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ライン・ドイツ・オペラーサロメ [オペラ(海外)]

 空港は成田もフランクフルトも、沢山の人出だった。ユーロ安で世界中の旅人が、ヨーロッパに集まって来るのかもしれない。お正月やGWの華やかさとは違うが、日本人のツアーが目だつ。昨年の震災後の同じ時期とは、比べようがない。
 フランクフルト空港では、パスポートコントロールが溢れかえっていて、もっと先にもあるからと誘導された。荷物検査もフル稼働で、乗り継ぎのゲートに着くまで、何と一時間かかった。出発にはちょうどよい頃かと思ったら、乗り継ぎ便が最終的に90分遅れ。雷で到着便が遅れるが、デュセルドルフ行きの別の機材を用意したと、遅れのお詫びとLHのちょっと得意げなアナウンスだった。
 結局19:30のDuisburgのサロメの開演に間に合わず、パウゼがないのでどうなるかと思ったが、後ろの入り口から何とか入れてもらえた。
 真っ先に音楽が耳に入ってきた。気取らず、ちょっと荒々しいR.シュトラウスの音だ。 舞台では、ナラボートが死んだ直後で、絨毯の下に遺体を隠す作業が進行していた。舞台は、怪しい宿か自宅の寝室か、絨毯をはがすと、床に階下の物置扉のようなものがあり、部屋からその中に、ヨカナンが戻って行った。ヘロデとヘロディアは、酔っぱらって階段を上階から降りてきて、何でもやるから踊ってくれという演出。 席のせいか、歌手たちの声があまり響かず、ドタバタした軽いミュージカルのような印象。終わってもあまり拍手はなかった。何度かこの劇場に来たことはあるが、地域の社交場という感じで、お年寄りが着飾って集う場所だ。今日の雰囲気はどうだったのか分からないが、拍手の様子から、あまりリピーターは期待できないような気がする。(G)
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新国立劇場ーローエングリン 楽日 [オペラ(国内)]

 ローエングリン楽日、二つのハプニングに遭遇した。
 一つ目、開演前、タクシーから下りたマエストロに行き合った。小雨降る中、方角を見失っているようにお見受けし、思わず駆け寄ってしまった。一階正面玄関でタクシーを下ろされ、劇場の人に迎えにきてもらうことになっているとおっしゃる。渡されたグーグルの地図を見て、ちょっと不親切な感じがした。自分だったら、当然タクシードライバーが見る地図には、この入口まで乗り付けてほしいと日本語で書き込むだろう。ファンを避けての楽屋入りは大変だ。たった一人で、何だかお気の毒に思えた。
 もう一つは舞台の2幕の終わり、フォークト氏が歌詞を間違えてしまった。歌手が歌詞を間違えるのはよくあることと聞くが、自分が気づくところは限られており、今回は、初めてで驚く、身近なアクシデントだった。テルラムントに入れ知恵され、エルザが取り乱し、うなだれてしゃがみこんでいるところで、ローエングリンはエルザに立ちなさい!と言うべきところ、愛していると言ってしまった。気持ちはわかる。エルザを愛しているから、強く立ち上がりなさいと言う訳で、その気持ちは言外にあると思う。でも2幕幕切れで、エルザがよろめきながら頑張って歩くシーンの伏線になっているので、立ちなさいという台詞は結構大事。遥か彼方の客席から見て、フォークト氏が「やってしまった...」という恥ずかしさで、場面以上に長くうつむいていたのではないかしらと、これも気の毒な思いがする。
 この二つのハプニング、新国立に押し寄せた、熱狂的なファンの行動が、影響してないとは言えないだろう。最後に、ほろ苦さを感じた公演となった。(G)

新国立劇場ーローエングリン [オペラ(国内)]

