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岡本侑也 デュオリサイタル ミューザ川崎 [コンサート]

 共演者のピアニスト北村朋幹さんが、帰国の飛行機の中でコロナの濃厚接触者になってしまい、本番2日前に出演不可能となった。ドイツからの帰り、ウクライナ問題で、アメリカ経由のルートを選んだ結果の悲劇だ。出演者交代による、チケットキャンセルも受付けされている。
 それでも、よくぞ代理のピアニストが見つかったものだ。大須賀恵里さんは以前岡本さんと共演されているので、母心のような気持ちも働き、48時間の準備期間で引き受けて下さったのかもしれないと想像している。
 曲目が変更され、ブラームス2番のソナタが無くなったことは非常に残念だった。アンコールの時、お二人がマイクを持ってお話された。大須賀さんは自分が十分に演奏できなかったことを詫び、一番気の毒なのは北村さんだと仰った。他のコンサートを聴いてあげてほしいというような、いかにも大人のお言葉だった。
 岡本さんの演奏は見た目がとても自然で、どのような難曲でも、さらさらと余裕を持って弾いているように見えてしまう。情熱的な弾きぶりが好みの方には物足りないかもしれないが、目をつぶって出て来る音楽に集中するのも好い。本当に人の歌声のように、瞬間瞬間の音が繊細に、また雄弁にその音の意味を語っているようだ。音楽は音符の連続ではなく、音の中にある瞬間の連続だとつくづく感じる。  
 ミスのない演奏の上に、演奏中に生まれるインスピレーションが魅力的な音を創造し続ける。聴衆として指揮者の個性に心をつかまれるような感覚にも類似しているが、演奏家自身が、音楽を完璧にコントロールし、思う通り表現できるのは、素晴らしいことだ。
 今回は大きなホールの中でピアノの音量が勝っていたようで、2階の私の席からはチェロの音が隠れてしまった。しかし無伴奏のBUNRAKUでは、時とともに益々磨きぬかれた多彩な音色が、ミューザのホールに響き渡り、むしろその自然な音の表現力に驚いてしまった。演奏者周辺から放たれ、会場全体の空気を震わせ、耳に届く音、これこそが、岡本さんの音だと思う。昨年のトッパンホールの無伴奏のリサイタルを彷彿とさせる。ミューザ川崎の広さでも、十分無伴奏コンサートができることが証明されたような響きだった。
 次回の本番は3/25(金)19時 東京春・音楽祭で、ドイツで活躍されているピアニスト河村尚子さんと共演する。(東京文化会館小ホール)。ミューザで変更になったブラームスのチェロソナタ2番が演奏されるので、とても楽しみだ。今年の東京の春音楽祭は、コロナの影響でプログラムを小出しに発表したせいか、一般に知られていない演奏会があり、今日時点でチケットが残っていてもったいないと思う。

本来演奏予定だったプログラム
ベートーヴェン:モーツァルト「魔笛」の主題による7つの変奏曲 WoO.46
ウェーベルン:3つの小品 op.11
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 op.99
ヤナーチェク:おとぎ話
プーランク:チェロ・ソナタ F.P.143

【3/10追記】
出演者の変更に伴い、曲目が下記のとおり変更になりました。
ピアニスト:大須賀恵里
ベートーヴェン: モーツァルト「魔笛」の主題による7つの変奏曲 WoO46
シューマン:幻想小曲集 Op.73※
黛 敏郎:BUNRAKU-無伴奏チェロのための ※
ポッパー:ハンガリー狂詩曲 Op.68 ※
ドビュッシー:チェロ・ソナタ ※
プーランク:チェロ・ソナタ Fp.143
 (※部分が変更曲目)
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