、3楽章)
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N響 ルイージ ヴァーグナー リング抜粋(フリーヘル編曲) NHKホール [コンサート]

 ルイージが振るN響の演奏を初めて生で聴いた。N響は年一度東京春音楽祭のWagnerを東京文化会館の5階席で聞く以外は、殆どサントリーで、今年の冬一度だけ高崎でも聞いたくらいだ。
 今日の印象は、今までのN響のイメージと違っていて、木管ソロの音が太くて、歌い方がヨーロッパ的で洗練されて来た。ホルンは完璧とは言えなかったが、歌い方はかなり好いと思う。ルイージの指揮は情熱的でねちっこい。
 今日のリングの編曲は、後半2演目に重きを置いてあり、ブリュンヒルデの目覚めから、猛烈に盛り上がっていく。ルイージの指揮でN響の音色が明るくなっているのだろうか。いつものような、フレーズの途切れがなく、勇猛果敢に突き進む、こんな音が出るのかと、ちょっと嬉しい。
 ゲストコンサートマスター高井さんは、3階席斜め後ろから見ると、弾き方は派手さがなく、着実にオケと一緒に音楽を作っているように見えたのだが、恐らく、キャリアからして、相当のリーダーシップと、美しい音色を兼ね備えた方なのではないだろうか。ここまでN響の音色が、明るくなるとは、私にとっては、まだ、信じられない。NKHホールが変わったのか、ルイージの求める音色なのか、コンマスの力なのか、他の演奏も聴いてみたくなった。
 開演前の室内楽演奏は、知らないうちに、ロビーから舞台上に変わっており、自席で聞くようにとのことだった。クラリネットが美しく響き、美しい演奏だった。
 残念ながら空席が目立つ。渋谷の街は、大雨の後なのに大賑わいだが…

曲目
ワーグナー(Henk de Vliegerフリーヘル編)/楽劇「ニーベルングの指環」-オーケストラル・アドベンチャー-
ゲストコンサートマスター : 髙井敏弘 マインツ州立交響楽団第一コンサートマスター
開演前の室内楽 
曲目:
ベールマン/クラリネット五重奏曲 第3番 変ホ長調 作品23─第2楽章*
(伝 ワーグナー/クラリネットと弦楽のためのアダージョ 変ニ長調)
ブラームス/クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115─第3楽章
クラリネット 松本健司
ヴァイオリン 髙井敏弘 マインツ州立交響楽団第一コンサートマスター
ヴァイオリン 田中晶子
ヴィオラ 飛澤浩人
チェロ 辻本 玲
コントラバス 西山真二*
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ベルリンフィル バレンボイム2023.6 [コンサート]

 最終日はベルリンフィルを聴いた。チケットを購入した時点では、バレンボイムの体調が気がかりだったが、BDLOで知り合ったベルリンシュターツオパーのCb奏者が、90%大丈夫だと思うと言ってくれたので、ほっとした。
 初め指揮台の上に椅子が置かれていたが、マエストロ自ら指揮台から下ろした。期待通り、静かで細やかな音が心に沁みる演奏だった。
 フランクは地味な曲だが、さすがベルリンフィル、音色の変化が、日差しの変化のようで、緩やかに、時には瞬時にはっと目を見張るようで、フランク特有の響きを堪能した。
 後日デジタルコンサートを見て驚いたのは、ガランチャはレーベルとの契約で、YouTubeや不特定多数が見るような、この手のメディアには出られないらしい。プログラムには載っているのに、生中継でもカットされ、代わりにモーツァルトのピアノコンチェルトが流れたそうだ。デジタルコンサートの映像は私が見た初日の舞台ではなく、バレンボイムの指揮している表情が多少硬かった気がして、3日間連続の本番で、体調は大丈夫だったのだろうかと、やはり心配になった。
 ガランチャは本当に声も姿も美しい。以前、ドレスデンでティーレマンのバラ騎士のオクタヴィアンを聴いた位だが、この夏、ガランチャはバイロイトでクンドリー役を歌う予定だ。パルジファルのプレミエから出演予定だが、映像はどうなるのだろう。もう一度出会えると嬉しい。
Berliner Philharmoniker
Daniel Barenboim Dirigent
Elīna Garanča Mezzosopran
Gabriel Fauré

Pelléas et Mélisande. Orchestersuite op. 80
Richard Wagner
Wesendonck-Lieder (Orchestrierung von Felix Mottl und Richard Wagner)
Elīna Garanča Mezzosopran
César Franck
Symphonie d-Moll
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Sonny Center工事中
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ライプツィヒ マーラーフェスティバル ティーレマン マーラー3番 [コンサート]

