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新国立劇場―フィガロの結婚(楽日) [オペラ(国内)]

 指揮者、フィガロ、伯爵夫人に変更があった中、日本人の力で上演を盛り上げ、楽日を迎えた。フィガロの結婚はどの歌手にとっても、何度か関わったことのある作品ではないだろうか。ホモキの舞台ではフィナーレになると、衣装で配役の識別がしづらくなり、観客は途中で複雑な筋書きを見失ってしまうことがあり、要注意だ。今回は7回目のレパートリー公演として、トスカと並び、日本のオペラハウスの評価が上がることにつながればよいと思う。
 伯爵夫人役の大隅さんの声がとても素晴らしかった。またスカルピアがフィガロの役を引き継いだというのもこの時期ならではの出来事だ。ソラーリ氏は以前タンゴ歌手として来日したことがあるそうだ。
 スザンナ役の臼木さんは、身軽な身のこなしで、軽やかに歌うのは、さぞ大変だったろう。ソロや掛け合いでは、素晴らしいスーブレット役の歌唱と立ち回りだった。でも、二重唱でハモリにくいのはなぜだろうか。
 ケルビーノ役の脇園さんはイタリアから帰国され、伯爵役プリアンテ氏ともに1年ぶりの観客入り本番という。うまく入国してもらえて、有難い。
 大勢の重唱場面はとてもよく練習されていて、良かったと思う。モーツアルトは美しいのが前提であるだけに、オケのピッチも完璧さが要求される。トスカと違い、人間関係が複雑なフィガロのプロダクションはまだまだ進化しそうな期待が残る。

指揮:沼尻竜典
演出:アンドレアス・ホモキ
アルマヴィーヴァ伯爵:ヴィート・プリアンテ
伯爵夫人:大隅智佳子
フィガロ:ダリオ・ソラーリ
スザンナ:臼木あい
ケルビーノ:脇園 彩
マルチェッリーナ:竹本節子
バルトロ:妻屋秀和
バジリオ:青地英幸
ドン・クルツィオ:糸賀修平
アントーニオ:大久保光哉
バルバリーナ:吉原圭子
二人の娘:岩本麻里、小酒部晶子
合唱新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
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新国立劇場ートスカ [オペラ(国内)]

 新国立劇場のトスカは、伝統的な美しい舞台で、お勧めのレパートリーだと思っている。オケはずっと東フィルだったが、今年初めて東京交響楽団だった。空間をとるため、オケピットの弦の人数は減らしており、音量的にちょっと金管が出すぎた感じはある。管楽器以外はマスクをしていたように見えた。演出にも何か変化があるのかと思ったが、1幕最後のテ・デウムでコーラスの人の間隔が取られていたことと、気のせいか黙役が少なかったような気がしたくらい。主役3人は、躊躇なく、いつも通りの演技だったと思う。
 歌手は皆すばらしかった。まず第一声の堂守の声の大きさに驚いた。カヴァラドッシ役をはるか上回る声量で、4階まで届いた。これはPAかと思うほどだが、真相はわからない。
 一幕ではカヴァラドッシがppで語るように歌う場面も結構あるのだが、この日だけなのか、小声が安定せず、かすれたり音程も少し気になった。一方、張った方のテノールの声は全幕通して、とても表情豊かで声に潤いがあり、素晴らしい。スカルピアは見た目が良く、悪人臭さが薄いが、却って今の時期は、穏やかで美しい舞台の方が印象が好いかもしれない。全体的にテンポは結構粘っていたが、3人とも文句無く完璧、ハイレヴェルで、歌い込んでもさっぱり系の歌唱は、素晴らしく、私は好みだった。
 プッチーニの音楽はライトモティーフ(と言って良いのかどうか)が繰り返し現れ、場面や人間を連想させ、作品を盛り上げる。筋は残酷なものだが、残酷な場面ほど美しい、ヴェルディとは違い、物語にふさわしい音楽だと、久しぶりに聴いてやはり感動する。3幕はチェロの重奏がとても美しい。このオペラ自体が短く感じるのは、社交の場としてのイタリアオペラには大切なことなのかもしれない。
 3年前にローマでサンタンジェロ城を訪ね、屋上の狭さが意外だったが、今回のプログラムの表紙となっていて、懐かしい。https://blog.ss-blog.jp/MyPage/blog/article/edit/input?id=103248649
 緊急事態宣言下、劇場内のコロナ対策はさらに強化され、年末のこうもりの時にはあった、ペットボトルの販売は無く、幕が開く前の各客席と、休憩中の一階ロビーでは、マスク着用の注意を喚起するプラカードのような板を掲げ2人くらいホールの人が歩いていた。

指揮ダニエレ・カッレガーリ
演出アントネッロ・マダウ=ディアツ
美術川口直次
衣裳ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
照明奥畑康夫
トスカキアーラ・イゾットン
カヴァラドッシフランチェスコ・メーリ
スカルピアダリオ・ソラーリ
アンジェロッティ久保田真澄
スポレッタ今尾 滋
シャルローネ大塚博章
堂守志村文彦
看守細岡雅哉
羊飼い渡邉早貴子
合唱 新国立劇場合唱団 管弦楽 東京交響楽団
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こうもり 新国立劇場 [オペラ(国内)]

 とても真面目で一生懸命なこうもりを観てしまった。このプロダクションはノヴォラツキー氏の置き土産で、2006年初演時から、日本語を取り込んだ仕様になっている。コロナ禍で変わったところといえば、一幕で投獄前のアルフレードとロザリンデが偽装夫婦の別れのキスをする場面。以前は名残を惜しむ長いキスで笑いを誘ったが、今回はロザリンデが投げキスするようにしてアルフレードの頭を撫でる一瞬の挨拶だったように見えた。2幕の舞踏会場面は当然歌手同士の距離をとり、ペアのダンスはダンサーだけが踊った。
 歌手陣は全員が最上級だった。アデーレ役は少し未熟さも残るような若い感じの歌手に歌わさせるのかとずっと思っていたが、今日のマリア・ナザロワさんは、主役として、最高のコロラトゥーラを聴かせてくれた。今年のアイゼンシュタインはバイロイトのマイスタージンガーでマイスター、コートナー役を歌っている。演技も上手で、酔っ払いながらダンサーとともに鮮やかにステップを踏み、千鳥足での演技も真面目で素晴らしい。この役は、お酒をひっかけて演技する場合もあると聞いたことがあるが、そういう曖昧さは無く、きっちり演じたからこそ、今の時期、素晴らしいと感じたのだと思う。オフロフスキー役のアイグル・アクメチーナは声量も声の勢いも理想的で適役、わざと外国語っぽいドイツ語がとても良かった。アルフレードはテノールの名曲を一節ずつ監獄の中で歌ってくれるが、また上手で、一切気を抜いていない。村上さんにはちょうど一年前第九のテノールを歌っていただいたのが、霧の向こうのずっと昔のことのように思える。
 オケは2年前は東京交響楽団弦5.5型で今回は4.5型。管楽器の人数は変わらず、結構金管が目立って聞こえた。
指揮:クリストファー・フランクリン
演出:ハインツ・ツェドニク
振付:マリア・ルイーズ・ヤスカ
再演演出:澤田康子
合唱指揮 :三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:東京シティバレエ団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演:
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン・・・ダニエル・シュムッツハルト
ロザリンデ・・・アストリッド・ケスラー
フランク・・・ピョートル・ミチンスキー
オルロフスキー公爵・・・アイグル・アクメチーナ
アルフレード・・・ 村上公太
ファルケ博士・・・ルートヴィヒ・ミッテルハマー
アデーレ・・・ マリア・ナザロワ
ブリント博士・・・大久保光哉
フロッシュ・・・ ペーター・ゲスナー
イーダ・・・平井香織
※フロッシュ役に出演予定のクルト・リドルは、入国制限(入国後14 日間の待機義務)のためスケジュールが合わず、来日が不可能となり、代わりにペーター・ゲスナーが出演。
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新国立劇場ー夏の夜の夢② [オペラ(国内)]

