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大倉山記念館 [美術・博物館]

 吉川桃生先生が指導されている木月会という書道展を見に、大倉山記念館へ行った。大倉山公園にひっそりたたずむ古い洋館の周りでは、木立の中を散歩する人、イーゼルを立てて絵を描く人、ぎんなんを拾う人など、静かな時間を楽しんでいる人たちがいた。
 初めて見る先生の書は、正統なかなから、書とデザインの融合した作品まで、どれも香るような美しさがある。基本指導は、古典を順番に先生のお手本で習うこと。奥の細道、方丈記は入門編とのことだが、練習したものは全て和綴じにして、表紙をつける。こうして自分だけの書の歴史となる。平行して創作も習う。好きな詩歌、生活の中の日記、現代詩、新聞に連載された短歌評、漢詩など題材は自由だ。様々な字体や構成、色彩なども、書く題材の内容にあったものを選び、先生が一人一人お手本を書いて下さる。大変な労力だ。目指すところは、題材となる文字(作品)のもつ意味を、書を見て感じることができること、書をやらない人でも、見て楽しめることだそうだが、まさにそういう展覧会だ。
 百人一首を書く、かるたの紙や屏風など、書く土台も手作りする方や、色紙を入れる箱を布で飾ったり、紙の色を染めたり、色々な技術を持った方がいる。お婆さまとお孫さんの合作も何点かあり、先生が提案するアイデアは尽きることがない。展示の仕方もとても美しく、隅々まで心がこもっており、時間を忘れて見入ってしまう。
 先生の作品に接すると、題材となる物や事象に宿っている魂を呼び起こし、書体、色彩、紙質、デザインなどを総合して、生き生きした作品イメージが完成し、語りかけてくるような生命の躍動感を感じる。根底には博愛の崇高な精神も感じる。いつも愛情をもった熱い眼差しで事象を観察されているようで、ご自身で歌も詠まれる。
 最近では、美術雑誌に載った「華」という正方形の書を、ニューヨークではアートポスター展に、ロンドンではシルクに転写する作品として、そして9月にはパリでワインラベル展に出品された。そして、この度、ナポレオンが好んだ超高級ワインとして知られる、ジュヴレ・シャンベルタンのエチケットになった。エチケットになった芸術家はピカソ以来二人目とのこと。日本の書の心をデザインを通してグローバルに表現し、世界各国の人の心に届けることができる素晴らしいインスピレーションと想像を絶する集中力、作品は作者自身なのだと、作曲家と演奏家の関係にも似ていると感じた。(G)
  日仏芸術祭2011 東日本大地震チャリティーワインラベル展で展示される。(11/11~13横浜赤レンガ倉庫一号館2F)
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