 ライプツィヒ最終日はティーレマンの3番、この三日で、Gewandhausの音響の素晴らしさを心底体感できた。オケの出す音の特徴の機微が聞き取れる。ティーレマンのドレスデンシュターツカペレは、確かに、泥くさい音も聞こえたが、いつもゼンパーオパーではホール全体の総合的響きを楽しんでいた。Gewandhausでは、各章ごとにテーマのある音楽の色の濃淡をくっきりと描いてくれた感じだ。こんな風に感じとることが出来て感無量だ。マーラー3番はドレスデンで演奏してから、Gewandhausへ持って来ており、チケット代は高く、フェスティバル価格になっている。私が渡独を決めた時点では、ティーレマンのマーラー3番は既に完売しており、キャンセル待ちで回って来た席だった。
GASTKONZERT: 3. Sinfonie (Sächsische Staatskapelle Dresden, Christian Thielemann)
Sächsische Staatskapelle Dresden, Damen des Sächsischen Staatsopernchores Dresden, Kinderchor der Semperoper Dresden, Christian Thielemann Dirigent, Christa Mayer Alt
Gustav Mahler — 3. Sinfonie
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夜はエントランスの絵画がライトアップされる
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ライプツィヒ マーラーフェスティバル マーラー10番、1番 [コンサート]

 この日は、マーラーユーゲントオーケストラ、ガッティ指揮による、マラ10とマラ1だった。
 10番の出だしから、1Vnの音色がまた美しく、ベルリンフィルで感じる透明な音とはまた違い、一音一音粒だっていて、例えるなら、角を持った宝石かクリスタルのように音の粒があちこちの方向に向かって輝きを放っている印象だった。こういう印象の音は初めてのことで、これも、Gewandhausのホール音響なのだろう。驚いた。
 Gewandhausオーケストラは演奏会が少なく、これまでこのホールのコンサートをメインに旅を計画したことが無かった。これほどドイツに来ていて、過去二度しかここで聴いたことがないのだ。
 今回もゲストオーケストラを3つ聴くだけで、Gewandhausオーケストラを聴くチャンスが無い。今後は考えねばと思う。
GASTKONZERT: 1. Sinfonie (Gustav Mahler Jugendorchester, Daniele Gatti)
Gustav Mahler Jugendorchester, Daniele Gatti Dirigent
Gustav Mahler — Adagio aus der 10. Sinfonie
Gustav Mahler — 1. Sinfonie D-Dur
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向かい側のオペラハウス
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エントランスの天井画
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ライプツィヒ マーラーフェスティバル マーラー9番 [コンサート]

 今回はフランクフルトからライプツィヒまではDBを使った。予定通り、3時台のICEに乗り直通で6時半ごろライプツィヒに着く方法でもよかったのだが、もう1本早いICEに乗り1回乗り換えで早めに着く選択もあり、どちらが安全かわからないが、エアフルトで、たとえ乗り換えのICEが来なくても、待っていれば、当初の直通の列車が来るはずだ。そう思い、早めの1度乗り換えの方法を選んだ。案の定、エアフルトで17分待つ予定が大幅に遅れ42分待ちとなった。信じられなくほど外が寒く12度でみんな重ね着する服を取り出している。あと3分のところで先に直通のICEが来た。結局これに一駅乗り無事到着した。
 ライプツィヒに着くと、何だか一年前の続きのような感覚があり、戻ってきたような気持ちになった。
 マラ9はこの頃、日本のアマチュアがよく挑戦するが、一体どんな風な演奏しているのだろう。こんなに美しく聞こえるものだろうか。ちょうど席から見えた凄く上手な女性チリチェリストは、弾き終わって感無量の様子だった。オケは隅々まで完璧という訳ではなく、ずれたりもしたが、要所要所の美しさは、神がかっているいると思う。前方の席だったので、ハッキリ楽器ごと、パートごとの音が聞き取れて、改めて凄い迫力ある作品だと感動した。昨年ゼンパーオパーで聴いたときは、平土間ではまとまった響きとして聞こえ、最上階は音は分離して聞こえたが、違う次元で、ゲヴァンとハウスの繊細な響きは、格別だと思う。
GASTKONZERT: 9. Sinfonie (Budapest Festival Orchestra, Iván Fischer)
Budapest Festival Orchestra, Iván Fischer Dirigent
Gustav Mahler — 9. Sinfonie
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ソッリマ「氷のチェロ物語」と演奏 [コンサート]

