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クラウス・フロリアン・フォークト氏に訊く [オペラ(国内)]

 新国立劇場でローエングリンを歌うため来日中の、フォークト氏のインタヴューを聞いた。
 プロのホルン奏者からテノール歌手に転向した訳がわかった。お父さんが、趣味とはいえ相当の音楽好きだったようで(Hobby-musiker)クラとオーボエを吹き、木管五重奏が夢だったが、友人にホルンが見つからず、フォークト氏が10歳頃のクリスマスの時、ツリーの下に、ピカピカ輝くホルンが置いてあったそうだ。弦楽器より管楽器の方が上達が早いからと、ちょっと謙遜しながら、興味と集中で、3~4年後には、金曜の午後お父さんと5重奏をやっていたとのこと。
 歌手になったきっかけが、今は奥さんとなっている(歌手)当時の彼女と、家族のイヴェントのためにデュエットしたロッシーニ「猫の歌」の録音をやはり歌手である義母が聞き、美声を見出したとのこと。あくまできっかけは奥さんではないと強調していた。
 午前と夜は主にオケピットでホルンの仕事、午後はリューベックで歌の勉強をし、卒業後はオペレッタを沢山歌い、そこで、学校だけでは不十分だった演技も実践的に学んだとのこと。なるほど、オペレッタは、ほとんど演劇だからと納得。
 話の様子からフォークト氏はとても真面目で誠実、興味を感じるとそれを極める方のようだ。プレミエの時、一幕ローエングリンの禁断のモチーフの時に、あの地震が来たそうだが、本番前に、特定場面での地震時の対応については打ち合わせもあり、全く動じなかったと言う。本番中の地震のことも、日本ならではの体験であり、どんな事も自分から積極的に興味深く捕らえる方なのかなという印象だった。ご本人の弁のとおり、強固な北ドイツの気質も感じた。自分を見失わない北ドイツ人が、演技を通して別人になりきれるか、悩んだ時期もあると。
 ワーグナーの登場人物について、そのキャラクターの可能性は沢山あり、演出家と相談して、自分のもっている引き出しからいろいろ取り出し、或いは新たに作りあげる喜びもあるとのこと。ローエングリンを色々なプロダクションで歌っているが、東京でも、自分として新たに演じるキャラクターを見せる場面がいくつかあるそうだ。声を保つため、きっちり休むようにしており、休むことによって、再開したとき、新たな発見があると。正しいテクニックを身に着ければ、声をつぶすことはない。自分の本来の声で歌うことに心がけているという。自分に正直で、いつも精一杯のことをする、とても真面目で誠実な方なんだと痛感したインタヴューだった。(G)

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