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デュオの煌めき 2019 岡本侑也&阪田知樹 都民芸術フェスティバル  [コンサート]

 地味なタイトルで気取り過ぎたか、せっかくの日本演奏連盟主催の演奏会は目立たなかったようで、お客さんの入りは6割程度だった。
 でも、静かな雰囲気の中、ため息が出るほど格調高い演奏を聞かせてもらった。二人とも20歳台だが、悟りの境地に到達しているかのように、全身全霊を込めて美しい音を追究している感じだ。
 岡本さんは、エリザヴェートコンクールの後、国内で色々と名誉ある賞をいただいたが、実際に演奏する楽器には恵まれなかったように思える本番があった。この日は黄色い楽器だったが、近くで聞くと、晴れやかな気持ちが伝わってくる音に感じられた。どんな経緯があったにせよ、すんなり迎えられる本番など無いだろう。苦労を気づかせないのが、プロなんだと思う。
 現在、若い演奏家たちは、皆さん素晴らしい楽器を貸与されている。大昔はプール付きの家を売って、ストラディヴァリのVnを購入した話があったが、現在では、色々な財団のご縁で、名器に出会い、貸与されるらしい。
 この日の楽器の調整は中高音は素晴らしく明るく、音色は必ずしも豊かとは言えないまでも、岡本さんのように軽やかで色彩感が自在に変化する演奏には合っていたと思う。時代の潮流として、指揮者で言うなら、ペトレンコのような、自然な流れと美しい音程、ハーモニーのバランスが他に比類ない音楽家の路線ではないかと、この日の音を聞いて、益々期待が膨らんだ。
 思うに、ドイツ人のように身体が大きいわけでもないので、迫力では勝負せず、楽器に低音の重厚さが期待できないなら、無理して、大音量のコンチェルトにこだわらずとも、例えば、エリザヴェートコンクールの時のような、岡本さんのドヴォルザーク、まだ聞いていないが、岡本さんのショスタコーヴィチなど、岡本さんならではの演奏と評価されることの方が、むしろ価値があるのではないだろうか。
 この日のプログラムは、あまりに阪田さんも岡本さんも上手なため、軽めの曲と錯覚しがちだが、作品ごとの音色を特徴づけ、テクニックと完璧な和声の素晴らしさが満喫できた演奏だった。プーランクは、ちょっと聞いたことのないチェロの音色に魅了された。アンコールは、お得意のポッパー:ハンガリー狂詩曲。楽器の鳴りを確認したような、余裕の締めくくりだった。
 益々豊かに自由に揺らぎ、まるで生きているような響きがホールに溢れるような、人生の伴侶となる楽器に、いつか巡り合える時が来るようにと切に願っている。
 
チェロ/岡本侑也
ピアノ/阪田知樹
シューマン:幻想小曲集 作品73
メンデルスゾーン:チェロ・ソナタ第2番 ニ長調 作品58
黛敏郎:BUNRAKU~無伴奏チェロのための
プーランク:チェロ・ソナタ FP.143
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