 イタリア文化会館の催しに誘っていただき、初めてソッリマの生演奏を聴いた。第一部は「氷のチェロ物語」の映画を上映し第二部はご本人のお話と演奏という素晴らしい企画だった。
 氷でどうやって彫刻家がチェロを作るのか、氷を削るのだろうかと想像していたが、大元は水だった。アルプスの氷河を水で溶かしてシャーベット状の氷を手での伸ばし表板、裏板を成形し、透明な氷で光り輝く魂柱を作る。ネックと指板は通常の物、駒は氷で、弦と接する部分には波型の金属を乗せている。横板もシャーベット状の氷だが、かなり堅そうに詰め込んでいるように見える。全体にかなり氷は厚く、垂直より少し傾いて固定された楽器を半立ち状態で弾く。弓は主にバロック弓が映像には映っていた。
 演奏場所は約マイナス10℃のビニール球体バブルの中、イタリアを南下しながら数都市で演奏し、ソッリマの故郷シチリアまで行く。その間のアクシデントを追ったドキュメンタリー映画だ。
 バブルの空調が故障し、むき出し状態でドライアイス粉末を振りかけながら演奏するが、楽器が溶けていき、思わず涙が込み上げて来る。氷の状態により音色が変化するとのこと。楽器を運ぶ車の冷凍庫も故障する。氷のチェロを弾いたインスピレーションで移動中に作曲もする。The N-Ice Cello Concerto のオーケストラ用の楽譜起こしをする映像もある。
 映画だけでは分からないことも、あちこちで情報収集できる。
https://www.bunkyo-gakki.com/stories/music/europestringwatch/ice
https://www.plankton.co.jp/sollima/icecello.html
 後半、いよいよソッリマが登壇し、招聘した代表からのインタヴューがあった。ソッリマはチェロを木の枝に引っかけて、風の中で弾いたり、海中で弾き、伝わる音を録音もしたらしい。音楽は自然の本質というスケールの大きい芸術家だと思う。この日演奏されたのは、Giovanni Sollima : The N-Ice Cello Concerto の最後の部分、 Lamentatio、Fandango (after Boccherini)、もう一曲はNatural Songbook からだと思う。Lamentatioは岡本侑也さんの演奏会でアンコールとして聞いたことがあったが、オリジナルはかなり長く、歌にも歌詞があり、声とチェロの音がハモり溶け合い、アフリカの民族的呪術的なメロディーやリズムを感じる。シチリア島はアフリカの歴史文化と交わる土地であり、家族何代にもわたり、多様な文化と接しているのだ。
 氷のチェロでさえ、演奏するソッリマの身体との一体感が感じとれる。自身の楽器であれば尚更のこと、エンドピンの先から指板の全領域までもが楽器で、激しく深く重厚な魂の声も、美しいはかない天上の声も全て自然に湧いてくるようで、ものすごい衝撃を受けた。どんなに激しく弾いても、音が綺麗で和音が濁らない。楽譜を一切使わず全て暗譜しているとのこと。演奏時にエンドピンを止める穴が見つけるのに大変そうだったが、楽譜を見ない分、視力を気にしていないのかな、などとふと思った。没入する姿から、楽器は自ずと身体の一部であり、その融合体は自然の一部であり、強いエネルギーを発しているようだ。興味は尽きない。
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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 特別演奏会 飯守泰次郎のブルックナー交響曲第8番 飯守泰次郎のブルックナー交響曲第8番 [コンサート]

 近々自分が演奏する機会があるので参考のために、また飯守先生がお元気なのか気になって、チケットを買った。4月末の桑田先生と新日フィルのブル8も買っていたが、残念ながらお亡くなりになり、キャンセルされた。この日配られたフライヤーの束にそのコンサートチラシが入っていた。悲しい。
 コンマス戸澤先生を中心に各パートの首席がぐいぐいオケを引っ張り、恐らくはマエストロの音楽を体現したのではないだろうか。ブルックナーは音楽が変わるところで、指揮者のテンポ指示や約束が無いと難しい。3回ほど、おやっと思う場面があったが、コンマスがしっかりとテンポをリードしており、破綻しなかった。思ったより早いテンポで、若々しい演奏だった。冒頭、Vcはppなのだが、予想より音量がかなり大きく、全体的にエネルギーを蓄積する部分より、発散する力に溢れる演奏だった。版はノヴァーク。
 桑田さんならどんなだったろうかと想像しながら、個人的には桑田さんの追悼の思いを込めて、音楽を聴いた。
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弦楽四重奏コンサートー悠久の室内楽ー国際音楽芸術振興財団 [コンサート]

 国際音楽芸術振興財団ご招待の無料コンサート、今回は異次元の!演奏を堪能させてもらった。ヨーロッパに行けば、メディアに登場せずとも素晴らしい音楽家にたくさん出会うが、まさに、そんなカルテットを聴いたときのような、満足感があり、雑音が無く、細部まで完璧に作品に忠実な表現者を目指す音楽だと感じた。常設カルテットではないだろうし、申し訳ないがお名前を存じ上げなかったが、とても上手で、皆素晴らしい経歴を持ち、ご活躍されている。芸術家は饒舌に自己PRできる方と、ひたすら創造の世界を通してだけ自己表現する控えめな方に大別できるように最近特に感じている。チェロのマルモ・ササキさんは、何と、ベルリンシュターツオパーの永久正団員とのこと。「サイクロンのように激しくダイナミックで、多彩な音色と素晴らしい響き」と評され、まさにその通り、見事だと思う。演奏にサイクロンという例えは初めて聞いた。楽器も相当なものだと思う。鑑賞する側の好みだが、太い幹が天にのびるように力強く、4人が一糸乱れず、一つの楽器のようなカルテットが自分には理想だ。今ここは本当に日本かと思うほどのヨーロッパの響きに、心底感動した。
 これからも、時々日本にヨーロッパ風の音を響かせていただきたいし、多くの方に聴いていただきたい、めったに体験できないコンサートだった。オペラシティのリサイタルホールに行くのは何年ぶりか、改装後は初めてだが、よく響いて印象が良くなった。

