SSブログ

ステファン・グールド氏に聞く [オペラ(国内)]

 上野でタンホイザーを歌っているグールド氏へのインタヴューを聞いた。私はまだ舞台を聴いていないが、多くの人が気になっている重大な問題、なぜ2幕4場練習番号H~K、Zum Heil den Südigen zu führen,・・の場面をカットしたかという点についての質問に対し、グールド氏の意図でなく、初練習で自分もショックだっとのこと。スコアにある注記は、タンホイザーが静かに一人で歌うので、合唱を休みにしてもOKという指示で、オケをカットする意味ではないのに、オケの楽譜がカットされていたとのこと。実際コーラスに自身の声をかき消された体験も披露された。どういうわけか、今回事件が発覚した際、カット部分を修復しないと決めたことへの違和感を感じる。指揮者はどう思ったのか、或いはたった2回の公演だから労力を惜しんだとか・・。後でDoverのスコアを見たら、その通り、加えてパリ版では、コーラスは省くことに改訂したと書いてある。
 グールド氏は、テノールの最高の時は40才代と言い、ヘルデンテノールをつくるには3種類に大別でき、1.リリックから重くする、2.バリトンから音を上げる、3.常にテノールの重い声から、と声質の違いがあるが、何れにしても最後まで歌い通せれば、ヘルデンテノールだとのこと。日本の聴衆は歌手をリスペクトするので、心地良いそうだ。去年新国立でのトリスタン初舞台を選んだ理由は、丁寧なリハーサルと公演回数が比較的多いことがあるという。凄く正直な人だと思うのは、公演の間に自分を育てるのに相応しい劇場だったからと、堂々と言えるところだ。ドイツ人の評論家から離れたところで、歌いたいというのは、本音のようだった。
 今51歳、声質にあった役を歌い、若いジークフリート役を歌う期限も考えているそうだ。言語感覚を養うため、母国語として話す国で生活すべきという先生の教えを実践し、インタヴュー中もしばしば先にドイツ語が出てワーグナーを語るのにとても好感がもてる。医学生一年で、歌手に転向した経歴を想像しても、知性派で、ワーグナーはテキストが歌のカラーを決めるという姿勢。観客のテノールに対する好みははっきりしているので、自分の路線で進むという、媚びないプライドの高さも好ましい。バイロイトでは発音が全てだと、言葉の端々に、ドイツで歌う時の苦労が伺えた。日曜の公演を期待したい。(G)