SSブログ

岡本侑也チェロ・コンサート 保谷こもれびホール [コンサート]

 地元西東京市の星!といった扱いの親子コンサートだが、二人の若い出演者にとっては、本気のリサイタルだった。岡本さんは、ミュンヘンに留学して2年、本番も恐らく沢山経験し、夏休みの帰国、この日は同世代の気心の知れたピアニストとの共演でもあり、リラックスして楽しんでいる二人の音楽の場に立ち会った観客は、幸せだった。
 かなり前方の席を買ってあったが、シューマンが始まると、出てくる音の印象が、一年前とは随分違い、とても柔らかく弓の中間部の粘りに潤いがあって、色っぽい。ミュンヘン大学の楽器を貸与されていると書いてあったが……。ブラームスも楽に弾いている感じだ。若い頃は、大概ピアニストが先生方のことが多いが、大人になって、語り合いうことのできる共演者を得られたことが、素晴らしいと思う。
 後半、ホールの後方席に移動して聴いたら、チェロの音も、ピアノとのバランスも申し分無かった。さっきの弓の途中の音などというカテゴリーは、もはや無く、さらに豊かな音色として、いつもの流麗な音楽を進化させているように感じた。遠くを見据える理想的な音楽だと思っていたところに、艶やかさも加味され、ドビュッシーは、ちょっと出合わない美しさだった。さらに、フランクは、隅々まで新鮮さが保たれて、同じフレーズでもいつもどこか新しい、妙な言い方だが、"躍進する"演奏ってあるのだなあと、新たな感動体験をさせてもらった。
出演 : 岡本侑也(チェロ)、高木竜馬(ピアノ)
DSC00513.JPG


2015バイロイト音楽祭ー神々の黄昏Ⅱ [オペラ(海外)]

 こちらで初めて終演後雨に合って、多少しのぎやすくなった。私たちにはバイロイトでペトレンコ最後のリング。黄昏は思った以上に幅広い、感情の波が感じられる音楽だった。というのは昨年迄は、テンポの速さや軽やかさの方に焦点があった気がするからだ。今年は一幕の駆け上がるような勢いではなく、音楽が目いっぱい歌っていて、テンポは遅くならないという、恐るべき充実感だった。
 去年のタンホイザーや、今年のローエングリンでも、最後の年はけっこう皆自由に、舞台を楽しんでいるという印象があるが、リングも共通する点があるのかもしれない。リングも今年で指揮者も歌手もかなり変わるので、Seibert氏の話にもあったように、一応このプロダクションの一区切りとうことで、寛容さが音楽にも現れたのではないかなとふと思った。これまでペトレンコの音楽に添って聴くと、個人的感情の高まりを自粛するよう導かれることがあった。でもこの日は、出演者にも聴衆にも、少しの自由を許容してくれたようなサービスデイだったかもしれない。日本人仲間も皆、満足していた。
 全身に取り込んだ、バイロイトの音の記憶を、大事に持って帰ろう。
DSC00473.JPGDSC00472.JPG
DSC00493.JPG

2015バイロイト音楽祭ートリスタンとイゾルデⅣ [オペラ(海外)]

 トリスタンは2回目だが、前回8/7は到着日かつ荷物忘れのゴタゴタで、半覚醒状態だったが、この日はかなりじっくり見ることができた。
 席はギャラリーで天井桟敷だが、1列目なので視界は良好、歌手の声も良く聞こえ、オケも程好いバランスで、コスパの良いありがたい席だ。最も心配された暑さだが、意外と風が感じられ、地獄のようだった黄金やヴァルキューレの時よりよほど過ごし良かった。
 ただ観客の質は問題で、服装がGパンなどラフなのは、人に迷惑を掛けないので良いけれど、飽きてきて話をする人や、豪快に寝る人など勘弁して欲しい。(B)
 