プログラム
F.J.ハイドン:弦楽四重奏曲 第77番 ハ長調「皇帝」Hob.III:77 Op.76-3
F.メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.44-1
F.シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810「死と乙女」

出演者
1stヴァイオリン:上里 はな子
2ndヴァイオリン:ビルマン 聡平
ヴィオラ:鈴木 康浩
チェロ:マルモ・ササキ
於:東京オペラシティ リサイタルホール

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トゥガン・ソヒエフ&NHK交響楽団 高崎公演 [コンサート]

 サントリー定期Bプログラムをそのまま高崎まで持ってきた演奏会。高崎は遠いけれど、駅到着寸前に車窓に開ける山の景色が美しく、遥々やってきた高揚感がある。
 ウクライナ侵攻が始まった1年前、ロシア人芸術家達の立場表明が求められ、ソヒエフは立派なメッセージを残してトゥールーズのオケとボリショイ劇場双方の職を辞し話題となった。その時ロシア寄りの人物として姿を消した芸術家達に、いつの日か明るい未来は訪れるのだろうか。
 アミハイ・グロスのVlaは、音域の低いVnというのも失礼なVlaジョークだが、本当に音が流麗で聞き惚れてしまった。アンコールにN響首席の佐々木さんとデュオを弾いた。
 ダフクロは音の起伏が自然で、ヨーロッパで聞く音のようで驚いた。さすがフランスでのソヒエフのキャリアと、若返ったインターナショナルなN響メンバーの意識、実力が素晴らしい音を作ってくれたと感じる。
 2015年にソヒエフの演奏を、ドイツ・シンフォニーオーケストラ・ベルリンで聴いたときは、軽快な音運びという印象だった。https://gruen.blog.ss-blog.jp/2015-06-29
 個人的にいつも感じるのは、ヨーロッパと日本のオケの音色の違いだ、これまで日本人には、日本の音階、色彩のDNAが染み込んでいて、Vibが暗く地味で控えめの美徳のようなものが残っていた気がする。音色が内向きの印象が拭えなかった。でも、今の中心世代は、体感として欧米の音を知っていて、色彩の躊躇もなく、積極的にカラッとした音が出せるのではないだろうか。
 海の音色も揺れ方も、さすが3回目の本番、会場全体を取り込んで鳴り渡っていた。カーテンコールの写真撮影はOKとなっていた。オケが去った後ソヒエフだけ舞台に出てきて、何度も大きな拍手を受けていた。良い演奏会だった。
指揮:トゥガン・ソヒエフ
ヴィオラ:アミハイ・グロス(ベルリンフィル首席)
バルトーク/ヴィオラ協奏曲(シェルイ版)
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番
ドビュッシー/交響詩「海」
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モルゴーア・クァルテット 演奏活動30周年 Vol.1 モルゴーアの証言 [コンサート]

 後から思えば、 NHKのカメラが入っていたからだったのか、メンバー4人とも、冒頭からいつもより表情が堅かったように見えた。そして真面目な演奏だった。
 オール・ショスタコーヴィチ・プログラムで、どれも綺麗な曲のせいか、客席もほぼ満員で、コロナ前の熱気が戻ったようだ。モルゴーア30年の軌跡という冊子をつくり、第一回目からの全定期演奏会のとても個性的なフライヤーが掲載されている。価格は1000円、連れ合いが当然の如く、購入していた。
 ピアニストとの息もピッタリ合い、落ち着いた雰囲気は、30年のショスタコキャリアが、巨匠の域に来たことを語っているようだ。
 いつもの荒井先生のお話で、来年度の定演2回のプログラムは、過去演奏したのショスタコ以外の曲で、お客さんが聴きたい作品をアンケートとして募集し、参考にされるとのこと。インターネットでも投票に参加できるとのことだ。
http://www.millionconcert.co.jp/interview_topcs/topcs/230123topic.html
プログラム
交響曲 第9番 変ホ長調 Op.70より第1楽章(荒井英治編曲)
ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57(ピアノ:野田清隆)
弦楽四重奏曲 第5番 変ロ長調 Op.92
アンコール:ピアノコンチェルト2番 2、3楽章
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トッパンホール ニューイヤーコンサート 2023 シュテッケル [コンサート]

