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クニャーゼフ・バッハ無伴奏チェロ組曲全曲 かつしかシンフォニーヒルズ [コンサート]

 昼のさなか、バッハ無伴奏全曲聴くという素晴らしい企画があり、青砥まで行ってきた。
 バッハの全曲演奏会は意外と聞いておらず、何十年か前、藤原真理さんが始めた誕生日にバッハ全曲弾くというコンサートの第一回目を聞いて以来の気がする。何故なら、客席で、緊張するのがちょっと辛いからだ。一曲弾くのと全曲弾くのでは、演奏が変わってくるのは、自然なことだと思う。
 今回は、4時間に及ぶ、長時間コンサート。1、2、3番を弾いて、15分休憩、4、5番の後もう一度休み、6番の演奏時間は、40分位だろうか。最後立ち上がって拍手する人もかなりいて、疲労感漂う中、お気の毒に、アンコールの声に応えて、一番のメヌエット1を可愛らしく演奏してくれた。
 個人的印象としては、思っていた以上に濃い演奏で、現実を忘れる特別な時間となった。痛く感動したのは、全曲弾くというのは挑戦であり、勝負事のように、不屈の精魂が必要だということ。バッハ無伴奏組曲の演奏は様々だが、クニャーゼフは、高度なテクニックの心地良さではなく、正直に自分をさらけ出す、むしろ重苦しい姿が感動を誘うものだった。
 クニャーゼフは1961年生まれ。悲運の経歴を何も知らない人でも、このバッハを聞き、時折意識が飛んでいるようにも見える姿には何かを感じると思う。時にさらさらと、大部分は充実した音色でねっとりと弾き、繰り返しには、かわいらしくトリルを加え、時に即興演奏のような勢いで突き進む。オルガンも弾く方で、サラバンドなどは、ものすごくゆっくりで、オルガンのような持続した高密度で重量感のある音質に、逃れられない力を感じる。重音をぴったり同時に弾くのも、オルガン的かもしれない。エネルギーが滲み出てくる様は、汗だくになった黒シャツ姿が物語っている。
 一度エンドピンを刺したら、楽器は微動だにせず、わずかな身体の動きで音の重さをコントロールしているらしいのが、後方の座席でもうかがえる。弾く姿が何ともワイルドで、背後の反響版の模様の横線がちょど肩のあたりにかかり、時々その線が地平線に見え、野っ原で強風に耐えて演奏している、労働感に感情移入してしまう。
 直立して、左手に楽器、右手に弓を持ち、にこにことお辞儀する姿も、気取らず、人懐っこい感じがして、微笑ましい。
 
アレクサンドル・クニャーゼフ 
作曲家の秘密 シーズンI 第1回 ヨハン・セバスティアン・バッハ
かつしかシンフォニーヒルズアイリスホール (チケット¥2000)
実際の終演 17:30
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