 コロナ禍以前から決まっていたブリテンのニュープロダクション、成功して良かった。モネ劇場を手本、目標として細部まで行き届いた準備ができただろうし、ニューノーマルの演出を、リモート指導受けられたことは、何よりだ。
 ブリテンが自ら創設した音楽祭のために作品を作り、歌手もオケ奏者も一人一人の顔が見える舞台は、ピット内のソリストの活躍ぶりまで覗くころができる、内輪感があるのではないだろうか。
 二度目の鑑賞は、歌手一人一人の役を思い描きながら聴いてみたが、声と役のイメージが良く合っていると思った。歌手も楽器ソロもはっきり認知でき、仕上がりの良い本番だった。
 パック役の河野鉄平さんは、歌は僅かで、激しい動きのスマートさは俳優のようだ。ランサンダー役の村上公太さんは、第九でテノールを歌っていだたいたことがある。この素晴らしい少年合唱団の中から、将来オペラ歌手が出るかもしれない。
 ハープ、チェレスタ、弦のグリッサンドがつくる、妖精の世界の調べは、子守唄か催眠術のように心地良く、ひと時の夢に誘われるようだ。喜劇の3幕は、どうしようもない世間の不協和音に変わるが、最後お気に召さなかったら、どうぞ忘れて下さいというという結びは平和だ。
 これまでの新国立劇場では、本番までに仕上がらなかっと感じることが、ままあったが、今回は、4階席の観客として十分満足できた。日本人の活躍が頼もしく、しばらく日本人だけでやってみたらどうだろうかという気持ちも起こる。
 人と接触しない演出としては、職人役が一列横並びで歌い、恋人通しが結婚式でも距離をとっているところは明らかな点だ。3幕は舞台を狭くしたことで、抑制された動きを補っている。まあ、学芸会のような感じもしたが、日本人は歌舞伎でも、結構横並びには馴染んでおり、間に合わせでも仕方ないなという感じだった。ニューノーマルな演出には、視界に入る美しい舞台セットが望ましいかもしれない。
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新国立劇場ー夏の夜の夢 [オペラ(国内)]

 コロナ禍で公演を休止していた、新国立劇場の2020/21シーズンが始まった。コロナ対策としては、来場者カード記入が必須で、提出しないと次の検温、消毒に進むことができない。もぎりは各自。着席後の館内放送で初めて聞いたのは、コロナ接触アプリを入れている人は、スマホをonにしておくようにという注意だった。勿論インターネットオフ、アプリを使う人は電源offということで、私は接触アプリは入れているが、電源は切った。
 新制作「夏の夜の夢」の舞台演出は、2004年Devid Macvicar、大野さんが以前音楽監督だったモネ劇場のもの。夢のある古風な舞台で、妖精の世界にいざなう。舞台設定が夜で薄暗く、4階席からでは、オペラグラスを覗いても、歌手の表情や舞台細部はよく見えないが、人の動きは自然な感じだった。
 ブリテンのオペラを観るのは、新国立劇場のピーター・グライアムス以来。夏の夜の夢もヴォツェックとショスタコーヴィチを連想する音楽だったが、全体を通して、強烈な現代的和音の印象は無く、やんわりと現代の音を用いて、物語の夢の世界を上手に表現しているなあと思う。
 初演が1960年というので、私の感覚では新しい。オケは小規模で、今回は1Vn6人、Vcは3人。催眠術のような音楽に包まれ、しばし現実から離れる感じが、今コロナ禍の空虚さを埋めてくれるかもしれない。プログラム解説を読んで、ブリテンの歩んだ「中庸な道」という言葉にすんなり納得した。
 日本人オールキャストそれぞれ大活躍だった。オケが小さいので、4階でも歌手の声がよく聞こえ、少年合唱団が素晴らしかった。個人的にはヘレナ役の大隅知佳子知さんの声に惹きつけられた。力強く存在感があり、美しくよく響き、ふくらみがあって、ワーグナーも歌ってくれそうな予感。カウンタテナーをこんなにじっくり楽しめる作品は珍しいのではないだろうか。

【指揮】飯森範親【演出・ムーヴメント】レア・ハウスマン
キャスト
【オーベロン】藤木大地【タイターニア】平井香織【パック】河野鉄平【シーシアス】大塚博章【ヒポリタ】小林由佳【ライサンダー】村上公太【ディミートリアス】近藤 圭【ハーミア】但馬由香【ヘレナ】大隅智佳子【ボトム】高橋正尚【クインス】妻屋秀和【フルート】岸浪愛学【スナッグ】志村文彦【スナウト】青地英幸【スターヴリング】吉川健一
【児童合唱】TOKYO FM 少年合唱団【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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トゥーランドット オペラ夏の祭典 東京文化会館 [オペラ(国内)]

 バルセロナ交響楽団の正式名は、Barcelona Symphony and Catalonia National Orchestra。多分新国立劇場のオーケストラピットに初めて入る海外のオケだ。長い道のりだった。海外でも広く認められている指揮者大野さんが、ようやく芸術監督を引き受けてくれて実現した記念すべき公演。しかし、私はチケットを買えず、東京文化会館の公演へ行った。残念ながら舞台は良く見えず、4階サイドの席からは、舞台セットや衣装をはっきり認知するのは不可能で、物足りない気分だった。双眼鏡の視界を確保できる隙間すらない。もっとも、トゥーランドット姫だけは、最後以外、直立不動なので、聴いていてストレスは無い。
 オケは素晴らしかった。バルセロナ交響楽団を聞くのは初めてだが、印象として、しっかり大野さんのコントロール下にあるという印象だった。放っておけば、もっと強烈な音色で下品に金管も鳴らしたりはしないだろうか。そこが、この作品の特徴だと経験から思っていたが、この演奏は下品と上品の境にあり、幾らか上品な方に傾いていて、音も日本的に暗めの印象だった。プッチーニはどのくらいの音量を想定していたのだろう。改めて、一度スカラ座のトゥーランドットを聞いてみたいと思う。
 ピンポンパン登場のとき、まず、あれっと思った。意外と打楽器(シロホンみたいなアレ)がおとなしかったのだ。その後も、人情劇の繊細さを壊さないぎりぎりの線で、美しい大音量だった。
 演出はずっと台本通りのようだったが、最後に大きなアクシデントが起きる。
 歌手も皆素晴らしく、テオリンは勿論、カラフ役のイリンカイは初めて聞くが、ジークフリートを歌ってもらいたいような、声質だった。リュー役の中村理恵さんの声が、とても綺麗で優しく、か弱いリュー役には、これまで、あまりお目にかからないが、日本人の華奢な感じは、合っていると思う。
 気づけばトゥーランドットは10年以上、上演を聞いて(見て)いなかった。そのせいか、今さらながら、カラフは自分勝手かもしれないと気づく。ジークフリートの幕切れのような台詞で、ブリュンヒルデを追い求める場面と同じではないか。しかし、ここでのリューの献身的愛は美しく、非情なトゥーランドットを愛に目覚めさせるという原典の願いは美しい。

■トゥーランドット:イレーネ・テオリン
■カラフ:テオドール・イリンカイ
■リュー:中村恵理
■ティムール:リッカルド・ザネッラート
■アルトゥム皇帝:持木 弘
■ピン:桝 貴志
■パン:与儀 巧
■ポン:村上敏明
■官吏:豊嶋祐壹
指揮 大野和士
オーケストラバルセロナ交響楽団
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「フィレンツェの悲劇/「ジャンニ・スキッキ」 [オペラ(国内)]

