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上森祥平×J.S.バッハ×B.ブリテン:無伴奏チェロ組曲全曲演奏会2020 [コンサート]

 上森さんが以前から、バッハ無伴奏全曲演奏会をやっているのは知っていたのだが、聴くのは初めてだった。今年の夏は予定もなく、半日かけてゆっくり聴くのも良いかという感覚で出かけていった。客席は1/3くらいに制限したのか、もうすっかり、ばらけて座るホールの風景にも慣れた。演奏前のご挨拶で、思い思いの時間を過ごして下さいと控えめな言葉のとおり、とてもゆったりした気分で、全曲聴くことができた。
 コロナ対策としては、ロビーに感染者が出た場合連絡が来る、登録用QRコードが掲示されており、演奏面では一曲ごとに3分、ホールのドアを開けて換気し、1部終わるごとに約45分の休憩となる。ブラボーや出演者への声かけ、会場内での私語までも禁止されていたような気がする。全てを記憶してはいないが、現時点では、致し方無い注意だった。
 ヨーヨーマのように、全曲一気に聴くのが心地よい人にとっては、このゆったり感を味わうのは難しいが、いくら急いでも先の見えない、この時期に合う空気感だ。
 上森さんのバッハは、曲ごとに、何か思いがあって変化をつけているように感じた。また組曲内で、次のテンポをイメージしている姿は独特で、第三者にはその姿から、次のテンポは想像できない。組曲を一気に弾くのが望ましいのかと思っていたのだが、人それぞれだった。また上森さんの、楽器の音色が素晴らしい。あらゆる声が聞こえ、胸を打つ。一方、演奏中、力を込めている様子もなく、触れれば響く、素晴らしい楽器だ。そして、あたかも手首に弓がつながっているような、見とれるほどの美しいボーイングだった。
 ブリテンでは、険しい音色となり、左手の素早いテクニックも言うまでもなく見事で、自然体で楽器をあやつる姿は、聴衆に緊張感を強いることなく、むしろリラックスして音に集中できる。
 演奏は全曲暗譜。ほとんど躓きもなく、最後まで力強く、バッハとブリテンを弾き通す冷静な姿に、己の信じる道を進む、大人の演奏家の安定した精神のようなものを感じた。毎年恒例とはいえ、この全曲演奏会の位置づけが、ほんの日常の一部のような、ゆとりを感じさせるものだったことに驚かされた。来年も8/15開催予定とのこと。

会場:東京文化会館 小ホール
プログラム:
13:30〜
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
B.ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 作品72
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010

15:30〜
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV1008
B. ブリテン:無伴奏チェロ組曲第2番 作品80
J.S. バッハ:無伴奏チェロ 組曲第3番 ハ長調 BWV1009

17:30〜
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV 1011
B. ブリテン:無伴奏チェロ組曲第3番 作品87
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012
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