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ジャン=ギアン・ケラス無伴奏リサイタル 浜離宮ホール [コンサート]

 大人気ケラスのライブはこれまであまり聞いていなかったが、この日は、ただ、座っているだけで、悲しい心を温めてくれるような、優しさを分けてもらった演奏会だった。特にバッハに心惹かれた。最近YouTubeでバッハの講義を見て、いいなと思っていた。作品の原点回帰を超え、独自の自由な世界観と優しい表現は、きっと飾らない温かいお人柄なのではないかと思う。
 一番の冒頭から、音の演出が素晴らしく、どこか石造りの大きな教会の中で聞いているような透明な響きが美しく、プレリュードの弾き始めで引き込まれた。開放弦をふんだんに使い、ボーイングはスラーが多く、響きを追求した効果的奏法というか、組曲全体が軽やかで、装飾音を入れて楽しませてくれる、コンサートへいざなう理想的な一曲目だった。
 最後の5番は、昨今はオリジナル通りA線をGに調弦して演奏される。C-Mollの暗さ、乗り越えて行かねばならない、辛さ切なさが良く伝わってきた。
 アンコールの6番プレリュードは、生き生きと、楽に弾いてくれて、昇天するイメージ通り、幸福な気持ちで家路に向かわせてくれた。
 若く見えるが、現在57歳、音楽が人を救う事を承知しているなあと感じる。
 たまたま、プログラム2曲目が、岡本さんも同じで、ブリテンの1番だった。ケラスも若い頃からのレパートリーのようだが、今回は、意図的なのかもしれないが、音が今一つはっきりせず、3日前の岡本さんの正確さと音の粒立ち、音色がいかに素晴らしいかったか、先日聞いた友人も同感とのことだった。
 後半は、冒頭から力強く、文楽もケラスのレパートリーで、とても良い演奏だった。リゲティは、テクニック満載で、熱演してくれて、チェロって、こういう音だったと、時々入る移弦の擦れる音を含め、チェロらしい音を満喫した。それでも、弓の毛は一本も切らず、あえて、バッハの奏法の違いを示してくれたと思う。
 アンコールのデュポールの7番では、バロックのテクニックを見せてくれて、一晩で、お客さんのために色々な世界を見せてくれた。優しさに溢れ、使命感をもって演奏、指導している印象を受け、聞いていて気持ちが和んだ。
Program
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
・ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 Op.72
---------------』
・黛 敏郎:無伴奏チェロのための「BUNRAKU」
・リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011
 
◆ アンコール
・デュポール:エチュード第7番
・J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 BWV1012 より「プレリュード」
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