 フィレンツェの悲劇は初体験。1時間ほどの作品なので、一応音源を聞き、リブレットを読んでから新国立劇場へ向かった。原作はオスカーワイルド。作曲者を知らずに聞けばリヒャルト・シュトラウスと信じてしまうほどよく似ている。大編成のオケが必要な作品で、広い劇場では、音楽と発せられた言葉だけでは気持ちを表現できず、演劇の要素も大事だとまず感じた。これは、R.シュトラウスが小編成のオーケストラのオペラ作曲に向かった理由の一つでもあるようだ。
 ドイツのオペラは長々心情を吐露するもの。ツェムリンスキーはドイツ人ではないが、個人的には、シモーネが若い妻を諭し、「世の中を知り、冬になって知恵はやってくる」というあたりが、ホロっとくる。ちょっとストレートな感じはするが。
 一方プッチーニの方は、大分以前のことだが、トスカの最初の方で、絵に嫉妬する場面の台詞で、ドイツ語に翻訳された字幕に笑いが起こったことがある。
 さて、当日、フィレンツェの悲劇の舞台美術は暗めのシモーネの家。豪華で美しく、アルコーブという部屋の作り以外は、ト書き通りで、広い舞台に3人だけだ。新国立劇場の4階席からでは双眼鏡を覗いても、歌手の表情までわからず、年齢とともに、レンズの倍率も上げねばならないと実感した。一階席前方なら、音楽と演劇を十分楽しめただろう。
 ジャンニ・スキッキの舞台設定は巨大な書斎机の上で、大きなペンや本、小物棚、小皿の上のクッキー、コイン、天秤などからが配置され、その周りを小人サイズの歌手が賑やかに動きまわり、時に机の引き出しに隠れたりする。大きな遺書を皆で開き、覗き込見て騒ぐ場面は、この手の巨大舞台セットの効果がよく発揮されている。
 ジャンニ・スキッキ役カルロス・アルバレスは素晴らしく、東京で本物を聴かせてもらえてありがたい。日本人キャストも皆好かった。オケは部分的には綺麗だが、一体感が追いつかず、プッチーニのスカッとした音の響きまでは味わえなかった。

フィレンツェの悲劇
グイード・バルディ:ヴゼヴォロド・グリヴノフ(テノール)
シモーネ:セルゲイ・レイフェルクス (バリトン)
ビアンカ:齊藤純子(ソプラノ)

ジャンニ・スキッキ
ジャンニ・スキッキ:カルロス・アルバレス(バリトン)
ラウレッタ:砂川涼子、ツィータ:寺谷千枝子、リヌッチョ:村上敏明
ゲラルド:青地英幸、ネッラ:針生美智子、ゲラルディーノ:吉原圭子、
ベット・ディ・シーニャ:志村文彦、シモーネ:大塚博章、
マルコ:吉川健一、チェスカ:中島郁子、スピネッロッチョ先生:鹿野由之
アマンティオ・ディ・ニコーラオ:大久保光哉、ピネッリーノ:松中哲平、グッチョ:水野秀樹

指揮:沼尻竜典、演出:粟國 淳
東京フィルハーモニー

『フィレンツェの悲劇』/アレクサンダー・ツェムリンスキー
全1幕<ドイツ語上演/字幕付>
Eine florentinische Tragödie / Alexander ZEMLINSKY
『ジャンニ・スキッキ』/ジャコモ・プッチーニ
全1幕<イタリア語上演/字幕付>
Gianni Schicchi / Giacomo PUCCINI
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東京春祭ワーグナー・シリーズvol.10 《さまよえるオランダ人》 [オペラ(国内)]

 東京春祭ワーグナーシリーズ10作品目。春のワーグナーイヴェントとして生活の中に定着したが、いつしか、これはこれ、何かと比較してはいけない、その方が楽しめると悟り、受け身で聞かせてもらっている。
 今年のオランダ人公演は、去年までのドイツ感を求めたくなる春祭ワーグナーと一線を画し、一つのイヴェントとして明るく楽しませていただいた。ゆっくり目のテンポで、何やら音楽が明るく聞こえ、伸び伸びと、歌手陣は思い思いに歌い上げ楽しそうだ。3幕の幽霊船の合唱も全員舞台上で歌い、オケも隅々まで見えて、オランダ人の陰鬱なイメージを払拭される気がした。
 好かったのは、ザイフェルトの歌うエリックが、力強く、説得力があり、初めてヘルデンテノルーのエリックを体験したこと。ローエングリンのような雰囲気だった。
 ワーグナー自身が女々しくないエリックを望んでいたとを、この前学んだばかりで、なるほどと実感した。2幕のゼンタとのやりとりが作品の中心のようになり、エリックは全うな人間であることに、聴衆として安堵を覚える。
 これまでオランダ人にネガティブな印象を持っていたのは、エリックの優しさが際立つ歌手、或いは、演出しか体験していなかったからなのかもしれない。今になって、作品のイメージが豊かになったこと、春祭プロダクションに感謝したい。
 急遽、ダーラント役の助っ人で来日した、ノルウェー人のイェンス=エリック・オースボーは、よく響く温かみのある声でだった。

指揮:ダーヴィト・アフカム
オランダ人(バス・バリトン):ブリン・ターフェル
ダーラント(バス):イェンス=エリック・オースボー
※出演を予定しておりましたアイン・アンガーは、イェンス=エリック・オースボーに変更となりました。
詳細はこちら
ゼンタ(ソプラノ):リカルダ・メルベート
エリック(テノール):ペーター・ザイフェルト
マリー(メゾ・ソプラノ):アウラ・ ツワロフスカ
舵手(テノール):コスミン・イフリム
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング
合唱指揮:宮松重紀
アシスタント・コンダクター:パオロ・ブレッサン
映像:中野一幸
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新国立劇場ータンホイザー [オペラ(国内)]

 4日続いた高熱から解放され、タンホイザーを静かに聞くことで、気分がすっきりした。Wagnerは聞く薬だ。以前も3か月続いためまいが、東京の春のWagner公演で、ぴたりと止まったことことがあった。
 とは言え、ヴェーヌスが登場するまでの音楽は困ったもので、うまく進まなかった。多分あまり練習していなかったのだろう。鳴りすぎる金管もリズム感が疑わしい木管も、どうしたものかと思っていたが、歌が始まってからの弦楽器は優しい音でほっとした。
 ケルルのタンホイザーは聞きなれていて、普通に良かった。どうしたのか、調子が悪かったのが、ヴォルフラム役のトレーケルだった。聞いたのは3日目の公演、4階席だったので、きっと楽日までには諸々改善されたことだろう。ヴェーヌス、エリーザベート、合唱は綺麗で、今更舞台について語る気もないが、病み上がりの身には一応リフレッシュできて良かった。

指揮:アッシャー・フィッシュ
演出:ハンス=ペーター・レーマン
美術・衣裳:オラフ・ツォンベック
照明:立田雄士
振付:メメット・バルカン
指揮:アッシャー・フィッシュ
演出:ハンス=ペーター・レーマン
美術・衣裳:オラフ・ツォンベック
照明:立田雄士
振付:メメット・バルカン

領主ヘルマン 妻屋秀和
タンホイザー トルステン・ケール
ヴォルフラム ローマン・トレーケル
ヴァルター 鈴木 准
ビーテロルフ 萩原 潤
ハインリヒ 与儀 巧
ラインマル 大塚博章
エリーザベト リエネ・キンチャ
ヴェーヌス アレクサンドラ・ペーターザマー
牧童吉原圭子
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オーケストラ・ニッポニカ《間宮芳生90歳記念》 オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」 [オペラ(国内)]

 ニッポニカの皆さまには頭が下がる。プログラム記載によると、間宮芳生先生門下の野平先生が抱かれた、作品再演への思いに、ニッポニカの皆が突き動かされたという感じだろうか。崇高な世界だ。すみだトリフォニーの客席はほぼ満席、客層は芸術家っぽい感じの人が多いように見受けられた。この日一堂にに会した人たちは私から見れば特別な情熱を持った人たちだと思う。初めて聞く音楽だが、特殊楽器がたくさん使われ、充実した身近な音だった。演奏も上手で、大成功だったと思う。
 30ページに及ぶプログラムに作品意図が詳しく載っており、誰も作品を誤解しないように導かれる。この日の為に間宮芳生先生が作曲された、「女王ザルの間奏曲」も美しかった。1965年ラジオドラマとして放送され、1966年舞台上演、2019年再演という経緯をたどっているが、個人的にはラジオドラマが合っている気がした。昔話を聞くように、言葉と音楽から場面を想像するのは心地よい作業だと思う。オペラ詳細は、多分ニッポニカの方が書いただろう、ウイキペディアを読むと良さそうだ。

