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新国立劇場 ーチェネレントラ [オペラ(国内)]

 2021/22のシーズンが始まった。コロナ禍が収束するのか、それとも次の感染の波は来るのか、1か月先もわからない曖昧な日常の中で自粛を解除しつつある今、バタバタと落ち着かず、現実感のある話の筋に、どうも気分的に没入できなかった。年齢のせいかもしれない。
 新制作のチェネレントラでは、ヒロイン役メゾソプラノ脇園さんが素晴らしい歌を聴かせてくれた。メゾが主役のオペラは少ないが、本当にスターの風格だ。王子役テノール バルベラ氏も絶好調で、2幕、王子が彼女を見つけ出すと歌う見せ場で拍手が止まず、アンコールに応えてくれた。これはお決まりのアンコールのようで、何度でも聞きたくなる爽やかな美声だ。
 ロッシーニのチェネレントラの舞台は、過去に多分3種類しか観たことがないが、2009年に新国立でも観ていたことをすっかり忘れていた。この作品は喜劇でありながら中身は真面目で、おとぎ話の内容とは違う。クライマックスでは、人の上にたつ人間の在り方を朗々と歌い上げる。冒頭では、貧相なチェネレントラの独り言のような暗い歌声が耳につき、憂鬱な気分になる。脇園さんはそれほど暗さを出されなかったが、ここでいかに鬱屈した気分にさせるかは、ストーリー運びにも関わってくると思う。
 舞台演出は、映画監督がヒロインを公募するという設定のようだが、だからと言って、特別に何か訴えかけて来る感じは無かった。
 始まるなり、オケの音色が暗く感じ、ロッシーニの駆け上がるような軽さが十分伝わらない印象だった。オケピットを浅くしていたそうだが、何故か日本のオケでイタリアものを聴くと、弦楽器のビブラートが下向きに聞こえ、音を高く空中に飛び立たせるような軽さが失われる気がする。
 もし指揮者の城谷さんがチェンバロを弾かれたら、また別の雰囲気になったのかもしれないが、今回の、場面から連想される様々なオペラ名場面集のようなチェンバロ演奏について、客席の受けはよかったが、個人的には、引用されたあちこちの作品へ、一瞬気持ちが飛ぶことで、舞台が中断されてしまう違和感があった。自分にとっては意外で、ちょっとやりすぎな感じだった。ただ勝手に普通の演奏を期待していただけなのだが・・。
 真面目さが混ざった喜劇は、舞台表現が難しいと今回気づいた。途中のドタバタとクライマックスのギャップが大きく、もし台本通りに聴き手へメッセージを伝えたい場合、ラストの歌唱だけに頼ることになるのではないだろうか。
 急な交代で登場した指揮者城谷氏は、きっちりと役目を果たされたと思う。
【指 揮】城谷正博
【演 出】粟國 淳
【ドン・ラミーロ】ルネ・バルベラ
【ダンディーニ】上江隼人
【ドン・マニフィコ】アレッサンドロ・コルベッリ
【アンジェリーナ】脇園 彩
【アリドーロ】ガブリエーレ・サゴーナ
【クロリンダ】高橋薫子
【ティーズベ】齊藤純子
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