 私(G)は、3回目、と言っても双眼鏡で舞台を見ることは一切しておらず、素晴らしい音楽に没入。舞台上ハイテクを駆使した細かい点はアバウトな印象のみ。初回はつい、原作に照らし合わせて舞台を追ってしまったが、もう今は、媚薬を飲まないことにこだわった自分を笑える。始めから、夢も希望も無く、マルケは権力の象徴、残念な社会の一ページなのかなと思う。そうなると、プログラムの始めに、答えが出ており、さらに8/15FestspielのNewsletter で衣装の色と3角形の説明まで送られてきた。
 三角形は、捕らわれ、閉所恐怖症、古代ギリシャ劇場の主役、中心、また三角形には、目標を一点に合わせる、決然とした意味もあると。
 8/2朝聞いたのフリードリヒ館長の解説では、フリーメイソン、ユダヤの六角星、ハリーポッターまで、三角形をシンボルとするマークが色々紹介され、安定の意味が主眼にあると。また、トリスタン・イゾルデ・マルケ王の三角関係もあるかもしれないと。媚薬を飲むまでもなく、前に出会っており、愛自体が毒であり、2幕で牢獄に捕らわれ、望みが果てたことが強調される。最後イゾルデの、左手で"頬杖を突く仕草"については、ワーグナー自身が何か書いているそうだ。
 この日特別出演で、3幕の舞台を、またコウモリが飛んだ。(G)
DSC00514.JPG

 

DSC00515.JPGDSC00516.JPG

2015バイロイト音楽祭ージークフリートⅢ [オペラ(海外)]

 休演日明けのジークフリート、後半戦はトリスタンと黄昏と続く。ジークフリートの舞台はあまり見ず、音楽に集中した。元々、ジークフリートは単品で上演できるように作られたのに、今一つ人気が出なかったとどこかで読んだ。童話のような筋ではあるが、音楽がやはり美しく、3幕のブリュンヒルデの目覚めからの盛り上がりは恋愛の頂点を極め、ジークフリート牧歌が始まると、そろそろ幕が近づいてくる寂しさが漂う。ワニの意味を知って、観客に媚びる子ワニ姿もまあご愛嬌と、すっかり慣れてしまった。(G)

Markgrafen書店サイン会のStefan Vinke、定時に家族とアイスクリームを舐めながら現れたが、一瞬誰も気付かなかった。日本には第9のソリストとしては行ったことがあるが、オペラではまだ無い。行くとしても数年後とのこと(具体的オファーは今のところ無いとのことか?)。サインを貰っている少女は、誰の時も毎回先頭に並んでいる。末恐ろしい・・
DSC00468.JPG
DSC00465.JPGDSC00466.JPG

バンベルク響ピアノトリオーこうもり襲来 [コンサート]

 休演日の夜シュタイングレーバー館のTrio Franconiaによるピアノトリオの演奏会へ行った。バンベルク響のコンマス、チェロ主席とその日本人ご夫人によるトリオだ。会場のKammermusiksaalは、空調の効いたモダンなホールだが、開演直前コウモリが一匹天井を舞い始めた。するとあっという間に2匹、気づけば3匹、そして数えれれないほど、手品のように姿をあらわした。
 Udo社長は部屋の窓を全開にし、追い払おうとしたが、一向に出て行かない。「パパゲーノを呼べ」と言っている観客もいる(鳥ではないが)。しばらくして、パーテーション裏にコウモリが戻ったのを見て、その巣を確認し、仕方なくコンサート会場を移動することになった。
 もう一つのコンサート用の部屋は、リストの使ったピアノのある、ロココザール、特別な演奏会で用いる部屋だ。そこには冷房が無く、観客はもちろんのこと、演奏者の暑さはどれだけだったか、タオルが配られ、楽章ごとに汗を拭いていた。休憩時間に観客にも飲み物が出された。
 私たちは午前中鍾乳洞で、コウモリに見られている。コウモリが驚くので鍾乳洞内のカメラのフラッシュは禁止という表示があった。まさか私たちが、コウモリの匂いでも付けてしてしまったのではないかと、妙な心配をしてしまった。二日後地元新聞に記事が掲載、コウモリ駆除依頼の連絡先電話番号が掲載されていた。(G)
DSC00462.JPG

