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ウィーン・フィル首席チェロ奏者 タマシュ・ヴァルガ氏によるマスタークラス [チェロ]

 ロマン派以前の音楽を自然に表現することは、東洋人にとって容易なことではない。今日も音楽の方向性と聴衆への語りかけという演奏家としての基本姿勢について言及された。
 思うに、日本の伝統文化は「静」「内省」を重んじ、言外の意、行間を読む等、微細な部分に感動するのを美徳をしている。でもこれを西洋音楽にも適用することはできない。ある意味、日本人の方が作品を深く研究し、レッスンの内容も濃い部分はあると思うが、公開レッスンで必ず言われるのは、聴衆に分かるようにという点だ。「もっと大げさに」と百回言われても、自分の殻を打ち破るのは難しい。日本人は留まる音はとても美しいが、自分で方向を決めて進むのは苦手のようだ。
 ベートヴェンのソナタはピアノとチェロ両パートの役割を熟知し、ピアノの和音の中からチェロと同じ音を選んで合わせること、合図を送るのではなく、お互い目を閉じて心を合わせることも試すとよいとのことだった。
 R・シュトラウスのソナタを弾いた若者には、テクニックより気持ちの表現を優先する方がうまく行く場合があると助言していた。素晴らしい楽器だと思ったが、音色におぼれることなく、もっと楽器と一体になって、力強く天まで駆け上がって欲しいなあと、飛躍途中の若さを感じ、今後楽しみだ。
 弓づかいについて、音が変わるとき短い音が聞こえにくいので早い弓を使うようにとのことだった。
 ウィーンフィルで毎日オペラの演奏をするようになった影響で、言葉をより意識するようになったというような感想があった。タマシュ氏はハンガリー人だが、当然のようにとても分かりやすいドイツ語だった。アルファベットを母国語として使う人であっても、言葉を通して音楽を知るアプローチがあるようだ。
 心穏やかな正当派のチェリストという印象で、さすが、ウィーンフイルの主席らしい流麗な音だった。(G)
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