SSブログ

「世界の演劇の今」Ⅲ-ドイツ [演劇]

 新国立劇場の催しとして、「世界の演劇の今」Ⅲ-ドイツ-講師:新野守広先生(立教大学教授)という講演を聞いて思ったこと。
 ベルリンの3つのオペラの財団運営については、以前たっぷり話を聴く機会があったが、今日でも、演目の競合など、問題は色々あるのが現実だ。
 この日改めて実感したのは、オリジナルと違うと、読みかえの舞台演出について、観客がどんなに不満を言っても、ドイツの劇場は社会に対するメッセージを発信する場所である権利を保証されていることだ。
 文化・教育の予算に、国ではなく地方税を使うののも、州の独立というそのままの意味で理解していたが、そこにも、全体主義の歴史への反省が反映されていたのだ。娯楽の提供ではなく社会へ訴える場という個人の観点で、オペラも演出されるのがドイツであり、今後も続くだろうと観念した。
 ベルリンの演劇は、ベルリナーアンサンブルの、ブレヒトの人気演目を中心に6作品ほどしかまだ見たことがなく、涙が出るほど大笑いしたもの、じっくり聞き入ったもの、話のツボが理解できなかったもの、俳優そのものの魅力に目覚めたもの、どれも楽しかった。ウィーンではシェークスピアをかなり見たが、演劇も音楽同様、シェークスピアはセリフを熟知した上で見なければ、ダメだと痛感するにとどまった。つい音楽会の方へ足が向いてしまうが、日本で演劇に慣れたら、ベルリンのドイツ座、フォルクスビューネなどにも、行ってみたい。(G)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

新国立劇場ータンホイザー(楽日) [オペラ(国内)]

 一月の公演の日は睡魔との戦いだったが、その後インタヴューを聞き、トリンクス氏アナセン氏に情が移って、楽日は要求水準も少しアップさせ、覚醒して、積極的に見、聴いた。あえて古典的演出のDVDを下見し、異質なバイロイトの印象を一時消して、公演に臨んだ。
 皇太子殿下も見え、演奏に思わぬ成果が出るのかと思ったが、飛躍的に改善されてはいなかったと思う。
 4階4列の端(Z券)でも舞台全体が見え、歌手が結構演技していたことに気づく。先日はほとんど棒立ちに感じられたのは、見る側の意欲のせいだろうか。
 序曲冒頭から、ゆったり重いテンポにオケが付いていけない印象。音を保つことの難しさを痛感する。木管も相変わらずだ。アナセン氏の咳は止まったようだが、一幕はしゃがれ声で、オケの方は、どうにも難しいようだ。
 2幕は軽快で、オケも安定してきたと思いきや、ヘルマンのレスタティーヴォの伴奏でオケに事故があったような気がする。合いの手やアカペラ後のオケの音程は慣れないと難しい。
 指揮者の言う通り、男声の重唱はよく練習してあったが、2幕の最後はアナセンの声がやはりしゃがれて、ちょっと残念。でも明るい声は意外と通ると関心した。
 3幕は盛り上がってきたが、やはり題名役の柔らかい声はローマ語りにはちょっと、迫力不足だった。でも声の色合いを感じられるということは、大分復調してきているのだろう。この前感じた巡礼合唱の違和感について、今日は、ppで舞台に現れたときは弱々しい歩調で演技をしていたが、Der Gnade Heilでffになったとたん、直立不動の合唱団になった。演技しながら力いっぱい歌うのは大変なのだろう。
 全体的に常にハラハラどきどきして、聞いていて苦しくなるのは、作品のせいだろうか。でも最後の男声合唱は頑張った。しっかりした迫力があって素晴らしかった。
 自分の覚醒度の差もあり、どれだけ進歩があったのか実はよくわからない。でも世界中で気合の入っている生誕200記念の年、気分的には、ごめんなさいワーグナー演奏に区分される新国立のタンホイザーとなってしまったようで残念感をひきずる。(G)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

「タンホイザー出演者に訊く」トリンクス、アナセンへのインタビュー [オペラ(国内)]

 新国立劇場、タンホイザーに出演中のコンスタンティン・トリンクス(カールスルーエ出身の指揮者)スティー・アナセン(デンマーク出身のテノール)のインタヴューを聞いた。飾り気の無い人柄が印象に残るお二人だった。
 インタヴュー冒頭で、アンセン氏はJoyの無いことはしないと明言したが、なるほどと思える、幅広い活躍ぶりだと思う。1977~79年までバイロイト音楽祭の合唱で歌ったそうだが、当時は自国のクワイアで歌っており、ワーグナー好きの合唱仲間の影響で、興味を惹かれ、バイトがてら、自分も合唱のオーディションを受けたという。ゲッツ・フリードリッヒのタンホイザーや、シェローの黄昏で歌い、ジークフリートの棺を運ぶ6人に選ばれたという。氏は舞台演出もてがけ、音楽を台無しにする演出は許せないと、自らトリスタンとイゾルデを演出し、トリスタンを歌った時の話は、最高の喜びだったろうと共感した。本番で意気込む訳でもなく、多少の風邪なら咳しながらでも歌うのは、やはり楽しいからだろう。ワーグナー作品の中で、マイスタージンガーのシュトルツィングの役が一番難しいというのは、意外な気がしたが、所謂ヘルデンテノールと違い、あの好青年のモデルを完璧に演じきり、見事な歌を披露するという、一貫した人間像を演じる達成感にこそ、喜びがあるのだろう。DOBゲッツフリードリヒのタンホイザーが、人間の暖かさが伝わって好きだというのも共感できる。役を人間らしく演じたい歌手なのかなと思う。
 まだ30代のトリンクス氏は、大野さんの弟子でもあるが、恩師ヴォルフ=ディーター・ハウシルトは新日フィルを指揮している。トリンクス氏は幼少時からワーグナーへの情熱を燃やしつつも、まだ勉強中でトリスタンは振ったことがないと、気負わない。今回のタンホイザーでは、ワーグナー経験の乏しい日本のオケを、短期間でトレーニングできるほどの巨匠ではなかったということで、思うような結果が出せなかったのだろう。ブルックナーが好きだと聞いて、一安心、最後にドイツ語で語った、「音」の成り立ちの話で、音を創造する仕事の心髄を垣間見せた。目指すところは、以前私がザールブリュッケンのローエングリンを聴いたときの、ドイツ音楽を裏切らない安心感と、かけ離れたものではないと感じ、静かに今後を見守って行きたいと思った。何となく愛嬌のある指揮者だ。(G)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