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慶応大学北川千香子准教授のお話 第2回「赤塚の森フォーラム」 [講演会]

 日帰りで名古屋まで行った目的は、北川先生のワーグナー講演の聴講。テーマは二つ、バイロイト音楽祭現地スタッフ10年間の体験と、ワーグナー作品におけるジェンダーの変容。一般人向けのワーグナー企画はとても珍しく、第一部バイロイト祝祭劇場ドア係の仕事についてスライドを見ながら聞いているうちに、バイロイトに一回余分に行ったような臨場感を味わい、楽しかった。
 ドア係はまさに劇場の各扉の鍵を預かる仕事で、ドイツの鍵文化、鍵を預かる誇らしい心情がよく伝わってきた。また、お客さんの声を直に聞く立場でもあり、座席の交換などの要望を、他のお客さんに取りついだりもするそうだ。ドア係の人達は、中立の立場なので、公演後舞台への拍手はできないのだが、ネズミが出るノイエンフェルス演出ローエングリンの最終公演後、お客さんを全員外に出し、施錠してから、どこからともなく湧いたドア係の拍手をきっかけに、プロダクションの最終公演後のドア係の拍手によるカーテンコールが恒例となったそうだ。この話は初めて聞いた。
 第二部、ワーグナーに於けるジェンダーの変容とは、北川先生のご専門分野で、まさか、難解なテーマをこんなに分かり易く、説明して貰えるとは思っていなかった。
 印象に残ったお話は、ヒロインが題名役となっているイタリアオペラは、19世紀の良妻賢母的女性観から逸脱した女性の悲劇の話で、だいたい最後は男に裏切られて死んでしまう。このような同時代のメロドラマと社会そのものににワーグナーは反発し、革命に参加し指名手配を受け、その後は芸術を通しての社会革命活動に方向転換した。そしてもっと深遠なドラマを目指し、壮大な指環の話を書き上げる。女性には救済(献身的自己犠牲)を求めるが、それは、自立した女性でなければならず、女性は男性救済の触媒であり、それにより、男性は英雄、救済者に到達できると。ワーグナー作品の中のヒロインの死は、それ以前の悲劇では無く、よく分からない複雑な救済の姿なのだと。やはり、難しい話だ。
 これを踏まえて、バイロイトではワーグナー批判が繰り広げられているそうだ。
 講演後の懇親会では素朴な疑問なども投げかけられ、そういえば、自分もワーグナーに出会ったばかりのころは、なぜ、そうなるのか疑問に思った点が多々あった。しかし私の場合、何度も見るうちに、音楽の虜となり、話の筋は、そういうものだからと落ち着いてしまった。
会場 美しい深田電機(株)の社屋、案内文書の写真を拝借
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