台本: 木島 始
指揮: 野平 一郎
演出: 田尾下 哲
副指揮: 四野見 和敏
ゲストコンサートマスター:山口裕之
キャスト:
スキトオリメ (テノール)  大槻 孝志
女王ザル(ソプラノ)   田崎 尚美
オトモザル (バリトン)  原田 圭
ソノトオリメ (バリトン) 山下 浩司
くすの木 (バリトン)  北川 辰彦
男 (俳優)       根本 泰彦
合唱: ヴォーカル・コンソート東京/コール・ジューン
管弦楽: オーケストラ・ニッポニカ

トリフォニーと言えば、ワグチュー
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新国立劇場ー魔笛 [オペラ(国内)]

 大野和士芸術監督の、2018/19シリーズ最初の新プロダクション、魔笛の楽日公演に行った。ロビーには私服姿の大野さんがいらしたが、足の調子が良くないようにお見受けした。ウイリアム ・ケントリッジ氏の舞台は、書割に、プロジェクションマッピング映像を重ねた、きれいなもので、今見れば、コーミシェのコスキー演出に似ている感じだが、2005年だからこちらの方が古い。オーケストラの演奏に、ピアノを入れたり、パーカッションの生演奏で、雷の音や風の音を演出し、デジタルの効果音に慣れている現代人には、新鮮だった。
 新しい試みとして、英語字幕や、プログラムにも英語のページを設け、世界に発信する日本のオペラを目指す準備が少しずつ進んでいる。大野さんご自身が指揮される機会は少ないが、新国立劇場自体をもっとレヴェルアップさせて貰えたらありがたい。
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新国立劇場ーフィデリオ② [オペラ(国内)]

 カタリーナ・ワーグナー演出、楽日のフィデリオを見ることが出来た。飯守先生芸術監督最後の作品となる。家人はすでに見ていたが、幸い話も聞かず新国立劇場のHPも覗かず、全く中身を知らずに、舞台を見ることができた。
 まず初めに、1幕の古典的で、少しだけロマンチックなべトーヴェンの音が、何とも美しく感じられ、純粋、明快な構造の音に、心が洗われる感じがした。やはり、ヴェートーベンは、偉大な作曲家だ。
 カテリーナの舞台では、1幕は大概ノーマルで美しく、2幕以降、登場人物のキャラクターが顕在化してくる。そして、最後は、まさかの善と悪が逆転。その発想と最終プロセスが、彼女の見せ場だと思う。
 2幕に入ると、音楽は力強さを増し、終盤、苦しみを突き抜けるエネルギーが蓄積されてくる。最後昇天してしまった二人が、力強く愛を讃えるのは、音楽が正直なだけに、筋書きとのミスマッチが微妙だ。
 筋書きを逆転させるのは、もっと複雑な音楽の方が合っている気がする。
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東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9ローエングリン [オペラ(国内)]

 東京の春のワーグナーシリーズが、早9回目とは驚いた。毎年の公演に一喜一憂しているうちに、春のエンターテイメントとして定着していた春祭、今年は、気軽に聞けるローエングリン。フォークトの美声をまた東京で聞くことができた。
 全体の印象として、シルマーの音楽がこんなに情熱的に聞こえたのは初めてだった。ライプチヒの歌劇場では、場の特性かもしれないが、知的に、控えめに、程よく心地良い。でも東京文化会館の舞台でパワー全開のオケの音を聞くと、もしかして、マエストロも、日本で発散して帰る音楽家のお一人ですかとも思える。3階席中央ブロック全てと、4階の左右舞台寄りのお買い得な席にバンダを入れ、2階正面のプロジェクター席も含め合計90席近く潰して、自由に会場を使って満足されただろうか。昨年春、ある宴会でほんの少し、お話させてもらったとき、意外と堅物ではなく、茶目っ気があるというい印象を受けたのだが、今回の公演は、個人的には、シルマー氏のお人柄を感じる、楽しいものだった。バンダも良く制御され、3幕の大音量のファンファーレは楽しませてもらった。
 聞こえる音の印象は、座席により異なるわけだが、4階席サイドではオケの音がとても大きく響いた。 1階の前方の席ではオケの音は薄く、ソリストの声が大きく聞こえたとのこと。どちらも当然のことだが、この演奏会形式で、理想的な席は、どこなのだろう。
 暗譜で歌ったのは、フォークトとペトラ・ラング。役になりきっておられるお二人は、顔の表情や、身振りだけで十分惹きつけられる演技だった。以前、フォークト氏は、演出の意図に合わせて歌い方を変えると言っておられたので、きっと、このお二人にとっては、演奏形式は、自らの歌唱そのものだろうと思い、過去の体験をイメージしながら、楽しませてもらった。相方の特にエルザが譜面を抱え無表情で座っていると、ちょっと不自然に見えるが、これも、東京春祭でしか見られない、イヴェントだからこそ、自由な雰囲気は、お祭公演の長所と思えば面白い。エルザ役のハングラーさんは、一幕では少しおどおどした幼い歌い方だったが、2幕で隣にラングさんが来て歌うと、段々と張った声に変化してきて、ひょっとしたら、パワーに触発されたのか、想定内なのか、聴きばえがよかった。テルラムント役エギルス・シリンス氏は、今日は、良い声だと感じた。実はこのお二方は、二度ずつヴァーグナー公演を聞いていたのだが、印象が薄かった。他の公演に無かった楽しさは、バンダが入るファンファーレの場面、私の席からは、ピッタリ合って聞こえ、心地良かった。
 ポジティブなところを最大限楽しんだあと、不満だったを挙げつらうべきかどうか、年齢とともに、嫌なことを思い出すこと自体が不愉快だが。

指揮:ウルフ・シルマー
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ:レジーネ・ハングラー
テルラムント:エギルス・シリンス
オルトルート:ペトラ・ラング
ハインリヒ王:アイン・アンガー
王の伝令:甲斐栄次郎
ブラバントの貴族:大槻孝志、髙梨英次郎、青山 貴、狩野賢一
小姓:今野沙知恵、中須美喜、杉山由紀、中山茉莉
管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
合唱:東京オペラシンガーズ

バンダ席
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新国立劇場-ホフマン物語 [オペラ(国内)]

 ドイツ音楽、イタリア音楽、ロシア音楽、フランス音楽、北欧音楽、ラテン系、スペイン系位だろうか、いつ頃からか、身体で感じる音楽のイメージが自分なりに分類されていて、聞きながらその特長を楽しんでいるなあと感じることがある。しっくりくれば、いい心持だ。ドイツ音楽に嗜好が偏っているせいだろうが、自然体で聞いていても、久しぶりに聞く音楽にドキッとして、新鮮に感じる時があるのは、あまり良いこととは思わない。ホフマン物語も、しばらく聞いていなかった。新国立の美しい舞台と10年以上前、初めて聞いたフォークトの美声は、はっきり覚えていたが、音楽の印象は、舟歌以外、曖昧だった。
 今回感動したのは、チェロのソロ。オッフェンバックの出自、経歴、チェリストだったことなど、或いは、オーケストレーションを受け持った作曲家の個性も関係しているかもしれないが、イタリアオペラでの歌に寄り添うソロとも違い、歌い込んだワーグナーのソロとも別物、歌と同等に、もう一つの美しい旋律を同時進行で奏でていて、音楽全体の中に空間の余白を見た気がする。
 歌手では、バスバリトンのKoniecznyが目立って良かった。今年あと2演目聞く予定がある。メゾソプラノのBelkinaは、新国立でもお馴染みだが、2年前プラハで、軽やかなチェルネントラを聞いた。今回のミューズ役は、意外と堂々としていて、役の幅もまだまだ広がりそうだ。日本人歌手も良かった。
 フランス語劇なのに、言葉の印象が薄い気がするのもひっくるめて、この作品の存在意義のように思った。
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【ホフマン】ディミトリー・コルチャック
【ニクラウス/ミューズ】レナ・ベルキナ
【オランピア】安井陽子
【アントニア】砂川涼子
【ジュリエッタ】横山恵子
【リンドルフ/コッペリウス/ミラクル/ダペルトゥット】トマス・コニエチュニー
【アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ】青地英幸
【ルーテル/クレスペル】大久保 光哉
【ヘルマン】安東玄人
【ナタナエル】所谷直生
【スパランツァーニ】晴 雅彦
【シュレーミル】森口賢ニ
【アントニアの母の声/ステッラ】谷口睦美
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新国立劇場-松風 [オペラ(国内)]

