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雪の週末、日本ワーグナー協会例会ーラインの黄金 [講演会]

 二週続いた週末の雪のおかげで、オケの練習は中止、予定が二転三転し、身一つで参加できる、池上純一先生のラインの黄金テキスト精読の講義を聞きに行くことができた。昔は、ワーグナー協会はテキストの勉強ばかりしている団体なのだろうと想像していたが、実際はテキストを解説する例会は希だ。きっと協会の歴史30年の間に、もう全作品の精読をやってしまったのだろう。来るのが遅すぎた自分にとっては、どんな講義よりテキストの解説が一番エキサイトする。
 ニーベルングの指環を理解するのに、作品のバックグラウンドをどれくらい知っているかで、読みの深さが変わってくるのは当然だが、その道のりは遥か遠い。講義内容全てを記述しきれないが、この日、一番驚いたのは、題名の解釈だった。なぜ、この題名がついたかなんて、考えたことはない。そういう題名の作品というのが一般人のスタートだろう。その点、学者の先生はどんな分野も疑問がスタートラインなんだと、改めて気づかされた。
 ニーベルングの指輪とはアルベリヒの指環だろうと思っていたが、そうではないらしい。ラインの黄金のテキストでListという策略、術策と訳される言葉がキーワードになっていると。アルベリヒは愛を放棄して指環を得たと思われがちだが、実は愛を捨てて得たものはZauber、ある種の秘法であり、その秘法によって指環が作られ、世界を我がものととできると。
 策を弄するのは、アルベリヒだけでない、ローゲも、ヴォータンも、指輪(権力)を手に入れようと、知力で策を練るもの全てが破滅することになると。知力ー光ー啓蒙という文明社会の発展が何故か破壊に進むという考え方、神話はすでに啓蒙である。啓蒙は神話へと退化するという「啓蒙の弁証法」マックス・ホルクハイマーの理論が紹介された。
 韻を踏むテキストや、ドイツ語の音そのものが美しく、音樂と呼応しているのが本当に素晴らしい。公演前にテキストを読むのではなく、常にリングのどこかを読んでいるな~んていう刺激的な生活をしてみたいものだ。(G)
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