SSブログ

新国立劇場ーアラベッラ [オペラ(国内)]

 4日目のアラベッラ公演に行った。今回の公演にお客さんが少ないという話は、何となく聞いていたが、確かに土曜日とは思えないほど、閑散としている。何故だろうか。R.シュトラウスの音楽はとても綺麗だが、筋書きには特に感動的な要素も見出だせず、喜劇と思えるほどの、皮肉も分からず、過去何回かの公演も、印象が無い。単純に、共感できる登場人物が居ないということなのだろうか。他のR.シュトラウスに比べると、言葉はわかりやすいと思うのだが。
 身代が傾いて、娘の結婚相手が借金を肩代わりするという筋書きは古今東西あり、その中で登場する人間の行動や心の動きを詳細に表現しているのだが、オペラとしては、まず、上階まで声が届くかどうかがポイントになる。アラベッラとズデンカの声を比べると、明朗闊達なズデンカの声はハッキリ聞こえるが、アラベッラの声は、上品に演じているから、聞こえづらいのだろうか。歌い始めがハッキリ聞き取れないのは、演技なのだろうか。マンドリカ役のコッホが、舞台をリードしていたことは、確かだ。やはり、自分にはバイロイトのヴォータンの印象が強い。父親の没落伯爵役を演じた妻屋さんを、顔が見える人物の役として見たのは、新鮮だった。これまで、ダーラント、ハフナー、ドンジョヴァンニの騎士長、ザラストラ、など衣装やメイクをつけた、声で勝負する役の印象が強かったが、さすが20年ドイツで歌っているベテラン、喜劇役の身のこなしも、日本人としては堂に入っていると感心した。
 続・アラベッラのような作品がどこかにあるのだろうか、この一家、姉妹のその後が気になる。
__.JPG

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

マティアス・ゲルネ N響定期ーワーグナー・プロ [コンサート]

 日曜の午後、NHKホールで1500円の当日券を買い 開場30分前に入口に並ぶと、ほとんど待つ人がいない。客席最上階からの感想ではあるが、ゲルネはさすがリート歌手、言葉がとても丁寧で、歌いながら歌詞に感動しているのではないかと思うほど、大切に言葉を発していて、劇場の舞台で歌手が醸し出す、場の雰囲気とは関係なく、歌詞そのものに集中して聴くのも、良いものだと感じた。
 次に、指揮者のガエタノ・デスピノーザについては、ネガティブに驚いた。ドレスデンのコンサートマスターからの転身、36才ということで、才能豊かな発展途上なのかもしれないが、私の第一印象は、20世紀の学校音楽コンクールでしばしば目の当たりにした、ふにゃふにゃした指揮だった。遥か彼方から肉眼で見る限り、歩く姿は姿勢よく凛々しいのに、指揮は腰を屈め、胸をすぼめ、手首から先を、刷毛のようにこねくりまわす姿から出てくる音は、その通りふにゃふにゃして、N響は、指揮者に忠実だと思った。拍に重さが感じられず、発した音がどこに向かっているのか、どれくらい持続するのか、すべてが宙に浮いている頼りなさを感じたのは、自分だけだろうか。
 ジークフリートの葬送行進曲を振り終え、拍手を浴び、指揮者はとても幸せそうで、コンマス、各主席弦楽器奏者のところに、握手を求めに歩いた。弦楽器仲間として共感するものが、あったのかどうか、これはオーケストラに対する感謝の気持ちを素直に表していると感じた。素直で謙虚そうで、きっと良い人柄なのだろう。もし再び出会った時、自分がどんな感想を持つか、自信がない。(G)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ラフォルジュルネーモーツァルト・レクイエム [コンサート]

 前日会場で、ミシェル・コルボの残席を買った。去年は、1階席でフォーレのレクイエム、今年は、2階でモーツァルト。昨年夏、ベルリンフィルのヴァルトビューネを聴いてから、PAの高い技術を信頼するようになり、5000席のホールで生の音を追求するより、潔く、二階でお任せの音を味わうのも悪くない。特にピリオド楽器を使うわけではないのに、御歳80のコルボ翁の音楽は、軽快で生き生きと流暢で、フランスの音がした。コーラスの音量は小さめで、教会内部に響き渡るコンサートとは異質なものとして、5000人の心を疲れを解きほぐしてくれたのではないだろうか。(G)
DSC04443.JPG
DSC04447.JPG
DSC04454.JPG
DSC04461.JPG
DSC04463.JPG
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

アルゲリッチ(ラ・フォル・ジュルネ)← 権太楼←宮田大 [コンサート]

