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クレモナにて [イタリア]

 音楽は神に捧げるもの。いかに美しい音楽を奏でることができるか、その鍵を握る楽器もまた、とても神聖なものであり、音楽と楽器は一体なのだ。
 ストラディヴァリの時代、楽器製作者はIHSというキリスト教会の保護を受けていた。ストラディヴァリの所属していた教会は今は無く、広場になっている。
 友人がここクレモナで修行している。暗い楽器工房を想像していたが、中庭のある、昔のパレスを今は複数の居住者が使っている、美しい工房だった。天井の木も1600年頃のものだという。
 マエストロが楽器造りの精神を話して下さって、身が引き締まる思いだった。一日の時の流れの中で、窓から差し込む日の光を恵みとして、製作が進んでいく。太陽の動きを追って仕事をするなんて、何て素晴らしいのだろう。ニスの工程は午後の日差しの入る部屋で1~2時間。製作の部屋では、中世の絵画のような一筋の陽の光を眼前に見ることができる。静かな時と太陽の光、自然の力を借りて、神への畏敬の念を込めて、神聖な楽器が作られる。
 クレモナは湿度が高く、滞在中常に小雨が降ったり止んだりの天気だった。しかし、不思議なことに、窓から差し込む陽の光はとても力強く、夏の日差しなのだ。天気雨のような、空の明るさも不思議だ。
 コムーネ宮ではガラスケースに入ったアマティ、ガルネリ、ストラディヴァリの楽器を見ることが出来る。もちろん厳重な監視の下で入室し、あまり長時間居ると嫌がられる。目の届く時間と人数に制限されている。
 ドイツ人のツアーから漏れ聞こえてきた話によると、毎日、どれかの楽器を短時間演奏して聞かせているとのこと。ちょうど、25日までモンティヴェルディ音楽祭をやっており、博物館は入場無料、ストラディヴァリの演奏も毎日あるようだ。ただ予約するだけで聴けるなんて、さすがはクレモナだ。音楽祭の催しの一つとしてSan Marcellinoという普段は公開されていない教会で、Ingegneri のミサ曲とCavalliのレクイエムを10人のアカペラコーラスで聴いた。天に届くように響きとっても心地よく美しかった。
 イタリアの教会は、正面がキリストのフレスコ画でその回りが額縁のように金色になっている。木を彫り金粉を施してある。会場となったこの教会の装飾は特に素晴らしく、マエストロの説明によると、ストラディヴァリが彫り物師であったという説を採ると、この教会の正面の装飾は兄弟子の作品ということになるそうだ。
 初め、建物の扉が開いており、外からちょっと見えただけで、驚くほど荘厳な印象を受ける。遠くから見ても、近くに寄っても、差がないほど見事なのだ。流れるように、鮮やかに、くっきり彫られている。Vnを連想させる、ネックの渦巻きも見える。ミラノのドゥオモの装飾よりもはるかに豪華だ。
 ストラディヴァリの楽器が美しいのは、彫り物師としての経験があったためではないかと言われているとのこと。(G)
机に差し込む日光
DSC01535みづきの机.jpg
工房の天井
DSC01536工房天上.jpg
ニス
DSC01539ニス.jpg
マエストロの机
DSC01543マエストロの机.jpg
引き出し
DSC01545引き出し.jpg
教会の装飾
DSC01547ストラヂヴァリの兄弟弟子.jpg
クレモナ駅ホーム
DSC01559クレモナ駅ホーム.jpg
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スザンナ

お久しぶりです。
貴重な写真を拝見させていただきました、ありがとうございます。
クレモナって湿度が高いのですか~!てっきり乾燥しているものと思っていました。

by スザンナ (2008-05-25 21:27) 

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