 細川さんのオペラを初めて見た。ベルリンで、松風も班女を見るチャンスはあったのに、洋物を優先してしまった。細川作品の生演奏を初めて聴きたのは、昨年のエリザベートコンクールのチェロの本選課題曲Sublimationだけだ。何度も聞いて、綺麗で、心洗われるような印象が残っている。武満作品に似ている感じで、松風も無からはじまり無に帰す音楽だった。
 終演後、作曲家、演出家のトークがあり、細川氏は、 オペラと言っても、現代能とオペラをミックスであり、音の橋がかりになりたいと、仰っていた。ヴァルツ氏は、最後のあの世とこの世の境に消えていく感じを、救済ととらえたそうだ。ダンスが主の舞台かと思うほど、サシャヴァルツのカンパニーの肉体美は凄い。オペラの中のバレーは、殆ど好ましく感じたことはないが、今回は、人の気配を消した、人形が踊っているようで、人が無機質に感じるほど、上手だった。初め、新国立劇場のバレエでは無いことを不思議に思ったが、段々と、日本人が真似できるような振り付けではなかったと気づいた。
 ヨーロッパ、香港を回ってきたこの舞台は、ひとまず次のワルシャワで終わるらしい。西洋のオペラは、読み替え演出が長く続いて来たが、この能の精神を内蔵するオペラの新しい舞台演出の可能性は興味深い。
指 揮デヴィッド・ロバート・コールマン
演出・振付サシャ・ヴァルツ
美 術ピア・マイヤー=シュリーヴァー、塩田千春
衣 裳クリスティーネ・ビルクレ 照 明マルティン・ハウクドラマツルグイルカ・ザイフェルト

松風イルゼ・エーレンス
村雨シャルロッテ・ヘッレカント
旅の僧グリゴリー・シュカルパ
須磨の浦人萩原 潤
音楽補冨平恭平
ヴォーカル・アンサンブル新国立劇場合唱団管弦楽東京交響楽団
ダンスサシャ・ヴァルツ&ゲスツ
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新国立劇場-こうもり② [オペラ(国内)]

 帰国して3日目、こうもりを聴きに行った。思い返せば、ずっと真面目な音楽ばかり聴いていたので、オペレッタの朗らかな空気感に、ハッとした。こんな無防備の状態で聞いて楽しいなんて、意外だった。
 新国立劇場のこうもりは、これまでも、ところどころ日本語を入れて、聴衆の笑いを誘っていたが、今年は、使う日本語がかなり複雑で、文脈にそって、かなり上手な日本語劇を見せてもらった。
 初めオケが気になって、これはちょっとと思ったが、舞台が進行するにつれて、言葉の方に耳が行きいつの間にか、しっくり、自分の中に入ってきた。歌手も皆上手で、アデーレ役など、とても良かった。やはり、レパートリーになって、どんどん舞台が進化してくれるのは、嬉しい。
【ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン】アドリアン・エレート【ロザリンデ】エリーザベト・フレヒル【フランク】ハンス・ペーター・カンマーラー【オルロフスキー公爵】ステファニー・アタナソフ【アルフレード】村上公太【ファルケ博士】クレメンス・ザンダー【アデーレ】ジェニファー・オローリン【ブリント博士】大久保光哉【フロッシュ】フランツ・スラーダ【イーダ】鵜木絵里
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ベルリン国立歌劇場ーナクソス島のアリアドネ [オペラ(国内)]

 お宿を提供してくれるベルリンのアルゼンチン人友達は、ともかく話し好きで、この日もオペラへ行くと知っているのに、なかなか解放してくれない。何とか開演15分前に着いたが、お喋り旋風のなか、iPhoneの充電を忘れてしまい、昼満タンだった電池が無くなっていた。ベルリンは、ミュンヘンよりだいぶ寒い。皆帽子を被っていて、これこそ、ドイツの冬の出立ちだ。
 新装成ったリンデンオパー、以前はどんなクロークだったか忘れてしまったが、左右地下にあり、ちょっと狭い。終演後など、私は最上階だったので、周り階段を降りる時点で、クロークの行列が始まり、階段の隙間から真下をみると、ずっと続いていた。
 中の様子は、綺麗に蘇っていた。壁の白と椅子の赤が鮮明になった。日本でお寺など修復して、建立時の姿を蘇らせる作業に似ていると、ふと思った。2階の小さなホールは、念入りに輝かしいレセプションルームになっていた。地下の飲食コーナーは、何年か前きれいになっていたので、テーブル席があったかどうかは、よく見えなかった。
 中央近くの4階席一列目に座る機会は、以前は殆ど無く、いつも最後列をとっていたので、妙な比較になってしまうが、シラー劇場に比べると、素晴らしく音響が良かった。以前のここの音をイメージとして思い出せないほど、時間がたってしまったのか。長かった。
肝心の演奏だが、強行日程で疲れきって爆睡状態、隣席の常連さん(?)に足を蹴飛ばされてしまった。

Conductor:Eun Sun Kim
Der Haushofmeister:Elisabeth Trissenaar
Ein Musiklehrer:Roman Trekel
Der Komponist:Marina Prudenskaya
Tanzmeister:Jürgen Sacher
Primadonna - Ariadne:Anna Samuil
Tenor - Bacchus:Roberto Saccà
Zerbinetta:Brenda Rae
Harlekin:Manuel Walser
Scaramuccio:Linard Vrielink
Truffaldin:Grigory Shkarupa
Brighella:Jonathan Winell
Najade:Evelin Novak
Dryade:Natalia Skrycka
Echo:Sónia Grané

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新国立劇場ーばらの騎士 [オペラ(国内)]

 新国立劇場のばらの騎士は、2007年プレミエ以来、4回目の公演。シルマーが登場し、レパートリー公演として、ようやく安定してきたように感じた。楽日に来られないため、二日目の公演を聞いたが、期待を越えて、立派に完成されていたのは嬉しい。
 特別、登場人物が個性を発揮する演出ではなく、優等生的歌と演技の舞台だったが、歌が入る場面は本当に良くでき上がっており、3幕の重唱もとても美しかった。
 改めて気づいたことはメルベートさんの声が、とても華やかだったことだ。元帥婦人役はしっとりした、憂いを秘めた声が好まれるのかと思っていたので、歌い出しを聞いて、はっとした。本来は決して中年ではなく、高貴な若妻役であるので、これもまた良しということだ。ゾフィー役ゴルダ・シュルツさんは、骨のある現代的女性像を演じ、歌も完璧で素晴らしかった。オクタヴィアン役アタナソフは、勿論声も姿も美しい。
 これから楽日に向けて、歌手がもっと舞台に慣れて、演技に自由度が増すだろう期待できる。同じ台詞でも、言い方ひとつで場面の雰囲気や作品の印象が変わるので、最後には、今年の登場人物のキャラクターで舞台を締めてもらいたい。前奏やオケだけの部分は、とても難しく、ドイツでも超一流のオケでないと、手放しで美しさに浸ることは無理だ。慣れているはずの東フィルさんに、もうひと頑張りを期待し、今年はさよなら。

