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ピエタリ・インキネン首席指揮者就任披露 日本フィル [コンサート]

 いったい何年前、サントリーホールで日本フィルを聴いたのか、覚えていない。日フィルには知り合いもおらず、岡本侑也さんのドボコンを近郊まで聴きに行っただけ。そんな訳で、インキネンが以前から日フィルを指揮していることも、気付いていなかった。今年の2月、初めてプラハのスメタナホールでインキネン指揮、プラハ交響楽団のブルックナー9番のステリハを聴き、若くて人気があり、流れる音楽とメリハリのある重厚感がホールの響きとあいまって、心地よかった。日フィルの首席指揮者になると知り、今回聞いてみることにした。http://gruen.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24-1
 日本で既にヴァルキューレ一幕は演奏したことがあると終演後教えてもらったが、本番時には知らなかったので、ヴァルキューレでなく、ジークフリートを日本へ持ってきてくれたことに、感動した。3幕を東京のコンサートで聴く機会はめったにないだろう。初めて聴くお客さんもいるかもしれない。
 3幕が始まると直ぐ作品そのものに想いが及び、さすらい人の第一声がなかったところで、上手い編曲だとハットした。その後も、カットに入る最初の一節まで惹き付けて、歌を待ち構える気持ちを膨らまさせられて、さっと次へ飛ぶ。オケは緊張しながらも、ブリュンヒルデの目覚めの場面までくると、幾分開放された感じで、まだ余力がありそうなまま、最後まで到達した。座席のせいか、1.Vnの勢いが今一つに聞こえたが、音楽の流れが良く、弦楽器の音色にヨーロッパの雰囲気がただよっており、意外だった。様子を見ながら、遠慮がちに、小綺麗にまとめたと感じだったが、重厚な部分のエネルギーは、大したものだった。
 後半の黄昏は、オケが作品そのものに慣れ親しんでいるのか、見違えるように、とても生き生きした演奏を聴かせてくれた。他の在京オケと違い、弦楽器の音色に明るさがあり、重厚感は、シベリウスの作品で感じる重苦しい苦悩の感じを連想した。インキネンなら、日本で、リングチクルスのお稽古させてあげてもいいなと聴きながら思った。
 一番心がゆさぶられたのは、実際演奏されている瞬間の音楽が生きていることだ。一音一音のイメージが明確で、方向性を持ち、その音が意図するところ、音楽の行き着く先が音の続きではっきり示されているようで、目の前で物語が進行しているようなワクワク感を体験できる。
 時に、リングの抜粋は、譜面を演奏するだけで、どんどん先を急いで、つじつま合わせで終わり、物足りない感じが残る。全て翌日になって知った話だが、既にオーストラリアでリングチクルスを指揮していることを知り、ヴァイオリニストであることも知り、演奏中抱いた印象の根拠を得た気がした。弦楽器の音色については、自身の奏法を伝え、音色を追求したのかもしれないと、勝手に納得した。ヨーロッパ風の、力業でない深い地中へ誘う重厚さと、天上の神様へ音を飛ばすような、羽のような優しい音を巧みに操り、日本にヨーロッパの音もたらしてくれるかもしれないと願い、他の音楽も聴いてみたいと思った。
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