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「タンホイザー出演者に訊く」トリンクス、アナセンへのインタビュー [オペラ(国内)]

 新国立劇場、タンホイザーに出演中のコンスタンティン・トリンクス(カールスルーエ出身の指揮者)スティー・アナセン(デンマーク出身のテノール)のインタヴューを聞いた。飾り気の無い人柄が印象に残るお二人だった。
 インタヴュー冒頭で、アンセン氏はJoyの無いことはしないと明言したが、なるほどと思える、幅広い活躍ぶりだと思う。1977~79年までバイロイト音楽祭の合唱で歌ったそうだが、当時は自国のクワイアで歌っており、ワーグナー好きの合唱仲間の影響で、興味を惹かれ、バイトがてら、自分も合唱のオーディションを受けたという。ゲッツ・フリードリッヒのタンホイザーや、シェローの黄昏で歌い、ジークフリートの棺を運ぶ6人に選ばれたという。氏は舞台演出もてがけ、音楽を台無しにする演出は許せないと、自らトリスタンとイゾルデを演出し、トリスタンを歌った時の話は、最高の喜びだったろうと共感した。本番で意気込む訳でもなく、多少の風邪なら咳しながらでも歌うのは、やはり楽しいからだろう。ワーグナー作品の中で、マイスタージンガーのシュトルツィングの役が一番難しいというのは、意外な気がしたが、所謂ヘルデンテノールと違い、あの好青年のモデルを完璧に演じきり、見事な歌を披露するという、一貫した人間像を演じる達成感にこそ、喜びがあるのだろう。DOBゲッツフリードリヒのタンホイザーが、人間の暖かさが伝わって好きだというのも共感できる。役を人間らしく演じたい歌手なのかなと思う。
 まだ30代のトリンクス氏は、大野さんの弟子でもあるが、恩師ヴォルフ=ディーター・ハウシルトは新日フィルを指揮している。トリンクス氏は幼少時からワーグナーへの情熱を燃やしつつも、まだ勉強中でトリスタンは振ったことがないと、気負わない。今回のタンホイザーでは、ワーグナー経験の乏しい日本のオケを、短期間でトレーニングできるほどの巨匠ではなかったということで、思うような結果が出せなかったのだろう。ブルックナーが好きだと聞いて、一安心、最後にドイツ語で語った、「音」の成り立ちの話で、音を創造する仕事の心髄を垣間見せた。目指すところは、以前私がザールブリュッケンのローエングリンを聴いたときの、ドイツ音楽を裏切らない安心感と、かけ離れたものではないと感じ、静かに今後を見守って行きたいと思った。何となく愛嬌のある指揮者だ。(G)
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