Teufelshöhle [旅行]

 休演日にTeufelshöhleに出掛けた。朝8時3分の電車でバイロイトからペグニッツへ移動、そこから路線バスに乗り換えて20分ほどで、9時過ぎには鍾乳洞入口に到着。一昨年レンタカーで来た時は昼過ぎだったので、駐車場に入れないほど混んでいたが、この時間だと殆ど人はいない。
 Webページには9時開場と書いてあるが、当然勝手に見学できるわけでなく、必ず案内人が付くので、ある程度人が集まるのを待って、9時半頃第1回目のツアー開始。参加者は20名くらいか、子供も多い。
 中は大分涼しいが寒いというほどではなく、歩いているうちに慣れてくる。ずっと気温が高いので、空調の無い身には大変快適だ。
http://www.teufelshoehle.de/
 足元はコンクリートで固められて、整備が行き届いている。狭いところもありアップダウンは激しいが、危険なことは全く無い。鍾乳石も日本のものに比べると格段にでかい。
 ザルツブルクのアイスリーゼンヴェルト(Eisriesenwelt)よりは、小規模でアドベンチャー感は無いが、子供は大喜びだろう。もっともあちらは鍾乳洞ではなく、中の温度もずっと低い。
http://gruen.blog.so-net.ne.jp/2011-08-08-1
 1時間ほどで見学を終わり、遊歩道をPottenstein方面に歩くと、途中池(?)に足漕ぎボートがあったりする。10分ほどで、Sommerrodelbahnという「そり」の乗り場があって、子供向けとは言え大人も結構乗っているので、早速挑戦してみた。(3ユーロ)
 延長1,160mのFrankenrodelと、新しい1,000 mのFrankenbobという2コースがあり、後者を選ぶ。斜面をワイヤで引っ張り上げ、頂点より重力で滑り落ちるという、ジェットコースターの簡易版で、ブレーキは自分で操作する。結構スピードが出て、これも子供が大喜びだ。
http://www.sommerrodelbahnen-pottenstein.de/
 さらに10分ほど歩いて、Pottensteinの町に到着、ビールを1杯飲んでから、またバスでペグニッツに戻った。バイロイトからの半日観光には最適だが、バスの本数が少ないので要注意。PottensteinにはBrauereiも2軒ほどあるようだが、帰りのバスの時間が気になって今回はパスした。(B)

DSC00405.JPG
DSC00406.JPG
写真は可だが、フラッシュ不可(コウモリが驚くからだそうだ)
DSC00411.JPG
DSC00413.JPG
DSC00416.JPG
DSC00424.JPG
DSC00428.JPG
IMG_0457.JPG

2015バイロイト音楽祭-ヴァルキューレⅡ [オペラ(海外)]

 幕ごとの休憩がありがたい。毎回、7,5 ユーロの水と3ユーロのコーヒーを飲むが、体は、カラカラだ。
 ヴァルキューレの舞台は比較的綺麗で、一幕二人の主役も音楽も素晴らしい。今年の席で初めて、二幕のジークムントが死ぬシーンが舞台の奥に肉眼で見えた。もう映像の類いは気にならないが、話の筋に関わる場面は、見えた方が嬉しい。また、高い所で歌うのにも、皆さん慣れたようで、全くずれないのが不思議なくらいだ。三幕もよかった。演奏にも満足。何て美しいのだろう。
DSC00507.JPG

2015バイロイト音楽祭ーラインの黄金Ⅱ [オペラ(海外)]

 いよいよリングが始まると、気持ちは高まるが、体がついて行かない。昼間どうしても家族サービスせねばならないので、夕方には疲れてしまう。しかも気温は35度くらいあるのではないか、休憩なしの、2時間半がキツイと感じた。もったいない話だ。噂には聞いていたが、暑い年もあるのだ。(G)
Markgrafen書店サイン会のライン乙女、左は森の小鳥も歌うMirella Hagen
DSC00393.JPG
DSC00384.JPG

