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2015バイロイト音楽祭-トリスタンとイゾルデⅡ [オペラ(海外)]

 トリスタンを見た。相当高度な舞台テクニックであることに、プレミエでインタヴューを受けた建築家が驚いていたが、素人はよほど舞台を見慣れている人にしか分からないかもしれない。現に、3幕をしょぼいという声を聞いた。この真っ暗な舞台を映像配信するには、また大変な技術が必要なのではないかと気になる。30年ぐらい前、暗すぎてそれまで録画できなかった舞台を映像化したという話題が、実際存在した。
 一幕は、階段迷路のようになっており、途中で、階段を外れ、行き先が制限されたり、立ち位置が上下に動いたりする。薬は飲まず向かい合って二人で瓶から溢す。そして恋に落ちる。薬なしで、そうなるなら、マルケが怒るのはもっともだ。2幕は、監獄。トリスタンが目隠しされ座らされる姿勢は、拉致された人が惨いことになる現実の世界と重なり、良い気がしない。ewig einig ohne End' ……デユエットときは背後に光の当たった二人の姿が投影されて、美しかった。
 3幕はトリスタンがイゾルデの幻想を見る。5~6種類の三角形が順序よく、舞台空間のあちこちに出現。そこにはイゾルデがいて、消えたり、頭がとれたり、色々起きる。これらのイゾルデは全てエキストラ。どこかで薬を飲んだと思うのだが、見落としてしなった。薬の果たしてた役割によって、幕切れの解釈も変化するかもしれないが、マルケは、イゾルデをトリスタンからひきはなし、腕を無理にひっぱってゆく。一貫して、登場人物の気持ちを表現しているような舞台にはなっていない。
 ティーレマンの音楽は、二人の主役の表に出てこない気持ちを、豊かな音楽の波で知らせてくれるようで素晴らしかった。以前のような、ティーレマン特有の、立ち止まって、重いものを投げあげるような重圧感はない。もし本当に演出家と一体になって舞台を表現しようとすると、舞台のイメージが、音楽を変えるということも、あるのかもしれない。今回は、劇場の音響を最大限に利用したプロダクションだと言っているので、歌いやすく、聞こえやすい立ち位置で、歌をサポートする理想的な音楽を目指したはず。今年は、ティーレマンがバイロイト音楽祭を、正式にライフワークに組み込んだ年、記念すべき演奏が生まれるのではないだろうか。
 二人の題名役は、まだ発展途上に感じるが、バイロイトのプロダクションは、不思議と成長発展し、どんどん良くなる。今後の評価や心象がどのように変化していくか、楽しみだ。
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