SSブログ

新国立劇場―さまよえるオランダ人(楽日) [オペラ(国内)]

 初演から15年たったシュテークマンの演出に、手を加えた指揮者デスピノーサのコメント動画を見ると、やる気満々だった。入国制限により、指揮者、歌手の交代が余儀なくされ、どうやら、N響の指揮者として来日する(していた?)デスピノーサを捕まえて、滞在延長を交渉したようだ。氏は読響も代理で振っている。シュテークマンとはリモートで初対面し、序曲にハープを入れたいと話したという。公演後に知ったが、マエストロは若い頃6年間ドレスデン・ゼンパーオーパーのコンサートマスターで、当時音楽監督を務めていたたファビオ・ルイージと出会い、2008年指揮者に転向した。
 以前なら、この軽さはヴァーグナーではないと嫌っていたかもしれないれが、実際演奏はイタオペっぽく、符点は、はずむスキップのリズム、重厚さも暗さも感じず、却って今はよかった。コロナ禍で心沈みがちな上、ことさら陰鬱な気分にならずにすむ。オケの中音域が薄く、音の厚みが無い分、個々の楽器の音がよく聞こえる箇所もあって、ティーレマンほど美しくはないが、今日の傾向として、重苦しさは和らいでいた。
 席は4階一列目、マリーの代役として舞台袖に立って歌って下さった金子美香さんの声は、ちょっと聞こえにくかった。演技者は殆ど後ろ向きだったので、声が聞こえなくてもよいという設定なのだろうか。海外では舞台の端で、マイクまで立てて、楽譜を見ながら堂々と歌うのを聴いたことがあり、やはり、姿が見えた方が聴衆としては嬉しい。金子さんは、東京の春音楽祭の子供のためのワーグナー(オランダ人)で、マリーを歌っている。
 合唱は上手だった。2幕の女性合唱はとても綺麗でバイロイトを思い出す。3幕幽霊船の合唱の録音はいつもどおり4階後方のスピーカーから流れたが、激しくずれることもなく、4階の客席で聴くのには良い感じだった。
 今回は指揮者の意向で、序曲にもハープが入り、初めから救済ありの未来を暗示する演奏。
 日本人の歌手陣は、コロナ禍の交代で出番が増え、自信をつけられたのではないだろうか。河野さんの声はオランダ人のイメージに合っていた。ゼンタのバラードは、前半のGのアウフタクトの鋭い感じが、これまで体験した歌い出しとは違い、太くて、広がった声の印象だった。2022年のオランダ人がイタリアっぽい公演になったことは、時代の流れのようでもあり、新国立劇場にとっても、一つの転機のような気がした。
【指 揮】⇒ガエタノ・デスピノーサ
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン
【ダーラント】妻屋秀和 (予定通り)
【ゼンタ】⇒田崎尚美
【エリック】⇒城 宏憲
【マリー】⇒山下牧子⇒金子美香
【舵手】鈴木 准 (予定通り)
【オランダ人】⇨河野鉄平
4716363E-C4F7-4CC1-B77D-6D6759D8863D.jpeg
3E05DF83-1AA2-465B-A222-23457CB822D8.jpeg
909C7498-2425-4AB9-B6DD-B3C00E483C4B.jpeg
09E924AD-ABD2-42FB-A146-207604F9FBA2.jpeg
B613C40F-CFAF-41DE-A690-98E1D02833E3.jpeg
BB8AC391-E0D6-4448-A867-A5C123BC08C9.jpeg
2BEAB6B3-E353-4538-A9C2-246323C1817E.jpeg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。