2015バイロイト音楽祭ーさまよえるオランダ人Ⅲ [オペラ(海外)]

 2日目はオランダ人で、開演が遅いので朝から市内をブラブラする。天気は大変良く、雲1つ無い晴れで気温も相当上がってくる。35度くらいと東京並みだ。
 劇場の中もとにかく暑い。休憩が無いのでかなり堪える。背中を汗が伝っている嫌な感じで、演奏中は扇子を使うわけにもいかず(使っている人もいるが・・)、ただ耐えるのみだ。
 この演目は、音楽的にも他のワーグナー作品に比べればかなり見劣りするし、ともかく演出が軽いというか、何か底が浅くて面白みが無い。舞台セットも正直チープだ。
 特に最終場面、幕が一旦下りてから再び上がった後のオチが、あまりにも見え透いていてがっかりだ。ミュンヘンのコンビチュニー演出の閃きが全く無い。
 ニキティン騒動から始まって、指揮者も毎年変わるなどいろいろケチが付いているが、来年も続演されるようだ。ローエングリンを残した方が良かったと思うが・・(フォークトはパルジファルに移るので、主役変更にはなるが・・)(B)
image1.JPG
image2.JPG

2015バイロイト音楽祭ートリスタンとイゾルデⅢ [オペラ(海外)]

 ニュルンベルク~バイロイト間の鉄道は、ただでさえ電化されていないローカル路線で、途中別の行先の車輛切り離しがあるなど本当に使い勝手が悪いが、よりによってこの夏祝祭の期間に、工事のためニュルンベルク~ペグニッツ間がバス代行輸送とのことで、あきれ果てた。
 しかも今回ペグニッツ駅で大失態を犯した。スーツケースとデイパックを持って来たが、バス⇒電車に乗換えの待ち時間、駅舎の壁に立てかけたデイパックをそのまま置き忘れてしまった。スーツケースを電車に載せる(大仕事!)のに気を取られ過ぎた。
 バイロイト駅到着前に気が付き、駅の案内所にすぐに行ったが、ちょうど12時で直前にシャッターが下りて昼休みに入ってしまい、切符売り場の職員に言っても、自分は担当でないから13時に案内所へ行けと言うばかり。さすがドイツだ・・。
 仕方なく折り返し電車に乗ってペグニッツまで戻ったところ、デイパックはそのまま元のところにあった。まあ田舎で助かった。往復で約1時間ロスしたが、何とか実害無く事なきを得た。切符はTagesticketを買っていたので、問題無かった。
 そういう訳で初っ端から大分バタバタした挙句16時のトリスタン開演に臨んだが、部分的に居眠りの出る展開となってしまった・・。
 さて、前回マイスタージンガーで大顰蹙を買ったカタリーナ・ワーグナーの新演出なので、また何かやってくれるかと変な期待をしていたが、結果意外にもおとなしかった。と言うか、かなりまとも。
 1幕は去年までのタンホイザーの実験工場の通路が可動式となって、上下前後に複雑な動きをするようなセットで、主な登場人物が行ったり来たり右往左往する。2幕は前回マルターラー演出の船底を思い起こさせる、閉鎖的な「監獄」セットで、塀の上から監視されるトリスタン一派が、これまた右往左往する。
 3幕は更に動きが少なくなり、紗幕を張った暗い舞台の上手側に横たわるトリスタンを中心に一派が囲む。トリスタンはイゾルデの幻影を見るが、この場面が大変効果的。三角形の枠の中に青い服を着たイゾルデが突然現れる。パッと現れ、スッと消えるので、最初映像なのかと思ったが、トリスタンが実際に絡むので、俳優が演じていることが分かる。突然身体が無くなり服だけになったり、首だけ無くなったり(!)結構びっくりする仕掛けもある。カーテンコールでは、黙役も舞台に並ぶので、7~8名で演じ分けていることが分かる。無表情な仮面を付けている。
 私の席からは遠くて見えなかったが、前にいた方によれば、三角の枠の部分に照明が埋め込まれており、それの点滅で処理しているらしい。トリスタンの心象を見事に視覚化している。
 全体に暗い舞台だが、各幕照明の使い方が素晴らしく、音楽を邪魔しない点も好感が持てるが、あのカタリーナにしては・・という感はどうしても残る。
 全体にマルケ一派が主導権を握り、トリスタンは無抵抗主義、イゾルデは最後死なず、マルケに強引に手を引っぱられ舞台奥に退場、ブランゲーネに至っては終始何もできずオロオロしているだけという構図になっている。
 歌手は良かった。新国で十分練習したグールドは長丁場も余裕で乗り切った。代役ヘルリツィウスも入魂の演技だった。終演後ティーレマンには大きな拍手、マイスターの時と違い、カタリーナはカーテンコールに出てこない。(当然幕の向こう側にはいると思うが・・)(B)
フランクフルト空港 ニュルンベルク乗継搭乗口
image1.JPG
代行バス(ペグニッツ駅)
DSC00353.JPG
代行バス車内
image4.JPG
image1.JPG