【指 揮】ウルフ・シルマー
【元帥夫人】リカルダ・メルベート【オックス男爵】ユルゲン・リン【オクタヴィアン】ステファニー・アタナソフ【ファーニナル】クレメンス・ウンターライナー【ゾフィー】ゴルダ・シュルツ【マリアンネ】増田のり子【ヴァルツァッキ】内山信吾【アンニーナ】加納悦子【警部】長谷川 顯【元帥夫人の執事】升島唯博【ファーニナル家の執事】秋谷直之【公証人】晴 雅彦【料理屋の主人】加茂下 稔【テノール歌手】水口 聡【帽子屋】佐藤路子【動物商】青地英幸
【合唱指揮】三澤洋史【合 唱】新国立劇場合唱団【児童合唱】TOKYO FM 少年合唱団【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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新国立劇場ー椿姫 [オペラ(国内)]

 とても久しぶりのイタリアオペラだが、ラ・トラヴィアータはやはり名曲。万国共通、一番集客の良いオペラということで、客席はほぼ満員。でも友人とはひとりも会わなかった。やはりワーグナーとは客層が違うのか、それとも川崎のベルリンフィルに流れたか。同日同時刻、二期会こうもりや隣のオペラシティではバッハ・コレギウムのポッペア、N響定期もあったようだ。
 いつもの4階客席から見ると、ピットも人がまばらというかスカスカで、オケも弾きやすそう。音量のバランス、歌手やコアがちゃんと聞こえるかでハラハラしたジークフリートや黄昏と違って、ベルディは歌手中心、オケは伴奏に徹しているので、余計な心配なく安心して聴ける。
 新国立劇場の演出も2015年からか、新演出に変わっていた。シンプルな舞台装置だが、下手から上手に斜めに配した舞台のうち、下手側の壁に当たる鏡が綺麗で舞踏会の場面で映える。
 2幕ヴィオレッタの屋敷が全く家具も何も無い空間で、何故か天井に100円透明傘とデコイ(?)が吊ってある。3幕では病床のヴィオレッタとその他関係者は紗幕で仕切られて演技をして、既にあちらの人であることを表している。最期ヴィオレッタが力を絞って立ち上がり、幕が下りても上手側に突き出た舞台の端まで来るところが大変効果的だった。ヴィオレッタ役が体型も良く、美人で良い雰囲気だった。(G)

【ヴィオレッタ】イリーナ・ルング
【アルフレード】アントニオ・ポーリ
【ジェルモン】ジョヴァンニ・メオーニ
【フローラ】小林由佳
【ガストン子爵】小原啓楼
【ドゥフォール男爵】須藤慎吾
【ドビニー侯爵】北川辰彦
【医師グランヴィル】鹿野由之
【アンニーナ】森山京子
【ジュゼッペ】大木太郎
【使者】佐藤勝司
【フローラの召使い】山下友輔
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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新国立劇場ー神々の黄昏③ [オペラ(国内)]

 黄昏の楽日、思った通り、ラングはもはや躊躇なく、一幕から全開で、素晴らしかった。バイロイトのような感動を味わえて、感謝。
 オケも全体的に慣れてきて、音量バランスも大分良くなった。もっとも、こちらの耳がこのプロダクションに、適応してきた面もあり、苦痛でなければ、今、この場の大音量を受け入れるのが、幸せとというものだ。楽日は最後なので、出演者はかなり自由にやると聞いたことがあるが、むしろ後半に来て統一感が出てきたのではないか。
 平日午後の最終日だったが、思いきって行って良かった。連れ合いは2幕からとなったが。
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新国立劇場ー神々の黄昏② [オペラ(国内)]

 1週間後、10/14の黄昏を聞いた。オケの音が集約されてきて、正統な音量に近くなり、たまに、行きすぎるところを除けば、音楽に身を任せても良いかなという気分になる。10/11の公演も、かなり評判がよかったようだ。そうなると、ニュープロダクションの公演前半は、チケット代を安くしたらどうかと思う。ヨーロッパではプレミエの日だけ、値段が高いことも普通で、未完成でも、ニュース性に価値があるのだ。でも、オペラ後進国の日本では、謙虚に、まだ完成に程遠いのでという良心を示しても良いのではないだろうか。ハラハラしながら、全公演聞いている人たちが気の毒に感じる。
 この日はラングが調子を取り戻していた。前回は絶叫が目だってしまったが、この日は、バイロイトのイゾルデのような、滑らかで強靭な声に戻り、3幕では輝かしいブリュンヒルデになりきっていた。2幕のハーゲンと男声合唱も、少し前へ出たのか、聞きやすくなり、良くなった。ただし、声質は依然として、美しく透明過すぎる印象。ラインの乙女たちは、グールドの大声量に伍して、美しいハーモニーを聞かせてくれた。本公演では、日本人歌手の活躍も見事で、ゲストとの落差は感じない。
 この日、バックステージツアーに当選した人から聞いた話では、3幕でラインの乙女がジークフリートに手渡す三角形の板は、未来を映す鏡、度々出てくるレンズは、後ろに立つと人が歪んで見えるが、心も歪むという意味。最後炎がジークフリートを包む場面では、奥に人形を横たえてあると。4階席からは見えないが、逆に見えてはいけないものが、見えてしまうことがある。ト書きでは、最後ブリュンヒルデはグラーネに股がり、燃え盛る薪の山に飛び込むことになっているが、この舞台では、群衆に紛れて、白い布を被り動かなる。そして幕切れに白い布を広げ起き上がり「救世主」となるらしい。1階席では、布を被るところは視界に入らないので、甦る姿に驚くことになるが、上階からは全て見えているので、解説を読むまで、最後の意味が分からなかった。
指揮:飯守泰次郎
ジークフリート:ステファン・グールド
ブリュンヒルデ:ペトラ・ラング
アルベリヒ:島村武男
グンター:アントン・ケレミチェフ
ハーゲンアルベルト・ペーゼンドルファー
グートルーネ:安藤赴美子
ヴァルトラウテ:ヴァルトラウト・マイヤー
ヴォークリンデ:増田のり子
ヴェルグンデ加納悦子
フロスヒルデ:田村由貴絵
第一のノルン:竹本節子
第二のノルン:池田香織
第三のノルン:橋爪ゆか
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団IMG_3288.JPG
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新国立劇場ー神々の黄昏 [オペラ(国内)]

 10/7の公演を聴いた。まず言えるのは、マイヤーが素晴らしかった。
 席は四階一列目中央右寄り。聞こえてくる音は大分予想と違っていた。この席での印象だが、どの幕も初めの音を発する瞬間がぴったり合っていないように聞こえる。冒頭では意図的なのだろうが、木管の音が突出していて、待ち構えていた響きとは違っていた。全体にオケの音量が大き過ぎて聞こえるのは、飯守マエストロ新国立のリングの特徴で、金管、打楽器は音色、音質より音量が重視されているのだろうか。
 ペトレンコがスコアを分析して予想外のハーモニーを聞かせてくれるのとは別の意味で、予期しない音に驚く場面に何度も出会った。一階席で聴いたこともないくせに、4階席のオケの大音量を嘆くのは間違った感想かもしれないが、全ての指揮者で思うことではないので、やはりこれは、好みの差はあっても飯守先生の音なのだろう。3幕ジークフリートの死以降、初めてオケの音量が、相対的にppp位まで落ち、幕切れまで、ものすごいクレッシェンドが持続されて、昔だったら、私も大喜びしただろう、巨大な音楽だった。
 一幕でラングが声をセーヴしていたのが、ちょっと残念。イゾルデ役ではさほど感じなかったが、ブリュンヒルデではもう少し声の幅が必要なのか、激しさみなぎる絶叫場面の方が本領発揮してるようだった。グールドも声量が落ちないことは、バイロイトのトリスタンで証明済みだが、この二人と飯守先生の大音量オケの取合せは、自分の経験内では、珍しいタイプの公演だった。
 マイヤーのヴァルトラウテの場面では、独立したマイヤーの世界が広がり、やはり別格、飛び抜けて素晴らしかった。歌詞も4階まではっきり聞こえ、この場に居あわせて、幸せだと痛感した。ラングはマイヤーに伍してというより、演出上も、マイヤーに花を持たせたのか、控え目な印象だった。
 演出上舞台が奥深いせいもあるが、2幕のハーゲンの号令も男声合唱も声が遠く、迫力が出なかった。合唱の人数は相当いたようだし、バンダのスティアホルンは素晴らしかったが、弦楽器は聞こえず、バランスが難しい。ここはもっと前方で、歌ってもらいたいものだ。と言うより、全体にオケの音量が大き過ぎる。
ジークフリートのホルンは、なめらかで、勢いがあって、素晴らしかった。
 この日、本公演3回目の方々にも会い、だんだん良くなっているとのこと。一週間後には、どんな変化があるだろうか。

