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こうもり 新国立劇場 2023 [オペラ(国内)]

 年忘れという言葉はあまり聞かなくなった。1年間の嫌な事を忘れて、ハメをはずすし、英気を養うという行為は、今の世の中、あまり通用しないというか、忘れられないネガティブな現実が多すぎる。前回、こうもりを見たのは、2020年まだコロナ禍の時たが、なぜか、今の方が気持ちが暗い。
 少なくともコロナ禍以降、完全に忘れていた心の動きに、気付かされた。悩んでもどうにもならないなことを忘れられる人は、幸せなりという、19世紀の世紀末感漂う中での願望を身近に感じた。少し早いが、年の瀬の安堵感を束の間味わったので、一旦これを飲み込み、現実の年越しに向かう。
 客席は満席で、今年の演出は、さらに細かい日本語ジョークが増強され、そこだけは大きな笑いが起こっていた。三幕は、今年らしい話題が入ったが、看守のオリジナルの台詞も、もう少し反応してあげたいものだ。新国立劇場では、これまで看守は俳優が演じでいたと思うが、今回の看守役は歌手であり、ちゃんと歌ってくれた。昨今では俳優並みの演技を見せてくれる歌手が増えており、好ましい傾向だと思う。
 ロザリンデ役が、二幕で新国立劇場のバレーダンサーと踊るのも、初めてだと思う。歌って踊って演技できる歌手を、日本人も目指してもらいたい。
 アルフレード役の伊藤さんは適役で、今や日本でトップのテノールとなられ、台詞の中に、ロザリンデが、日本人テノールが楽しみだといったジョークが入っていたのは嬉しいことだ。監獄でとても美しく歌い上げてくれたし、新国立劇場で、こうもりと魔笛は完全にレパートリーになって来て嬉しいことだ。
 演奏は、軽妙だが、金管の音がアメリカのマーチングバンドの様に割れ気味に鳴り響くのが、ちょっと気になった。
[指 揮】パトリック・ハーン Patrick HAHN
【演 出】ハインツ・ツェドニク Heinz ZEDNIK
[ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン】
  ジョナサン・マクガヴァン Jonathan MCGOVERN
【ロザリンデ】エレオノーレ・マルグエッレ Eleonore MARGUERRE
【フランク】畠山 茂 [12/8更新]
【オルロフスキー公爵】タマラ・グーラ Tamara GURA)
【アルフレード】伊藤達人
【ファルケ博士】トーマス・タツル Thomas TATZL
【アデーレ】シェシュティン・アヴェモ Kerstin AVEMO
【ブリント博士】青地英幸
【フロッシュ】ホルスト・ラムネク Horst LAMNEK
【イーダ】伊藤 晴
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「わ」の会コンサート vol.9 Leiden [コンサート]

 8月に亡くなられた飯守泰次郎氏の教えを受け継いで、新しいワーグナー歌手を育てるという場が「わ」の会の使命となったと、愛弟子の城谷さんの言。故飯守先生に捧げられた、最後のタンホイザーの巡礼の合唱は素晴らしく、一節だけだったが、池田先生のハレルヤが、力強く響き感動した。
 今年のテーマはLeiden(苦悩)であり、先ずトリスタンとイゾルデを連想するが、前半では、初期作品のリエンツィと恋愛禁制からも苦悩の場面が歌われた。個人的には、恋愛禁制の当該場面は、苦悩に感じられるが、リエンツィの方は、劇全体が困惑しているイメージで、感情表現としては、まだ未開拓な時代だと思う。
 歌手は、皆さんそれぞれ素晴らしく、男声は年々貫禄がついて堂々として来る。やはり経験が歌手を育むものだと感じる。イゾルデ代役の中村真紀さんは、既に全幕制覇されているのだろうか。ブランゲーネ役の高橋華子さんは、演技も慣れていらっしゃるご様子で、安心して聞くことが出来た。其々頑張って活躍していただきたい。
 コーラスが入ると、歌う場面の選択肢が増えて、プログラムも豊かになり、楽しいと思う。
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