Wahnfried見学 [美術・博物館]

 再オープンしたヴァーンフリートを見学した。向かって右のガラス張りの新しい建物が、チケット売り場とオーディオガイドレンタルコーナー。入場料は8ユーロ。
 地下に舞台衣裳と舞台模型が上下3段に展示されているが、ライトは殆どあたらず、実際は展示より、保管が目的かもしれない。奥の窓側に、オーディオコーナーがあり、過去のワーグナー作品の名演を聞ける。一階は、建物の説明。最新技術を駆使した。
 本館は、既に紹介されている通り、特殊技術を使って、当時の壁紙や装飾を再現したのが自慢。部屋ごとに、年代順に展示品が並ぶ。説明は分かりやすい。二階から降りる回り階段が二ヶ所、服飾品と、手紙など手書きのドキュメントの展示室があるが、ドキュメントの展示は、文字が小さくて、見ずらい。よく、拡大鏡がついた展示方法に出合うが、ここは展示より、アーカイブ重視というのが、よくわかる。
 本館左は、ジークフリート・ワーグナー・ハウス、居間が再現されている。アドルフ・ヒットラーとの交際を記録した映像が3箇所にある。
http://www.wagnermuseum.de/
DSC00304.JPGDSC00306.JPGDSC00307.JPGDSC00265.JPGDSC00263.JPGDSC00338.JPGDSC00262.JPGDSC00297.JPGDSC00298.JPG
DSC00257.JPG

2015バイロイト音楽祭-トリスタンとイゾルデⅡ [オペラ(海外)]

 トリスタンを見た。相当高度な舞台テクニックであることに、プレミエでインタヴューを受けた建築家が驚いていたが、素人はよほど舞台を見慣れている人にしか分からないかもしれない。現に、3幕をしょぼいという声を聞いた。この真っ暗な舞台を映像配信するには、また大変な技術が必要なのではないかと気になる。30年ぐらい前、暗すぎてそれまで録画できなかった舞台を映像化したという話題が、実際存在した。
 一幕は、階段迷路のようになっており、途中で、階段を外れ、行き先が制限されたり、立ち位置が上下に動いたりする。薬は飲まず向かい合って二人で瓶から溢す。そして恋に落ちる。薬なしで、そうなるなら、マルケが怒るのはもっともだ。2幕は、監獄。トリスタンが目隠しされ座らされる姿勢は、拉致された人が惨いことになる現実の世界と重なり、良い気がしない。ewig einig ohne End' ……デユエットときは背後に光の当たった二人の姿が投影されて、美しかった。
 3幕はトリスタンがイゾルデの幻想を見る。5~6種類の三角形が順序よく、舞台空間のあちこちに出現。そこにはイゾルデがいて、消えたり、頭がとれたり、色々起きる。これらのイゾルデは全てエキストラ。どこかで薬を飲んだと思うのだが、見落としてしなった。薬の果たしてた役割によって、幕切れの解釈も変化するかもしれないが、マルケは、イゾルデをトリスタンからひきはなし、腕を無理にひっぱってゆく。一貫して、登場人物の気持ちを表現しているような舞台にはなっていない。
 ティーレマンの音楽は、二人の主役の表に出てこない気持ちを、豊かな音楽の波で知らせてくれるようで素晴らしかった。以前のような、ティーレマン特有の、立ち止まって、重いものを投げあげるような重圧感はない。もし本当に演出家と一体になって舞台を表現しようとすると、舞台のイメージが、音楽を変えるということも、あるのかもしれない。今回は、劇場の音響を最大限に利用したプロダクションだと言っているので、歌いやすく、聞こえやすい立ち位置で、歌をサポートする理想的な音楽を目指したはず。今年は、ティーレマンがバイロイト音楽祭を、正式にライフワークに組み込んだ年、記念すべき演奏が生まれるのではないだろうか。
 二人の題名役は、まだ発展途上に感じるが、バイロイトのプロダクションは、不思議と成長発展し、どんどん良くなる。今後の評価や心象がどのように変化していくか、楽しみだ。
DSC00254.JPG