 ユリアン・シュテッケル氏は2010年ARDミュンヘン国際コンクールで一位になったチェリストで、私は現地で二次予選と本選を聴いていた。今は岡本侑也さんの先生だが、ようやく東京で演奏を聴くことができた。2019年には名古屋まで行ったが、音のインパクトとしては今回の方が絶大だ。つまり、作品により表情を変化させる、正統派チェリストなのだと思う。
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2019-04-30 https://gruen.blog.ss-blog.jp/2010-09-03-2
 コダーイを弾き始め、音の太さ、幅広い響きに驚いた。シュテッケルは長身なので、右腕に余裕があり、激しく首を振っても、身体をよじっても、音に悪影響ぜず、常に音が美しい。速いパッセージで力をかけているように見えても、音は軽快に粒立って聞こえる。
 一曲終わると、ホールプログラミング・ディレクター西巻氏が新年のご挨拶に舞台に現れた。日本では珍しいパフォーマンスだ。そして新年のサプライズとして、弟子の岡本侑也さんを呼んで、パガニーニのモーゼの変奏曲をデュオで聴かせてくれるという。これは非常に珍しい。シュテッケル氏は日本ではあまり知名度が高くないので、コンサート紹介に、最初から岡本さんの先生として紹介されている。師弟というより兄弟みたいな演奏だと前触れがあり、まさにその通り、二人で楽しそうにスーパーテクニックを披露してくれたのが印象的だった。たまに、師弟共演で各段の差が出てしまったり、弟子が必死になってしまったりする演奏があるが、この組み合わせは二人それぞれが素晴らしい。先生はスケールが大きく、大胆に寄り道やルバートもする。岡本さんは、常に誠実でストレート、完璧だ。お二人とも自然体で、こちらの気持ちが温かくなる演奏だった。
 後半は打って変わり、弦楽トリオ用に編曲されたゴルトベルク変奏曲。バロック奏法にチェロの弾き方も音色も変え、三人で一つの楽器を理想としているのだろう、神経が行き届き、よく集中力を維持できるものだと思う。常設トリオでないのにこれほどの一体感を保つには、何回くらい練習できたのか気になる。
 シュテッケル氏はサプライズ企画含め出ずっぱりで、全くスタイルの違う超難曲3つ、正味1時間半は弾いていたことになる。
 ※2024年春、トッパンホールで、岡本侑也さんの二度目のソロ・リサイタルが催されるとのことです。

ユリアン・シュテッケル(チェロ)
山根一仁(ヴァイオリン)
原ハーゼルシュタイナー麻理子(ヴィオラ)
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ Op.8
J.S.バッハ(D.シトコヴェツキ編):ゴルトベルク変奏曲 BWV988
トッパンホール
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再臨「桑田歩の英雄」 [コンサート]

 SNSでコンサートのことを知り、これほどのメンバーが集うとはただごとでは無いと思い、友人と4人分チケットを申し込んだ。全席自由なので、開場40分前から並び、希望の席で聴くことができた。
 プログラムにはなかったが、初めにソリスト桑田さんを囲んで「鳥の歌」が小さな弦楽アンサンブルで演奏され、桑田さんのお人柄をしみじみと感じ、胸が詰まった。
 エロイカは凄かった。昨今ベートーヴェンの交響曲が、原曲の指示通りだとアップテンポででサラサラ演奏さられることが多いが、今回の演奏は、一音一音に魂のこもった、本当は自分達はこう弾きたいのだと言わんばかりの情熱的な演奏だった。エロイカはベートーヴェンの画期的な交響曲で、桑田さんもプログラム上で、ビックバン、文明開花の象徴と書かれている。この年齢になって、長い間の迷いから解き放たれ、こう演奏して良いのだと実感でき、生涯忘れられないエロイカとなった。
 指揮する桑田さんの左手が力強くオケの音を引き出し、指揮者も奏者も渾身の力を振り絞って音楽を創り出しているようで、胸が熱くなった。
 来場していた知人たち皆が口を揃えて皆素晴らしい、凄い演奏だったと。会場全体が深い感動の余韻に浸った年の始めのコンサートだった。
めぐろパーシモン大ホール
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奇跡のチェロ・アンサンブル2022 [コンサート]

 2016年から始まった「6人の若獅子が集う奇跡のチェロ・アンサンブル」はコロナ禍の映像配信などを経て再開、久しぶりで演奏を聴いた。曲の合間に奏者たちのお話が入るが、最年長の辻本さんが仰るに、ご自身が40歳、一番若い上野さんが27歳になり、いつの間にか、「若獅子が集う」という枕詞が、無くなっていたと。
 コロナ禍で音楽家が飛躍した例はたくさん見てきたが、今日の6人も色々な人生模様があっただろう。
上野さんはジュネーヴの国際コンクールで一位を取ったし、伊東裕さんは正式に都響の首席になり、先日は岡本さんのエルガーの伴奏をしてくれた。6人がお互いの個性を認め合う演奏は、聴いていて楽しい。奏者自身も、楽しくてたまらないと言う。自主公演は彼らにとっては息抜きの場、仕事ではないようだ。聴衆より自分らの楽しみを全面に出すコンサートに物申す人もいるかもしれないが、年末に「奇跡的に集合した6人」といっしょに音楽を楽しむ年忘れは悪くない。
 上野さんの音は明るく響き、辻本さんのストラドの音は重くて、粒が立つ。葵トリオの伊東裕さんは昔から端正なチェリストで、首席として信頼されるだろう。アレンジャーとしての小林さんの存在は貴重だ。伊藤悠貴さんも日本にはいないので久しぶりだ。岡本さんは、やはり安定している。
 アンコールをTwitterで募集したそうで、ポッパーのハンガリー狂詩曲とピアソラの現実との3分が演奏された。6人均等にソロパートを配分しているところが心憎い。
 来年も同じ日に同じところでやるそうだ。
出 演:辻本玲、伊藤悠貴、小林幸太郎、伊東裕、岡本侑也、上野通明
曲目
クレンゲル:賛歌
グリーグ:組曲「ホルベアの時代から」
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
——————–
R.ワグナー:歌劇ローエングリンから エルザの大聖堂への行進
ボロディン:中央アジアの草原にて
チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」
編曲:小林幸太郎
紀尾井ホール
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秋山かえでwith Her Friends [コンサート]