指揮:飯守泰次郎
ジークフリート:ステファン・グールド
ブリュンヒルデ:ペトラ・ラング
アルベリヒ:島村武男
グンター:アントン・ケレミチェフ
ハーゲンアルベルト・ペーゼンドルファー
グートルーネ:安藤赴美子
ヴァルトラウテ:ヴァルトラウト・マイヤー
ヴォークリンデ:増田のり子
ヴェルグンデ加納悦子
フロスヒルデ:田村由貴絵
第一のノルン:竹本節子
第二のノルン:池田香織
第三のノルン:橋爪ゆか
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
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バイエルン国立管弦楽団ーヴァルキューレ1幕  NHKホール [オペラ(国内)]

 タンホイザーの公演を終え、最後にペトレンコはヴァルキューレ1幕を演奏会形式で披露してくれた。オケピットでなく、舞台上のペトレンコのワーグナーではあるが、NHKホールの観客3000人で共有できたことはとても嬉しい。初めてペトレンコを聴いた複数の人から感想が届いたが、皆、感動を言葉にせずにはいられないというという驚きと満足感に溢れていた。2004年ベルリン・コミシェ・オパーのインテンダンド時代、初めてペトレンコのモーツアルトを聴き、現地の人を捕まえて、興奮して感想を聞いてもらった自分を思い出す。私よりもっと前からペトレンコを良いと思っていた方々も、今の私のように、ようこそ日本へ、ありがとう!という気持ちだろう。ペトレンコの振るベルリン・フィルを生で聴いてみたいという願いが叶う日もそう遠くない。
 ペトレンコの創造する音楽の時空に身を置くと、構えていても、やはり驚嘆する。瞬間刻みとでも言おうか、どんどん形や色彩が変化しながら、美しく調和した異次元の世界を行くような感覚に捕らわれ、自分としては、もうマエストロに対して、完璧なコントロールされた音などと批評がましい言葉は、おこがましくて使えない。真の芸術家だと思う。作曲家でなく、指揮者が芸術家と言われるのはあまり聞いたことがないが、スコアの縦線の、刻々と変化する音のイメージを実現させるなら、ベルリンフィルが最適だろうことは想像できる。
 今回一幕のみということで、比較的落ち着いた演奏だったように感じた。全曲演奏では、一幕はまだ序奏であるかのように、遥か遠く、視野に入らない獲物を追うような気持ちにさせられ、二幕への期待へと続く。

指揮:キリル・ペトレンコ
管弦楽:バイエルン国立管弦楽団
バリトン:マティアス・ゲルネ*
ジークムント:クラウス・フロリアン・フォークト
ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ
フンディング:ゲオルク・ツェッペンフェルト

【プログラム】
マーラー:「こどもの不思議な角笛」より*
 ラインの伝説
 きれいなラッパの鳴るところ
 地上の暮らし
 原光
 むだな骨折り
 死んだ鼓手
 少年鼓手

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」第1幕 演奏会形式(ドイツ語上演)

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新国立劇場-ジークフリート②楽日 [オペラ(国内)]

 楽日の席は4階1列目、私の場合は、手すりが邪魔で、結局手すりと壁の隙間から、双眼鏡を覗く姿勢で見ることになる。先週バックステージの説明を聞いたので、今日は視覚優先で、特に一幕は細かい動きを見るようにした。でも、何故か、鍛冶場面で前回に比べほとんど火花が散らず、少し残念。ミーメは、今日は上手に卵を割った。この舞台は、トンネルリングの完成形だと、先週説明があった。3幕の三角形の舞台は、キース・ウォーナーのTokyo Ringにも影響を与えたとも言っていた。
 音楽は、オケが慣れて来たのだろう、先週よりも、飯守節になっていた。金管を鳴らし、ちょっと私の耳の状態では、オケがうるさかった。でも歌の場面では、さっと音量が下がるので、そこは良い感じだ。きっと一階席のお客様が満足するような音量になっているのだろう。4階席からは、一切オケが見えないが、横のZ席から覗いてみたかった。
 2幕は、ファーフナーの手(足?)に窓が2つ見えるが、人が二人入っているそうだ。後ろから空気を送って膨らませるのだが、音がうるさいので、初めは少しずつ、オケの音量が上がったところで、一気に入れるらしい。今回は、3幕も歌手の表情を見続けたが、正規の演出なのか、二人とも思う存分、なりきって演技してくれた。酷評される心配のないaway公演の解放感があるのかなぁと想像したりもする。主役二人を見ていて、本当に、"愛する"とはどういうことなのか、考えさせられた。リングの筋書きにはすっかり馴染みになっているものの、ヴォータンに対する忖度も加わりブリュンヒルデが引き起こした事件の顛末を思うと、同情の余地ある登場人物ばかりだ。今年の秋には黄昏が聞ける。一年でリング2作品とは快挙だ。

Siegfried:ステファン・グールド
Mime:アンドレアス・ コンラッド
Der Wanderer:グリア・グリムスレイ
Alberich:トーマス・ガゼリ
Fafner:クリスティアン・ ヒュープナー
Erda:クリスタ・マイヤー
Brünnhilde:リカルダ・メルベート
Waldvögel:鵜木絵里、九嶋香奈枝、安井陽子、吉原圭子
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新国立劇場-ジークフリート [オペラ(国内)]

 四日目の公演に行った。何も前評判を聞いていなかったが、期待以上で、東京交響楽団が結構つぼにはまっていて、ポジティヴに驚いた。今までしかたなく聞いていた東フィルのあの残念なワーグナーは何だったのか。誰のせいだったのだろう。指揮者とオケの相性だろうか。始まりのFgはスラーじゃないなぁと、警戒したが、すぐに雰囲気が出てきて、テンポ感も、音量も、一、二幕はとても良かった。三幕だけは、力尽きたのか、弦も金管もばらばらになってしまったが、全体的にはヴァルキューレをはるかに凌ぐ実力だったと思う。舞台もノーマルで、私は気に入った。
 ステファン・グールドはじめ、歌手の皆さんも、とても良かった。やっぱりリングはいいなあと、どっぷり浸かって、時々ペトレンコのジークフリートを思い出しながら、ワーグナーを享受した。
 この日運良く、初めて、バックステージツアーに当選した。公演中の大道具の多くが、手動であり、だからこそ、自然に見えるという話は意外だった。一幕のミーメの小屋の鍛冶のセットが見事で、ジークフリートがトンテンカン刀を叩き、火花を散らしながら歌う見せ場は歌手の器用さがかなり関係する。この火花に関しては、初日にご観覧された皇太子殿下からのも、どのようにしているか質問が出たそうだ。グールドは器用で、両手を使って音と火花も同時に出しているとのこと。確かに金槌の音とオケがずれてしまう本番もお目にかかったことがある。このプロダクションでは、森の小鳥は4人出てくるが、そのうち最初の3人は2幕初めから木に登って出番を待っているとのこと。狭い場所で大変な仕事だ。3幕は、主役二人の表情や演技がとても自然で、清々しいプロダクションが見られて、良かったと思う。

Siegfried:ステファン・グールド
Mime:アンドレアス・ コンラッド
Der Wanderer:グリア・グリムスレイ
Alberich:トーマス・ガゼリ
Fafner:クリスティアン・ ヒュープナー
Erda:クリスタ・マイヤー
Brünnhilde:リカルダ・メルベート
Waldvögel:鵜木絵里、九嶋香奈枝、安井陽子、吉原圭子
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「ジークフリート」ハイライトコンサート [オペラ(国内)]

