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東京ハルモニア室内オーケストラ 第59回定期演奏会 [コンサート]

 12人の弦楽合奏団、この日は、Vn7,Vla2,Vc2, Cb1の構成で、指揮者無しのプロの演奏で、私の師匠が出演するので聴きに行った。
 プログラムは地味だが、ファゴットの演奏が素晴らしかった。オケと共演するFg.コンチェルトは限られているが、室内楽だとこんな美しい曲があるのだ。ライヒャは古典的美しさ、フランセは、ラヴェルのような心地よい音楽に甘いファゴットの音色が溶け合い、どちらも美しかった。
 エルガーは、大昔に弾いたことがあったが、当時は良さが分からず、Vnのメロディは記憶にとどまっていなかった。綺麗な曲だと思う。改めて聴けてよかった。
 ショスタコーヴィッチは、6月にベルリンフィルで聴いていたので、楽しみにしていた。勿論整然と演奏されているが、やはり指揮者なしだと、冒険できず、歯切れが今ひとつという感じだろうか。
 アンコールは弦楽合奏用の編曲で、冒頭の物悲しいメロディは、クルトヴァイルを思い出すユダヤっぽい節回し。曲名も作曲者も知らなくても、年配者にとっては、昔どこかで聞いたような記憶がある。中間部のワルツは、対照的に華やかで夢のように明るくて、好いアンコール曲だった。

エルガー セレナード ホ短調 作品20
ライヒャ ファゴットと弦楽のための変奏曲※
フランセ ファゴットと弦楽のためのディヴェルティスマン※
ショスタコービッチ 室内交響曲 ハ短調 作品110a(弦楽合奏版)
※ファゴット独奏 岡本正之
東京文化会館小ホール
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クリスチャン・ツィメルマン ブラームスを弾く サントリーホール [コンサート]

 久ぶりに聴く岡本さんの演奏。奏者4人がペーザロで合流し、練習を始めて約一か月、少なくともイタリアで3回、日本で3回演奏会が開催され、サントリーがツアー最終日。やはり、一夜限りの室内楽とは全く違い、危うさは微塵もなく、緻密で安定感と安心感がある。ツアーをやるとは、こういうことなのだと実感した。
 サントリーホールで岡本さんの音を聴くのは初めてだったが、S券チケットが16,000円というハイランクの演奏会で、私は舞台後ろの8,000円の席で我慢した。席により音が違うのは大前提であり、誰もが理想的な音を体験できるものではない。サントリー舞台後ろ側の席で室内楽を聞くのは初めてだと思うが、ピアニストが良く見えて、ツィメルマンが足を踏み鳴らしたり、後ろで指揮したり、没頭している姿を間近に見えたのは面白かった。チェロも少しは見えたし、全体の音が溶け合っているのはよく分かった。最近のものではベルリンのピエール・ブーレーズ・ザールのように、わざわざ周囲360度に客席を設けている室内楽ホールもあり、そう思えば、室内楽なら距離さえ近ければ、どこで聴いても際立つところは伝わって来るのではないだろうか。
 音色も、各楽器の音量バランスも理想的で、ピアノのみ目立つこともなく、4人で一つの楽器のように調和していた。
 これがポーランドらしさなのかもしれないが、皆、緻密な仕事ぶりで、複雑な音の隅々まで整然と、知的に誠実に演奏されていた。一人が突出していないところがまた凄い。ブラームスらしい、少し暗めで格調高い音が、ホール全体に広がり、その澄んだ空気の振動を共有できたような、浄化されたような時間だった。でも、もし正面からかぶりつきで聴いていたら、もっと違う感想を持ったのではないかと思う。

ブラームス:
ピアノ四重奏曲第2番イ長調Op. 26
ピアノ四重奏曲第3番ハ短調Op. 60
ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン
ヴァイオリン:マリシャ・ノヴァク
ヴィオラ:カタジナ・ブゥドニク
チェロ:岡本侑也

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コートールド美術館展 魅惑の印象派 [美術・博物館]