 珍しいタイプの室内楽演奏を聴かせていただいた。奏者3人とも芸大・院ご出身、チェロの先生にお誘い頂き伺ったのだが、クラリネット、ピアノの先生方も恐らく、長い間プロとして真剣にソロ活動を続けて来られたのではないだろうか。驚いたのは、私たちは絶対にミスはしない、しかもはったりもかけないという強い意志が感じられたこと。普段ご縁があって聴きに行く室内楽は、オケ奏者だったり、ソリスト同士の仲間だったり、限られた時間の中で本番を効果的に遂行するというスリルと華やかさがある。しかし、今回はこの演奏会のために8月から練習されたという。地味だが聴いていて、危うさがまったく無く、誠実で、アマチュアにとっては、素晴らしいお手本になる演奏だった。個人の想像でしかないが、恐らく各先生方、ご家庭と両立しながら、日常に埋没せず、演奏の質を落とさず、誇り高く生きてこられたのだろうと、若い音大生の将来に一つの道を見た気がした。
 今回気づいたのは、歌曲は息を使うので、管楽器に合っているということだ。特にクラリネットは音域が声に近い感じがして、ドラマチックなR.シュトラウスはメロディだけでも語ってくれると感じた。
 しかし、新大久保のこのスタジオ、夜は暗くて場所が非常に分かりにくく、Gマップでストリートヴューまで見たが、到着しても違う映像が出て見つからなかったのは、私一人ではない。路地裏なのに、HPには施設の宣伝ばかり、場所の案内が非常に不親切だと思う。

出演:秋山かえで(クラリネット)、三界晶子 (ピアノ)、牧野ルル子(チェロ)
ベートーヴェン : ピアノ三重奏曲「街の歌」作品11
フォーレ : ピアノ三重奏曲 作品120
R.シュトラウス : 歌曲より 「 夜」/最後の花びら「響け!」/5つの歌曲 クラリネット演奏
ブラームス : クラリネット三重奏曲 作品114
文化庁令和3年度補正予算事業
ARTS for the future! 2 コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業
会場:スペースDO(ドゥ)管楽器専門店DAC地下
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岡本侑也&北村朋幹 デュオリサイタル JMSアステールプラザ [コンサート]

