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細川俊夫氏 講演会 振動する夢の通路: 能から新しいオペラへ - オペラ「地震・夢」を中心に – [講演会]

 2018年度国際交流基金賞を受賞された、細川俊夫先生の記念講演会が東京ドイツ文化センターであった。会場には、細川先生が作曲されたオペラ6作品のスコアが展示されており、自由に見ることができた。どんなだろうと、少しめくってみただけだが、一応普通の五線譜だった。
 第一部は、オペラ6作品の解説と舞台映像の紹介、第二部は縄田氏との対談と質疑応答だった。
 去年4月シュトゥットガルト歌劇場が予告して行った新作オペラ、クライスの「チリ地震」原作、バイアー台本の「地震・夢」(Erdbeben.Träume) は7月にプレミエを迎え、日本では初めて映像の一部が公開された。バウアーのドイツ語が難解なこと、プロダクションチームが福島を訪れた話などは前回説明があったとおりで、その時点ではまだ音楽はできていなかったそうだ。稽古場には舞台と同じセットを作り、福島で撮影した写真がたくさん貼られていたとのこと。
https://gruen.blog.so-net.ne.jp/2017-04-17
 先生のお話によると、原語の台本を読んで作曲するとき、言葉の意味ではなく、響きを感じ、言葉が生まれる時の、最初のカオスの状態のに光がパッと当たる感じを音にするとのこと。芸術が生まれる瞬間を想像し、何だか体が震える。
 細川氏のオペラでは、あの世とこの世をつなぐ、能の「橋掛かり」が、魂の浄化を表現する媒体となる。今回の「振動する夢の通路:能から新しいオペラへ」という副題の意味するところの、振動は、地震であり、音楽、恐れでもある。夢の通路とは橋掛かりであり、音のトンネルでもあり、この作品の主人公フィリップはこの通路の中に入る。
 作品のテーマは、フィリップが出自を知るイニシエーションの旅。禁断の愛により生まれたフィリップの両親がまさに周囲の制裁を受けようとしたとき、大地震が起こり、フィリップと取り違えらえた赤ちゃんが殺害される。両親も殺害され、フィリップは子供を取り違えられた養父母に育てられる。でもオペラを通じて最後には自分が実の両親に抱かれる場面を夢に見て、魂が浄化される。
 映像の中で、大地震直後の海の描写があり、主にコーラスで歌われる無機質な音と言葉は、我々が震災で見てきた荒れ狂う水の映像そのものだ。舞台の再演がかなわぬのなら、間もなく市場に出るという作品全体の映像を見たいものだ。
 講演後レセプションがあり、一般聴衆もお招きにあずかり恐縮した。
モデレーター 縄田雄二(中央大学文学部教授)
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フェルメール展&藝大フィルハーモニア管弦楽団ー高関健 マーラー交響曲第7番 他 [コンサート]

 マーラー7番を生で聴いたのは数えるほどだが、この日、奏楽堂の最高の席で、素晴らしい演奏に接することができた。まず、舞台全体を見渡せる中央の席に座したことが奇跡の第一歩だ。全席自由とはありがたい。感謝感激だ。
 そして、演奏会がお祭りではなく、研究発表の場であったことがすごい。楽譜は、国際Mahler協会のMahler新全集版を使用。新全集では、高関先生のご研究も楽譜に反映されている。高関先生が、世界的な学者で、芸術家でいらっしゃることを心から尊敬する。プログラムの先生のインタビュー記事は、必見だ。
 整然としていて、すべての楽器の響きが生かされるような演奏は、作曲家の意図を最大限表現してくれているように感じる。奏者も皆素晴らしく、偉業を成し遂げたような、充実感があふれていたように思う。先生のお話で、出来るだけ固いバチで叩くよう指示があるという、ティンパニーの音色は、今まで聞いたことがないほど、音楽にピッタリとマッチして、感動的だった。この日行かれなくなった連れ合いが気の毒に思える。
 前半のマーラー編曲のバッハの管弦楽組曲からの作品は、1909年ニューヨークフィルで初演された。当時バッハ作品がニューヨークで演奏されることは多くなかったとのこと。弦は16型で華やかだ。マーラーは、生涯で20回位指揮したとのこと。フルートは聞こえることが大事なので人数を増やすか、クラリネットを加えてもよいという指示があり、この日はフルート4本、指揮台正面、弦楽器の間に配された。
 アカデミックな素晴らしい演奏会だった。分析され、再構築された7番の音の違いを、自分には聞き分けることはできないが、音の細部を自ら聴き取りに行く姿勢が音楽を面白くすることを、この夏、ペトレンコの6番からも学んだ。少し距離を置いていたマーラーをあきらめず、また狩りに出ようようと思う。次は年明けの一千人だ。
 コンサートの前にフェルメール展へ行った。今回展示されている8点の中で初めて見る作品は赤い帽子の娘だけだが、ロンドンとワシントンにまだ見ていない作品がある。ベルリンの2作品は、ともに日本に来ているのには、苦笑してしまう。というのは、ベルリンに滞在する時には、閉館前1時間ほど、2作品の前に座るのだが、ほとんど人は足を止めないからだ。2点貸し出しても来館者から苦情が出ることはないだろうという意味なのか。今回入場は予約制なのに、とても混んでおり、残念だった。仕方ないことだが、展示作品と見る人の距離は、日本の方がはるかに離れている。
■曲目
マーラー編曲:《J.S.バッハの管弦楽作品による組曲》
Ⅰ序曲 4/4(第2番より)
Ⅱロンドーバディヌリー 2/2 - 2/4 - 4/4(第2番より)
ロンド→バティヌリー→ロンドの順で演奏。
Ⅲエール 4/4(第3番より) G線上のアリア
Ⅳガヴォット1-ガヴォット2  2/2(第3番より)
編成:フルート(他人数、またはクラリネット1を増強)オーボエ2、トランペット3、ティンパニ、クラヴィチェンバロ(ピアノ)、オルガン、弦楽合奏
マーラー:《交響曲第7番》
■出演
指揮・プレトーク  高関 健 
芸大フィルハーモニー管弦楽団 於 奏楽堂
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2018弦楽器フェア、 骨髄バンクチャリティーコンサート [コンサート]

