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新国立劇場-蝶々夫人  [オペラ(国内)]

 見終わってから、今シーズン最後の演目だったと気づいた。栗山さんの演出は2005年からレパートリー上演され、何度か見ている。その度に外国人蝶々さんの身のこなしが洗練されてきて、もう着物姿に何の違和感もない。前のプロダクションは、説明調でセットは綺麗だったが、和装の姿全員(日本人も)足元を棒立ちにさせ、客席で恥ずかしい気がしたものだが、もう昔の話、その点はクリアした。
 今回は音楽が、ムード音楽のようにとても緩やかで、メリハリをことさら抑えた演奏だったように感じた。この作品はこれまで気の毒な蝶々さんのお話で対外的には深入りしたくない気がしており、ピンカートンのことなど考えてみたこともなかった。でも、トドロヴィッチ氏の姿がとても美しく、初めから淡々としていたせいか、急にこの役柄そのものに、初めて不快感を覚えた。グリャコヴァさんも細身で着物がよく似合っていて、二人がとても自然で何やら達観しているようだったため、蝶々さんのとった行動の大胆さに今更ながら、はっとした。
 武家の出で、芸者に身を落とし、過去をリセットして、アメリカ人ピンカートンと幸せになるという夢を見たその決意は大変なものだ。命をかけて愛を貫く日本女性の原型として西洋で賞賛され、筋を通す武士道精神まで取りいれられた、日本人からみてもよく出来た作品なのだ。
 他の日本人の役柄も、揃って落ち着き、地味目だった。日本が一番上手に表現できる舞台のはずだといつも念じながら見てきたが、ここまでしっくりきてしまうと、もう少し蝶々さんが派手に苦悩したり、ピンカートンがうろたえたりするオペラっぽいフィクションを見てみたいと欲求が逆もどりしてしまう。(G)
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