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シンポジウム「バイロイトに未来は、有りや、無しや?」 [その他]

 日本ワーグナー協会の第400回記念の例会ということで、標記テーマのシンポジウムが行われた。会員以外にも興味がある内容なので、100名を越える参加者があり、立ち見も出た。
 最近の運営データや、運営史の資料が配布され、祝祭の独自性について、考えさせられた。一時ナチズムのプロパガンダになった祝祭を、戦後、公的助成を受けて、ゼロから立て直したヴィーラントの舞台や、ヴォルフガングが招聘した演出家たちが前衛的であったのは、過去を打ち消し、ワーグナーの意志を守り、時代を先んじる祝祭を運営しようとする姿だった。現在のカテリーナが導入したチケットのインターネット販売、子供向けワーグナーオペラ、有名指揮者、演出家の採用等は、定款にある、作品についての理解を広め、客層を開拓するための試みという一面はある。
 個人的には、あの祝祭劇場の音がある限り、例え様式は変わっても、祝祭は存続する気がするが、未来の継承者は、時代を超えて、作品の中に新しさを見出すことを続けられるだろうか。余計なお世話だが。
 北川先生の力強いお話から、生涯バイロイトに関わるだろう当事者としての情熱と覚悟が伺え感動した。読み替え演出から、観客に考えさせる演出の時代になり、次にどんな時代が到来するのだろう。もう少し聞いてみたい。

司会進行 : 池上純一(埼玉大学名誉教授)
パネリスト: 北川千香子(慶應義塾大学准教授/演劇学)東条碩夫(音楽評論家)岡田安樹浩(国立音楽大学ほか講師/音楽学)
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ワディム・レーピン&フレンズ 2018 [コンサート]

 オーチャードホールに入るのは、何と今日で二度目。ちっとも行かないうちに、改装前最後の演奏会とのこと。演奏は素晴らしかったが、お客さんは少なかった。3階席は30人以下、階段席の内側には一人ずつくらい。二階は見えないが、一階は結構埋まっていた。この入りパターンは、経験的に、最後に招待券を出したような感じがする。これだけのメンバーを集めながら、この入りは、チケットが高過ぎるのか?
 演奏は一言でいうと、凄い迫力だった。レーピンの音楽は、とても自然で心地よい。作品に応じて、穏やかにも、激しくも、重厚にも、軽やかにもなる。これは、当然のようでいて、実際どんな作品も同じ奏法になってしまう演奏家は意外といるものだ。
 グリーグは美しく、ブラームスは荘厳に、後半のチャイコフスキー は全く違う雰囲気で、一にも二にも激しく演奏された。フィレンツェの思い出は、若い頃から不思議に感じていた。チャイコフスキーらしい美しさより、技巧や形式など複雑に組み合わさり、こんな室内楽も書けるという、新たな地位に相応しい渾身の作だったのだろうか。最後の室内楽となったわけだが、題名に意味はあるのだろうか。
 クニャーゼフを聞いたのは本当に久しぶりで、途中の人生に病気などのアクシデントがあった事は知らなかった。エンドピンを短くし、のしかかるような弾き方で、一見力業のように見えて、大きく豊か響いた音は3階席までよく聞こえ、テクニックも見事、もう少し近くでも、聞いてみたい。レーピンは勿論、Vlaのグリチュクも、音色音量ともに、思うまま、自由自在に流れ、ピアノも、若手3人も晴らしかった。お目当のVc2番岡本さんも、さすが一人で低音を支え、5人の複雑な音の動きに、よく呼応出来るものだと、関心する。
 一世代前は、海外の有名人と日本人が組んだ室内楽は、日本人がついていけず残念なことも多々あったが、今や世界レヴェルで活躍する若手日本人が大勢いる。このような混合チームの聴き、感嘆する時代が来たことは嬉しい。

グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調op.45
   <ワディム・レーピン、横山幸雄>
ブラームス:ピアノ五重奏曲ヘ短調op.34
   <ワディム・レーピン、神尾真由子、アンドレイ・グリチュク、アレクサンドル・クニャー ゼフ、横山幸雄>
チャイコフスキー:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」ニ短調op.70
   <ワディム・レーピン、神尾真由子、アンドレイ・グリチュク、大野若菜、アレクサンド ル・クニャーゼフ、岡本侑也>
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