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6人の若獅子が集う 奇跡のチェロ・アンサンブル [コンサート]

 二年ぶりにメンバー6人が結集、皆大人っぽくなり、かつての弾きたがり屋の少年たちの面影はもう無い。この二年の間に各々が経験を積み、全員が世界で活躍するソリストに成長したことは、本当に喜ばしい。皆すごい楽器を貸与され、全員がスターだ。僅か2回の練習で、ここまで息が合うのは凄い。一人ひとりが自分の音楽と技を披露しつつ、調和していて、皆がアンサンブルを楽しんでいるのが伝わってくる。
 自分にテーマが回って来て、一気にエネルギーが爆発するとき、また思いの丈を歌いきるとき、他のメンバーが主役に寄り添う眼差しが、見ていて心地よい。こんなにお互い聴きあえるチェロアンサンブルには日本では希だ。ご臨席された、メンバーの先生でもある大御所の方々も、次世代に引き継ぐ嬉しさを感じられたのではないだろうか。
 若者はグローバルな文明の恩恵に浴し、前世代にはない素晴らしいテクニックと音楽性をものにしたと思う。そして模範演奏のような賛歌から、ピアソラまで、聴きごたえがある、本物の音楽の世界を聞かせてくれた。
 みんな大好き、ポッパーのハンガリー狂詩曲では、持ち回りでメロディーを分かち合うアレンジに、小林さんのチェロ愛のような仲間への友情を感じる。オリジナルのチェロ6重奏の曲は少ないので、ほとんどの曲を、6人皆が楽しめるように、小林さんが上手に編曲しており、貴重な人材だ。
 次回は来年の12/27東京文化会館小ホールで開催予定とのこと。彼らは一段階段を上り「奇跡の」チェロ・アンサンブルというタイトルは、もう大仰なものではなく、ベルリンフィルの12人のような、本物の「奇跡」のチェロアンサンブルに近づくよう、続けて行ってもらいたいと思う。
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出演(チェロ):
辻本玲、伊藤悠貴、小林幸太郎、伊東裕、岡本侑也、上野通明(年齢順)
曲目:
クレンゲル:賛歌
バリエール:2台のチェロのためのソナタ
ピアソラ:リベルタンゴ
フォーレ:パヴァーヌ
ドビュッシー:月の光
リムスキーコルサコフ:シェヘラザードより
ポッパー:ハンガリー狂詩曲 ほか
アンコールは、ロドリゲス:ラ・クンパルシータ
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日独協会-クリスマスの集い [その他]

 去年に続き、二年目の参加。今年は場所がホテルニューオータニにになり、雰囲気がとても良かった。今年はドイツ大使は出席されず、日独協会会長の挨拶の次に、大使館の首席公使が日本語でご挨拶された。続いて協会の副会長が乾杯のご発声。それ以降は会食、懇談とミニコンサート。
 今回私が楽しみにしていたのは、「ミニケストラ」。ポップカルチャーの世界、アニメやゲームの音楽を生演奏し、メンバーは一定ではないのかもしれないが、Vn・Fl・Vc・ Cb・Pfの5人の素晴らしいプロフェッショナルな演奏を楽しませて頂いた。演奏会ではなく、パーティーのバックグラウンド音楽としてはとても贅沢で、これだけでも、出席してよかった。
 昨年の場所は広すぎて、交流する雰囲気に乏しかったが、さすが、ホテルのパーティー会場、皆さんと話しやすく、顔見知りも増えた。
 お料理はちょっと不足気味だった感じもするが、飲み物は豊富だった。恒例の福引で、今年もSteiffの熊さんが登場、今年流行のシロクマ。みんなのドイツ愛を試すクイズも楽しかった。問題もさすが、ユニークだ。笑ってしまったのは、ドイツ人がクリスマスイヴに食べる料理で一番多いのは何か?答えは、結局ソーセージとのこと。
 帰りの出口で皆にスポンサーのお土産と、くじ引きで、ちょっとしたプレゼントが当たる。私はやはりルフトハンザに縁があるのか、LHグッズが当たった。景品にはドイツワインも並んでいた。
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劇場におけるコレペティトゥールの仕事について [講演会]