 4日目の公演を聴いた。けっこう舞台に近い席で、歌手も間近に感じ、オケピットの中まで見え、これは良いと思ったが、どうしてもオケの音が気になってしかたがない。春の上野の森のワーグナーシリーズのオケの弦楽器とこちらの管楽器が共演してくれたら、もっと心地よいだろうなと思いつつ、ペーターシュナイダーの弛まない牽引力に頭が下がった。ヨーロッパで、ワーグナーを熟知したオケを振るのと違い、オケの緊張が途切れないよう、常に前へ前へ導くエネルギーは大変なものだ。相当なエネルギーを使うのではないだろうか。第一幕への前奏曲もあんなに細かく振るのかと驚いた。ずれないための職人技だろうか。3幕最後、名乗り、聖杯から迎えが来たと言った後、オケの集中力が、意図的に一段アップしたように感じた。
 シュナイダーは、幕切れ近くで、明確に音楽が最高潮に達するようにしてくれるので嬉しい。以前ドレスデンでフォークトがパルジファルを歌った時の、オケの最後の盛り上がりも、身震いするほど凄かった。
 終演後楽屋口に行ってみると、歌手陣は比較的早く出てきた。エルザ役のメルベートさんは凄い美人だった。ハインリヒ国王役のグロイスベック氏は人なつっこく、ファンと肩を組んで写真に応じていた。フォークト氏は長蛇の列に観念したかのように、自分のバッグを屋内に置き、にこにことサインに応じていた。少しすると、マエストロはもうお帰りになりましたと案内があった。やはり、相当お疲れで、ファンの前に出てこられなかったのだろうか。楽日まで、何とか頑張っていただきたい。
 フォークト氏は、今旬のローエングリンだと思う。日本に来て、歌ってくれて、感謝感激だ。(G)
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クラウス・フロリアン・フォークト氏に訊く [オペラ(国内)]

 新国立劇場でローエングリンを歌うため来日中の、フォークト氏のインタヴューを聞いた。
 プロのホルン奏者からテノール歌手に転向した訳がわかった。お父さんが、趣味とはいえ相当の音楽好きだったようで(Hobby-musiker)クラとオーボエを吹き、木管五重奏が夢だったが、友人にホルンが見つからず、フォークト氏が10歳頃のクリスマスの時、ツリーの下に、ピカピカ輝くホルンが置いてあったそうだ。弦楽器より管楽器の方が上達が早いからと、ちょっと謙遜しながら、興味と集中で、3~4年後には、金曜の午後お父さんと5重奏をやっていたとのこと。
 歌手になったきっかけが、今は奥さんとなっている(歌手)当時の彼女と、家族のイヴェントのためにデュエットしたロッシーニ「猫の歌」の録音をやはり歌手である義母が聞き、美声を見出したとのこと。あくまできっかけは奥さんではないと強調していた。
 午前と夜は主にオケピットでホルンの仕事、午後はリューベックで歌の勉強をし、卒業後はオペレッタを沢山歌い、そこで、学校だけでは不十分だった演技も実践的に学んだとのこと。なるほど、オペレッタは、ほとんど演劇だからと納得。
 話の様子からフォークト氏はとても真面目で誠実、興味を感じるとそれを極める方のようだ。プレミエの時、一幕ローエングリンの禁断のモチーフの時に、あの地震が来たそうだが、本番前に、特定場面での地震時の対応については打ち合わせもあり、全く動じなかったと言う。本番中の地震のことも、日本ならではの体験であり、どんな事も自分から積極的に興味深く捕らえる方なのかなという印象だった。ご本人の弁のとおり、強固な北ドイツの気質も感じた。自分を見失わない北ドイツ人が、演技を通して別人になりきれるか、悩んだ時期もあると。
 ワーグナーの登場人物について、そのキャラクターの可能性は沢山あり、演出家と相談して、自分のもっている引き出しからいろいろ取り出し、或いは新たに作りあげる喜びもあるとのこと。ローエングリンを色々なプロダクションで歌っているが、東京でも、自分として新たに演じるキャラクターを見せる場面がいくつかあるそうだ。声を保つため、きっちり休むようにしており、休むことによって、再開したとき、新たな発見があると。正しいテクニックを身に着ければ、声をつぶすことはない。自分の本来の声で歌うことに心がけているという。自分に正直で、いつも精一杯のことをする、とても真面目で誠実な方なんだと痛感したインタヴューだった。(G)

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