SSブログ

《ラインの黄金》の総譜解題 [オペラ(国内)]

 ワーグナー生誕200年記念懸賞論文で日本ワーグナー協会賞を受賞なさった岡田安樹浩さんが、例会で、ラインの黄金の序奏部についてお話しされた。
 どのように作曲されたかというのは、とても興味深いが、自らそれを探求することはできないので、学者の先生方が、音樂を愛しつつ、研究成果をお話して下さることはとても有難い。手をかえ品をかえ、繰り返し、知ればしるほど、今日では当たり前の音の感覚が、ワーグナーによって、開拓されたことに心動かされる。
 演奏する立場で一番身近に感じた話題は、序奏がEs-durの和音だけで構成されていることを、ワーグナーが豪語したという話。和声進行が無く、音の厚みを増すことを主眼に高揚感を表すのは、当時画期的だったのだ。また、楽器を分けて、主要旋律を吹かせたこと、混沌とした音を楽器で表わそうとしたことなど、奏者として音の渦の中にいるとき、ものすごくよくわかる。
 序奏部のチェロの分散和音は画一的でなく、微妙に音が変わる。なぜなのだろうと思っていたが、それこそが新しさの一端なのか。複雑な音の中で、自分の役割がとても孤独で、自分を見失いそうになる時もあるが、それも音樂が複雑に構成されている新しさなのか。きっとプロ奏者でもスリリングな体験があると思う。
 今日のお話で、少し総譜が見えたようで、パート譜で体感するときの心の不協和を解決してもらえ、体の中がすっとした気がする。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