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ソッリマ「氷のチェロ物語」と演奏 [コンサート]

 イタリア文化会館の催しに誘っていただき、初めてソッリマの生演奏を聴いた。第一部は「氷のチェロ物語」の映画を上映し第二部はご本人のお話と演奏という素晴らしい企画だった。
 氷でどうやって彫刻家がチェロを作るのか、氷を削るのだろうかと想像していたが、大元は水だった。アルプスの氷河を水で溶かしてシャーベット状の氷を手での伸ばし表板、裏板を成形し、透明な氷で光り輝く魂柱を作る。ネックと指板は通常の物、駒は氷で、弦と接する部分には波型の金属を乗せている。横板もシャーベット状の氷だが、かなり堅そうに詰め込んでいるように見える。全体にかなり氷は厚く、垂直より少し傾いて固定された楽器を半立ち状態で弾く。弓は主にバロック弓が映像には映っていた。
 演奏場所は約マイナス10℃のビニール球体バブルの中、イタリアを南下しながら数都市で演奏し、ソッリマの故郷シチリアまで行く。その間のアクシデントを追ったドキュメンタリー映画だ。
 バブルの空調が故障し、むき出し状態でドライアイス粉末を振りかけながら演奏するが、楽器が溶けていき、思わず涙が込み上げて来る。氷の状態により音色が変化するとのこと。楽器を運ぶ車の冷凍庫も故障する。氷のチェロを弾いたインスピレーションで移動中に作曲もする。The N-Ice Cello Concerto のオーケストラ用の楽譜起こしをする映像もある。
 映画だけでは分からないことも、あちこちで情報収集できる。
https://www.bunkyo-gakki.com/stories/music/europestringwatch/ice
https://www.plankton.co.jp/sollima/icecello.html
 後半、いよいよソッリマが登壇し、招聘した代表からのインタヴューがあった。ソッリマはチェロを木の枝に引っかけて、風の中で弾いたり、海中で弾き、伝わる音を録音もしたらしい。音楽は自然の本質というスケールの大きい芸術家だと思う。この日演奏されたのは、Giovanni Sollima : The N-Ice Cello Concerto の最後の部分、 Lamentatio、Fandango (after Boccherini)、もう一曲はNatural Songbook からだと思う。Lamentatioは岡本侑也さんの演奏会でアンコールとして聞いたことがあったが、オリジナルはかなり長く、歌にも歌詞があり、声とチェロの音がハモり溶け合い、アフリカの民族的呪術的なメロディーやリズムを感じる。シチリア島はアフリカの歴史文化と交わる土地であり、家族何代にもわたり、多様な文化と接しているのだ。
 氷のチェロでさえ、演奏するソッリマの身体との一体感が感じとれる。自身の楽器であれば尚更のこと、エンドピンの先から指板の全領域までもが楽器で、激しく深く重厚な魂の声も、美しいはかない天上の声も全て自然に湧いてくるようで、ものすごい衝撃を受けた。どんなに激しく弾いても、音が綺麗で和音が濁らない。楽譜を一切使わず全て暗譜しているとのこと。演奏時にエンドピンを止める穴が見つけるのに大変そうだったが、楽譜を見ない分、視力を気にしていないのかな、などとふと思った。没入する姿から、楽器は自ずと身体の一部であり、その融合体は自然の一部であり、強いエネルギーを発しているようだ。興味は尽きない。
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