 巨大台風19号襲来前日、友人に誘われコートールド展を鑑賞した。コートールド美術館改修工事の間、出稼ぎに出された印象派とポスト印象派名画たちは、全体的にしっとりと落ち着いた雰囲気だった。コートールドの美術館や自宅の写真パネルが展示され、お城のような空間に溶け込むように名画が掛かっているのが素晴らしい。コートールドはフランスから英国への移民で、彼自身が一つ一つ作品を選び、自宅に十分展飾ってから、美術館に展示したらしい。英国に印象派を紹介したことになる。展示作品すべてにコメントが付いているのは珍しい。また、絵画購入の領収証や、美術研究所の教材、試験問題も展示されていて、コートールド美術館の空気を少しでも伝えたい意図が伝わってくる。
 最初の展示部屋には、少し日本的作品として、ゴッホの、桃の花咲き誇る日本の山郷のような風景、松島を連想してしまう、モネのアンティーブの海沿いの一本松があった。
 セザンヌの穏やかなサント・ヴィクトワール山、ドガの踊り子、ルノアールの桟敷席、ゴーギャンまでもが、おとなしめの上品な感じの作品揃いで、こういう中庸な感じの作品を選んだのは、コートルド氏自身の好みなのだろう。芸術家は大概、生き抜いた晩年の作品が強烈すぎたり、理解不能になったりする場合が多い。それぞれの作者の、これだけ穏やかな雰囲気の作品を揃えたのは珍しい気がする。食い入るように見るより、むしろ少し距離を取って眺めることで、絵に入りこめるような、控えめな芸術もいいなと思う。スーラーの点描画も小さめサイズで、部分的に人物や風景を小さなキャンパスに描く、完成作か習作か素人には見分けがつかない作品もあった。たまに、ごく初期の掘り出しものだから購入できたような収集家は居るが、コートールドは、敢えて地味な作品を集めたように思えてならない。
 素人的にはセザンヌのカード遊びをする人々が、あたかも絵の中の人の声が聞こえるようで、気難しいセザンヌが意外と人の心の内を見ていたのだろうかと気づいたり、ゴーギャンのネヴァーモアには自分の印象と違う、作者の丁寧さ穏やかさを垣間見た気がした。
 宣伝写真のモネのフォリー=ベルジェールのバーは、本物を見るのは初めてだが、確か中学の美術の授業で、先生が見せてくれた絵の一つだ。試験の時、毎回先生が何枚か絵(コピー)を持って各教室をまわり、作品名や作者を答案に書かせた。後年チューリヒでゴッホの海の絵の実物を見て、先生のコメントを思い出し感動したことがあった。が、それも今は昔だ。
東京都美術館 企画展示室
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ラグビーワールドカップ2019 (アルゼンチン vs. アメリカ) [スポーツ]

 生まれて初めて、ラグビーの試合を観戦しに、熊谷ラグビー場へ向かった。車中にはヴォランティアらしい服装の乗客がいたり、熊谷駅で新幹線から降りて来る外国人もおり、駅ですでにワールドカップの盛り上りが感じられる。駅前ではお祭りの山車が出ており、お囃子の音が響き、お囃子の音はテーマ曲さながら、ラグビー場でもうるさいほど聞こえた。ラグビー場内の通路では獅子舞もあった。
 駅から少し歩いたところに、ファンゾーンがあり、10時オープンを待って入場し、連れ合いはハイネケンの生ビールにご満悦。ラグビー場には缶のハイネケンしかないそうだ。シャトルバスは往復とも滞りなく運行。駅を降りてからの道路でも、会場でも、たくさんのヴォランティアのお年寄りが並んで、ハイタッチしようと待ち構えている。自撮り棒は持ち込み禁止なので、ヴォランティアの人たちが、進んで写真を撮ってくれるのだ。熊谷では3試合あり、この日が最後で、ヴォランティアの方々は本当に明るくお元気でハイテンションだった。
 入場の際の手荷物検査もさほど厳しいものでなく、時間もかからない。ゲートを入ると5店くらい屋台が出ていて、給水所に水が並んでいた。ペットボトルを没収された人もここだけは、無料で水が飲める。
 実際グラウンドを見て、なるほどサッカー場よりは狭く、一応隅々まで見渡せる広さだった。
 幸いお天気に恵まれ、青空の下の観戦は気持ちがよい。青空にボールが高く上がったり、ラインアウトで大空を背にジャンプする姿は美しいと思う。選手同士体がぶつかる音も聞こえる。また審判の判定が出るまで、選手たちは、感情を表に出さず、静かに休息をとったり、話たりしているように見える。サッカーのような派手なパフォーマンスは見なかった。
 amazonで購入したアルゼンチンの小旗を携行したが、実際はグラウンドに向かって旗を振ることもないほど、アルゼンチンが強かった。ベルリン在住の友達に母国の国歌を撮影して送ってほしいと言われたので調べたら、アルゼンチンの国歌は長くて有名とのこと。ロッシーニのオペラみたいな印象だ。
 すぐ隣の席にアルゼンチンのユニフォームを着た、お国の若い男性がいて、国歌で立ち上がるとスタンドに散らばっているアルゼンチン人同士呼応し、終始エネルギー一杯の応援をしていた。
 アルゼンチンが優勢で結果は47:17だったが、アンゼンチンのサポーターもUSAが攻勢に転ずれば応援し、USAが点数をとれば、拍手し声を掛け、アメリカ人にお礼を言われていた。紳士的な応援だ。
 多分バックスタンド端の小学生集団だろう、準備してきたおもてなしの応援を披露し、声をそろえて、両国を交互に応援する。国歌も歌っているようだった。入場を待っているとき、隣に小学1年生くらいの一団が体育座りしており、一枚ずつチケットが配布され、失くすな、風で飛ばすな、折りまげるなと先生に注意を受けていた。
 熱中症の時期は過ぎており、快晴でも意外と風が強く、あの小学生は大丈夫だったろうか、うかつにも私は体調を崩してしまった。
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ミューザ川崎シンフォニーホール開館15周年記念公演「グレの歌」 [コンサート]

