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マティアス・ゲルネ N響定期ーワーグナー・プロ [コンサート]

 日曜の午後、NHKホールで1500円の当日券を買い 開場30分前に入口に並ぶと、ほとんど待つ人がいない。客席最上階からの感想ではあるが、ゲルネはさすがリート歌手、言葉がとても丁寧で、歌いながら歌詞に感動しているのではないかと思うほど、大切に言葉を発していて、劇場の舞台で歌手が醸し出す、場の雰囲気とは関係なく、歌詞そのものに集中して聴くのも、良いものだと感じた。
 次に、指揮者のガエタノ・デスピノーザについては、ネガティブに驚いた。ドレスデンのコンサートマスターからの転身、36才ということで、才能豊かな発展途上なのかもしれないが、私の第一印象は、20世紀の学校音楽コンクールでしばしば目の当たりにした、ふにゃふにゃした指揮だった。遥か彼方から肉眼で見る限り、歩く姿は姿勢よく凛々しいのに、指揮は腰を屈め、胸をすぼめ、手首から先を、刷毛のようにこねくりまわす姿から出てくる音は、その通りふにゃふにゃして、N響は、指揮者に忠実だと思った。拍に重さが感じられず、発した音がどこに向かっているのか、どれくらい持続するのか、すべてが宙に浮いている頼りなさを感じたのは、自分だけだろうか。
 ジークフリートの葬送行進曲を振り終え、拍手を浴び、指揮者はとても幸せそうで、コンマス、各主席弦楽器奏者のところに、握手を求めに歩いた。弦楽器仲間として共感するものが、あったのかどうか、これはオーケストラに対する感謝の気持ちを素直に表していると感じた。素直で謙虚そうで、きっと良い人柄なのだろう。もし再び出会った時、自分がどんな感想を持つか、自信がない。(G)
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