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コートールド美術館展 魅惑の印象派 [美術・博物館]

 巨大台風19号襲来前日、友人に誘われコートールド展を鑑賞した。コートールド美術館改修工事の間、出稼ぎに出された印象派とポスト印象派名画たちは、全体的にしっとりと落ち着いた雰囲気だった。コートールドの美術館や自宅の写真パネルが展示され、お城のような空間に溶け込むように名画が掛かっているのが素晴らしい。コートールドはフランスから英国への移民で、彼自身が一つ一つ作品を選び、自宅に十分展飾ってから、美術館に展示したらしい。英国に印象派を紹介したことになる。展示作品すべてにコメントが付いているのは珍しい。また、絵画購入の領収証や、美術研究所の教材、試験問題も展示されていて、コートールド美術館の空気を少しでも伝えたい意図が伝わってくる。
 最初の展示部屋には、少し日本的作品として、ゴッホの、桃の花咲き誇る日本の山郷のような風景、松島を連想してしまう、モネのアンティーブの海沿いの一本松があった。
 セザンヌの穏やかなサント・ヴィクトワール山、ドガの踊り子、ルノアールの桟敷席、ゴーギャンまでもが、おとなしめの上品な感じの作品揃いで、こういう中庸な感じの作品を選んだのは、コートルド氏自身の好みなのだろう。芸術家は大概、生き抜いた晩年の作品が強烈すぎたり、理解不能になったりする場合が多い。それぞれの作者の、これだけ穏やかな雰囲気の作品を揃えたのは珍しい気がする。食い入るように見るより、むしろ少し距離を取って眺めることで、絵に入りこめるような、控えめな芸術もいいなと思う。スーラーの点描画も小さめサイズで、部分的に人物や風景を小さなキャンパスに描く、完成作か習作か素人には見分けがつかない作品もあった。たまに、ごく初期の掘り出しものだから購入できたような収集家は居るが、コートールドは、敢えて地味な作品を集めたように思えてならない。
 素人的にはセザンヌのカード遊びをする人々が、あたかも絵の中の人の声が聞こえるようで、気難しいセザンヌが意外と人の心の内を見ていたのだろうかと気づいたり、ゴーギャンのネヴァーモアには自分の印象と違う、作者の丁寧さ穏やかさを垣間見た気がした。
 宣伝写真のモネのフォリー=ベルジェールのバーは、本物を見るのは初めてだが、確か中学の美術の授業で、先生が見せてくれた絵の一つだ。試験の時、毎回先生が何枚か絵(コピー)を持って各教室をまわり、作品名や作者を答案に書かせた。後年チューリヒでゴッホの海の絵の実物を見て、先生のコメントを思い出し感動したことがあった。が、それも今は昔だ。
東京都美術館 企画展示室
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