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岡本侑也無伴奏Ⅱ チェロリサイタル トッパンホール [コンサート]

 スケールの大きいチェリストになったなぁと、メジャーリーグの大谷翔平を見る時の眼差しと共通する、誇らしい気持ちだった。
 もう3年前になるが、トッパンホールでの無伴奏リサイタルが、とても素晴らしいものだった。さらにあれから研鑽をつみ、クリスチャンツィメルマンとの海外ツアーに二度誘われ、ヨーロッパでも知名度が上がり、今年1月には、Quatuor Ébène の正式チェリストとなった。
 2月末に曲目を変更し、ペンデレツキ「チェロのための組曲」から、イザイのソナタと文楽になった。当日になると曲順が、下の様になり、むしろ冒頭に美しいイザイが入って、演奏会の流れとしては、良かったと思う。
 この日の印象は、いつもの、正確、繊細の上にスケールが大きく、激しく弾いても、弓の毛は一本も切らなかった。移弦や弾き始めの雑音が一切ないので、目をつぶって聴くと、4弦チェロの音なのか、人の声なのか分からなく滑らかな響きだった。
 後半一曲目のペンデレツキが、最も激しい奏法で、クライマックスで、C線が切れ、一度舞台袖に戻って、初めから弾き直した。この日はカメラが入っていたので、そうなったのかもしれない。
 全ての曲の隅々まで、全ての音が生まれ消えていく時間が愛おしくなる。実は、文楽は何度も演奏されており、プログラムに入れたことに、ちょっとした懸念があったのだが、とんでもなく素晴らしく、きっと作曲家の思いを遥かに超えた名演奏で、暫しお別れの日本への、置き土産ような最高の演奏会を締め括った。
 今回は珍しく楽譜を置いていたが、暗譜の時と何ら変わらず、楽譜は音楽へ昇華され、世界トップレベルの芸術表現を間近で聞かせてもらったと皆驚いたと思う。
 楽器は、今回も本来の自分の物ではなかったが、とてもよく鳴っていて、全く雑音を出さず、どんな奏法も完璧な弓使いだった。弓の毛が切れないと言うのは、無理なく楽器と一体になっているからだろう。
 最後本人の挨拶で、翌朝カルテットの為コペンハーゲンに飛ぶので、今日はアンコールはありませんと、突然変わってしまった自分の環境を、素直に受け入れている風だった。
 ソリストとして大きな飛躍を遂げ、29歳になった岡本さんの就職先とも言えるQuatuor Ébène。この素晴らしい岡本さんを、エベーヌも良く見つけたと思う。人柄は控えめなのに、これほど表現力と技術があり、スケールが大きいチェリストを、拍手一杯で、世界に送り出したい。
 今後は、欧米に留まらずグローバルな旅で活躍するわけだが、カルテットはメンバー交代がつきもの。もし、ポジティブでもネガティブでも、理由ができたら、無理せず、次の道に進んでほしい。まだ人生は長いのだから。

イザイ:無伴奏チェロ・ソナタ Op.28
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 Op.72
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ペンデレツキ:ジークフリート・パルムのためのカプリッチョ
細川俊夫:小さな歌
ユン・イサン:グリッセ
尾高惇忠:独奏チェロのための《瞑想》
黛 敏郎:BUNRAKU
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