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土肥敬チェロリサイタル(ルーテル市ヶ谷センター) [コンサート]

 30年近くご縁の続くチェリストが居る。社会の枠にこだわらないご夫妻の自由な生き方に、時に驚かされ、また憧れ、今はそのエネルギーを尊敬している。6/9には杉並公会堂でブラームスのドッペルコンチェルトを弾く。
 土肥氏は毎年リサイタルを開いていたが、ここ何年か右耳にノイズが出ることで悩み苦しみ、昨年は開催を見送った。一聴衆として、自分より少しだけ先の人生を歩んでいる音楽家の演奏を、活動報告として年一度聴く意味は大きい。でも、つい昔と変わらない人柄の部分に気が行ってしまう。ところが、二年ぶりに聴く演奏は変貌していた。耳の苦労が少しでも良い方に影響するようにと祈っていたが、ついに開花したと思った。
 芸術家は皆苦しみの中で創造するものだろう。凡人には感じないことを感じ取れる繊細さがあるから、苦しむのであり、それが芸術家の試練なのだと思う。昨日は間違いなく、チェロを弾ける喜び、音楽への感謝の気持ちを、魂の入った音で丁寧に語ってくれた。初めて聴いた人には、驚くような解釈もあっただろう。でも、旧きを知る者たちにとっては、人生=音楽の「固有の表現」が確立し、謙虚なまま説得力を持つ氏の音楽が、円熟期に入ったと感じる記念すべき夜だった。(G)


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