今年もレーゲンスブルクへ [ドイツ]

 Bayreuthを出てWeidenで乗り換え、Regensburgの友人家族のところへ今年も遊びに来た。気づけばもう12年の付き合いになる。2年前、隣町Sinzing に引っ越し、今はドナウ川まで30歩ほどの所に住んでいる。
 ネコ好き家族なのだが、今年一匹交通事故に合い死んでしまった。寂しいので、4月生まれの子猫を2匹保護施設から引き取った。5匹の兄弟姉妹のうちの、雌雄1匹ずつ。保護された時点で、母猫はおらずお互いの耳をおっぱい代わりに吸っていたという。なので、2匹とも、耳が歪んでいる。子猫は、元気で可愛い。女の子の方が活動的で、庭で卓球していると、落ちたボールをサッカーのように、追いまくる。小さなぬいぐるみや、ゴムが伸縮する猫用のオモチャも大好き。一つ悲しいのは、家のお母さんがフリースを着て子猫を胸に抱くと、両前足で交互におっぱいを押す仕草をする。個人的には、子猫とこんなに長く一緒に過ごしたことがないので、本当に可愛いと思う。
 翌日は、ミュンヘンのお父さんのご両親の家へ、車で連れて行ってもらった。4年前、金婚式に招待されて以来だが、まずは元気そうで、訪問をとても喜んでくれた。近くにウンターハヒングというサッカークラブチームがあり、クラブハウスのレストランへ行った。
 ご近所が高齢になり、空き家がどんどん増えているとのこと。随分前になるが、ヒットラーの飛行場にも散歩しに行ったことがある。30~40年前の新興住宅地で、ミュンヘンから一番近い村だと笑っていた。この学者と先生の一家、お祖母ちゃん以外は、冗談ばかり言う。
 近くに、地域の人たちがボランティアで建てた、海外からの避難民のための、きれいな宿舎も車から見せてくれた。連日のように、ドイツのニュースで取り上げられている、船でやって来る避難民。ここでも、実際そういう人たちが増えているとのこと。そこに、ドイツ語を教えに行ってるご近所さんがいるそうだ。
 この日、Googleアースを、手のひらで操作するLeap Motion を初めて見た。操作は結構難しく、練習のためのゲームもある。これも段階を踏んで、どんどん難しくなる。空間で、ものを握るイメージの練習だ。手を開いたり握ったり、前後左右に動かしながら、地球上の日本の自分の家まで到達したが、その当たりの建物は、真っ白で、写真ではなかった。Sinzing の家は、写真が古かったので、お父さんが、自分の車が置いてある写真と入れ換えていた。
DSC00216.JPG
DSC00218.JPG
 DSC00208.JPGDSC00201.JPGDSC00213.JPGIMG_0134.JPGIMG_0139.JPGIMG_0135.JPGIMG_0141.JPG