 新国立劇場ジークフリートのカヴァー歌手による抜粋公演が中劇場であった。指揮者城谷さんの試みなのか、ピット内はヤマハエレクトーン2台、ティンパニ2台で、お手軽オーケストラのような面白い演奏だった。エレクトーンが色々な楽器の音を出すことが出来るのは知っているが、フルに活用すると、オーケストラにたどり着くのか。一体何種類の音があるのだろう。金管楽器の音はちょっと馴染まなかったが、大勢の弦楽器奏者が弾いているように錯覚する場面もあり、コントラバスのピッチカートなど、本物のようだ。たった一音のミスタッチの影響は大きく、けん盤使用の音域限界もあるかもしれないが、下手なオケより、音程は揃っているわけで、伴奏側の音量調節が可能なことで、歌手も楽に歌えるということにはならないだろうか。
 例えば国外の小さな町でオペラをやりたいとき、歌いたい歌手は居るのにチャンスに恵まれないような時、曲を熟知し、熟練した技能をもつエレクトーン奏者付きで派遣したら、オケを雇うより、手間がかからないかもしれないと、ふと思う。周到に準備すれば、エレクトーンでここまで出来るのかと、とても驚いた。かといってオケの仕事を奪ってしまうほど、受容されても困るしと、勝手な想像をしている。
【ジークフリート】今尾 滋【ミーメ】青地英幸【さすらい人】大塚博章【アルベリヒ】友清 崇【ファフナー】志村文彦【エルダ】石井 藍【ブリュンヒルデ】橋爪ゆか【森の小鳥】三宅理恵
【エレクトーン】西岡奈津子/小倉里恵
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東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.8神々の黄昏 [オペラ(国内)]

 マエストロヤノフスキのリングチクルスが、ついに黄昏まで来た。この4年間で、自分の聞き方も温和になってきたが、N響が厳しい(らしい)ヤノフスキに食いついて行き、破綻しなくなったのは、確かな進歩だと感じる。勿論メンバーは同じではない。今年は、向山さんがチェロ首席を務め、音符が聞きとれる、舞台上の演奏ならではの体感も、ついにここまでクリアになったと思うと嬉しい。3幕で、多少綻びは見えたが、二日目の公演は、さらに期待できるだろう。
 歌手陣の主役二人(*)は、代役として3/29に来日したそうだ。ジークフリートは、かなり緊張ぎみだったが、幕が進むにつれて、少しずつ調子が出てきた。多分二日目目は、もっと堂々と歌ってくれるだろう。ブリュンヒルでデは、一幕では、かん高い絶叫が気になったが二幕以降は落ち着いたように思う。
 二人以外のソリストは、何の不安もなく、違和感なく、ゆっくり楽しませてもらえて、「春祭」の進歩に感謝したい。アルベリヒ、ハーゲン、ヴァルトラウテ、グートルーネも、来日されたゲストの皆さん、それぞれ素晴らしかった。
 客席にはカタリーナが来ていたが、明らかに太り過ぎ。夏までに何とかするのだろうか?
指揮:マレク・ヤノフスキ
*ジークフリート:アーノルド・ベズイエン
グンター:マルクス・アイヒェ
ハーゲン:アイン・アンガー
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
*ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム(4月1日)
        クリスティアーネ・リボール(4月4日)
グートルーネ:レジーネ・ハングラー
ヴァルトラウテ:エリーザベト・クールマン
第1のノルン:金子美香
第2のノルン: 秋本悠希
第3のノルン:藤谷佳奈枝
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香
管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲
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新国立劇場-ワルキューレ③Z券 [オペラ(国内)]

 最後の週末公演なのだが、チケットが1枚しか準備できず、朝からZ券に挑戦したところ、首尾よく手に入った。席は、4階サイドの壁際で、舞台は半分ほどしか見えないが、身を乗り出せば指揮者とピットの中半分は良く見える。ベルリンでは、こういうオケの脇の、安い席を狙える劇場があるのだが、新国立劇場ではなかなか難しい。どんな席順で、Z券を割り当てるのだろう。
 ずっとチェロ主席奏者にくぎ付けで、全幕朗々と歌い上げる様に感服した。ソロは毎回素晴らしかったが、実際ピットの中が見えると、重奏もTuttiでも周りからの信頼が厚いことが見てとれる。この席でじっくり見ることができて良かった。3幕は、3階正面の席と交代した。やはり全体の響きは、正面の方が優っていた。Z席は、オケも歌手も間近で見られ、生の音や声が聞こえるのは嬉しいが、グールドの声量は、私にとってIMG_2058[1].JPGは、少し大きすぎたようで、もったいなかった。
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新国立劇場-ワルキューレ② [オペラ(国内)]

 本公演としては今回初めて聴いたのだが、オケについてはGPの時から比べると、金管は少し安定してきた。
 歌手はさすが一流どころを呼んできているので、全く問題が無く、主役級5人はほぼ安心して聴けた。演出が穏健で、歌手は歌以外に惑わされることがないので、歌いやすいのではないか。例えばバイロイトのように、舞台装置からしてタッパがあって立体的だと、見ている方はスペクタクルだが、やる方は上がったり下りたり体力的にも大変だ。今回の演出では、歌手はせいぜい舞台手前から奥へゆっくり歩くくらいの動きしかない。ワルキューレたちの動きも画一的だ。
 問題はオケで、弦楽器特に低弦は、遅めのテンポもあって良く歌っていて美しいが、金管が相変わらず無駄に大音量なので、個人的には、余り嬉しくない。5階席天井桟敷なので、大きな音に聞こえるのかもしれない。どの劇場も高価な席で、良い状態で聞こえるよう演奏するは当然なので、S席の聴衆が満足すれば、成功といえるだろう。私は、別に文句は無い。(G)
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新国立劇場-ワルキューレ [オペラ(国内)]

 長丁場のため平日でも17時開演だが、ほぼ満席で結構なことだ。入口にSPがたくさんいて、浩宮様がいらっしゃるということはすぐ分かった。(4階4列目なので席から見えない)
 多少早目に着いたので、5階の情報センターに行ったが、16:35頃下りのエレベーターが規制に引っ掛かって止まっている。受付へ戻って階段はどこか聞くと、非常用で普段はカギが掛かっているので、動くまで待つよう言われるが、その対応で本当の非常時は大丈夫なのだろうか?
 公演については連れ合いがGPを既に見ており、感想はほぼ同感で、歌手には大変満足した。グールドは全く余裕だし、ジークリンデのジョゼフィーネ・ウェーバーは、最初フンディング家の女中かと思った見た目だが、いい声だ。ヴォータン、フリッカは外見、歌ともぴたりはまり、ブリュンヒルデのテオリンは、もっと気張るかと思っていたが、告知の場面など思いの籠った弱声で聴かせた。騎行のワルキューレ達は頑張ったが、体型も声量も併せてテオリンひとり分だ。
 オケには不満が残る。2幕や3幕序奏(騎行)は金管と打楽器が下品にうるさくて、弦が全く聞こえない。こういうのを好む人がいるのかもしれないが、ペトレンコと全く逆の方向性だ。告知の金管の弱音ソロも情けない限り。一方弦楽器は健闘していた。Vnは対抗配置で、Bsを下手側に置くなど工夫している。後半2作のオケが変わるというのは本当なのだろうか?
 演出は穏健で余計な情報が無くて良かったのでは?ブリュンヒルデが昔ながらの甲冑、兜、盾、槍で武装している衣装は、最近は珍しいのではないか。羽根飾りの色が変わるなど、細かいこともやっている。
 1幕フンディング家の家来が黙役で何人か出ているが、2幕ジークムントとの対決の場面では、フンディングひとりなのは何故なのだろう。逃げたか?どうでもいいが…(B)
 
指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ
ジークムント:ステファン・グールド
フンディング:アルベルト・ペーゼンドルファー
ヴォータン:グリア・グリムスレイ
ジークリンデ:ジョゼフィーネ・ウェーバー
ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン
フリッカ:エレナ・ツィトコーワ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
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