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バイロイト音楽祭ー神々の黄昏 [オペラ(海外)]

 指輪が終わってしまった。去年の印象と同じく、ペトレンコの黄昏の音はとても明るく、天空にかけ上るような勢いと、透明な光のような音の輝きを感じる。目を反らしたくなるような汚い舞台と、真逆の世界だ。
 昨年の舞台を見て、即座に新演出の意味を理解できた日本人は多くなかったと思う。私自身は、バクー油田も名前しか知らず、旧東ドイツも体験したことはない。テキサスや、随所に出てくるパロディー的なイメージを統合できるほどの、バックグラウンドがなく、目立つ舞台や映像セットに振り回さるのみで、惨めな思いがあった。
 今年になって、気づいたのは、ただ舞台展開を知っているだけで、居心地が良いということ。昨年、この舞台でジークフリートが英雄でないことに皆が気付き、戸惑った。あれから一年、昨年は、石油がテーマだと言われつつも、何か腑に落ちない点ばかり指摘されたが、今年はもはや、石油が指輪だと感じる人はいない。カストルフも満足されているのではないだろうか。観客は見事に成長し、旧東西ドイツの人間の問題まで、考えるに至ったように思う。全ての人から即座に賛同を得る舞台など、むしろ表面的なもので、見る人に考えさせる演出とは、こういうものなのかと、当事者として体験した指輪だった。
 例え、演出家の意図とは違っても、ローエングリンのネズミたちのように、段々と皆に受け入れられる慣れや順応という人間の特性もある。「人間」を知り尽くしたワーグナーが描く登場人物は面白い。(G)
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