 略語のようにコレペティという言葉を使っていたが、正式にはドイツ語: Korrepetitor / フランス語: corépétiteur という。オペラ指揮者になるための訓練の場なのかと思っていたが、実はものすごく幅広く大変な仕事と知った。一番印象に残ったお話は、歌手の個人稽古をするときのこと。個人稽古に入る前に、ピアノヴォーカルスコアの譜読みをし、台詞を読み、各パートを歌えるように準備しておき、練習する場面の、他の声部を歌いながらピアノを弾く。
 ピアノヴォーカルスコアに加筆もする。歌手の要望に応じて、メロディーや大事な音程を書き加えたり、歌のきっかけを掴みやすくするオケパートの楽器の音を加えたり、複雑すぎる音型を削ったり、実際のオーケストラの響きに近づくよう、独自の楽譜を作っているそうだ。以前楽譜屋さんで、フルスコアの代わりになるかとヴォーカルスコアを見て、音が少ないなぁと思ったことがあった。ヴォーカルスコアは誰が作るのか、用途により、またピアニスト次第で、演奏が変わるものと知った。
 劇場でのピアノと指揮者の通し稽古では、黄昏序幕・1幕やマイスタージンガー3幕では、2時間オケピットで一人弾き続けるそうだ。例えば、歌のない黄昏の最後の部分もオーケストラの音に近づくよう、ヴォーカルスコアを書き換えていたが、通し稽古があるので、隅々まで音をチェックするのかもしれない。
 ヨーロッパでは、コレペティから指揮者になった人を、”たたき上げ”と言うことがあるが、この経緯はごく普通で、ティーレマンもその一人だ。そう思うと、木下先生のような、コレペティ専門家も指揮をできるということで、オーケストラの指導を受けてみたいと、連れ合いは言っている。
夏のバイロイト音楽祭の季節に、ピアノでワーグナーのオペラや、ベートーヴェンの交響曲を弾く演奏会を結構聴く機会があり、編曲の程度も色々で、やはり大事な音が欠けていないオーケストラの響きに近い演奏は楽しい。オケの響きに慣れていると、音の欠損に敏感になる。こういう演奏はコレペティの領分に似ているようでもあるが、基本コレペティは、指揮者や、オケ、歌手に合わせ、彼らを助けることが主な仕事なのだろうと理解した。
 後半は、まずテノール歌手伊藤さんの紹介として、ローエングリンの”名乗り”の場面を聞かせてくれた。続いて個人稽古の実演。ローエングリンの三幕、結婚行進曲が終わりエルザと二人になってからのやり取りの場面を、感情移入した歌い方やブレスまで、譜読み段階の、指導の実演が披露された。ピアノを弾き、エルザのパートを歌いながら、テノールの声を聴き、発音の指摘をし、音が三度違うなど、指揮者の耳、注意力を兼ね備えた素晴らしい指導に、唯々驚嘆するばかり。上演の指揮者やオケを想定して、その特徴に合わせての指導もされている。とても楽しい企画に感謝で一杯だ。
 蛇足だが、こういう歌手の苦労の積み重ねを目の当たりにすると、いつも安定しているフォークトがいかに凄いかあらためて痛感する。
ワーグナー協会 第404回例会  
お 話:木下 志寿子(ピアニスト・新国立劇場コレペティトゥール)
聞き手:吉田 真
出 演:伊藤 達人(テノール)
演奏曲目:「ローエングリン」3幕
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譜めくりしやすいよう、厚いヴォーカルスコアを波打たせる(薔薇の騎士)

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ムンク展ー共鳴する魂の叫び [美術・博物館]

