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東京・春・音楽祭 エレクトラ [オペラ(国内)]

 今年の東京・春・音楽祭最後の演目がエレクトラだった。演奏会形式の二公演、トリスタンと比べると歌がよく聞こえ、オケも冒頭からまとまった響きで迫力も維持出来て、東京春祭で、ここまでオペラ演目が進化してくれたのは嬉しい。20年目の快挙か。
 とはいえ、私が過去本場ドイツで3回程聞いたこの作品の印象では、歌手は絶叫していなかった。直近では2022年コロナ後に、ベルリンシュターツオパーで聞いたエレクトラと比べてしまっては申し訳ないが、日本も次のステップとして、メラメラと燃え上がる秘めたる激情を知性で抑えるような、観客も共に苦しみを感じるような演技まで到達してもらえたらと、つい欲張ってしまう。対照的に、オケの音は、もっと鋭利な印象だ。
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2022-06-16
 この作品は音楽が綺麗なところも多く、薔薇騎士や、ブルックナーを連想する美しいハーモニーに癒される次の瞬間に、突然野生的な叫びでなく、屈折した心の叫びが聞けたら、格調高い舞台になる気がする。
 個々の感想としては、ヴァイグレの指揮が見た目にも情熱的でよかった。パンクラトヴァは、厚みのある声で、不安なしだ。パーペのオレストはベルリンでも聞いたが、時間が許せば、どこへでも行って、さっと歌ってくれる余裕が有難い。藤村実穂子さんは、ベルリンでの同役マイヤーでも感じたのだが、殺される時の絶叫は喉を痛めないのだろうかとつい思ってしまう。オークスは、2013年〜バイロイトのカストロフ・リングで、ずっとグートルーネを歌っていた。最近では、2022年ライプツィヒでヴァルキューレアのブリュンヒルデを聞いた。私の中では声が若々しいイメージで、控え目な印象だったが、今回の上野のでは、外見が変わってしまい…パンクラトヴァの声量と競い合えるような、若声の立派なドラマティックソプラノになっていた。
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
第1の侍女(メゾ・ソプラノ):中島郁子
第2の侍女(メゾ・ソプラノ):小泉詠子
第3の侍女(メゾ・ソプラノ):清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女(ソプラノ):竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女(ソプラノ):木下美穂子
侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者(バス・バリトン):加藤宏隆
若い従者(テノール):糸賀修平
召使:新国立劇場合唱団
 前川依子、岩本麻里
 小酒部晶子、野田千恵子
 立川かずさ、村山 舞
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平
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特別試写会「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」 イタリア文化会館 [芸能]

 4月26日(金)より全国順次公開されるイタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督最新作『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』の試写会に行った。上映後には、押場靖志氏(学習院大学講師)のトークがあった。
 日本は江戸末期の1859年、ボローニャで暮らすユダヤ人一家の男児エドガルドが、乳児期にキリスト教の洗練を授けられていたというアクシデントが、7才になって発覚し、教皇のもとに強制的に連れ去られるという実話に基づいた映画。
 ローマに連れて行かれ、他の改宗を強いられる境遇の男児達と寄宿舎生活を送り、司祭へと成長する。両親に対しては、子供を取り戻したければ、キリスト教に改宗せよと迫り、両親は、教皇の誘拐事件として、世界中に情報発信する。
 映画は、誘拐されたエドガルドが、初めは家に帰りたくて、ラテン語でキリスト教の教義を丸暗記しつつ、次第に服従していく複雑な心境を描くと同時に、教皇在位期間31年以上という最長記録を持つ、教皇ピウス9世の話でもあり、中世から市民運動が勝利する迄のカトリック権力の変遷の一コマを覗いた気がする。
 押場先生の解説によると、ピウス9世はヨハネパウロ二世により、聖人の称号を受けたとのこと。
 後でウィキペディアで見たら、聖人に次ぐ地位の列福となっていた。また日本との関係においては、秀吉の時代、長崎での「26聖人殉教者」全員を列聖した教皇でもある。
 ベロッキオ監督の、怒りの拳が、見る側の心をせつなく苦しめる。
 ショスタコーヴィッチの音楽が使われている。オープニングクレジットで確認できた文字は、Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks だったと思う。
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東京・春・音楽祭 ワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサート [オペラ(国内)]

 リングの抜粋ではなく、1時間半弱の、歌のガラコンサートは、お客さんの心を掴み、1F席はほぼ満席、ロビーも大混雑で、大変な盛況ぶりだった。
 演奏会形式と言うより、オケが主役の舞台で、大音量のN響に負けず、パンクラトヴァは良く歌ったと思う。最初に彼女を聴いたのは、2018年ティーレマン/ドレスデンのジークリンデで、バイロイトのクンドリで名を上げ、ヴェーヌスも聴き、初めてブリュンヒルデを聴いた。圧倒的な迫力がある。
 今回のプログラムは、ヤノフスキーの置き土産のような気がする。こういう演奏会もできますよと、教えてくれたようで、オケだけの部分は入れず、かなり短いが、普段なら自分がその場面が来るのを待つ身であるのに、向こうから名場面がやって来てくれるガラコンサートは、ちょっと嬉しい初めての気分だった。短い場面であれば、日本人歌手も全力で歌えるので、これを機に、日本人のリングガラの企画にもトライして欲しい。
 N響はヤノフスキーのお蔭で、リングを物にした。ついVcを見てしまうが、藤森さんの熱演ぶりが感動的で、もしかしてヤノフスキーのヴァーグナーでは、今回最後の主席なのかもしれない。楽器を揺らしなが力一杯刻んでいる後ろで、ご子息始め若手メンバーが伸び伸びと弾いており、父は背中で伝えているんだろうなぁと勝手な想像を楽しんだ。更に個人的にはリング抜粋を弾いて1年余、N響の素晴らしい低弦を目の当たりにし、苦労した当時の記憶が懐かしいものに変わって来た。

舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』より
序夜《ラインの黄金》より第4場「城へと歩む橋は……」〜 フィナーレ
  ヴォータン:マルクス・アイヒェ(バリトン)
  フロー:岸浪愛学(テノール)
  ローゲ:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
  フリッカ:杉山由紀(メゾ・ソプラノ)
  ヴォークリンデ:冨平安希子(ソプラノ)
  ヴェルグンデ:秋本悠希(メソ・ソプラノ)
  フロースヒルデ:金子美香(メゾ・ソプラノ)
第1日《ワルキューレ》より第1幕 第3場「父は誓った 俺がひと振りの剣を見出すと……」〜第1幕フィナーレ
 ジークムント:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
  ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
第2日《ジークフリート》より第2幕「森のささやき」〜フィナーレ
 第2場「あいつが父親でないとは うれしくてたまらない」―森のささやき
 第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」〜第2幕フィナーレ
  ジークフリート:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
   森の鳥:中畑有美子(ソプラノ)
第3日《神々の黄昏》より第3幕 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲「わが前に 硬い薪を積み上げよ……」
 ブリュンヒルデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
指揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:NHK交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:ウォルフガング・ヘントリヒ)
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
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