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山崎伸子チェロリサイタル第5回 with 小菅 優 [コンサート]

 今年のピアノは小菅優さん。初めて聴いて、すぐに引き込まれた。アンサンブルもソロと同じ真剣勝負、相手のふところに飛び込むような、自分の音楽全てを相手に投げかけるような情熱を感じた。
 チェロとピアノのソナタは、音域の問題でチェロがピアノの音にかき消されたり、難所でピアノにひやっとさせられるようなことが、ままある。でも小菅さんに関しては杞憂、感情豊かに流れる音は透明でしかも角がなく、意思を持つ生き物のように、自由自在な音楽で、ピアノのふたを全開にしても、決っしてチェロの音を邪魔せず、ピアノだけを聴いても、小菅さんの美の世界を楽しめる。山崎先生は毎回ピアニストにとても気を配っていらっしゃり、今回、若い才能へ向ける先生のお優しい眼差しと、小菅さんのはじける若さで満たされたステージは画期的で、特にメンデルスゾーンのソナタ2番は、お二方の溶け合った音から豊かな色彩をイメージする、幸せな一時だった。(G)
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新国立劇場ーこうもり [オペラ(国内)]

 2006年、本場ウィーンの舞台を見せますと誇らしげだったツェドニック演出のこうもり、あの時はアイゼンシュタイン役のヴォルフガング・ブレンデルが、あまりにはまり役で、まるで本当に酔っぱらっているような名演技だった。やはり4階席だったが舞台上の活気がよく伝わってきて楽しかった。それに比べると、今回は歌手陣がおとなしく上品で、喜劇のテンションは上がらなかったような気がする。劇中日本語を混ぜる場面は、前より増えたが、違和感はない。ウィーンの舞台に溶けこめる日本人歌手が活躍するのは嬉しい。けれど、数ある笑いの場面で、今回は4階席では細部までわからないなと感じたのは、ちょっと残念だった。大笑いするような作品はまだ自粛するムードがあるのかもしれない。キャストの交代にもすっかり慣れたが、プレミエのときの意気込みを持ち続けてもらいたい。
 エッテインガーが、ヨーロッパでこうもりを振る姿はイメージし難いのだが、やはり硬くてゆらぎのないJ.シュトラウスだった。でも東フィルと色々CDを出しているようだし、きっと相性が良いのだろう。(G)
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新国立劇場ールサルカ [オペラ(国内)]

 初めて接した作品だったが、森に棲む水の妖精と王子の物語は親しみやすく、森と湖をイメージする音楽は心やすらぐ。作曲された1900年頃、どのぐらいワーグナーの影響が残っていたかわからないが、3人の森の妖精、語る独唱、ライトモティーフなど想像できる。でも音楽の波はさざなみで、時々大波は来るが、うねったりはしない。
 事前に、YouTubeにある、美しい鳥や花の自然映像とともに全曲ダウンロードしてくださった方の、ドイツ語版を聞いた。重厚に演奏すれば、ドイツ音楽の心地よさも味わえて、チェコの民族音楽も聞けて、オーケストレーションも音の詰まった、とても美しい作品だと思う。チャイコフスキーと並び、ドボルザークもメロディーが豊かで、こんなに美しいドボルザークの作品なのにあまり有名でないのはなぜだろう。ヒロインのルサルカが2幕は全く歌わないということ、最後男性(王子)がルサルカを救済することが、男性社会で好まれなかったのだろうか。
 これまで、知らない題名というだけで、見過ごしてきた作品の一つに気付かせてもらった。(G)