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新国立劇場―ドン・カルロ(楽日) [オペラ(国内)]

 ドン・カルロも他のヴェルディ作品のように、場面の明暗に関係なく音楽が美しい。それで歌詞より音楽を聴いているうちに、話のつながりが分からなくなってしまったことがある。新国立劇場のドン・カルロは2006年のプレミエ以来だが、その後、少なくともドレスデンとハンブルクで見たことはあった。しかし、ドイツのイタオペには期待できず、ウィーンまで南下しないとイタリアの音色は味わえないと思っている。
 友情のテーマを皮切りに、たくさんの美しいメロディーが耳に残っている。また、宗教裁判官のテーマは、自分のイメージでは、タンホイザーの最後、教皇が自分の杖が芽吹かない限り救われない、という場面と共通する恐怖感が押し寄せて来る。
 4幕版で休憩は一回、場面が度々変わり、音楽も途切れるせいか、前半が長く感じた。後半3幕以降は、内容がシリアスで、佳境を迎え、歌手も力が入る。前半はロドリーゴ役の高田さんの声量が目立ち、題名役はちょっと物足りなかったが、後半に入ると充分したテノールの美声が4階まで響いていた。3幕冒頭フィリップ2世役妻屋さんの見せ場も素晴らしいく、王の悲哀が伝わってきて、舞台に惹きこまれた。エリザベッタ役はソフトな声から後半はドラマチックな声まで幅広い歌唱が要求され、小林さんはコロナ禍の中、益々絶好調だ。3幕の四重唱もしっかり聞こえたし、音程が気になる歌手はいたが、相殺すれば、なかなか楽しい舞台だった。妻屋さん、高田さんなど、普段海外で活躍されている歌手が、コロナ禍故、日本に留まって下さるのは有難く、公演を続ける新国立劇場の強さにも誇らしい思いがする。
 オケは多少気になった。流れが良く、さすが、イタリア人指揮者だと思うが、金管の音量ばかり轟き、音質が付いてこない感じで、随分と声をかき消していた。確かにイタオペの楽譜はfffなどfの数が多いが、出てくる音の質感、音の勢いと音が向かう先など、なかなか理想通りには行かないものだ。
【指 揮】パオロ・カリニャーニ
【フィリッポ二世】妻屋秀和
【ドン・カルロ】ジュゼッペ・ジパリ
【ロドリーゴ】髙田智宏
【エリザベッタ】小林厚子
【エボリ公女】アンナ・マリア・キウリ
【宗教裁判長】マルコ・スポッティ
【修道士】大塚博章
【テバルド】松浦 麗
【レルマ伯爵/王室の布告者】城 宏憲
【天よりの声】光岡暁恵
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
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