 全国旅行支援のおかげで、広島まで岡本さんのチェロを聞きに来ることができた。
 JMSアステールプラザでは作曲家細川俊夫氏を音楽監督として、Hirosima Happy New Ear(耳)と銘打ち、馴染みの薄い現代音楽に出会う機会を提供している。細川氏の作品も地元では存分に上演できる。この会場は立派なオーケストラ練習場で、音響も良い。広島交響楽団の公演スケジュールを見ると、広島にはたくさんの音楽ホールがあるようだ。とても優雅な文化都市という印象を受けた。
 細川先生のお話がストレートに胸に響く。古楽から現代の最先端の音楽までを「自分たちの音楽」として表現しようとする若者たちが台頭してきていると仰るのは、クラシック音楽という言葉のジャンルで不思議な現象ではないだろうか。確かに岡本さんの現代曲はとても素晴らしい。共演者の北村さんも、そう仰った。前例のないものを発見する喜びがあるのではないだろうかと想像している。
 アフタートークで細川先生が仰ったのは、グリッセは初演から聞いているが、岡本さんの演奏は、これまでとは全く違う新しさがあったと。ご自身の作品リートⅢについては、元はフルートとピアノのための曲だったが、Vla今井信子さんや、イッサーリスにはチェロコンチェルオに編曲を頼まれたそうだ。そして今回、岡本さんには自分では気付かなかった、深い表現を探してくれて感謝していると仰った。そうなのかと腑に落ちた。私はこれまで、新作の作曲者にとって、演奏者の音楽は満足できるものなのか、十分思いが表現されているのだろうかと常に気になっていた。新しい作品は演奏者によって、全く印象が変わってしまうからだ。でも先生の言葉を聞き、やはり岡本さんが新作の演奏を頼まれる理由が、作曲家すらわからない、深い表現力、インスピレーション故だと確信できた。本当にNew Earは現代から未来へ私たちが養っていきたい力だと思う。
 選曲について、ベートーヴェンの4、5番はセットであり、ベートヴェンの時代としてはロマン派への懸け橋となった作品なので、これを二人の奏者で相談して決めたそうだ。確かに4番は、ただベートーヴェンのソナタかと思って初めて聞くと大変な消化不良になると思う。混沌として、どこへ向かうのか訳が分からなくなる。自分が多少西洋音楽のことを理解してきたからこそ、ベートーヴェンの苦悩に共感できるが、若い頃は聴いていて動揺してしてしまう作品だった。
 岡本さんは、苦労話として、グリッセの3楽章ではギターピックのようなものを使い、チェロの4弦をギターのように上下からアルペジオを弾くのが難しく、まず自分の指でなくピックを使うと音が際立ってしまい、指で表現するような音を出すこと自体が難しかった話された。さらにチェロの4弦をギターのように上下にじゃかじゃか、響かせ、そのように聞こえることは大変だったと。
 音楽の好みは十人十色でよいと思う。それでないと演奏家が失業してしまう。でも岡本さんのように、ここまで純粋に音楽を追求、探求できる才能は神がかっている感じがする。ピックの話も、音だけ聞いているとあまりに美しく、裏の苦労、至難の業だとは気づかない。岡本さんが苦しそうな表情で弾くのを見たことがない。ミューズに守られているのだろうか。
 昼間、厳島神社で感じた厳かな空気を岡本さんの演奏からも感じとれる。やはり濁りのない音を地上で聞く機会がめったにないせいかもしれない。
 武満徹が日本人作曲家としての道を拓いてくれ、日本の音楽を西洋音楽の形式に当てはめる必要はないという考えだったと細川先生が仰っていた。日本の緩やかに移り変わる自然の良さようなものを先生も表現されている気がする。
 ドイツでよく終演後のアフタートークがあるが、さすがベルリンの細川先生、地元ならではのゆったりと共有できる時間だった。平日の夜東京ではありえない。白熱したトークを最後まで聞きたかったが、私は終バスの関係で、途中で失礼した。

岡本侑也(チェロ)
北村朋幹(ピアノ)
音楽監督・お話/細川俊夫
L.V.ベートーヴェン チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1
ユン・イサン Glissées(1970)
J.S.バッハ ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番 ト短調 BWV1029
武満 徹 オリオン
細川俊夫 LiedⅢ
L.V.ベートーヴェン チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 Op.102-2

JMSアステールプラザ(公式Twitterより借用)
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「わ」の会コンサート vol.8 —Fragen [コンサート]

 約230席の新宿角筈区民ホールで、前2〜3列座席は使用せず、ほぼ満席となった。指揮者は「わ」の会代表の城谷さん。月曜のワーグナー協会例会に続いて連投。
 個人の好みではあるが、一曲目から、友清さんのザックスに引き込まれた。伊藤さんは夏のパルジファルを聴いていないので、昨年のダーヴィット役以来だが、どんどんレパートリーを広げ、ミーメ役が素晴らしかった。演技も役作りも準備万端、全曲上演で歌ってもらいたい。テノールとして、毅然としたローエングリンも良かった。役をはっきり歌い分けて、スターの階段上昇中。楽しみだ。
 池田さんのオルトルートは、役作りも魅力的で、早くも巨匠の風格が漂い、役に対する信念を感じる。池田さんと井上さんは、いつでも代役受けますという勢いが頼もしく、日本人として誇らしい。
プログラム
1)「ニュルンベルクのマイスタージンガー」2幕3場4場~ニワトコのモノローグからエーファとザックスの対話場面。ザックス:友清崇、エーファ:宮城佐和子 、ピアノ:三澤志保
2)「ワルキューレ」1幕3場~ジークムントのヴェルゼ-以降終わりまで。ジークムント:片寄純也、ジークリンデ:鈴木麻里子、 ピアノ:三澤志保
3)「ジークフリート」1幕2場~ミーメとさすらい人との謎かけ問答、さすらい人:大塚博章、ミーメ:伊藤達人、ピアノ:木下志寿子
4)「ローエングリン」2幕2場~城の外に出て歌うエルザに取り入ろうと、オルトルートが近づいて来る場面。エルザ:渡邊仁美、オルトルート:池田香織、ピアノ:木下志寿子
5)「ローエングリン」3幕最終わりの場面 エルザ:渡邊仁美、オルトルート:池田香織、ローエングリン:伊藤達人、残りの出演者全員のコーラス、ピアノ:木下志寿子
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東京交響楽団・岡本侑也&郷古廉ーブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 [コンサート]