 ムンク展に誘われた。ムンクと言えば「叫び」があまりに有名で、パロディも沢山見かける。でもそれ以外の作品は殆ど知らず、以前どこか海外の美術館で叫びに似た作品を見たことがあるだけだ。初めて見た本物の叫びは、以外とあっさりした塗りとでも言おうか、幾重にも色を重ねる描き方ではなく、色を並べるような感じだった。カンヴァスではなく、厚紙に描かれいるのだ。他にもパステル画、リトグラフなど、5点叫びは存在するらしい。他にも同じ構図で、色を変えたり、技法を変えたりした作品が数多くある。
 生い立ちからして、貧困は無かったのだろうか。私個人の印象だが、自撮りした写真から自画像を多く描いてたり、滞在地なのか、親交があったためか、様々な色彩感が作品に現れていて、ちょっとくすんだドイツ色になったり、セザンヌ、ゴッホ、クリムトなどが連想されたり、何となくインスピレーションで速描きしているような、何でも来いという余裕を感じる。
 色々なテーマの作品を見てきて、晩年精神的に落ち着いてからの、穏やかな色彩の作品のいくつかに、心ひかれた。
 私は北欧の景色を実際に体験したことがないので、ヨーロッパと違う青っぽい緑や、太陽の白い光は未知の世界で、季節もよく分からない。
 遺言で、ムンクの作品はオスロ市に寄贈され、膨大な数の作品がオスロにある。今回100点近い作品が貸し出されることに驚いたが、油絵だけでも、1000点以上オスロにあるとのこと。
 パロディを受け入れる親しみやすさは大したもので、何故だかピカチューの「叫び」のカードが配られていた。
 平日の午後なのだがすごい人出で、子供もおり、これもピカチューのおかげか。フェルメール展も相変わらず寒空の下に行列ができていた。
場所:東京都美術館
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ドイツ人とは誰のこと? - ドイツ社会の多様性について Teil 2 - [講演会]

 先月に続き、ドイツ社会の多様性について持田節子先生が経験された、数字に裏付けられるここ35年のドイツの変化と、現在のドイツについてお話を伺った。
 先生が初めてドイツの土を踏まれた1972年以降、年代を追って、ドイツの変化、ドイツ人像の変化など、具体的なお話をたくさんして下さった。それを前提に自分にも思い当たることがある。
 個人的にはミレニアム以来ドイツに興味以来をもち、ユーロ導入以降、自分が接してきたほんの一部のドイツの、その時々の経過点の意味を少しでも知りたかった。
 2002~3年ごろトルコ人に対する不満を現地人から聞いたが、次第に寛容になり、ドイツ語教師は、苦労の分かるトルコ人が良いという話に変わっていった。
 2006年のワールドカップ以降、田舎でも英語がよく話されるようになり、外国のお客さんに親切になったと実感している。
 2012年には、ドイツ人と結婚したスロヴェニア人女性が放課後授業を担当している小学校の見学に誘われ、移民の子供たちと話した。親たちが一般社会から外れた人たちであること、転入してきても、親はドイツ語を話せないので、何か話したい言葉の始めか最後の一文字でよいから、コミュニケーションのよすがにしたいと、子供を通して連絡するとのこと。同じ年、トルコ人のドイツ語教師から、教材として国籍取得テストを見せられた。
 2015年夏、まさに移民問題が始まったとき、ミュンヘン郊外のサッカーチームのある小さな町の友人家族から、お年寄りが増えて空き家になった家を難民に提供したり、ヴォランティアでお年寄りがドイツ語を教えていると聞かされた。難民ウェルカムの時期だ。これらの経験は持田先生のお話の中の小さな事例だろうと思われる。最近では、パリ発のDBで旧国境駅、ストラスブールで長時間停車し、車内全員の人物確認が済むまで、列車の扉が開かなかった。難民の入国チェックだ。
 この日示されたドイツの統計によると、総人口8,260万のうち、移民は人口の24%、純粋ドイツ人62.5%、今はBio Deutscheというそうだ。外国籍の数は1,060万11,52%、そのうち70%はヨーロッパ人、また、日本人は38,000人くらい居るらしい。亡命者の数や国籍の変化は世界情勢を反映しているとのこと。現在移民の国ドイツでは、メディアに登場し、広く親しまれている有名なトルコ人もおり、移民、ジェンダー、健常者/障害者、などあらゆる多様性が容認されている。一方で、AfDなど右派政党が議席数を増やしているのも、周知の事実だ。

講師: 持田 節子 先生
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