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高崎芸術劇場 岡本侑也 無伴奏チェロ・リサイタル(大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.3) [コンサート]

 高崎芸術劇場 芸術監督大友直人氏がプロデュースする若手演奏家プロジェクトの第三弾。ラジオ高崎で生中継され、収録されたCDとDVDが後日販売されるとのこと。岡本氏のCD発売はエリザベートコンクール音源以来となる。2020年10月、コロナ禍で苦しい若手演奏家の支援と、高崎芸術劇場音楽ホールの響き知ってもらう目的で、CD作成の企画を立ち上げたようだ。第一回のCDは各サイトでネット販売されている。
 高崎芸術劇場は気になっていたが、やっと訪れる機会を得た。大ホールはまだ未体験だが、音楽ホールの残響は素晴らしい。後で調べたら、満席で1.5~1.9秒とのこと。
 収録は本番一度ではなく、本番前二日、後一日要するらしい。演奏当日大友さんはご不在で、声だけ開演のご挨拶があった。後半初めには演奏者のインタヴューがあるのだが、今回は司会者もおらず、岡本さんが一人でお話された。
 無伴奏の演奏会は中学生のときの初リサイタル以来とのこと。このコンサートは私も聴いている。
https://gruen.blog.ss-blog.jp/2009-02-08
 改めて、岡本さんの無伴奏は、音楽に吸い込まれるような力がある。
 バッハはピリオド楽器のように、アップテンポでかっちり弾くのに、表情が豊かだ。指揮者で言えば、ペトレンコのような躍動感がある。ヒンデミットは大御所のナターシャ・グートマンのさすが美しく逞しいYouTube映像を見たことがあるが、それよりハイテクで軽やかだ。所謂音の引き出しが無限に広がり、ホールの響きが良く、楽器もよく鳴って、デュディーユも今までと印象が変わった。ジョージ・クラムは美しい。BUNRAKUまでも、印象が変わるほど、あらゆるベストの条件が揃った、ただ事でない本番だったと感じる。コロナ禍の中、久しぶりのこの本番が、CD化されるのは、後年大切な記憶となるだろう。
 過去には、岡本さんが清澄な音を奏で、周りの空気の粒が振動して、きらきら輝くように感じたことがあったが、ここではホール全体が大聖堂のような神聖な空間になり、客席の照明が暗転すると、満席の客席には水を打ったような静けさが広がった。おそらく録音するコンサートであることを、皆よく知っていて協力しているのではないかと思う。曲の合間に咳する人も、途中で物を落とす人もほとんどいなかった。
 岡本さんのお話も楽しくて、初めて来た高崎芸術劇場は、建物や木の香りのするホールだけでなく舞台裏も素晴らしく、シャワーが好くて、ここに住みたいほどだと褒め、地元のお客さんを喜ばせた。
 協(共)演者のいない、この日の無伴奏は、例えるなら、周囲の何物にも囚われず、光差し込む林の中で解放感にひたり、音楽と一体になって、のびのび寛いでいるような感じだろうか。ホールの空気も観客も、すべてを一つに包み込む調べは、残響の恩恵もあるかもしれないが、私にとっては最高の体験だった。一週間後、リサイタルをする凸版ホールの残響は1.1~1.4秒と載っていたが、どんな風に聞こえるのか楽しみだ。
 ミュンヘンに留学してから、聴く度に音楽のスケールが大きくなる。そしていよいよ独自の道を歩き始めたのだなあと、計り知れない未来をもう少し追ってみたいと思う。

岡本侑也(チェロ)
ヨハン・セバスティアン・バッハ: 無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
パウル・ヒンデミット: 無伴奏チェロ・ソナタop.25-3
アンリ・デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ
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カザルス:鳥の歌
黛 敏郎:無伴奏チェロのための「BUNRAKU」
ジョージ・クラム: 無伴奏チェロ・ソナタ
高崎芸術劇場 音楽ホール(座席数412)
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