 午前中に科学技術館の弦楽器フェアを覗き、午後は、骨髄バンクのチャリティーコンサートへ行った。
 去年、冷やかしで購入した安いチェロ弦1セットは使うことなく一年過ぎ、今年は面白い魂柱を見つけた。
 弓と同じ材質の木をらせん状に削りプラスティックのようなもので覆う。形は魂柱型。その上下にマグネットを取り付け、磁石の力で魂柱を立て、中間部のネジで圧を調節し、整ったところで、ネジは外す。半延久的に使えて、音色も優しいと、作者がヴァイオリンを弾いてくれた。ミュンヘンに店舗があり、魂柱は家で制作しているとのこと。実際使っている人がいるのか尋ねるとYouTubeを紹介してくれた。慣れれば自分で取り付けたり外したりできると。
 確かに実際のチェロの音を聞いてみたいものだ。
https://www.soundpost.com/
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 今年の骨髄バンクのコンサート会場は本郷にある求道会館。大正年間に作られた、仏教の教会?とのこと。靴を脱いで入り、二階席は座布団を並べる、段差の小さい階段状になっている。
 昨年の会場の音響が良くなかったからだろうか、この場所は、演奏メンバーが利用し、とても趣のある場所で響きも良いので、骨髄バンクに提案したとのこと。やはりモティベーションが上がるのだろう、大変な熱演で、チェロの音もとても良かった。
小澤洋介(チェロ)三戸素子(ヴァイオリン)高田匡隆(ピアノ)
プログラム:
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調「幽霊」
骨髄バンクミニシンポジウム
マルタン:アイルランド民謡による三重奏曲
ブラームス:ピアノ三重奏曲 第2番 ハ長調 作品87
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国際音楽芸術振興財団コンサート 室内楽のア・ラ・カルト [コンサート]

 銀座ヤマハホールで、国際音楽芸術振興の公益認定記念コンサートがあった。ネットで登録すると、全員ご招待だ。
 フルート、チェロ、ピアノという珍しい組み合わせに思えたが、ウェーバーのフルートトリオ他、オリジナル曲のようだ。ヴィラ=ロボスのジェットホイッスルという作品は、なかなか面白い。先月、シャリーノのフルート曲を聞いたばかりなので、フルートの音色としてのホイッスル音は、程よい刺激だった。
 中木さんは、ヨーゼフ・グァルネリ(多分グァルネリ一族?)のチェロを貸与されているとのこと。突き抜けるような強く素晴らしい音で、ドビュッシーも迫力があった。後半は、三人の音が溶け合って聞こえ、心地良い演奏会だった。
 このホールは初めて行ったが、18時までホールのある最上階に入れず(エレベーターが行かない)、1階に人が溢れていた。

出演
・三浦友里枝(ピアノ)・上野由恵(フルート)・中木健二(チェロ)
演奏曲目
ゴーベール ロマンティックな小品
ドビュッシー シランクス
ドビュッシー チェロとピアノのためのソナタ
ヴィラ=ロボス ジェットホイッスル 
《休憩》
C.P.Eバッハ トリオソナタニ長調Wq.151より第1楽章
ウェーバー フルート三重奏曲 作品 63

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