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ティーレマンインタヴュー"Mein Leben mit Wagner" [講演会]

 ティーレマンが執筆した"Mein Leben mit Wagner"の紹介とサイン会があり、Elke Heidenreich が小一時間インタヴューした。友の会の講演の後駆けつけたが、前の方の席が取れず、またも響きの中でちょっと残念。
 真っ赤なポロシャツ姿で現れたティーレマンは、冷房の無いコアザールで、あっという間に汗だくになってしまったが、終始にこやかに、表情豊かに、普通のドイツ人のように、ジョークを交え話してくれた。
 本の内容には、あまり答えず、バイロイトの話が主だった。一番興味深かったのは、ピットと、舞台と、客席での音の話だ。あちこちで聞き、読む話題だが、ティーレマンの口から、直に聞くと、やはり苦労して造りあげる音なのかと、あらためて感動する。
 ピット内は、本当にうるさいらしい。その音が舞台に上がり、3回回って歌と一緒に客席に届くのだと。またタンホイザーで、Vnのメロディに合唱が加わるとき、遅れないタイミングを見つけるのは、大変らしい。指揮台横の電話は、客席で実際どう聞こえているかのアドヴァイスを聞くためのもので、とても重要だ。かつてヴォルフガングがいたころ、リハーサルの間客席を歩き回っていたそうで、注文をつける訳ではないが、最終的に、ワーグナーがこう言ってると電話で言われると、指揮者もしぶしぶ従ったそうだ。この劇場は、席によって音が違うので、いろんな席に座ると良いと言い、インタヴュアーに、アチコチで聞いたことがあるのかと聞かれると、自分は時々指揮するので、ちょっと、、、と笑わせてくれた。座席の話は本当にその通りだ。それから、練習中や、休憩時間には、歌手や楽団員一人一人に、要望や意見など聞くが、いざ本番の指揮台に立つと、皆とのアイコンタクトで、その日の集中度が分かり、自分がリードする音楽にいかについてくるかで、その日の出来映えも変わると。これも、その通りだ。
 初めてバイロイトに来る指揮者は、最初は感激するが、自分が振っている普通の劇場との違いに次第に不満を漏らすようになるそうだ。まずは暑さを克服せねばならない。オランダ人なら2時間10分だが、ワルキューレ、黄昏となると、集中力が続かなくなると。そして、ピット内の楽器の並びと、音が届く時間差。最後には、バイロイトは酷いところだったと帰ってから言うと、面白おかしく語ってくれた。
 マエストロの身振りや顔の表情を生で見て、生身のティーレマンを垣間見たというか、むしろバイロイトのお客さんのために、サービスしてくれて感謝の念だ。
 本の結びの部分をティーレマンが朗読し、お開きになり、サイン会となった。本当に暑くて、誰か後ろから、扇いでもらえると、ありがたいと言っていた。ちょっと不機嫌ないつもの顔になり、黙々とサインし始めると、急にまた遠い人になった。

追記:
 他の話を思い出した。なぜワーグナーが良いのかという問に対し、ヴェルディのオペラは、トラヴィアータもトスカも最後死んでしまって終わりだが、ワーグナーは、 マイスタージンガー以外は破滅的(zerstoert)であっても、最後に救いがあり、ゼンタは死ぬが新しい世界に行くと。リングの最後は、新たな始まりでなければならないと。
 ブーイングについての質問には、自分が指揮棒を下ろして静まったあと、いきなりブーがきこえると、一体どうしたのかと戸惑うと。新聞の批評なども、ごちゃまぜに書かず、歌、音楽、演出と分けて書いてほしいと。
 どれも話自体は雑談の域を出ないが、活字やビデオと違い、生で、身振り、手振り、表情を目の当たりにした印象が鮮明に残っている。
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