山崎伸子-チェロソナタ・シリーズ（10年）第1回

　山崎伸子さんの演奏を聴くのは１０年ぶりくらいかもしれない。５０歳代に入り、１０年計画で年に一度演奏会をするという、魅力的な企画だ。同じ女性として、少し先に、偉大なお手本があるのは、励みになる。
　山崎さんの演奏はとても若々しく、力強く、そして優しいお人柄がにじみ出ていた。小さい体で、右の肩から弓先までを振り子のように使って、完璧な音を追求していた。肩や背中、腕も、ものすごい筋トレをしていると思う。脱力して楽器が鳴るように心がけているらしいのが伝わってくる。ブラームスの１楽章だけが、おやっ力が入っているなという感じの音だった。山崎さんの奏でるメロデイーは本当に綺麗だ。とても純粋な方なのだろうと思う。
　ピアニストの長岡さんがまた素晴らしい。あんなに歌心のあるピアノの共演を聴いたのは初めてだ。音量も歌う気持ちも二人の心がぴったり合い、アンコールの歌曲は、まるで人の声を聞いているようで、ひときわ繊細なピアノの音色に酔い、体がとろけてしまいそうだった。長岡さんの演奏をまた聴いてみたい。（Ｇ）　

　山崎伸子（チェロ）
　長岡純子（ピアノ）
●ベートーヴェン：チェロソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1
●ベートーヴェン：チェロソナタ 第5番 ニ長調 作品102-2
●ブラームス：チェロソナタ 第2番 ヘ長調 作品99
●アンコール２曲（ブラームスの歌曲）

　津田ホールは千駄ヶ谷駅前で足の便は良いのだが、ホールとしては今一だ。エレベーターは少ないし、ホワイエは狭くて暗い。トイレの数も不足し、クロークも無いので、コートもホール内に持込みだ。今日はお弟子さん関係が多いせいか、チェロは入口に並べてあったが、かなりの人数がいたバイオリン持参の人は大変だ。
　演奏は素晴らしい。特にピアノの長岡さんは７９才とのことだが、完璧な伴奏だった。（Ｂ）
↓居並ぶチェロケース