  素晴らしいブラームスのドッペルコンチェルトだった。この曲はチェロが聞こえにくく、ヴァイオリンとのユニゾンが多いのに、二人の音程がピッタリ合う演奏を、ライヴではめったに聞くことがない難曲だと思っている。
 でも、岡本さんのチェロは、まるで、近くで録音したかのように、全ての音がくっきり、細かい音も雑音で消されることなく美しく響き、難しい旋律も音楽的だ。郷古さんとも息がピッタリ合い、ユニゾンも完璧。お互いを聞いて合わせられる余裕が素晴らしい。コンチェルトなのに、いかにもブラームスらしく、冷静で綿密に作られた作品だと思う。
 発表されたソリスト二人のアンコール曲は、マルティヌー:二重奏曲 第2番より 第2楽章 アダージョ
 郷古さんと岡本さんは、スダーン指揮で仙台フィルと2017年に、ベートーヴェンのトリプルコンチェルトを共演しており、指揮者に二人とも気に入られたのだろうか。演奏後スダーンが、岡本さんの頬を撫でたのが印象的だった。ソリスト二人は一歳違いだが、想像するに、岡本さんの方がかなり若く見えてしまうので、思わず撫でてしまったような、温かいお人柄を感じる。
 シューマンのラインは、マーラーの編曲版で、自分の知っている楽譜とは大分違っていた。ゆったりとした古風な演奏で、何か懐かしい。指揮棒を持たず、指揮台も使わず、近くでアンサンブルに溶け込むような指揮者のタイプに見受けられた。
 休憩時間に気づいたのだが、終演後のカーテンコールの写真撮影OKの掲示があった。プログラムにも載っており、この話題は知っていたが、実際に見たのは初めてだった。前半のカーテンコールは撮影禁止とのこと。
指揮:ユベール・スダーン
ヴァイオリン:郷古廉
チェロ:岡本侑也
メンデルスゾーン:静かな海と楽しい航海 op.27
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 op.102
シューマン:交響曲 第3番 変ホ長調op.97「ライン」
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都響-別宮貞雄チェロ協奏曲 [コンサート]

 【別宮貞雄生誕100年記念:協奏三景】予習としてチェロ協奏曲をYouTubeで聞いてみたが、どうもソロの音程が外れているようにぼんやり聞こえた。不思議に思ったが実際ハーモニーがぶつかる曲ではあった。そして別宮氏がミヨーの弟子だったと知り納得、「屋根の上の牛」の中間部が頭に浮かんだ。でも個人的にはコンチェルトであの音程のずれたままの感触は、自分には不協和音を超える違和感があり、この作品はすごい冒険だと思った。あのずれた感じは、そこから解放されたときの喜びがある。でも物悲しい秋のイメージの中で受け入れるのは、自分には苦しい。
 勿論、演奏家とての岡本さんは素晴らしく、なめらかで美しい旋律への思い入れが伝わる。演奏家は作品をを残すという大事な役目があることに気づかされた。
 選ばれたソリスト3人は本当に上手で、音楽への探求心に溢れ、作品の真髄を聞かせてくれたと思う。初演作品も含め、演奏頻度の少ない作品を後世に残すためには、より作品の価値を高めてくれるような演奏者の選択が重要だと思う。良い機会に出会った。
 アマオケ仲間で、大学時代に別宮先生の講義を直に聴いたことのある人がいて驚いた。我々世代にとっては過去の作曲家ではなかった。

別宮貞雄(1922~2012)生誕100年記念:協奏三景】
[出演]
指揮/下野竜也
ヴァイオリン/南 紫音
ヴィオラ/ティモシー・リダウト
チェロ/岡本侑也
[曲目]
別宮貞雄:チェロ協奏曲《秋》(1997/2001)
別宮貞雄:ヴィオラ協奏曲(1971)
別宮貞雄:ヴァイオリン協奏曲(1969)
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高崎芸術劇場 3大コンチェルト [コンサート]

 台風の影響が気になったが、高崎まで岡本さんのエルガーのコンチェルトを聞きに行った。
 後で知ったが、岡本さんがオケとエルガーを演奏するのは初めてらしい。6月にドレスデンで聞いた躍動感のあるガベッタとは対照的で、華やかさとは真逆、渋くて深い精神性を感じる老成した演奏だった。冷静でテクニックは完璧であるのはいつものこと。この作品は暗い印象があり、本気で作品に向き合うと鬱になりそうな気がするが、岡本さんは音楽の真髄をぐっとつかみ、迷いなくその世界に聴衆を連れて行ってくれる。信頼できる演奏家だ。
 ヴァイオリンの新井里桜さんの音色がとても深く豊かで、素晴らしかった。一つの音符で音色が変化していき、音楽が膨らんでいく。ピアノの尾城杏奈さんも、この難曲をミスなく堂々と演奏してくれた。ひと昔前は、チャイコフスキーのコンチェルトは名曲ゆえ、ミスタッチも許される難曲という印象だった。21世紀になって、優れた若者は、どの楽器であっても、音程を外すことがなくなった。素晴らしい進化だ。
 
【曲目】
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23 尾城杏奈(ピアノ)
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64  荒井里桜(ヴァイオリン)
エルガー/チェロ協奏曲 ホ短調 op.85 岡本侑也(チェロ)
大友直人(指揮)
群馬交響楽団 高崎芸術劇場大ホール
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