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中島ゆみ子と仲間たち Vol.9 東京文化会館小ホール [コンサート]

 復活祭休暇の時期に、海外の音楽仲間を日本に迎えて開かれる中島ゆみ子さんの室内楽演奏会、震災以降開催時期がずれたが、また春の演奏会が戻ってきた。今回はブラームスのピアノトリオと、Vlaが入る歌曲、重たいプログラムでありながら、ブラームスらしい力強さや躍動感、時々光が差すような美しい旋律を、心ゆくまで味わうことができた。
 個を主張しなが一体感もあるブラームスの室内楽を、生で聴ける機会はそうはないと思う。中島ゆみ子さんの音楽は、日本人離れしているといつも感じる。これは、自分がヨーロッパを旅行中に聴く西洋音楽の中に見つける、はがねのような強靭なイメージとつながる。今回の中島さんらしい話題は、一年前、次回はブラームスピアノトリオと決めた後、ブラームスのピアノの第一人者と言われる、中井さんの演奏を聴き、後日、いきなり共演を依頼したという噂だ。音楽を共有することは、相手の心まで立ち入ることを許すことなのかと感じる。中島さんは、海外の音楽祭などで知り合った気の合う外人と室内楽を組む。自分を飾らず、自然体で体当たりできる人柄が、彼女の音楽の魅力でもある。
 視線をずっと合わせたまま弾き続け、お互いの音楽を確認しつつ、お互いに投影し、呼応し、どんどん集中力が高まっていく。本当によくお互いを聴いているのだろう。時に強靭な西洋人の弦楽器奏者が体を張って弾くと、それに張り合おうとして、日本人が力及ばず自滅してぼろぼろになってしまうような場面に、かつて出合ったことがあるが、21世紀の今、オリンピックで活躍するスポーツ選手のように、音楽家も世界に通じるしなやかな感性が貴いのではないかと思う。
 初めて聴く中井さんのピアノは、やはり他者を受け入れる温かい人柄を感じさせ、弦楽器をリードしながら弦楽器の音色をかき消さない絶妙のバランスで、一点の不安もなく、難しい曲を聴くことができた。中島ゆみ子さんの本番は、舞台上の仲間も聴衆も、決して裏切らない。(G)
ピアノ三重奏 第2番 作品87
アルトのための二つのうた
鎮められた憧れ 宗教的な子守唄
ピアノ三重奏 第1番 作品8
中島ゆみ子Vn.Vla/中井恒仁Pf/E.ウイリアムスVc/増田弥生MS
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新国立劇場ーヴォツエック [オペラ(国内)]

 楽日に行ってきた。2009年の新国立劇場以来、他の劇場で観る機会もなく、見ていて苦しいこのオペラを追い求めてはいなかった。思えば、この4年余りの間に、悲惨な社会の出来事も数多く、不合理な現実に、自分が鈍感になったようにも感じた。
 終演後、たまたま当日演奏したオケメンバーの複数の方から残念な話を聞いてしまった。指揮者グンター・ノイホルトはに振り間違えが多々あったらしい。私たちは睡魔と戦いながらの四階席で舞台を覗き込んでいたので、ピットまでは見えなかったし、アルバン・ベルクの音に詳しいわけでもなく、特に言いたいことも無いというのが、正直なところだった。でも、舞台近くで聴いたお客さんには、きっと、ピットの内情が分かったと思う。ここ何年か、期待せずに足を運ぶのが当たり前になっており、来年度は、心満たされる公演を聴きたい。(G)
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コニエチュニー、クールマン氏に聞く [オペラ(国内)]

 二人の歌手について、何も下調べせず公演に行き、翌日、インタヴューを聞いた。特に驚いたのは、コニエチュニー氏はポーランド人だが、最初俳優をしていて、ワーグナーはおろかオペラも全く聴いたことがなく、ドイツ語も喋れなかったということだ。(今回のインタビューは全てドイツ語、非ネイティブには完璧に思えた)
 クールマンさんはオーストリア人で、ドイツ語は母国語であり、ワーグナーをレパートリーにするのは当然とのこと。初めはリートが専門、ヴェーゼンドンクの歌は15年も歌っていると。ワーグナーのドイツ語の言葉そのものが文学的で、言葉として興味深いと、作品を歌うことの重要性を強調されていた。クールマンさんは、来年以降も、上野で、ヴァルキューレのフリッカ、ジークフリートのエルダ、黄昏のヴァルトラウテを歌う予定。今回のエルダは歌手の交代により歌うことになったそうだ。
 お二人ともご自身が歌いたい役を歌うという、強い意志が感じられた。表現者としての価値をアピールしたいという印象だった。さすが、ヤノフスキが選んだ歌手陣という感じがする。演出のある舞台を拒み演奏会形式を推奨するヤノフスキ氏、今回の上演を一週間で仕上げたそうで、伸び伸びリラックスしているように感じたとコニチュニー氏が言っていた。
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東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.5 『ニーベルングの指環』 序夜《ラインの黄金》 [オペラ(国内)]

 上野のワーグナーシリーズの指輪上演が始まった。演奏会形式でラインゴルトを聴くのは初めての経験。今回は特に舞台上ならではの、オーケストラの開放感のあるる音が印象に残った。N響はワーグナーに不慣れなオケなのに、とても上手だと言われてもう数年たち、ワーグナーに対する意欲が変化したなら、何だか嬉しい。ヤノフスキ氏が厳しいという噂はよく聞くし、意欲的な弦楽器を見るのは、良いものだ。特にチェロは細部まで全員がぴったり揃っており、素晴らしく、驚嘆した。
 舞台や、歌手の立ち位置が、S席の人が一番楽しめるように演出するのは当然のことで、安い席を買った者としては、見えなかったことは、別にどうとも思わない。上に上がる音そのものは、よく響いて十分楽しめた。歌手も良かった。全てが見えない分、想像力が働き、演奏会形式の意外なメリットがあった。
 ヴァルハラへ橋がかかり、もう序夜が終わり、いよいよ指輪の物語が始まるという、期待感と、すぐ次が聴きたいと、気持ちが高ぶったことは、公演を十分楽しんで、満たされたということだ。
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