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METライブビューイング ジークフリート [映像・放送]

 G.ジーゲルの演じる最高のミーメを、アップで隅々まで見られたことは、映像ならではの嬉しいメリットだ。
 でも一番の話題は、ジークフリート役が二人降板し、10月末になってカヴァー歌手のJay Hunter Morris にチャンスが巡ってきたことだろう。ドレスリハーサル(GP)が彼にとって3度目のリハだったそうだ。HPにも載っているGPの日のメイキングヴィデオを見ると、彼は自然体で、素直な意欲と清々しいエネルギーで一杯だ。モリス はテキサス出身、METまで長い道のりだったと言う。金髪で眼光鋭く、昔の写真より逞しくなった今、日常の姿より、ジークフリートの鬘の方がずっと良く似合う。声をつぶさないよう、ヘルデンテノールとしての評価を得て、長く活躍してもらいたい。
 ジークフリートを終わりまで歌い切ることが、どんなに過酷な条件なのか改めて痛感した。以前は大声量が自慢だったらしいことがインタヴューから伺えるが、今は綺麗に歌うことを心がけていると言うだけあって、モリスの歌はリリックで、広音域美しく、演技も精一杯表現し、3幕でもほとんど崩れず、とても素晴らしかった。一幕でハンマーを打つ時の乗りが、軽妙なアメリカンだったり、他のベテラン歌手に比べ、指揮を見る視線や、立ち姿など、初々しさを隠せない面はあるが、今回はジークフリート役というより、モリス氏自身の姿が全世界に配信されたような心象で、大きな前進だろう。
 モリスは今年サンフランシスコでジークフリートを歌ったらしい。2007年東京オペラの森のタンホイザーで、ヴァルターを歌っていたと知り、録画を見たら、張った声で声量も凄かった。外見は意外と大きくない。
 インタヴューで、ルイージは音楽が重くドイツ的にならないよう気をつけたそうで、モリスの才能がMETで開花しそうだ。黄昏も期待できそうだ。
 ハイテク技術・映像を駆使した舞台は、やはり、映画では詳しくわからない。ワーグナー生誕200年を前に、ト書きに近い演出を見たいなら、METが一番かもしれない。MET流の聴衆マナーや、オケの事故など気にせず、一連のハイテク舞台を生で見てみたいものだ。(G)

指揮:ファビオ・ルイージ 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ジェイ・ハンター・モリス、デボラ・ヴォイト、ブリン・ターフェル、パトリシア・バードン
※ギャリー・レイマンは病気のため降板、ジェイ・ハンター・モリスがジークフリート出演


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