 連休初日、幕見で海老蔵の弁慶でも見ようかと思っていたが、結構テレビで團十郎がらみと歌舞伎座開場1周年で露出しており、混雑必至で朝一番から並ぶのもつらいし、電話したら当日券がかなりあるN響(東京文化会館)に行くことにした。
 行ってみたら当日券売場に100人くらいは並んでいたが、4階L1列目を確保できた。そもそもこのカンタービレコンサートとは何なのかがはっきりしない。主催はキョードーとなっているが、クラッシックもやっているのか。ブログラムも中途半端だし、GWの子供向けにしては価格設定が高い。最安券で4,300円。お目当ては皆さん宮田大なのか、1階はほぼ満席なのに、安い5階は誰もいない。
DSC04406.JPG
 さて宮田さんのドボコンだが、音量があり堂々としていているが、力任せという訳でなく、大人の演奏だった。拍手が鳴り止まず、アンコールにバッハを弾いた。前半で帰った人もいた。
 17時で終演、そのまま鈴本へ向かう。途中広小路の交差点に多慶屋が出来ていて、ビールやツマミを揃えるのに都合がいい。
DSC04413.JPG
 鈴本夜の部はGW恒例の権太楼師、この日はネタ出し•猫の災難でストーリーが無いのでやりにくい噺と言いながら、愛すべき酔っ払いを熱演した。他の演者もレベルが高く、楽しめた。歌之介師はいつもの脱線しまくる龍馬物語だったが、一番受けていた。紙切り•正楽師のお題に勧進帳が出たが、歌舞伎座とハシゴの客か。
 次期会長•市馬師は、さすがの安定感。この日は歌わなかったが、連れ合いによれば、噺だけ聞いても眠気を誘う美声だと言う。寝ちゃまずいが。

 20時45分頃終演、山の手線で有楽町ラ・フォル・ジュルネに向かう。アルゲリッチが出るとのことで、前売りを買っておいた。
DSC04419.JPG
DSC04428.JPG
DSC04430.JPG
 遅い時間(22:15開演)にも関わらず周辺は大変な人出だ。会場は悪名高いホールAで、21時30分開場ということで、40分頃行ってみると1階までしか入れない。ぎゅーぎゅーの大混雑で結局入場できたのは22時。
DSC04441.JPG
 2階の上の方で舞台は遥か彼方だが、PAが優秀なのか自然にはっきり聴こえる。
 前半の春祭ピアノ2重奏版から演奏も素晴らしく、アルゲリッチはもちろん、酒井茜さんは知らない方だが、全く引けを取らなかった。舞台の両側に巨大スクリーンがあり、演奏を映すが、それぞれの奏者を個別に撮ってくれたら良かった。
 後半、 動物の謝肉祭は名手揃いが余裕の演奏を聴かせた。特にクレメルが乗り乗りで楽しませてくれた。フルート、クラリネットは出番が少ないが、素晴らしかった。
 開演が遅れたため終わったが23時半近く、駅まで走って終電で何とか家に辿り着いた。(B)

 アルゲリッチを初めて見、聴いて、オーケストラのような多重の躍動する音に驚嘆した。遥か彼方に望む演奏だったが、角の無い、丸い輪郭の音は、透明感が際立ち、指が鍵盤にタッチする瞬間に、自在にコントロールされる、音の密度と重量感、その連続が生む様々な音の表情が織りなす音楽は、やはり天賦の才能というものなのだろう。色々なタイプの天才ピアニストが存在し、私も何人かは実際聴いているが、テクニックを越えて、身体から出てくる音だと感じたのは、初めての気がする。
 スクリーンに映る手は、大きそうだが、紛れもなく、女性のしなやかな指を持ち、動きもとてもなめらかだ。ピアノのデュオの場合、私はどうしても二人の音色の違いが気になってしまう。酒井さんもテクニックは素晴らしかったが、手の大きさを見るとアレゲリッチより大分小さいようで、重さより力で鳴らす音に近く聞こえてしまうは、仕方ないことだろう。物見遊山で出掛けたが、アルゲリッチにすっかり感じ入ってしまった。(G)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

宮田大 ドボコン N響カンタービレコンサート [コンサート]

 宮田大さんのドボルザーク コンチェルトを上野へ聴きに行った。席は4階サイド。弾き初めの音の印象は、音量はたっぷりあるが、不思議とこもった音色だった。少し進むと、さすが、歌い続ける音楽は起伏があり、物語に耳を傾ける時のように、柔らかい音色にひき込まれる。何年か前リサイタルを聴いたときには、演奏後に舞台で自分の気持ちを話したくなると、言っていた。ドボコンは、もう何回演奏されたのだろう。凄く慣れて、一楽章難所で、ちょっとした失敗はあっても、気にならず、本番の回数が増えれば、多少のミスが出ても仕方ないだろうと思わすところが凄い。華のあるチェリストだ。
 聴き終わって、ヨーヨーマや、ロストロポーヴィッチみたいな、巨匠なのに親しみやすい、身近な天才のことを連想した。意外と年配のお客様が多かったが、拍手は熱狂的だった。アンコールにバッハ無伴奏一番の、メヌエットを演奏してくれた。聴衆の心に迫り、ワクワクさせる、エンターテイナーの素質をも兼ね備えた、チェロ界スターだと実感した。
 宮田さんより、8才若いチェリスト岡本侑也さんが、7/4,5新日フィルと多分人生二度目のドボコンを共演する。 http://www.njp.or.jp/archives/11117
 昨年春には日フィルと弾いたが、ミュンヘンへ留学し、一年経過した19才の青年が、どんな今を見せ、聴かせてくれるか、どんな演奏家になって行くのか、若い人たちの変貌ぶりに目が離せない。
DSC04412.JPG
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