 この歳になっても、ナマ演奏初体験の作品には、わくわくするものだ。グレの歌は今年の春に聞き逃しており、気になっていたところこの公演を教えてもらった。
 予習として、ラトル・ベルリンフィルを聴いたが素晴らしい。原語がデンマーク語なので、歌われるドイツ語訳は、難しい言い回しも無くてわかりやすい。第一印象としては3幕が強烈で引き込まれる。最後唐突に朝日が差し込んで終わると、光が有難い北欧の風景が残像に残り、どんな悪夢も朝の光とともに覚めるというポジティヴさとしては、聴きやすいと思う。
 歌手陣は世界最高レヴェルのヴァーグナー歌手で、ドーメンもほんの短い役のために来日してくれた。ヴァーグナーを歌う姿を重ね合わせてつつ、一幕は影の無い女が思い浮かんだり、二度 Die Zeit ist um.とくると、やはりパルジファルが頭をよぎる。
 ジョナサン・ノットはやはり凄いと改めて思う。団員全乗りに加え、外部からも助っ人を入れているのだろう、大オーケストラをまとめあげ、緊張感を絶やさない素晴らしい演奏だった。シェーンベルクの初期作品ということで、初めてでも充分美しい響きを堪能できる。
 座席は、舞台横2LAなので、一歩前に出て歌うケールの声は聞こえにくかったが、正面席の方は、良く聞こえていたとのこと。座席相応の満足感ということだ。

出演
指揮=ジョナサン・ノット
ヴァルデマール=トルステン・ケール
トーヴェ=ドロテア・レシュマン
山鳩=オッカ・フォン・デア・ダムラウ
農夫=アルベルト・ドーメン
道化師クラウス=ノルベルト・エルンスト
語り手=サー・トーマス・アレン
合唱=東響コーラス
管弦楽=東京交響楽団
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2019年バイロイト音楽祭報告ータンホイザー [講演会]

 オペラ演出とタンホイザーの演出家トビアス・クラツッアーのについて、森岡先生ご専門のジェンダーの問題を中心にお話があった。
 今年のタンホイザーの舞台を実際生で見ていないので、初めて聞くジェンダーの話が新鮮だった。この演出は、これまでバイロイトに来ていない人たちを取り上げ、もっと芸術は自由であるべきという位のことしか気づかなかったが、劇中のサーカス団一行という、バイロイトでは気にもとめられない人たちの間にも、格差が存在することを訴えていたのは気づかなかった。
 一幕後の休憩時間に、ル・ガトー・ショコラが劇場下の公園で歌い、オスカルはボートを漕ぎ、ヴェーヌスは踊る。ユーチューブ動画で部分的に見ただけだったが、タンホイザーの中の曲も歌っていたのにはとても驚いた。私自身が、彼らをヴァーグナの世界から外して見ていたのだ。また、音楽祭のお客でない、通りすがりの観光客の方がこの場面に熱狂しているように見えた。
 グラーツでオペラ演出のコンクールをやっているという話は興味深い。課題作品を決め、審査員は劇場のインテンダント、作曲家、演出家、ジャーナリストなど、応募した演出が認められれば仕事と直結する、面白そうなコンクールだ。
講 師:森岡実穂(中央大学准教授)
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劇中のスローガンと裏にパフォーマンスの案内、プログラムに入っていたとのこと
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